2022.5.20

ヨモギの植物学と栽培

当協会理事

木村正典

今回は、ヨモギとその仲間の特徴や栽培方法などを、植物学の視点で解説します。

分類・名称

分類

ヨモギは、広義にはヨモギと名の付くキク科アルテミシア属(ヨモギ属;Artemisia)植物の総称です。一方、狭義のヨモギは地域によって異なりますが、日本では一般的に本州から九州にかけて自生するカズサキヨモギ(Artemisia indica var. maximowiczii (Nakai) H.Hara)を指します。また、北海道で利用されるヨモギは主としてオオヨモギ(A. montana (Nakai) Pamp.)であり、沖縄のフーチバーはニシヨモギ(A. indica var. orientalis (Pamp.) H.Hara)です。

広義のヨモギについては、日本はもとより世界中にたくさんの種類があり、同じ地域にいくつもの種類が混在して自生することもあります。ここでは以下、広義のヨモギについて記します。
 
World Flora Onlineにはアルテミシア属に481種掲載されており、日本には30種以上が自生します。ヨモギと名の付くもの以外で利用されているものにはタラゴンやカワラニンジンなどがあります(表1)。

名称

属名のArtemisia(アルテミシア)はギリシャ神話の貞潔と狩猟、月の女神アルテミス(Artemis)(ローマ神話のDiana)に由来する説や、カリア王国の女王アルテミシア2世に由来する説などがあります。

カズサキヨモギの学名についてはPlants of the World OnlineなどでA. princeps Pamp.としているものを見かけますが、この学名はY’Listなど日本ではシノニム扱いであり、World Flora Onlieでは別植物としていて見解が異なります。

ヨモギは漢字で蓬や艾、蒿、与母岐、与毛岐、与毛木、余母疑などと書き、語源も「よく(ヨ)萌える/燃える(モ)草(ギ)」や「四方(ヨモ)に広がる草(ギ)」など諸説あります。別称もモチグサやエモギ、サシモ、サセモなどたくさんあり、日本での人との関わりの深いことが示唆されます。モグサ(艾)はヨモギの別名と同時にお灸材料を指し「燃え草」を語源とします。

広義のヨモギに該当する英語はwormwood(ワームウッド)やmugwort(マグワート)、sagebrush(セージブラッシュ)、sagewort(セージワート)などが一般的です。ただし、狭義にはそれぞれに特定の種を指し、ワームウッドはA. absinthium L.(コモンワームウッド、ニガヨモギ)、マグワートはA. vulgaris L.(コモンマグワート、オウシュウヨモギ)、セージブラッシュはA. tridentata Nutt.(コモンセージブラッシュ)です。

英名の語源については、wormwoodには駆虫効果のあることから「回虫(worm)」と「木(wood)」を語源とする説のほか、インド・ヨーロッパ語の「苦い(wermo)」を語源とする説、エデンの園から追放された蛇の這った跡から生えたとする「蛇(worm)」に由来する説などがあります。mugwortは古英語で「虫」と「草」を語源とするmucgwyrtに由来する説のほか、飲物の香りづけに用いられたことから「マグ(mug)」に由来する説があります。sagebrushやsagewortは「セージの香りを持つ藪/草」の意味です。

人とのかかわりの歴史  

ヨモギ(広義)は、人との関わりの最も古いハーブの一つです。欧州では古くからコモンワームウッドが用いられ、ヒポクラテス(B.C.460頃-370頃)は黄疸治療に、大プリニウス(23-79)は食欲増進や消化促進、寄生虫対策、靴に入れて疲労防止に、ディオスコリデス(40頃-90頃)は防鼠や防蛾、酔い止めに推奨しています。中世には、魔女の秘薬の材料と信じられていたほか、ストゥルーイングハーブとしても用いられました。カルペパー(1616-1654)は、コモンワームウッドは防鼠、防虫効果を有し、鼠や蜂、サソリ、毒キノコなどの解毒、胆汁改善、利尿、消化・食欲促進、月経促進、扁桃膿瘍や黄疸の治療に用い、コモンマグワートは婦人病や結石、アヘン中毒、座骨神経痛によく、ローマンワームウッドは口臭を消し、ミブヨモギは効果が弱いとしています。コモンワームウッドはアブサンなどのリキュール原料でもあります。

中近東ではA. herba-alba Assoと A. judaica L. が中心で、聖書に登場するヨモギもこの2種と考えられています。

インドではダバナが伝統的に駆虫や解熱、創傷治療、糖尿病治療に用いられてきました。

北米ではアメリカインディアンがシルバーワームウッドやコモンセージブラッシュなどをスマッジングなどで、儀式や浄化、薬用などに利用してきました。

中国では古くから薬用とされ『名医別録』(3~4世紀)にも記されています。特にチョウセンヨモギとコモンマグワートの葉を艾葉ガイヨウ、カワラヨモギなど数種の若い茎葉を茵陳蒿インチンコウ、スイートワームウッドとカワラニンジンの全草を青蒿セイコウと呼び、中薬で利用しています(表1)。また、『荊楚歳時記』(6世紀)にはヨモギ摘みを5月5日に行うと記されているほか、3月3にはハハコグサで草餅を作るとあります。

日本では中国の慣習が導入、ヨモギは邪気を祓うとされ、ショウブとともに5月5日の端午の節供に欠かせないハーブとして、古くからしょうぶ湯に入れたり、軒にさしたり、薬玉にしたりします。一方、沖縄などでは3月3日の上巳の節供によもぎ餅を食べます。草餅は平安時代には3月3日にハハコグサで作るのが主流でしたが、江戸時代初期にはヨモギが用いられるようになり、やがて端午の節句でも草餅を食べるなど、混同がみられます。ヨモギ摘みの際にはトリカブトやニリンソウ、クサノオウなどの有毒植物と間違えないように注意が必要です。薬用としては、葉を揉んで傷口に塗布したり、アイヌの人たちは風邪や虫歯の治療、止血などに用いたりしてきました。

韓国や中国では、ヨモギを中心に様々な薬草を蒸して(燃やす場合もある)、その蒸気(煙)を下半身に浴びて産後のケアや温活などを行う「よもぎ蒸し」の民間療法があります。お灸のもぐさの原料には、中国では艾葉ガイヨウ(チョウセンヨモギやコモンマグワートの葉)を、日本ではオオヨモギやカズサキヨモギの葉を用い、背軸面の毛を集めて燃やし、つぼと煙の両方から病を癒します。

形態・成分  

アルテミシア属は冬に地上部を枯らす宿根草かロゼットで越冬する多年草が主体で、一・二年草や木本になるものもあり、いずれも初夏から抽苔して花茎が立ち上がります。

葉は互生し、羽状に深裂すものが多く、糸状に細葉となるものや、背軸面(裏面)が綿毛で白くなるもの、全面に絹毛があって灰緑色や銀色を呈するものなどがあります。

花は、キク科の特徴である、筒状花の小花の集まった複合花で、この複合花を頭花とも言い、頭花が集まって総状花序を形成しています。ほかのキク科植物は虫媒花で、虫を呼ぶために舌状花が発達して頭花を大きく目立たせていますが、アルテミシア属は風媒花が主体で虫へのアピールはなく地味です。カズサキヨモギでは一株当たり1万を超える頭花をつけることがあり、一頭花あたり15程度の小花をつけますので、20万もの花がついている計算です。しかし稔実率は20%程度とされ、発芽可能種子数は一株当たりで最大4万粒、1頭花当たりでは4粒という計算です。

果実は1mm程度の非常に小さい瘦果で、一般には種子と呼ばれて扱われます。

アルテミシア属には苦味や香りを持つものが多く、キク科特有の苦味成分はセージワートから分離されたアルテミシニンに代表されるセスキテルペンラクトン類です。精油は、腺毛と油管の両方の分泌組織に存在します。このうち腺毛は特に幼葉などの大切な部位に密生しており、外敵から身を守る手段と考えられます。精油成分の研究結果をみると、各植物にケモタイプがみられます(表2)。

このほか、精油成分は、防御の必要性の低い冬期や夜間、下葉ほど香りが弱いなど、環境や部位によって大きく変化するのが一般的で、アルテミシア属も例外ではありません。表に見られる、産地による精油成分の違いが、ケモタイプによるものなのか、収穫時期や生育環境、部位によるものなのかは明らかではありません。

性状と栽培   

ヨモギ(広義)は北半球に広範囲に分布し、寒さや病害虫に強く、強靭で育てやすいものが多いです。単日植物で夏から秋にかけて開花するのも特徴です。繁殖は種子や株分け、挿し木で行います。

精油含量を増やすには、日によく当てて十分に光合成させます。ただし食用にする場合は光を遮って柔らかくし、新芽付近を使うなどしないと硬くて食べられません。一般には初夏に抽苔してきた軟らかい先端付近を摘んで利用します。沖縄のニシヨモギは気候もありますが葉のやわらかい特徴があり、フーチバージューシーやよもぎ餅などに用います。

毛で葉がシルバーや緑白色になるものはガーデン材料として人気で、英国王立園芸協会(RHS)がガーデン材料として優れた植物に与えるガーデンメリット賞(AGM)を受賞しているものもあり、観賞する楽しみも得られます。

表1.主なアルテミシア属植物。学名・学名のラテン語読み・[種小名の意味]よく用いられるシノニム・和名・英名等・自生地・分布・特徴の順に記載。

学名はWorld Flora Onlieに従った。掲載は地域ごとのアルファベット順。

日本のヨモギ

Artemisia arctica subsp. sachalinensis (F.Schmidt) Hultén アルテミシア・アルクティカ・サカリネンシス[北極の・樺太の] サマニヨモギ(様似蓬)。北海道、岩手。高山帯の岩場に自生。多年草。根茎は太く長い。草丈20~50cm。茎葉にははじめ白色の長軟毛があるがやがて脱落して無毛に。葉身長2~5cm。葉幅3~4cm。葉柄3~7cm。2回羽状深裂し裂片は線形。頭状花は複総状花序に10個程度で下向きに咲き、黄色が目立つ。7~9月に開花。

Artemisia borealis subsp. richardsoniana (Besser) Korobkov アルテミシア・ボレアリス・リカルドゥソニアーナ[北方の・リチャードソンへの献名]synonym; A. arctica subsp. sachalinensis f. villosa (Koidz.) Kitam.(World Flora Onlieでは認められていない学名)  シロサマニヨモギ(白様似蓬)、Richardson’s wormwood, Richardson’s sagewort, [仏]armoise de Richardson。北海道。高山の岩礫地に自生。多年草。草丈20~50cm。全草に白色の軟毛が密生。サマニヨモギと同じようなところに自生。サマニヨモギは軟毛がやがて脱落するのに対しシロサマニヨモギは脱落しない点で異なる。8~9月に開花。

Artemisia capillaris Thunb. アルテミシア・カピッラリス[細毛状の] カワラヨモギ(河原蓬、加波良与毛岐)、ハマヨモギ(浜蓬)、カラエヨモギ(唐艾)、ヒラヨモギ(平艾)、トノサマヨモギ(殿様)、フナバヨモギ(船場萩)、アオヨモギ(青蓬)、ネズミヨモギ(鼠蓬)、capillary wormwood, yin-chen wormwood、茵陳蒿(インチンコウ)。 本州~沖縄/東アジア。河原や海岸などの砂地に自生。多年草で基部が木質化。草丈1m。葉は2回羽状複葉で糸状に前裂し、両面に細かい白毛があって白っぽく灰緑色を呈するが、無毛のこともある。葉長1.5~9cm。葉幅1~7cm。葉柄2~3cm。8~10月に開花。観賞用や薬用のほか、草もちで食用に。中薬では、A. scoparia Waldst. & Kitam.(黄蒿)やA. frigida Willd.(小白蒿)、A. stricta Edgew.(勁直蒿)と同様、若い茎葉を 茵陳蒿(インチンコウ)といい、清熱し、湿を利す効能があり、湿熱黄疸、小便不利、風痒瘡疥に用いる。

Artemisia codonocephala Diels アルテミシア・コドノケファーラ[鐘の頭状花序の]ケショウヨモギ(化粧蓬)。九州/朝鮮、中国、ヒマラヤ。多年草。草丈1~2m。花茎はクモ毛が密生して白っぽく見える葉柄2.5~3cm。花茎葉は中部で葉長8~11cm、葉幅8cm。2回羽状深裂し裂片は線状披針形で幅5~7mm。向軸面にはクモ毛と線毛があり、背軸面には灰白色の綿毛が密生。円錐花序で長さ3~3.5mm、幅3mmの鐘球形。総苞にクモ毛が密生、総苞片は3~4列。痩果は無毛で長さ1mmの長楕円形。

Artemisia congesta Kitam. アルテミシア・コンゲスタ[集積の] オニオトコヨモギ(鬼男蓬)。北海道、青森。絶滅危惧種。海岸の岩場に自生。多年草。ハマオトコヨモギよりも大型で強靭。地下茎が長く伸長。花茎は40~65cmで上部で分枝。花茎葉は下部ほど葉柄が長い。葉長5~7cmで2回羽状全裂。両面に灰白色の綿毛をつけるが自然に脱落。

Artemisia fukudo Makino アルテミシア・フクド[フクドと呼ばれる] フクド、フクドヨモギ、ハマヨモギ(浜蓬)、forked wormwood。本州~九州/朝鮮。河口付近の海岸泥地に自生。準絶滅危惧種。二年草。ロゼット葉は葉長14~21cm、扇形、2~3回掌状深裂。裂片は線形で幅2mm。茎葉は白緑色。花茎は直立。ハマヨモギとも呼ばれるが別種。ハマヨモギに似るが大きく、香りもメロン臭で強い。

Artemisia furcata M.Bieb. アルテミシア・フルカータ[又状の、フォーク状の]曖昧学名としてA. trifurcata var. pedunculosa (Koidz.) Kitam.がある。 エゾハハコヨモギ(蝦夷母子蓬)、ナガエハハコヨモギ(長柄母子蓬)。北海道。根茎は太い。抽苔茎は高さ10~25cmで、灰白色の絹毛があり、上方は分枝。ロゼット葉は長さ8cm。7~9月に開花。

Artemisia gilvescens Miq. アルテミシア・ギウェスケンス[やや赤みのさした黄色の] ワタヨモギ(綿蓬)、オオワタヨモギ(大綿蓬)。四国、山口、沖縄/中国。海岸付近の草地に自生。絶滅危惧種。草丈30cmで、上方が短く分枝しする。花茎葉は無柄で長さ6~7cmで3中裂し向軸面は緑色で腺毛があり、背軸面には綿毛が密に生え灰白色。

Artemisia glomerata Ledeb. アルテミシア・グロメラータ[集まった] ハハコヨモギ(母子蓬)、cudweed sagewort, Pacific alpine wormwood。本州中央~南アルプス/アラスカ~シベリア。高山の岩場に自生。絶滅危惧種。草丈7~15cm。全草に白く細い絹毛が密にある。上方が短く分枝。ロゼット葉は葉長1~5cm。花茎葉は中部で1~2cm、3~4中裂し、最上葉はしばしば長楕円形で全緑。

Artemisia gmelinii Weber ex Stechm. アルテミシア・グメリニイ[独の分類学者K.C.グメリンへの献名]synonym; A. iwayomogi Kitam. イワヨモギ(岩蓬)、Gmelin’s wormwood, Russian wormwood。北海道固有種、本州~九州に帰化。絶滅危惧種。根茎は木質。花茎は高さ50~200cmで硬く、基部は木質化し、上方で分枝。花茎葉は有柄で緑色、細毛を有する。9~10月に開花。

Artemisia indica var. maximowiczii (Nakai) H.Hara アルテミシア・インディカ・マキシモウィクジイ[インドの・露の植物学者Carl Johann Maximowiczへの献名] synonym; A. princeps Pamp.(Y’listなどによる。World Flora Onlineでは別植物とされる)  ヨモギ(蓬)、カズサキヨモギ(数咲き蓬)、モチグサ(餅草)、ヨムギ、エモギ、サシモ/サシモグサ(指焼草/指艾)、サセモ/サセモグサ(差艾)、ツクロイグサ(繕草)、カイヨウ(艾葉)、ホウコウ(蓬蕎)、ハナクサ(花草)、アオクサ(青菜)、タレハグサ、ヤキクサ、ヤイグサ、モグサ(艾)、Japanese mugwort, yomogi, ssuk, Korean wormwood, Korean mugwort。本州~九州、小笠原/朝鮮半島。北海道と沖縄以外では狭義のヨモギ。韓国のヨモギも本種が主。多年草。草丈50~100cm。葉長6~12cm。葉幅4~8cm。9~10月に開花。

Artemisia indica var. momiyamae (Kitam.) H.Hara アルテミシア・インディカ・モミヤマエ[インドの・籾山泰一氏への献名] ユキヨモギ(雪蓬)。三浦半島、伊豆諸島。学名の種小名は籾山泰一氏が鎌倉市稲村ヶ崎で採集したことによる献名。根茎は横に這う。草丈40~100cmで著しく分枝。花茎葉は葉長7~12cm、葉幅6cm。ヨモギに似た葉で茎葉に雪白色の密毛があって白っぽい。10~11月に開花。

Artemisia indica var. orientalis (Pamp.) H.Hara アルテミシア・インディカ・オリエンタリス[インドの・東方の] ニシヨモギ(西蓬)、フーチバー。関東以西の日本/台湾、中国、東南アジア。多年草。草丈20~100cm。葉長6~12cm。葉幅4~8cm。9~11月に開花。沖縄ではフーチバーと呼ぶ。沖縄のヨモギは本種とハママーチ。カズザキヨモギよりも軟らかく、花が大きいが、見分けるのは難しい。沖縄ではフーチバージューシーやヨモギ餅などの食用のほか、薬用、魔除け・厄除けなどに用いる。

Artemisia japonica Thunb.  アルテミシア・ヤポニカ[日本の] オトコヨモギ(男蓬)、Japanese wormwood、牡蒿(ボコウ)。日本全土/東アジア、東南アジア。多年草。草丈1.4m。葉は羽状3裂し、上位葉は線形で全縁、両面が無毛で緑色。葉長8cm。葉幅2cm。8~11月に開花。精油の主成分はコパエン、ファルネシルアセタート、カリオフィレンなど。中薬では、全草を牡蒿(ボコウ)といい、表を解き、清熱し、殺虫するため、風邪や疳、潮熱などによる発熱、咳嗽、マラリア、口内炎、疥癬、湿疹に用いる。

Artemisia keiskeana Miq. アルテミシア・ケイスケアーナ[植物学者伊藤圭介への献名] イヌヨモギ(犬蓬)、菴䕡(アンリョ)。北海道~九州/朝鮮、中国。多年草。草丈30~80cm。葉長3~10cm。葉幅2~4cm。葉は広卵形で、葉縁に欠刻状の不揃いの粗い鋸歯がある。8~10月に開花。中薬では、全草を菴䕡(アンリョ)といい、瘀を散らし、湿を去ることから、無月経、打撲傷、リウマチの痺れや痛みに用いる。

Artemisia kitadakensis Hara & Kitam. アルテミシア・キタダケンシス[北岳の] キタダケヨモギ(北岳蓬)。北岳、仙丈ケ岳、明石山系固有種。絶滅危惧種。根茎は密に叢生し、木質。花茎も密に叢生し、草丈20~30cm。花茎の葉長は下部で4~6mm、中部22~26mm。葉はアサギリソウのように細く白毛が密生し、盆栽などで観賞される。8月に黄色い花が咲く。

Artemisia koidzumii. Nakai アルテミシア・コイドゥズミイ[小泉への献名] ヒロハウラジロヨモギ(広葉裏白蓬)、オオワタヨモギ(大綿蓬)、カラフトヨモギ(樺太蓬)。北海道。海岸付近に自生。マシュウヨモギやチシマヨモギと近縁。根茎は横にはう。花茎は基本的に太く、高さ35~100cm、灰白色の長毛を有する。花茎葉は長さ4.5~18cmで背軸面に長毛が密生。

Artemisia lancea Vaniot アルテミシア・ランケア[皮針形の] ヒメヨモギ(姫蓬)。本州~沖縄原産、北海道にも帰化。草丈1~1.2m。葉長3~7cm。葉幅3~7cm。8~10月に開花。

Artemisia littoricola Kitam. アルテミシア・リトリコーラ[海岸に生える] synonym; A. japonica subsp. littoricola (Kitam.) Kitam.  ハマオトコヨモギ(浜男蓬)。北海道~本州北部。海岸の岩地に分布。多年草。オトコヨモギの亜種とするシノニムがある。草丈30~100cm。ロゼット葉は倒卵くさび形で先端が浅裂、両面が綿毛で灰白色。花茎葉はくさび状長楕円形で羽状深裂。頭花は長さ2mmの卵~長楕円球形で、総状円錐花序に多数つける。強靭。

Artemisia monophylla Kitam.  アルテミシア・モノフィッラ[単葉の]ヒトツバヨモギ(一葉蓬)、ヤナギヨモギ(柳蓬)。本州日本海側。低山帯上部から亜高山帯に自生。草丈60~100cm。葉長6~14cm。葉幅2~4cm。7~10月に開花。上部は白色、直立し分枝しない。根茎が横にはう。 和名は単葉から。

Artemisia montana (Nakai) Pamp. アルテミシア・モンタナ[山地生の] オオヨモギ(大蓬)、ヤマヨモギ(山蓬)、エゾヨモギ(蝦夷蓬)、蔞蒿(ロウコウ)。近畿以北の日本/樺太、千島。多年草。草丈2m。葉長17cm。葉幅4~12cm。葉柄3cm。葉は羽状分裂し、全縁、背軸面に白い毛が蜜にある。8~9月に開花。カズザキヨモギよりも大型。葉柄に托葉がない点で区別される。北海道のヨモギは本種。アイヌ語でヨモギを「ノヤ」といい、語源は、魚や肉の臭みをとるために葉をよく揉んで肉を拭いたことから、「揉み揉み」を意味する「ノヤノヤ」から来ているとされる。アイヌは食用のほか、風邪や止血、虫歯治療などの薬用、魔除け、焚きつけ、燃やした煙による虫よけ、茎ですだれ作りなどに利用している。モグサの原料。中薬では、全草を蔞蒿(ロウコウ)といい、胃を開きフグの毒を消すとされる。

Artemisia morrisonensis Hayata アルテミシア・モッリソネンシス[台湾モリソン山(玉山;旧新高山)の] ニイタカヨモギ(新高蓬)、リュウキュウヨモギ(琉球蓬)、ハママーチ、細葉山艾。南西諸島/台湾。多年草で基部が木質化。草丈40~60cm。若い茎葉は柔毛に覆われている。葉は2~3回羽状分裂し、線形。6~10月に開花。沖縄の方言でハママーチといい、フーチバーとともに沖縄を代表するヨモギ。ヒージャー(ヤギ)料理の薬味やティーで利用される。黄疸や肝炎、咳に薬用とする。学名をA. campestris L.と混同されているケースが極めて多い。

Artemisia pedunculosa Miq. アルテミシア・ペドゥンクローサ[花柄のある] ミヤマオトコヨモギ(深山男蓬)。日本本州中部。草丈10~40cm。7~9月に開花。高山帯の砂磯地や岩壁に生える。地下茎がよく分枝する。抽台すると花茎が何本も立ち上がる。

Artemisia rubripes Nakai アルテミシア・ルブリぺス[赤い株元] ヤブヨモギ(薮蓬)。九州/朝鮮、中国、ロシア。山地の草原に自生。絶滅危惧種。多年草。オオヨモギと葉の形態が類似している。草丈1~2mでやや無毛、著しく分枝。花茎葉は葉長10~20cm、葉幅9~12cm、向軸面は緑色。背軸面にくも毛がある。ヨモギとは明らかに異なる香りがする。8月下旬に開花。

Artemisia schmidtiana Maxim. アルテミシア・スクミドゥティアーナ[露の植物学者へFriedrich Karl Schmidtの献名] アサギリソウ(朝霧草)、ハクサンヨモギ(白山蓬)、satiny wormwood, schmidt wormwood, ‘Silver Mound’ angel’s hair。北海道、本州中部以北の高山/千島、サハリン。岩場に生える。常緑多年草で基部が木質化する。草丈15~40cm。葉は2回羽状複葉で、糸状に切れ込む。花床に蜜に毛のあるのが特徴。夏に開花。茎葉に銀白色の細かい毛があり、シルバーに見え、可愛らしく美しいので、盆栽をはじめとして観賞に用いる。品種’Nana’はRHSのAGMを受賞。

Artemisia scoparia Waldst. & Kitam. アルテミシア・スコパリア[箒状の] ハマヨモギ(浜蓬)、ハマベヨモギ(浜辺蓬)、virgate wormwood, capillary wormwood, redstem wormwood、茵陳(インチン)、黄蒿(オウコウ)。日本/朝鮮、中国、タイ、ロシア、欧州。多年草または一・二年草。草丈40~130cm。花茎の下部から分枝。葉はリュウキュウヨモギの様な糸状。強い香りがある。利尿薬や解毒薬に用いられる。

Artemisia sinanensis Y.Yabe アルテミシア・シナネンシス[信濃の] タカネヨモギ(高嶺蓬)。中部以北の本州固有種。多年草。草丈20~50cm。分枝は少ない。葉身長8cm。葉柄長3~7cm。3回羽状全裂し、裂片はカモミールの様に細い。7~8月に開花。

Artemisia stelleriana Besser アルテミシア・ステッレリアーナ[分類学者ステラ―への献名] シロヨモギ(白蓬)、hoary mugwort, Dusty Miller, beach wormwood, oldwoman。東アジア原産。茨城ー新潟ライン以北/朝鮮、中国、ロシア、北米。海岸に自生。多年草。全草が白い綿毛で覆われ、白っぽくふかふかしている。地下茎を伸ばす。草丈20~60cm。ロゼット葉と花茎の下部の葉は厚みがあって羽状中裂し卵形~長楕円形で葉長3~9cm。7~10月に開花。

Artemisia stolonifera (Maxim.) Kom.  アルテミシア・ストロニフェラ[匍枝持った] ヒロハヤマヨモギ(広葉山蓬)、ヒロハノヒトツバヨモギ(広葉の一葉蓬)、アソヨモギ。本州、九州。準絶滅危惧種。根茎は長く横にはう。草丈50~100cmで茎は細く、上方が短く分枝。花茎葉は多数で長さ7~14cm、幅4.5~8cm。8~10月に開花。

Artemisia tanacetifolia L. アルテミシア・タナケティフォリア[タナケトゥム属植物の葉のような]synonym; A. laciniata Willd. アルモラキア・ラキニアータ[補足分裂した](World Flora Onlieではシノニムではなく別種となっている) シコタンヨモギ(色丹蓬)、キクヨモギ(菊蓬)、Siberian wormwood, Schlitzblatt-Wermut, Schlitzblättriger Beifuß, Schlitzblatt-Beifuß。北海道/朝鮮、北欧、中央アジア、シベリア、北米。絶滅危惧種。多年草。根茎は太く木質。葉はワームウッドに似る。ロゼット葉は2回羽状全裂し長さ20cm。花茎は上方で分枝、花茎葉は上部に向かうほど小さく葉柄も短い。草丈30~60cm。花はクリーム色で総状花序。香りはないかあっても弱い。

Artemisia tilesii Ledeb. アルテミシア・ティレシイ[独の探検家W.G.Tilesiusへの献名] チシマヨモギ(千島蓬)、エゾオオヨモギ(蝦夷大蓬)、Tilesius’ wormwood, Aleutian mugwort, stinkweed。北海道/ロシア、北米。マシュウヨモギやヒロハウラジロヨモギと近縁。根茎は長く伸びる。草丈30~100cmで上方に細毛がある。中葉には長さ1.3~3cmの葉柄がある。葉裏に灰白色の綿毛がある。

Artemisia tsuneoi Tatew. & Kitam. アルテミシア・トゥスネオイ[林恒夫への献名] マシュウヨモギ(摩周蓬)。北海道摩周湖付近。高山に自生。チシマヨモギやヒロハウラジロヨモギと近縁。葉長6.5~7cm。羽状に深裂し、裂片は二対でほぼ全緑。

台湾、中国、東南アジア、南アジアのヨモギ

Artemisia annua L. アルテミシア・アンヌア[1年生の] スイートワームウッド、クソニンジン(糞人参)、sweet wormwood、annual mugwort, annual wormwood, sweet annie, sweet sagewort, 黄花蒿(オウカコウ)。中国~中央アジア~東欧州、日本にも帰化。強い香りとニンジンに似た葉からとても残念な和名に。一年草で基部は木質化。草丈1.5m。葉は3回羽状に細裂し、ほぼ無毛。全草から抗マラリア原虫物質のアルテミニシンやアルテアンヌインBなどが抽出される。精油の主成分はアルテミシアケトン。中国名を黄花蒿(オウカコウ)といい、中薬では、全草を黄花蒿(オウカコウ)、あるいはA. carvifolia(青蒿)とともに青蒿(セイコウ)といい、果実を黄花蒿子(オウカコウシ)といい、清熱しを解き、風を駆いたてかゆみを止めることから、暑気あたり、潮熱、小児ひきつけ、悪瘡、疥癬、マラリアなどに用いる。屠呦呦がこの植物からマラリアに効果のあるアルテミシニンを発見し、2015年に中国初のノーベル賞を受賞したことで話題に。

Artemisia anomala S.Moore アルテミシア・アノマラ[変則の] リトウザンヨモギ、奇蒿(キコウ)。台湾、中国南東部、日本にも帰化。多年草。草丈1m。茎に縦に稜線があり、細毛で覆われる。葉は長楕円形~披針形で欠刻はなく、鋸歯がある。向軸面は緑色で、背軸面は蜘蛛の糸のような毛で灰緑色、明瞭な中央脈がる。中薬では、全草を劉寄奴 (リュウキド)といい、血を破り、経を通し、瘡を斂め、腫れを消すことから、打撲傷、金瘡出欠、胸腹脹痛、閉経による腹中の硬結、産後の血瘀などに用いる。

Artemisia argyi H.Lév. & Vaniot アルテミシア・アルギイ[銀の]チョウセンヨモギ(朝鮮蓬)、silvery wormwood, Chinese mugwort, Argy wormwood, Argy sagebrush、艾(ガイ)。中国全土。多年草で基部は木質化する。草丈1.2m。葉は羽状に深裂し、楕円状披針形を呈し、葉縁に粗い鋸歯があるが、全縁で分裂しないものもある。向軸面は暗緑色で、まばらに白い毛がある。背軸面は白い毛に蜜に覆われ、灰緑色。中薬ではA. vulgaris L.(野艾)とともに葉を艾葉(ガイヨウ)というほか、果実を艾実(ガイジツ)といい、気血を理え、寒湿を逐いやり、経を温め、止血し、胎児を安らげることから、腹痛、下痢、鼻血、下血、月経不順、崩漏、帯下、胎動不安、大きな腫れ、疥癬に用いる。精油の主成分はシネオールで30%ほど含む。

Artemisia aurata Kom.アルテミシア・アウラータ[黄金色の]  キンヨモギ(金蓬)、黄金蒿黄。中国、朝鮮、シベリア東部。日本は不明。岩場に自生。一年草。草丈20~80cm。

Artemisia brachyloba Franch. アルテミシア・ブラキローバ[短い葉の] マリヨモギ、岩蒿(ガンコウ)、山蒿(サンコウ)。中国北東部。多年草で基部が木質化する。草丈40cm。葉は2回羽状に細裂し、糸状、背軸面に白い毛が密生。中薬では全草を岩蒿 ガンコウといい、清熱し、湿を燥かし、殺虫して膿を排することから、偏頭痛、咽喉腫痛、リウマチに用いる。

Artemisia carvifolia Buch.-Ham. ex Roxb. アルテミシア・カルウィフォリア[キャラウェイに似た葉の] synonym; A apiacea Hance.(Y’listなどによる。ただしWorld Flora Onlineでは別植物とされる)  カワラニンジン(河原人参)、ノニンジン(野人参)、青蒿(セイコウ)、香蒿(コウコウ)。中国東部、日本にも帰化。一・二年草。草丈1.5m。葉は2回羽状に全裂し、線形、無毛で青緑色。苦味物質、精油、スコポレチンなどを含み、精油にはβ-ブールボネン、ファルネシル-アセタート、カリオフィレンなどを含む。中薬では、A. annua .L(黄花蒿)とともに全草を青蒿(セイコウ)、根を青蒿根(セイコウコン)、果実を青蒿子(セイコウシ)といい、清熱し、暑を解き、蒸を除くことから、温病暑熱、骨蒸労熱、黄疸、疥瘡、瘙痒、マラリアなどに用いる。

Artemisia cina Berg ex Poljakov アルテミシア・キナ[中国の] セメンシナ、santonica (zahr el shieh el -khorasani), Levant wormseed, wormseed, Zitwerbeifuß, Zitwerblüte, Zitwersamen, Wurmsaat、山道年蒿(サントニンコウ)。中国、カザフスタン、キルギスタン、ロシア。木本。草丈70cm。葉は2回羽状深裂し、線形で小さく、有毛で灰緑色。花にはα-サントニンを1~4%のほか、アルテミシンも含む。精油も利用され、主成分は1,8-シネオールなどでケモタイプも多い。ミブヨモギとともにサントニン原料として重要。中薬では花序と葉を山道年蒿(サントニンコウ)といい、駆虫に用いる。

Artemisia desertorum Spreng. アルテミシア・デセルトルム[沙漠の] サバクオトコヨモギ(沙漠男蓬)、沙蒿。中国、ヒマラヤ、モンゴル、シベリア東部、朝鮮。日本は不明。草原や岩場、乾燥地に自生。多年草。草丈10~90cm。

Artemisia finita Kitag. アルテミシア・フィニータ[有限の、終わりの] セメンシナモドキ、東北回蒿(トウホクカイコウ)。中国北部。多年草。草丈50cm。全身が綿毛に覆われる。葉は2~3回羽状深裂し、線状に。中薬では花蕾を東北回蒿(トウホクカイコウ)といい、駆虫に用いる。

Artemisia halodendron Turcz. ex Besser アルテミシア・ハロデンドゥロン[塩所に生える樹] サバクヨモギ(沙漠蒿)、差把嘎蒿(サハカッコウ)。中国北部。木本。草丈80cm。砂地に匍匐して広がる。葉は羽状に細裂して針状に。中薬では幼枝葉を沙漠嘎(サバクカツ)といい、去痰し、喘を平らかにし、表を解く効能から、慢性気管支炎や風邪、リウマチ性関節炎に用いる。

Artemisia kawakamii Hayata アルテミシア・カワカミイ[植物学者川上瀧彌への献名] カワカミヨモギ(川上蓬)、山艾。台湾。高山の岩場に自生。多年草。草丈10~30cmで小型。葉は1~2回羽状に深裂し、裂片は線形で、密に白い綿毛に覆われアサギリソウに似る。

Artemisia lactiflora Wall. ex DC. アルテミシア・ラクティフローラ[乳白色の花の] ヨモギナ(蓬菜)、ホワイトマグワート、white mugwort、四季菜(シキサイ)。中国西部。多年草。草丈1.5m。茎葉は無毛。葉は羽状分裂し、卵状楕円形。中薬では全草を鴨脚艾(オウキャクガイ)といい、風を去り、止咳し、血を活かし、瘀を和ませる効果から、頭痛、咳嗽、下痢、血便、血尿、婦人系、打撲傷、やけどなどに用いる。RHSのAGM受賞。

Artemisia myriantha Wall. ex Besser アルテミシア・ミリアンタ[多数花の] 黒蒿(コクコウ)、多花蒿。中国雲南。多年草。草丈1m。葉は2回羽状に深裂し、背軸面に柔毛、向軸面にもわずかに柔毛。中薬では全草を黒蒿(コクコウ)といい、清熱し解毒する、暑気を消す、止血する効能から、暑気あたり、吐血、鼻血、皮膚瘙痒などに用いる。

Artemisia niitakayamensis Hayata アルテミシア・ニイタカヤメンシス[台湾新高山の] ゴトウヨモギ(後藤蓬)、キダチイトヨモギ(木立糸蓬)、玉山艾。台湾。多年草。草丈10~20cm。

Artemisia oligocarpa Hayata アルテミシア・オリゴカルパ[少数の果実の] ニトベヨモギ(新渡戸蓬)、高山艾。台湾。高地に自生。多年草もしくは亜低木。草丈15~35cm。

Artemisia ordosica Krasch. アルテミシア・オルドシカ[中国内モンゴルオルドスの] 黒沙蒿(コクシャコウ)。中国北部。木本。草丈1m。葉は羽状全裂し線状か糸状で肉厚、無毛。中薬では茎葉と花蕾を黒沙蒿(コクシャコウ)、根を黒沙蒿根(コクシャコウコン)、果実(種子)を黒沙蒿子(コクシャコウシ)と呼び、風湿を去り、膿を出して毒を抜き、関節リウマチ、風邪、咽痛、瘡癤癰腫(皮膚の化膿)に用いる。

Artemisia pallens Wall. ex DC. アルテミシア・パッレンス[淡白色の]  ダバナ、davana, dhabanam, dawn, damanaka。南インド。多年草。花茎基部は木化。草丈は60cmが標準的。草丈の低い早生系と草丈の高い晩成系がある。白い絹毛で覆われ白っぽく見える。総状花序で黄色い小さな花をたくさん着ける。抗菌性、免疫調整機能などがあるとされ、インドの民間医療で糖尿病や創傷の治療、解熱、駆虫、覚醒などに利用。ダバナオイルと呼ばれる繊細な香りの精油の原料植物で、菓子や酒の香りづけにも用いられる。精油成分はダバノン、リナロールなど。

Artemisia sieversiana Ehrh. アルテミシア・シエウェルシアーナ[植物学者Johann August Carl Sieversへの献名] ハイイロヨモギ(灰色蓬)、大籽蒿(ダイシコウ)。中国北部、日本にも帰化。二年草。草丈1.5m。葉は2~3回羽状深裂で線形に。茎と葉の背軸面が白い毛で覆われている。中薬では全草を白蒿(ハクコウ)といい、風寒湿痺、黄疸、熱痢などに用いる。日本では要注意外来種。

Artemisia tsugitakaensis (Kitam.) Ling & Y.R.Ling アルテミシア・トゥスギタカエンシス[台湾次高山(雪山)の] ツギタカヨモギ(次高蓬)。台湾。多年草。草丈10~20cm。

Artemisia verlotiorum Lamotte アルテミシア・ウェルロティオルム[仏の植物学者Jean Baptiste Verlotと弟のP.B.L.Verlotへの献名] チャイニーズマグワート、Chinese mugwort。中国、台湾、ヒマラヤ原産。欧州、北アフリカ、南米、オセアニアに導入。多年草。草丈1m。茎は毛が密生。葉はカズサキヨモギによく似て、2~3回羽状に深裂し、向軸面は緑色で背軸面は綿毛で白い。食用、薬用に。

Artemisia vestita Wall. ex Besser アルテミシア・ウェスティータ[被包ある, 軟毛で被われた] ロシアンワームウッド、Russian wormwood、毛蓮蒿(モウレンコウ)。中国北部~シベリア。中薬では全草を結血蒿(ケツケッコウ)と呼び、健胃・駆風効果があり、痒みを止め、虚熱を清める。

Artemisia viridisquama Kitam. アルテミシア・ウィリディスクアマ[緑がかった] ペキンヨモギ(北京蓬)。中国中部。多年草。草丈80~200cm。葉は1~2回羽状に分裂。小葉は線形~披針形で長さ4~8cm、幅5m。8~9月に開花。

Artemisia viridissima (Kom.) Pamp. アルテミシア・ウィリディッシマ[濃緑色の] コウライヒトツバヨモギ(高麗一葉蓬)。中国東北部、朝鮮。多年草。草丈80~140cm。分枝はほとんどせず無毛。葉は披針形で先端が尖り欠刻はなく密な細かい鋸歯があり、向軸面は無毛で緑色、背軸面は淡緑色。7~10月に開花。

Artemisia vulgaris L. アルテミシア・ウルガリス[普通の] コモンマグワート、マグワート、オウシュウヨモギ(欧州蓬)、ハタヨモギ(畑蓬)、common mugwort, mugwort, Indian wormwood, common wormwood, riverside wormwood, wild wormwood, chrysanthemum weed, old Uncle Henry, felon herb, sailor’s tobacco, naughty man, old man, St. John’s plant, [独]Gemeine Beifuß, Gewürzbeifuß, Gewöhnlicher Beifuß, [仏]armoise commune, armoise citronnelle、[中]野艾(ヤガイ)、火艾(カガイ)、五月艾(ゴガツガイ)。シベリア~南アジア~欧州のユーラシア大陸、北アフリカ。北米~南米北部、南アに導入。多年草。草丈1~2.5m。葉はヨモギと極めてよく似て1~2回羽状分裂し、披針形、線状に。向軸面はほとんど無毛、背軸面は白い細かい毛で覆われている。欧州では若葉を肉料理などに用いるほか、解熱、鎮痛、利尿などに。ヒマラヤでは痙攣薬や去痰、駆虫、防腐に。漢名を野艾といい、中薬では本種とA. argyi H.Lév. & Vaniotの葉をともに艾葉(ガイヨウ)と呼んでモグサにも利用。ウクライナ語でチョルノブイリといい、チェルノブイリ(ウクライナ語でチョルノブイリ)周辺に自生するために地名になっている。

欧州、アフリカのヨモギ

Artemisia abrotanum L. アルテミシア・アブロタヌム[優美な] サザンウッド、キダチヨモギ(木立蓬)、オキナヨモギ(翁蓬)、セイヨウカワラニンジン(西洋河原人参)、southernwood, lad’s love, southern wormwood, old man, boy’s love, oldman wormwood, lover’s plant, appleringie, garderobe, Our Lord’s wood, maid’s ruin, garden sagebrush, European sage, sitherwood, lemon plant, [独]Eberraute, Stabwurz, [仏]aurone, citronnelle。 地中海沿岸原産、ユーラシア、アフリカ。北米にも導入。木本。草丈1m。葉は有毛で灰緑色であり細く切れ込んで小さい。夏から秋に開花。アブシントや柑橘系の甘い香りがあり、ティーやケーキ、ビールなどの香りづけに利用。薬用にもされる。中世欧州ではストゥルーイングハーブに用いられた。昭和初期に渡来し、葉の形と色合いはもとより、アブラムシなど、病害虫を寄せ付けないとしてガーデン材料として普及。RHSのAGMを受賞している。最近、「蚊寄らず」などの名称で売られており、暮らしの中で植物の役割の普及にはよいが、サザンウッドの名称がどこにも書かれていないのは残念。

Artemisia absinthium L. アルテミシア・アブシンティウム[味のない] コモンワームウッド、ワームウッド、アブシント、アルセム、ニガヨモギ(苦蓬)、クガイ、common wormwood, wormwood, absinthe、absinthium, absinthe wormwood, grand wormwood, great absinthe, [独]Wermut, Echt-Wermut, Wermutkraut, Bitterer Beifuß, Alsem, [仏]absinthe。欧州原産、ユーラシア、北アフリカ、北米。多年草で基部は木質化する。草丈1m。茎葉に細かい毛があり、白っぽく見える。夏に開花。人との関わりの歴史が最も古く、アルテミシア類で最も代表的な種。単にワームウッドと称されことが多いが、広義のワームウッド(アルテミシア類全体)と区別するためにはコモンをつけた方がよい。欧州では「アブサン」や「ベルモット」などのリキュールの原料。古代から駆虫薬や胃腸薬、婦人病薬、興奮剤などに利用してきた。明治初期に渡来。『草木図説』のニガヨモギと間違えて和名が付けられたとされる。葉の色や形、強靱さからガーデン材料でも人気。品種’Lambrook Silver’と’Lambrook Mist’はRHSのAGMを受賞している。

Artemisia afra Jacq. ex Willd. アルテミシア・アフラ[アフリカの]African wormwood, African sagebrush, wild wormwood。南アフリカ~エチオピア。亜低木。草丈0.5~2m。葉はシダに似た形状で軟毛に覆われて柔らかい。向軸面は緑白色、背軸面は白色。伝統的に咳、発熱、風邪、食欲不振、胃腸炎、痛風、喘息、マラリア、糖尿病、腎臓障害、インフルエンザ、痙攣などのさまざまな治療のほか防虫剤として利用。精油成分はα-ツヨン53%、β-ツヨン15%、1,8-シネオール10%とする報告がある。

Artemisia alba Turra アルテミシア・アルバ[白色の] white mugwort, white wormwood, white artemisia, camphor southernwood。欧州。2つの亜種がある。半常緑低木。草丈50cm。葉はアサギリソウに似て線形で、綿毛で覆われて銀~白色。頭花は黄色。観賞に供され’Canescens’はRHSのAGMを受賞。

Artemisia arborescens (Vaill.) L. アルテミシア・アルボレスケンス[亜高木の] トゥリーアルテミシア、トゥリーワームウッド、tree wormwood, old woman, silvery wormwood。地中海沿岸。亜低木。高さ50~100cm。本種と‘Powis Castle’(ニガヨモギとの交雑品種)はAGMを受賞。

Artemisia barrelieri Besser アルテミシア・バッレリエーリ[仏の植物学者Jacques Barrelierへの献名] abrótano macho, ajenjos dulces, altamisa fina, boja, boja granadina, boja reina, bojantina, bolina, bolinas, manzanillón, matapestosa, salá, tomillo negro。スペイン、モロッコ。多年草。花茎は高さ20~50cmで分枝する。強い香りが特徴。スペインではアルジェリアアブサン(リキュール)に用いられる。

Artemisia campestris L. アルテミシア・カムペストゥリス[原野生の] field wormwood, beach wormwood, northern wormwood, Breckland wormwood, boreal wormwood, Canadian wormwood, field sagewort, field mugwort, threadleaf sagewort。欧州、ユーラシア、北米。地域によって10の亜種がある。多年草または二年草。花茎は高さ1.5mで赤褐色を呈する。葉は2~3回羽状分裂し、リュウキュウヨモギの様に線形。リュウキュウヨモギ(ニイタカヨモギ)と学名が混同されているので注意。

Artemisia dracunculus L. アルテミシア・ドゥラクンクルス[小さな龍]ロシアンタラゴンはかつてA. dracunculoides Purshの学名があったが、World Flora Onlineではこの学名はA. dracunculus L.のシノニムとされる。タラゴン、エストラゴン、 tarragon、[仏]estragon。シベリア~中央アジア。多年草。葉は上・中位では欠刻のない線状披針形で、下位葉では3裂することがある。フレンチとロシアンがあり、品種のような位置づけだが形態や生態が異なる。フランス料理などで食用とされるほか、利尿・駆虫・通経などで薬用とされる。 フレンチタラゴン:1596年にフランスに導入。日本には1915年に渡来。草丈60cm。葉は無毛で光沢があり腺毛が多い。花はめったに咲かず、咲いても不稔で種子は得られないため、繁殖は株分けか挿し木。高温過湿を嫌い、日本では梅雨明け後の高温で溶けてなくなることが多く、栽培は難しい。周年供給できれば御殿が建つ。香りの主成分はエストラゴールで、ケモタイプも存在。エスカルゴ料理やハーブビネガー、ハーブオイルなどに欠かせないほか薬用にも。 ロシアンタラゴン:草丈1.5m。葉はフレンチタラゴンに似るが、有毛で光沢はなく、やや白っぽく腺毛は少ない。過湿にも強く、作りやすい。開花・結実して種子繁殖可能。タラゴンの名で売られている種子はロシアンタラゴン。フレンチタラゴンの代用。北米に帰化してアメリカンインディアンが伝統的に薬用などとする。

Artemisia frigida Willd. アルテミシア・フリギーダ[寒帯の] マンシュウアサギリソウ(満州朝霧草)、fringed sagebrush, prairie sagewort, arctic sage, pasture sage、小白蒿(ショウハクコウ)。欧州、アジア、北米。多年草。草丈40cm。葉はアサギリソウに似て羽毛状の白い毛で覆われ緑灰色。強い香りが特徴。RHSのAGM受賞。

Artemisia genipi Weber ex Stechm. アルテミシア・ゲニピ[常緑の] Alpine wormwood, spiked wormwood, black mugwort, black génépi, Ährige Edelraute, Schwarze Edelraute, Schwarzraute。欧州アルプス。低木。草丈20cm。葉は白色の絹毛で向軸面は緑灰色。背軸面は白く、腺毛を有する。タンジーの様な黄色の花。Génépiと呼ばれるリキュールの原料のほか、虫よけポプリや混植材料、観賞に。

Artemisia glacialis L. アルテミシア・グラキアリス[氷河地帯に生える] glacier wormwood, Gletscher-Edelraute。欧州アルプス。多年草。草丈18cm。歴史的に消化促進や胃のためのリキュールとして利用。皮膚炎などのアレルゲン。

Artemisia gorgonum Webb アルテミシア・ゴルゴヌム[ゴルゴンの(カーボベルデに住んでいたとされるギリシャ神話の怪物)]Cape Verde Sagebrush, losna, lasna。アフリカ西部島嶼カーボベルデ固有種。低木。草丈2m。花は黄色。芳香があり伝統医療に用いられる。

Artemisia maritima L.  アルテミシア・マリティマ[海の、海浜生の]synonym; Seriphidium maritimum (L.) Poljakov  ミブヨモギ 壬生蓬、sea wormwood, old woman。欧州。多年草。1929年に京都市壬生町の日本新薬の試験場で種子からの栽培に成功し「壬生蓬」と呼ばれる。その後、北海道、東北、中部で栽培。セメンシナやクラムヨモギとともに、駆虫薬のサントニン原料として重要で、戦後の日本の回虫駆逐に大きく貢献。サントニン含量は1~3%。

Artemisia nitida Bertol. アルテミシア・ニティーダ[光沢のある] Glänzende Edelraute, Glanzraute genannt。欧州アルプス南部(オーストリア、イタリア、スロベニア)。絶滅危惧種。多年草。草丈40cm。レースラベンダーを小さくした様なシルバーリーフとサントリナの様な黄色い花が特徴。

Artemisia pancicii Ronniger ex Danihelka & Marhold アルテミシア・パンキキイ[植物学者J. Pančićへの献名]Waldsteppen-Beifuß(森林草原蓬), Waldsteppen-Wermut, Pančić-Beifuß(パンチッチ蓬)。欧州中央部。多年草。地下茎で栄養繁殖する。草丈30~90cm。葉は2~3回羽状に深裂しワームウッドの様な緑灰色の葉。9~10月に開花。

Artemisia pontica L. アルテミシア・ポンティカ[黒海沿岸ポントスの] ローマンワームウッド Roman wormwood, small absinthe, old woman, old warrior, Roman wormswood, Pontischer Beifuß, Römischer Wermut, armoise romaine, petite absinthe。東南欧州。北米にも導入され帰化。多年草。草丈50~100cm。葉柄は1cm。葉は葉長2~3cmで有毛、灰緑色で小さく、切れ込みが細かく細い。花は黄色。コモンワームウッドとともにアブサンやベルモットの原料。アブサンよりも苦みが少ない。コモンワームウッドをグレートアブシントと呼ぶのに対しスモールアブシントとも呼ばれる。精油成分はシネオール、カンファ―、ツヨン、ボルネオ―ルなど。

Artemisia santonicum L. アルテミシア・サントニクム[サントニカの] [独]Salz-Beifuß(塩蓬), Strand-Beifuß(浜蓬), Ungarischer Beifuß(ハンガリー蓬)。欧州。多年草。草丈20~60cm。強い芳香がある。葉は2~3回羽状複葉。

Artemisia splendens Willd. アルテミシア・スプレンデンス[強光沢のある、立派な] Asia minor wormwood。中近東。多年草。草丈30cm。葉は絹毛で白っぽい銀色。観賞用、薬用。精油成分は、1,8-シネオール、ゲルマクレンD、α-ピネン、ビシクロゲルマクレンなど。HT-29,A549細胞とグラム陽性菌に対する抗菌性が報告されている。

Artemisia umbelliformis Lam. アルテミシア・ウムベッリフォルミス[散形花序の様な形の] white genepì, [伊]genepì bianco, [仏]génépi blanc, [独]Echte Edelraute。欧州中南部、特にアルプス地方。岩場に自生。多年草。草丈5~20cm。葉は緑白色。精油成分にツヨンを含有。リキュールのgénépiの原料の一つ。ティーや調味料でも利用。民間療法で発熱や肺炎、胃腸障害に用いる。

Seriphidium kurramense (Qazilb.) Y.R.Ling セリフィディウム・クッラメンセ[パキスタン・クラム峡谷の]synonym; Artemisia kurramensis Qazilb.  クラムヨモギ。中央アジア~西アジア。乾燥地帯に分布。多年生半灌木。ミブヨモギと近縁で、アルテミシア属とする考え方も多いが、World Flora Onlineではセルフィディウム属に分類。日本には、ミブヨモギ同様サントニン原料として20世紀半ばに導入され、小豆島や淡路島、和歌山県などで栽培される。高サントニン品種として‘ペンタヨモギ’や‘ヘキサヨモギ’などミブヨモギとの交雑品種がある。

北米のヨモギ

Artemisia alaskana Rydb. アルテミシア・アラスカーナ[アラスカの]Alaska wormwood, Alaskan sagebrush, Alaskan wormwood, Siberian wormwood。北米アラスカ。多年草または亜低木。草丈15~60cm。フランス料理の香りづけや、鎮咳、解熱、鎮痛、駆虫、マラリアなどに薬用とされるほか、湿布やローション、浸剤などでコスメ利用される。

Artemisia biennis Willd. アルテミシア・ビエンニス[2年生の]ホザキカワラニンジン(穂咲き河原人参)、biennial wormwood。北米北西部原産。欧州、ニュージーランド、北米全土に帰化、日本にも帰化。各地で外来有害雑草となっている。

Artemisia bigelovii A.Gray アルテミシア・ビゲロウィイ[米の植物学者J.M. Bigelowへの献名] Bigelow sagebrush or flat sagebrush。北米西部~南部。沙漠や草地に自生。亜低木。草丈50cm。家畜の飼料やエロ―ジョン防止などのカバークロップとして利用。

Artemisia californica Less. アルテミシア・カリフォルニーカ[カリフォルニアの] California sagebrush, coastal sagebrush。米国カリフォルニア。亜低木。草丈1.5~2.5m。骨折や関節炎、捻挫などの鎮痛に湿布として利用される。また、アメリカンインディアンは、咳や風邪、リウマチに葉を噛んだり入浴剤として用いたり、月経困難症や陣痛、更年期障害に煎剤を飲んだり、傷や歯に塗って鎮痛に用いたり、喘息に湿布したりして利用。

Artemisia carruthii Alph.Wood ex Carruth. アルテミシア・カッルティイ「米の植物学者J.H. Carruthへの献名」  Carruth’s sagewort, Carruth wormwood。北米中西部。多年草。草丈70cm。アメリカンインディアンのズニ族は風邪の痛みに種子を炭に乗せて発刊浴をしたり、種子を挽いて団子にして蒸して食用とする。

Artemisia douglasiana Besser ex Besser アルテミシア・ドウグラシアーナ[Douglasへの献名] California mugwort, Douglas’s sagewort, dream plant。北米西部。多年草。草丈0.5~2.5m。葉は灰緑色主要精油成分はツヨンとシネオール。アメリカンインディアンが関節痛や頭痛、擦傷、発疹、婦人病の治療、堕胎に使用。また、儀式や精神的目的で喫煙やティーで利用。

Artemisia filifolia Torr. アルテミシア・フィリフォリア[糸の様な葉の] sand sagebrush, sand sage, sandhill sage。北米。亜低木。草丈1.5m。種苗が流通し、放牧地や炭田の緑化に用いられる。アメリカンインディアンのナバホ族は薬用や儀式、トイレットペーパーとして利用。

Artemisia kauaiensis (Skottsb.) Skottsb. アルテミシア・カウアイエンシス[カウアイ島の] ʻĀhinahina, Kauaʻi wormwood。ハワイ固有種。亜低木。

Artemisia ludoviciana Nutt. アルテミシア・ルドウィキアーナ[北米ルイジアナの] シルバーワームウッド、silver wormwood, western mugwort, Louisiana wormwood, white sagebrush, gray sagewort, prairie sage, Louisiana-sage, western-sage。北米。多年草。草丈1m。葉は綿毛があって、シルバーを呈する。長さ10cmになる線形で、先端付近に欠刻の見られる品種が多い。銀~白色の綿毛によるシルバーリーフが特徴で、’Silver King’ (シルバーキング) などの品種がガーデン材料として人気。’Silver Queen’ (シルバークイーン)と’Valerie Finnis’ (ヴァレリーフィニス)はRHSのAGMを受賞している。北米原産のアメリカインディアンのハーブで、薬用、クラフト用、儀式用。ダコタ族は悪い力から守るために、アパッチ族やチリカフア族、メスカレロ族はスパイスとして、ブラックフット語族は皮膚病の薬として、ヒダーツァ族は皮膚の硬化や風邪、熱などの薬として用いる。

Artemisia pycnocephala (Less.) DC. アルテミシア・ピクノケファラ[密な頭状花序の] beach wormwood, sandhill sage, coastal sagewort。米国西海岸。多年草。草丈30~60cm。タラゴンドリンクのスパイスとして利用。アメリカンインディアンのミーウォク族は、頭痛や鼻の浄化に葉を鼻孔に挿入たり、産後の血液循環促進に体に葉の束を結んだりする。また、海岸ミーウォク族は、腹痛や発熱、眼病治療に用いる。

Artemisia tridentata Nutt. アルテミシア・トゥリデンタータ[3鋸歯の] コモンセージブラッシュ、ビッグセージブラッシュ、common sagebrush, big sagebrush, Great Basin sagebrush。米国西部。常緑木本。草丈3m。根は直根で4mに達する。葉は細かい毛で覆われ銀白色を呈する。ネバダ州の州花。アメリカインディアンは、ホワイトセージ同様、スマッジングで燃やして煙をたてる浄化法に用いるほか、皮を燻したり、傷や内出血、頭痛、風邪、水虫などに薬用などにされる。精油にはカンファー(40%)やピネン(20%)などを含む。近年、北米では盆栽としても人気がある。

表2.アルテミシア属(Artemisia)植物の精油成分.それぞれの研究論文から多量成分のみを抜粋して作表.

学名 ・ 一般名 A. abrotanum L. サザンウッド (キダチヨモギ)
著者(年)国 Pino,J.A.ら(2009)キューバ
実験区 ー
収油率(%)ー
精油成分(%)trans-サビニルアセテート(33)

学名 ・ 一般名 A. abrotanum L. サザンウッド (キダチヨモギ)
著者(年)国 Tabanca,N.ら(2011)米国
実験区 ー
収油率(%)ー
精油成分(%)1,8-シネオール(33)、ボルネオール(14)、プレシルフィペルホラノール(10)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Rezaeinodehiら(2008)イラン
実験区 ー
収油率(%)1.3
精油成分(%)β-ピネン(24)、β-ツヨン(19)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Basta,A.ら(2006)ギリシャ
実験区 ー
収油率(%)ー
精油成分(%)カリオフィレンオキシド(25)、p-シメン(17)、1,8-シネオール(9)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Judzentieneら(2009)リトアニア
実験区 ケモタイプ Ⅰ
収油率(%)ー
精油成分(%)ツヨン(cis+trans)(10-36)、trans-サビニルアセテート(10-39)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Judzentieneら(2009)リトアニア
実験区 ケケモタイプ Ⅱ
収油率(%)ー
精油成分(%)trans-サビニルアセテート(10-39)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Msaada,K.ら(2015)チュニジア
実験区 ー 産地 Bou Salem
収油率(%)1.5
精油成分(%)trans-サビネンハイドレート(22)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Msaada,K.ら(2015)チュニジア
実験区 ー 産地 Kairouan
収油率(%)1.1
精油成分(%)β-ツヨン(22)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Msaada,K.ら(2015)チュニジア
実験区 ー 産地 Boukornine
収油率(%)1.1
精油成分(%)β-ツヨン(21)、trans-サビネンハイドレート(13)、

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Msaada,K.ら(2015)チュニジア
実験区 ー 産地 Jerissa
収油率(%)1.1 
精油成分(%)β-ツヨン(17)、trans-サビネンハイドレート(12)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Sharopovら(2011)タジキスタン
実験区 産地/期 Muminobod 開花期
収油率(%)ー
精油成分(%)cis-クリサンテニールアセテート(16)、

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Sharopovら(2011)タジキスタン
実験区 産地/期 Yovon
収油率(%)ー
精油成分(%)ジヒドロカマズレン1~5(24)、ミルセン(23)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Sharopovら(2011)タジキスタン
実験区 産地/期 Yovon / 結実期
収油率(%)ー
精油成分(%)ジヒドロカマズレン1~5(24)、cis-クリサンテニールアセテート(18)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 エストニア Ⅰ
収油率(%)0.8
精油成分(%)ミルセン(26)、サビネン(21)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 エストニア Ⅱ
収油率(%)0.4
精油成分(%)エポキシオシメン(60)、サビニルアセテート(24)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 エストニア Ⅲ
収油率(%)0.8
精油成分(%)β-ツヨン(65)、サビニルアセテート(18)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 エストニア Ⅳ
収油率(%)1.1
精油成分(%)サビニルアセテート(71)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 フランス
収油率(%)0.7
精油成分(%)ネリルブタノエイト(14)、クルクメンstr.(11)、リナノール+α-ツヨン(10)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 ハンガリー
収油率(%)0.3
精油成分(%)サビネン(18)、ミルセン(18)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 ベルギー
収油率(%)0.7
精油成分(%)サビニルアセテート(19)、サビネン(9)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 ロシア
収油率(%)0.3
精油成分(%)エポキシオシメン(22)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 ギリシャ
収油率(%)0.3
精油成分(%)β-ツヨン(39)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 ウクライナ
収油率(%)0.4
精油成分(%)クルクメンstr.(8)、ネリル-3-メチルブタノエイト(7)、β-ツヨン(6)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 スコットランド
収油率(%)0.8
精油成分(%)サビネン(30)、ミルセン(18)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 アルメニア
収油率(%)0.1
精油成分(%)サビニルアセテート(34)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 モルドバ
収油率(%)0.2
精油成分(%)ミルセン(39)、サビネン(9)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 ラトビア
収油率(%)0.4
精油成分(%)サビニルアセテート(24)、クルクメンstr.(9)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 リトアニア
収油率(%)0.2
精油成分(%)サビニルアセテート(14)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 イタリア
収油率(%)0.2
精油成分(%)β-ツヨン(12)、サビニルアセテート(11)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 スペイン
収油率(%)0.1
精油成分(%)1,8-シネオール(18)、リナロール+α-ツヨン(11)

学名 ・ 一般名 A. absinthium L. コモンワームウッド(ニガヨモギ)
著者(年)国 Orav,A.ら(2005)エストニア
実験区 産地 ドイツ
収油率(%)0.3
精油成分(%)クルクメンstr.(9)、ネリル-3-メチルブタノエイト(4)、1,8-シネオール(3)

学名 ・ 一般名 A. capillaris Thunb. カワラヨモギ 
著者(年)国 Hong,CU.(2004)韓国
実験区 産地    産地別(地上部)
収油率(%)ー
精油成分(%)カピルレン(26-30)、β-ピネン(9-18)、β-カリオフィレン(9-14)

学名 ・ 一般名 A. gmelinii Weber ex Stechm. イワヨモギ
著者(年)国 Hong,CU.(2004)韓国
実験区 産地  (地上部)Ⅰ
収油率(%)ー
精油成分(%)イソピノカンフォン(32)、1,8-シネオール(22)

学名 ・ 一般名 A. gmelinii Weber ex Stechm. イワヨモギ
著者(年)国 Hong,CU.(2004)韓国
実験区 産地  (地上部)Ⅱ
収油率(%)ー
精油成分(%)カンファー(27)、1,8-シネオール(22)

学名 ・ 一般名 A. dracunculus L. タラゴン
著者(年)国 Fratemale,D.ら(2015)イタリア
実験区 産地 ー
収油率(%)ー
精油成分(%)メチルチャビコール(73)、リモネン(5)、(E)-β-オシメン(5)

学名 ・ 一般名 A. dracunculus L. タラゴン
著者(年)国 Verma,M.K.ら(2009)インド
実験区  ケモタイプ Ⅰ
収油率(%)ー
精油成分(%)キャピレン(60)、z-(β)-オシメン(13)

学名 ・ 一般名 A. dracunculus L. タラゴン
著者(年)国 Verma,M.K.ら(2009)インド
実験区  ケモタイプ Ⅱ
収油率(%)ー
精油成分(%)メチルチャビコール(71)、カルバクロール(8)

学名 ・ 一般名 A. dracunculus L. タラゴン
著者(年)国 Kordaliら(2005)トルコ
実験区  ー
収油率(%)ー
精油成分(%)cis-アネトール(81)

学名 ・ 一般名 A. dracunculus L. タラゴン
著者(年)国 Sayyahら(2004)イラン
実験区  ー
収油率(%)ー
精油成分(%)trans-アネトール(21)、α-trans-オシメン(21)、リモネン(12)

学名 ・ 一般名 A. dracunculus L. タラゴン
著者(年)国 Zawioelakら(2012)ポーランド
実験区  ー
収油率(%)ー
精油成分(%)エレミシン(56)、サビネン(21)

学名 ・ 一般名 A. dracunculus L. タラゴン
著者(年)国 Pinoら(1996)キューバ
実験区  ー
収油率(%)ー
精油成分(%)エレミシン(53)、メチルオイゲノール(18)

学名 ・ 一般名 A. indica var. maximowiczii (Nakai) H.Hara カズザキヨモギ
著者(年)国 Liu,C.H.ら(2001)中国
実験区  葉
収油率(%)ー
精油成分(%)ボルナン(12)、カマズレン(12)、3-メチル-6-(1-メチルエチル)-1,2-シクロヘキサンジオール(10)

学名 ・ 一般名 A. indica var. maximowiczii (Nakai) H.Hara カズザキヨモギ
著者(年)国 難波(1994)日本
実験区  葉
収油率(%)0.02
精油成分(%)1,8-シネオール(50)、α-ツヨン、β-ツヨン

学名 ・ 一般名 A. indica var. maximowiczii (Nakai) H.Hara カズザキヨモギ
著者(年)国 Trinhら(2011)韓国
実験区  葉
収油率(%)ー
精油成分(%)1,8-シネオール、α-テルピネオール

学名 ・ 一般名 A. ludoviciana Nutt. シルバーワームウッド
著者(年)国 Badilloら(2010)メキシコ
実験区  地上部
収油率(%)ー
精油成分(%)ボルネオール(16)、カンファー(7)

学名 ・ 一般名 A. maritima L.  ミブヨモギ
著者(年)国 Mohan,M.ら(2016)インド
実験区  地上部
収油率(%)ー
精油成分(%)1,8-シネオール(25)、クリサンテノン(24)、ゲルマクレンD(7)

学名 ・ 一般名 A. montana (Nakai) Pamp. オオヨモギ
著者(年)国 Kunihiro,K(2017)日本
実験区  地上部
収油率(%)0.1
精油成分(%)ボルネオール(16)、1,8-シネオール(15)、カンファー(14)

学名 ・ 一般名 A. pontica L. ローマンワームウッド
著者(年)国 Talzhanovら(2005)カザフスタン
実験区  地上部
収油率(%)ー
精油成分(%)1,8-シネオール(25)、α-ツヨン(23)、カンファー(16)

学名 ・ 一般名 A. scoparia Waldst. & Kitam. ハマヨモギ
著者(年)国 Singh,H.P.ら(2009)インド
実験区  葉
収油率(%)0.84
精油成分(%)β-ミルセン(30)、p-シメン(13)、(+)-リモネン(12)

学名 ・ 一般名 A. scoparia Waldst. & Kitam. ハマヨモギ
著者(年)国 Sharopovら(2011)タジキスタン
実験区  地上部
収油率(%)ー
精油成分(%)1-フェニル-2,4-ペンタジエン(34)、β-ピネン(21)

学名 ・ 一般名 A. vulgaris L. コモンマグワート(オウシュウヨモギ)
著者(年)国 Williams,J.D.ら(2012)米国
実験区  部位 葉
収油率(%)ー
精油成分(%)ゲルマクレンD(25)、カリオフィレン(20)、α-ジンギベレン(15)

学名 ・ 一般名 A. vulgaris L. コモンマグワート(オウシュウヨモギ)
著者(年)国 Williams,J.D.ら(2012)米国
実験区  部位 新芽
収油率(%)ー
精油成分(%)1,8-シネオール(32)、カンファー(16)、ボルネオール(9)

学名 ・ 一般名 A. vulgaris L. コモンマグワート(オウシュウヨモギ)
著者(年)国 Pandey,B.P.ら(2017)ネパール
実験区  地上部
収油率(%)ー
精油成分(%)β-ツヨン(19)、カンファー(12)、サビネン(11)

学名 ・ 一般名 A. vulgaris L. コモンマグワート(オウシュウヨモギ)
著者(年)国 Husseinら(2016)エジプト
実験区  地上部
収油率(%)ー
精油成分(%)カンファー(14)、3,5-ヂメチルシクロヘキセン(14)、ゲルマクレンD(10)、α-クベベン(10)

当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第59号 2022年3月