2023.8.28

サフランとカモミールのハーブティーと薬物療法の併用によるうつ病患者の脂質プロファイルの改善効果

日本メディカルハーブ協会学術委員

河野加奈恵

以前紹介したサフラン (Crocus sativus) とカモミール(Matricaria chamomilla)のブレンドハーブティーのうつ病の薬物療法との併用の効果に関する研究 のフォローアップの研究が発表された。

前回の研究では、サフランとカモミールのブレンドハーブティーを薬物療法と併用することにより、血清トリプトファンレベルの低下、血清BDNFの明らかな増加、CRPレベルの低下、およびスクリーニングアンケート(PHQ-9)におけるうつ症状の改善が確認されたが、今回は特にうつ病患者の脂質の変化に着目した臨床試験が行われた。

うつ病患者では、低密度リポタンパク質(LDL)とアポリポタンパク質B(apo B)の増加と高密度リポタンパク質(HDL)とアポリポタンパク質A(apo A)の減少が報告されおり、うつ病と脂質異常または心血管疾患(CVD)との関連が示唆されいる。

細胞膜を構成する脂質は細胞の透過性の維持だけでなく、神経伝達物質を輸送するシナプスの形成と伝達に重要な役割を果たしている。血清コレステロールの過度な上昇は、細胞内でインターロイキン-6(IL-6)および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)など炎症性サイトカインによる炎症反応を引き起こし、気分、認知機能、およびうつ症状などの臨床症状に現れる神経障害を引き起す可能性がある。

このランダム化比較試験 (RCT)では、糖尿病、高血圧、または脂質異常症を持つ患者を含む軽度から中等度のうつ病患者50人を対象に、サフランとカモミールのブレンドハーブティーと薬物療法の併用による血清脂質濃度の変化を調査した。

試験では25人ずつをランダムに2つのグループに分け、うつ病の薬物療法に加えて、実験群にはサフランとカモミールのブレンドハーブティー(カモミール20mgとサフラン1mg)を1日2回、1か月間摂取させ、試験前後で両グループの血清脂質値を記録し、うつ症状を評価するスクリーニングアンケート(PHQ-9)を実施した。

治療後のハーブティーグループのHDLレベルはハーブティーを摂取していない対照群と比較しても有意に増加(p<0.05)、また、治療後のハーブティーグループのLDLレベルも、対照群と比較して有意に改善した(p<0.01)。PHQ-9スコアは、両グループでベースラインと比較して有意に減少したが、ハーブティーグループは対照群と比較して非常に有意な改善を示した(p<0.01)。

この結果により、薬物療法とサフランとカモミールのブレンドハーブティーの併用が、血中脂質プロファイルを改善することが示された。

サフランやカモミールは、グルタミン酸、セロトニン、およびドーパミンなどのモノアミン神経伝達物質の調節および神経保護による抗うつおよび抗不安作用のほかに、サフランに含まれる成分のクロシン、クロセチン、およびサフラナールなどが、血清脂質濃度(コレステロール、トリグリセリド(TG)、LDL、HDL)の調節、心臓保護、および強力な抗酸化作用を有すること、また、カモミールに含まれるウンベリファロンやフラボノイドが、肝臓でペルオキシソーム増殖活性化受容体γ(PPAR-γ)の活性化によるトリグリセリドと遊離脂肪酸の低下、IL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインの抑制、および抗酸化作用を持つことが動物実験などでわかっている。

コレステロールの生成と代謝が正常化されることにより、神経の細胞膜上の膜マイクロドメインの機能が向上することで膜の流動性が向上し、脳内のモノアミン神経伝達物質が調整され、情緒と気分の調整がもたらされると推察されている。

過去の研究により、うつ病の管理においてカモミールは30〜100mgが有益であり、サフランは30mgがSSRIのフルオキセチンの効果と類似した効果を示すことが示されているが、サフランは強い香りと特異な味を持ち、また、非常に高価であるため、本研究では1mgの用量を使用し、それに対応するカモミールの用量20mgが使用されている。サフランについては必要な投与量よりもはるかに低い容量にもかかわらず有効性が確認されたため、手ごろな価格で非常に受け入れられやすい有用な補完代替療法となるであろう。

本試験は、重度のうつ病患者を含む大規模なサンプルサイズの試験の前段階で行うパイロット試験とされている。今後行われる大規模臨床試験の結果が期待される。

〔文献〕
  1. Ahmad S, Azhar A, Tikmani P, et al. A randomized clinical trial to test efficacy of chamomile and saffron for neuroprotective and anti-inflammatory responses in depressive patients. Heliyon. 2022 Sep 30;8(10):e10774. DOI: 10.1016/j.heliyon.2022.e10774.
  2. Ahmad S, Khan A, Rafique H, Tikmani P, Mesiya H, Amin F. Co-administration of saffron and chamomile: to determine the efficacy as an adjuvant therapy for mild to moderate depression in human subjects. A pilot randomized clinical trial. J Pak Med Assoc. 2023 Jun;73(6):1245-1250. DOI: 10.47391/JPMA.3915