2022.7.16

石垣島の四季

株式会社川平ファーム代表 石垣島サイエンスガーデン代表 ボタニカルアーティスト

橋爪雅彦

連載も4年目に入りました。今回は本土では見ることの少ない八重山独特の四季をお届けします。

亜熱帯に入る石垣島は北緯24度20分に位置します。地球儀をぐるっと見回すと近い緯度にはハワイ・メキシコ・マイアミ・エジプト・ドバイ・雲南・台湾などがあります。どの場所も年間を通して花が見られ、明確な四季を感じることはやや希薄ですが、それでも亜熱帯独特の季節の移り変わりがあります。

八重山の海開きは毎年3月20日前後に行われます。ただ、天気が悪いと水温も低く集まった子供達は唇を青ざめながら海水浴をするシーンがTVで紹介されます。この時期はヒスイカズラの花がピークを迎え、植物とは思えない色を求め島の其処此処で鑑賞会が開かれます。

ヒスイカズラ

中旬になると天気も安定し、最も過ごしやすい季節「うりずん」を迎えます。ハウスの中はマンゴーの花のピークです。マンゴーは腐敗した魚などをハウスに入れ蝿を湧かせ虫媒させますが、一切虫を入れずに育てると5~6㎝程の小さな実をたくさんつけます。この実は大きな完熟果実をギュッと圧縮したような濃厚さがあり非常に美味ですが、島内でのみ店に出回り島に住む者の贅沢です。

マンゴー

4月、島中の岬はテッポウユリの花で埋め尽くされます。月桃の花が沿道を飾るのもこの頃です。渡り鳥のアカショウビンのキョロロ~ンという鳴き声が響き渡り、野原では日本一小さなイワサキクサゼミが鳴き始めます。

テッポウユリ

5月初旬には梅雨入り、この時期から早出しのパイナップルが店頭に並ぶようになり、林の中では非常に濃厚な甘い香りを放つクロツグというヤシの仲間が橙色の花を咲かせます。

アカショウビン

夏 

梅雨明けは例年6月20日頃、梅雨明けから1週間ほどはまだ湿度の高い日が続きますが、ある日朝起きると周囲の景色が一変します。目が数段よくなったかのように山々の緑がはっきりと見え、空は群青に澄み渡り海の色が鮮やかに変わります。子供達を学校へ送っていく車中で毎年交わされた言葉が「今日から夏だね!」。そのくらいはっきりと夏が到来します。

梅雨明け

7月、島は熱帯果実の収穫シーズンに突入します。パイナップルを主にマンゴー・レンブ・ライチ・島バナナ・パパイヤなど多くの完熟果実が味わえるのもこれからです。一般的に果樹は完熟する1週間ほど前から甘さや香りがのるといわれており、完熟した果実が輸入できない日本では熱帯果樹は未熟の物を輸入し追熟させますが、木で完熟させたものとは全く味が異なります。果物が最もおいしいシーズンです。海に囲まれた石垣島では真夏でも最高気温33度を超す日はあまりありません。そのため最近では内地から避暑に来る方が増えています。ただ紫外線は猛烈に強く、海遊びをする島人は皆Tシャツなどを着ていますが、上半身をさらけ出している観光客の方は後でとても痛い目に遭うことになります。

秋 

9月には本格的な台風シーズンに入ります。特にここ数年15日前後に猛烈な台風が島を襲いました。猛烈な台風の場合、波高は12mに達します。しかし石垣島は周囲を珊瑚礁に囲まれているため波は環礁で砕け散り海岸までは届きません。そのかわり砕けた波が沖縄最高峰である於茂登岳(526m)の山頂まで吹き上げます。この塩を含んだ猛烈な風を「火風(ピーカジ)」と呼びます。島全体を火風が覆いその後1週間ほどすると山々が潮に焼かれ枯れ果て一見紅葉のようになります。さらに一ヶ月ほどするとミネラル分を大量に含んだ潮風の影響で島全体が鮮やかな新緑で覆われます。台風の襲来するタイミングによっては一年に数度「紅葉」と「新緑」を繰り返すという珍現象が起きることもあります。

島を取り巻く珊瑚礁

10月、大陸の高気圧が張り出してくることにより吹く季節風を「新北風(ミーニシ)」と呼びます。ミーニシは夏から秋の交代時期に吹き出す北〜北東の風で、気温が一気に下がります。石垣島は長い夏から解放されて本格的な秋の入りとなります。

サトウキビ

11月、収穫前のサトウキビの穂花が夕日に染まり金色に輝く景色が島の風物詩になっています。ガイドブックなどを見ると石垣島では年中熱帯果実を楽しめるような印象を受け、結構多くの観光客がマンゴーなどを求め探し回っていますが、これから春先まで完熟の熱帯果実はパイナップルも含め何もありません。

冬 

星空

日本の最南端に位置する八重山諸島の夜空は、21個ある一等星の全てと全88星座のうち84星座を見ることができます。観測できる星の数は日本で一番ともいわれています。特に12月から6月までは南十字星を見ることができるシーズンです。ハイビスカスや熱帯スイレンなども年間を通して咲き続けますが、内地では冬枯れしてしまう雑草が、石垣では寒さ構わず伸び続けます。私のガーデンでは40年以上無農薬・無化学肥料で維持しているので除草剤も使えず、草刈りが年間作業で最も重要な仕事として続きます。
 
冬、石垣島ではハイビスカスやブーゲンビリアの最盛期になります。晴れれば20度を超しますので正月のお宮参りもTシャツ一枚にサンダル履きなど軽装が多く、和服等の着飾った姿はあまり見かけません。

熱帯スイレン

1月末頃にはヒカンザクラが咲き始め、テッポウユリなども芽吹いてきます。最近はこの時期に石垣島には花粉症を避けて一時移住する内地の方が増え始めています。1月末頃から海岸の岩場が緑一色に染まります。これはアーサー(ヒトエグサ)という海草で、干潮時には多くの島人がアーサー採りに励んでいます。

ヒカンザクラ

この時期大陸から張り出す高気圧の端になる事が多く、曇天が続きます。雨の量はそれ程多くありませんが晴天率は国内でも少ない方から数えられるくらい陽の目を見ることがありません。寒い冬を暖かい南国でと旅行される方も冷たい北風には驚かされます。特に暖房設備のない宿も多く、北国から来た観光客が「部屋が寒い!」という声が多く聞かれます。ただ、ここ数年は最低気温が15度前後のことが多く10度前後まで下がる事が数日あるという暖冬傾向です。

2月初めには一期米の田植えが始まり、5月末には稲刈りになります。市内では近年は緑化運動も盛んになり、年間を通して街路等の花壇は花で飾られるようになってきました。

寒い冬でも色とりどりの花が観光客を楽しませてくれる南の島の四季です。

株式会社川平ファーム代表 石垣島サイエンスガーデン代表 ボタニカルアーティスト
橋爪雅彦 はしづめまさひこ
東京都立園芸高等学校卒業。学研の図鑑・東京大学出版会・誠文堂新光社(ガーデンライフ)・東京書籍生物教科書の図版及び科学論文などのイラスト担当。大阪花博東日本イベント総合プロデュース。国立博物館監修『原色日本のラン』執筆のため、東京より石垣島に移住。石垣市川平において「川平ファーム」としてパッションフルーツの加工を始める。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第51号 2020年3月