2023.12.18

変形性膝関節症の治療におけるフランキンセンス抽出物の外用の有効性

日本メディカルハーブ協会学術委員

河野加奈恵

変形性関節症(OA)は、生活の質に影響を与える最も一般的な変性性関節障害の一つだ。OAでは、滑液の炎症、靭帯の破壊、関節の可動域制限などが発生する。特に、変形性膝関節症は70歳以上の患者の約40%が罹患し、患者は男性よりも女性が多く、運動と体重の減少が治療の基本となる。薬物療法としては、アセトアミノフェンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)による痛みの緩和や、グルココルチコイドとヒアルロン酸の注射などが含まれるが、一部の患者では膝の痛みと関節のこわばりが残り、また、薬物による副作用も懸念される。

薬物療法以外の補完代替療法の一つとして、抗酸化作用と抗炎症作用を持つセラータ種のフランキンセンス、ボスウェリア・セラータ(Boswellia serrata)が欧米で利用されている。ボスウェリアの樹脂には、炎症を誘導する5-リポキシゲナーゼ(酵素)、NF-ĸB(核内因子κB)、およびTNF-α(腫瘍壊死因子)を阻害する3-O-アセチル-11-ケト-β-ボスウェリン酸(AKBA)などのボスウェリン酸が豊富に含まれている。

いくつかの臨床試験では、ボスウェリアの経口摂取が、OAにおける痛みの軽減、関節軟骨の破壊の改善、患者の機能の改善、および歩行距離や階段の昇降能力の向上などで有効性を示しており、また、いくつかのin vivoおよび臨床研究においては、その効果が標準治療よりも有効であることが示されている。

しかし、腸内環境での低吸収率と初回通過効果の高さ(肝臓を通過する際に肝臓の薬物代謝酵素によって代謝され、この場合は薬効が減弱すること)により、経口摂取ではボスウェリン酸の生物学的利用能が低い。また、慢性の炎症性疾患では、副作用や薬物相互作用が少ない外用による局所治療の方が経口摂取よりも好まれる傾向にある。

これらの背景により、OA症状の緩和におけるボスウェリアの外用の有効性を評価することを目的として、プラセボ対照ランダム化二重盲検比較試験が実施された。

この試験では、変形性膝関節症の患者70人が無作為に二つのグループに分けられ、すべての患者に標準治療としてアセトアミノフェン500 mgを1日3回処方し、その上で、一つのグループには100mLのボスウェリア局所製剤(1gの乾燥ボスウェリア・セラータ抽出物を20 mlのブラックシードオイルに加え、オリーブオイルで残りの容量を調整した局所用油性溶液)を、もう一方のグループには100mLのプラセボ製剤(ブラックシードオイル20 mlとオリーブオイル80 mlを調製した溶液)を提供し、4週間1日3回患部(膝)に塗布するよう指示をした。

介入前と介入後に、ビジュアルアナログスケール(VAS)、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC:変形性股関節症の健康関連QOLにおける疾患特異的尺度)やPGA(患者全般評価)に基づく痛みの程度の評価の結果が記録された。WOMACには、痛みの程度の質問の他に、患者が過去48時間で経験した症状、膝関節の柔軟性、および機能または日常活動に関する質問が含まれた。

試験の結果、全ての項目において、両群ともにベースラインから有意なスコアの減少が認められたが、全ての項目においてボスウェリアの局所製剤を利用したグループのスコアが有意に低く、プラセボよりも効果的であることが示された。この結果により、ボスウェリア抽出物の外用によるOAにおける痛みの改善、関節の柔軟性、および患者の生活の質を改善する有効性が認められた。また、プラセボ群で一人が初日に応用部位でかゆみと赤みを訴えた以外、副作用の報告はなかった。

本研究により、ボスウェリア抽出物の局所製剤が、4週間という短い期間でもOAにおける有効性を示し、全身的な副作用が低く、忍容性が高く、安全な補完療法であると示唆された。標準治療の補完オプションや、軽度のOAの管理において有効活用されることが期待される。

〔文献〕
  • Mohsenzadeh A, Karimifar M, Soltani R, Hajhashemi V. Evaluation of the effectiveness of topical oily solution containing frankincense extract in the treatment of knee osteoarthritis: a randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial. BMC Res Notes. 2023 Mar 4;16(1):28. doi: 10.1186/s13104-023-06291-5