2021.9.13.

犬・猫のハーバルケア#3
安全なハーバルケアのために

株式会社ノラ・コーポレーション代表取締役

金田俊介

Herbs for Dog and Cat

ハーブは重い副作用が出ることはまれですが、使用量や使用方法を誤れば、どんな植物でも有毒になり得ます。常にペットの状態をよく観察しながら安全に使用しましょう。

注意が必要な植物成分 ☞副作用は主に過剰摂取や長期使用によって起こり得るものです。

成分名:アントラキノン
副作用・注意点:腹痛、下痢、肝障害、腎臓障害、長期使用による依存症
多く含むハーブ:アロエ、センナ、カスカラサグラダ、ルバーブの根

成分名:クマリン
副作用・注意点:多量使用による光線過敏症、血液凝固障害のある動物への使用は注意
多く含むハーブ:レッドクローバー、アルファルファ

成分名:シュウ酸シュウ酸塩
副作用・注意点:泌尿器の炎症、結石、腎臓や泌尿器に疾患のある動物への使用は注意
多く含むハーブ:タデ科およびアブラナ科の植物、
シープソレルやフレンチソレルの葉、イエロードックの根

成分名:アルカロイド
副作用・注意点:肝機能障害、嘔吐、特に猫には注意が必要、妊娠中や授乳中の動物への使用は禁忌
多く含むハーブ:コンフリー、オレゴングレープ、ゴールデンシール

成分名:サリチル酸塩
副作用・注意点:猫やアスピリンに敏感な動物に使用する時は、細心の注意が必要
多く含むハーブ:ウィロウバーク、メドウスウィート、ポプラ

成分名:サポニン
副作用・注意点:胃腸の炎症、嘔吐、脂溶性ビタミンの吸収阻害
多く含むハーブ:バレリアン、リコリス、サルサパリラ、ユッカの根

成分名:ステロール
副作用・注意点:むくみ、高血圧
多く含むハーブ:リコリス

成分名:タンニン
副作用・注意点:粘膜の炎症、妊娠中の動物には流産の原因になることもある
腎臓に疾患のある動物への使用は注意
多く含むハーブ:ウワウルシ、ジュニパー、クロクルミの果皮、ホワイトオークの樹皮

▼免疫強化  免疫機能の活性化と補助に役立つ代表的なハーブです。エキナセアは比較的軽度で一過性の症状の改善に向きます。

ハーブ名(学名):エキナセアEchinacea spp.
適応症状:細菌やウイルス感染症の初期症状

ハーブ名(学名):アストラガルスAstragalus membranaceous)※
適応症状:特に腎臓の機能低下を伴う疾患(苦味はあるがエキナセアの代用として)
※アストラガルスは和名を「オウギ」といい、漢方では疲労回復や強壮、かぜの予防などに用いられています。

▼リンパ系  リンパ球の産生やリンパの流れを補助し、リンパ球が流れ込む病変部の治癒を促します。内因的な慢性皮膚炎の治療にも有効です。

ハーブ名(学名):クリ―バーズGalium aparine)※
適応症状:消化器、泌尿器の嚢疱、潰瘍
※クリーバーズには利尿作用もあり、泌尿器の働きを助けます。また、皮膚や被毛の健康を増進するといわれています。

ハーブ名(学名):レッドクローバーTrifolium pratense
適応症状:皮膚の嚢疱や潰瘍など、リンパ節の腫れ

▼神経安定・鎮静  脳の中枢神経に働きかけて活動を正常化し、緊張や不安、抑うつ、イライラなどの症状を改善します。

ハーブ名(学名):スカルキャップScutellaria spp.
適応症状:神経過敏症の不安感やてんかん性の発作・痛み

ハーブ名(学名):バレリアンValeriana officinalis
適応症状:急性の不安感や落ちつかない時(緩和剤として)、てんかん性の発作・痛み

ハーブ名(学名):パッションフラワーPassiflora incarnata
適応症状:情緒不安定、不安、外傷後のうつ症状(バレリアンを嫌がる動物にも使用可能)

ハーブ名(学名):オート麦Avena sativa
適応症状:神経疾患(高齢の動物のための強壮剤)

▼栄養補給  各種の栄養素をバランスよく含み、日常的な栄養補助食として利用できます。特に貧血やミネラル不足による諸症状に効果的です。

ハーブ名(学名):ネトルUrtica spp.
適応症状:豊富なミネラル、ビタミン、タンパク質源

ハーブ名(学名):アルファルファMedicago sativa
適応症状:豊富なミネラル、ビタミン、タンパク質源

ハーブ名(学名):フラックスシード(Linum spp.)
適応症状:豊富なオメガ-3脂肪酸の供給源

ハーブ名(学名):ダンディライオンTaraxacum officinale
適応症状:豊富なミネラル(特にカリウム)、ビタミン、タンパク質源

▼傷  細胞組織の修復を助ける働きや炎症を鎮める働きにより、外用(湿布、軟膏、オイルなど)、または経口投与で傷の治癒を促します。

ハーブ名(学名):アロエベラAloe spp.
適応症状:やけど、傷、皮膚炎(外用)、潰瘍(経口投与)

ハーブ名(学名):アルニカArnica spp.
適応症状:外用として傷口の閉じているけがにのみ使用

ハーブ名(学名):カレンデュラCalendula officinalis
適応症状:皮膚炎、やけど、外傷

ハーブ名(学名):セントジョンズワートHypericum perforatum
適応症状:軟部組織の損傷、神経の損傷を伴う外傷

HOW TO USE 効果的にハーブを使うために

犬や猫にハーブを用いる時は、私たち人間が使用する時とは違った注意が必要なこともあります。
それぞれのハーブについての基本的な知識を身につけた上で、次のポイントを押さえましょう。
人間と同じように、体質や嗜好には個体差があることも忘れずに。

嫌がる時は、無理に与えない

ハーブは独特の香りや強い香りをもつものが多いため、ペットによっては嫌がって食べないこともあります。その場合は、無理に食べさせないで、ハーブの種類や量を変えてみましょう。

チンキはアルコール濃度に注意

チンキは作用が強力で用途が広く、犬や猫の短い消化管でも完全に吸収されます。ただし、動物はアルコールの味を嫌うので、低アルコールの溶媒を用いるか、アルコールと水を混ぜて作りましょう。グリセリンチンキがあればおすすめです。

ブレンドで相乗効果を

最初はペットの健康状態に応じてベースとなるハーブを1~2種類決め、後は様子を見ながら種類を増やしていきましょう。ブレンドすることによって、いろいろなハーブの相乗効果が得られます。

味にうるさい猫にはハーブティーを

ペットの中でも特に猫は食餌が変わるのをあまり好みません。その点、ハーブティーは味にうるさい猫にも比較的受け入れられやすいもの。ハーブティーをいつもの食餌に混ぜて与えると、ハーブの成分を楽に吸収できます。

カプセル入りのハーブはNG

犬や猫の消化管は短いため、カプセル入りのハーブだと吸収されずに排出されてしまいます。吸収できたとしても、動物に必要な量を与えるのは大変。ハーブチンキかドライハーブ、またはハーブティーを与えましょう。

イラスト = SANDER STUDIO

株式会社ノラ・コーポレーション代表取締役
金田俊介 かなだしゅんすけ
当協会監事。博士(医学)、薬剤師。順天堂大学大学院修了。米国立補完代替医療センター(NCCAM)の代替医療研究所(自己免疫疾患および炎症性疾患部門、サウスカロライナ大学医学部)研究員を経て株式会社ノラ・コーポレーション入社、現在に至る。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第57号 2021年9月