2021.8.25.

クルミを食べることは認知機能の低下を予防する

食事に取り入れやすい,美味しいナッツ,クルミ(クルミ科Juglans regia)。

クルミには抗酸化作用と抗炎症作用を持つ成分が含有されており,いくつかの研究で食事にクルミを補給することで認知力が向上し,軽度の認知障害やアルツハイマー病のリスクや進行が減少する可能性があることが報告されている。

酸化ストレスと神経の炎症は,老化プロセス,軽度認知障害,アルツハイマー病,およびその他の脳障害において要因となる。そして,アミロイドβタンパク質(Aβ)は,アルツハイマー病患者の脳のアミロイド斑の主成分であり,これが神経のフリーラジカルの生成を増加させ,酸化的損傷と細胞死につながることがこれまでにも示唆されている。Aβはまた,炎症誘発性サイトカインおよび酵素を増加させることによって神経に炎症を誘発する可能性もある。

今回取り上げたレビューでは,アルツハイマー病に対するクルミの有効性について述べられており,以下のような研究ピックアップされている。

1)アルツハイマー病モデルマウス(AD-tg)を用いた研究は,対象マウスがクルミを含む食餌をとることにより,記憶,学習,運動協調性,不安神経症,および運動活動について,改善や機能の向上といった有効性を持つことを示唆している。

2)臨床試験では,正常成人においても,クルミの摂取により,認知能力の向上,および記憶の改善がみられることが示されている。

3)AD-tgマウスでの最近の研究で,クルミを多く含む食餌は,クルミを含まない,対照としての食餌と比較して,抗酸化防御を大幅に改善し,フリーラジカルのレベル,脂質過酸化,およびタンパク質の酸化を減少させることを示し,これらの結果より,クルミを含む食事は,フリーラジカルの生成を減らし,抗酸化防御を高めることによって酸化ストレスを減らし,脂質やタンパク質への酸化的損傷を減らすことができることを示唆している。

4)合成Aβを用いたin vitro研究は,クルミ抽出物がAβフィブリル化を阻害し,あらかじめ形成されたAβフィブリルを可溶化できることを示し,クルミの抗アミロイド形成特性を示している。認知障害や認知症の発症には何年もかかるため,クルミの早期および長期の食事補給は,認知機能の維持に役立ち,発症のリスクを軽減したり,発症を遅らせたり,進行を遅らせたりする可能性があることを示唆している。その要因は,クルミが,Aβ線維化を減少させ,酸化的損傷を減少させ,抗酸化防御を増加させ,神経の炎症を減少させることによって,軽度の認知障害や認知症を予防,改善するとのことである。

5)いくつかの動物実験,臨床試験では,クルミがパーキンソン病,脳卒中,うつ病などの他の脳障害,ならびに心血管疾患と2型糖尿病のリスクまたは進行を減少させる可能性があることを示唆している。

これらの研究報告は,クルミの含有成分が酸化ストレスと炎症から保護することを示しており,脳障害および他の慢性疾患への対処として,クルミを摂取することの利点を示唆しているというのが,このレビューの結論だ。

古くから「健脳の木の実」と言われ,世界各地で親しまれてきたクルミ,美味しく,そして脳の健やかさをもたらしてくれる植物だ。

〔文献〕Chauhan A, Chauhan V. Beneficial Effects of Walnuts on Cognition and Brain Health. Nutrients. 2020 Feb 20;12(2):550.

(8/25/2021 報告:村上志緒 学術委員)