2024.2.5

日本のハーブ:ハマビシとシツリシ

昭和薬科大学 薬用植物園 薬用植物資源研究室 研究員

佐竹元吉

ハマビシTribulus terrestrisは、海岸性の植物と思われていたが、モンゴルのウランバートルの郊外の草原で、地べたに這いつくばって咲いているハマビシを見つけ驚いた。世界での分布は、海岸だけでなく、内陸の草原や砂地も含まれていた。

①ハマビシ

ハマビシの実はシツリシ(蒺藜子)と呼ばれ、薬として用いられている。日本薬局方にも収載されている。日本では食品としての利用は禁止されている。ところが日本食品安全委員会は、平成27年に「ハマビシ」を含むサプリメントに注意を出した。

注意の内容は、ハマビシ成分を含むサプリメントは、インターネット等で海外製のものが販売されていたこと。日本では、ハマビシの「果実」は医薬品成分とされており、いわゆる健康食品や食用に供することは禁止されている。

また、ハマビシには、神経系、筋肉、肝臓及び腎臓への影響が報告されており、ハマビシの草木部分についても、一部のEU加盟国は食品サプリメントへの使用は安全でないとして流通は禁止されている。

1)ハマビシの形態と分布

②ハマビシ

1年草または2年草である。根は直根で深く地中に伸びる。地上部には湾曲する短毛又はやや開出する粗毛ある。茎は基部分枝し、枝は匍匐し長さ1mに達し、隆条がある。葉は対生、偶数複葉で長さ1〜6cm、4〜8対の小葉がある。小葉は長楕円形でやや鈍頭、基部歪形、全縁、両面、特に下面に白伏毛があり、長さ8〜15mm、幅3〜4mmである。托葉は離生、披針状三角形、長さ約3mm。花梗の先に1花を付ける。花梗は長さ1〜2cm、萼片は卵状長楕円形、長さ4〜5mmで、背面に伏毛が密生し、花後脱落する。花弁は黄色、萼片よりわずかに長い。子房には蜜毛がある。果実は径1cm、熟して5片に分離し、各片は木質、外側に硬突起及び2個の太い尖針がある。

③ハマビシ

分布は関東及び若狭以西、四国、九州の海岸、世界の熱帯。

2)生薬の性状

④シツリシ

シツリシ(蒺藜子)は5角星状で、5個の分果からなり、径7〜12mm、分果に分離することがある。外面は灰緑色~灰褐色で、各分果の外面に長短2対のとげがある。その1対は長さ3〜7mmで、他は長さ2〜5mmである。隆起線上に多くの小突起がある。果皮は堅く、切面は淡黄色を呈する。分果は1~3個の種子を含む。 シツリシはほとんどにおいがなく、味は初め緩和で、後に苦い。

⑤シツリシ

シツリシの横切片を鏡検するとき、外果皮は表皮からなり、中果皮は柔組織と厚壁細胞層からなり、内果皮は数細胞層の繊維層からなる。中果皮と内果皮との間には、シュウ酸カルシウムの単晶を含む1層の細胞層がある。種子の子葉中には、油滴及びアリューロン粒を含み、でんぷん粒が認められることがある。

⑥シツリシ

薬効/シツリシ(蒺藜子)は、しばしばアトピー性皮膚炎の治療薬として漢方処方「当帰飲子」に配合される。虚弱体質者や高齢者で、血虚により皮膚が枯燥し掻痒のあるものに用いられる。成分にアルカロイドが含まれているので鎮痙、降圧、利尿作用がある。 
成分/シツリシ(蒺藜子)にはケンフェロールやアストラガリンなどのフラボノイドがある。その他アルカロイドには幻覚性のあるハルミンや神経毒作用のあるハルマンが含まれている。

和名の記載は、深江輔仁は『本草和名』(918年頃)の蒺梨子に、「和名波末比之」と記してある。源順は『倭名類聚抄』(934年頃)の蒺藜に、「和名波万比之」と記している。小野蘭山は『本草綱目啓蒙』(1806年)の蒺藜にハマビシを当てている。

[写真提供]

①②③:昭和薬科大学 薬用植物園 中野 美央氏
④⑤⑥:株式会社栃本天海堂 松島 成介氏

昭和薬科大学 薬用植物園 薬用植物資源研究室 研究員
佐竹元吉 さたけもとよし
当協会顧問。沖縄美ら島財団研究顧問。1964年東京薬科大学卒業。国立医薬品食品衛生研究所生薬部部長、お茶の水女子大学生活環境研究センター教授、富山大学和漢医薬学総合研究所・お茶の水女子大学客員教授を歴任。著書『第17改正 日本薬局方生薬等の解説書』(共著・廣川書店)他。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第66号 2023年12月