2021.7.20.

菜園レッスン
栽培と成分のはなしⅣ
収穫方法や部位などで精油含量はどう違う?
セリ科

当協会理事

木村正典

今回は、セリ科の精油成分と栽培について解説します。
セリ科や近縁のウコギ科のハーブの精油が植物のどの場所に存在するかが分かると、
栽培や利用時に役立ちます。

セリ科のハーブ(一例)

ディルAnethum graveolens L.
鎮静作用や消化作用が期待できる。「なだめる」という意味の古代北欧語が語源とされ、欧州では赤ちゃんの夜泣き対策にディルの果実を使ったティーを用いる。
ティー
料理
湿布
入浴剤
蒸気吸入
チンキ剤

フェンネルFoeniculum vulgare Mill.
果実には消化を助ける働きや、むくみを緩和する効果がある。和名は「茴香(ウイキョウ)」。葉は魚料理の香りづけに、果実はスパイスやハーブティーに使われる。
ティー
料理
湿布
入浴剤
蒸気吸入
チンキ剤

チャービルAnthriscus cerefolium (L.) Hoffm.
ティーには利尿、消化促進、血行促進作用などがある。甘い香りが特徴で、フランスでは「グルメのパセリ」としてオムレツやサラダ、スープなどにも使われる(仏名:セルフィーユ)。
ティー
料理
湿布
入浴剤
蒸気吸入
チンキ剤

ボタンボウフウ

★コリアンダー ★ディル ★フェンネル ★パセリ ★セロリ 
★キャラウェイ ★アニス ★クミン ★アジョワン ★アンジェリカ
チャービル、アシタバ、セリ、ハマボウフウ、ボタンボウフウ
※★のついているハーブは、果実がシードスパイスになります。

セリ科の精油の場所と特徴

セリ科、ウコギ科の精油は、油管ゆかん油道ゆどう)に存在します。油管は維管束のような通導組織で、いわば血管のようなもの。根、茎、葉、果実に張り巡らせられているため、全草が香ります。つまり、精油に期待する効果を全草で得ることが可能です。

セリ科は全草が香る = 全草が利用できる

シソ科:精油は腺毛にあるため、葉をこすると香る。腺毛は新芽や生殖器官など大切な器官に集中し、大切な器官を外的から守る働きをする。

セリ科:精油は油管にあるため、葉をちぎると香る。
油管は全草に分布し、全草を外的から守る働きをする。

特徴1 セリ科のハーブの多くがシードスパイスとして利用されている。

コリアンダー、ディル、フェンネル、パセリ、セロリ、
キャラウェイ、アニス、クミン、アジョワン、アンジェリカなど

一般に種子として扱われているのは、実は果実でその中に種子が存在しています。果実の果肉部分には油管が存在し、その中にある精油が香ります。セリ科のハーブは油管が通っているため全草が香りますが、香りは器官によって異なります。少ししか変わらないもの、大きく異なるものなど、香りの相違の度合いはハーブによってそれぞれです(例)。
※播種する時は果実のまま播種します。そのため発芽には時間がかかります。

例)コリアンダー 
器官で異なるというよりは、果実が熟す(乾燥する)ことによって香りが変わる。果実でも緑のうちはカメムシに似た臭い。熟して乾燥するとオレンジのような香りがする。

特徴2 根や茎葉も利用できる。

◎ 根
コリアンダーは根も利用するため根つきで売られている。
ニンジン、パースニップ、セルリアックなどは主として根を利用するセリ科植物。これら以外も根を利用してみよう。

◎ 茎葉
根やシード(果実)を主として収穫するハーブも茎葉を利用することができる。アニス、クミン、キャラウェイ、アジョワン、アンジェリカなどの茎葉や根も使ってみよう。

軟白して利用される伝統的栽培方法〈ミツバ、ハマボウフウ、ウド(ウコギ科)など〉

根株がひと夏越して十分に肥大していれば軟化栽培できるので、色々なセリ科ハーブを光を遮って軟化させ、軟らかくして食べてみましょう。セロリやイタリアンパセリ、フローレンスフェンネルなど、根株が十分に肥大した段階で寒冷紗を巻くなどして軟化させると、軟らかくなります。根とつながっている油管があるため、暗黒下で光合成をしていないのに香ります。

セリ科ハーブを育てて、全草を利用してみよう

例 : コリアンダー
【秋】播種。葉と根を間引きながら収穫して料理で利用。
【冬】葉が茂り、根が肥大。葉と根を間引きながら収穫して料理で利用。
【春~夏】抽台、開花、結実。熟して乾燥した果実を収穫してスパイスとして利用すると共に播種用に貯蔵。

コリアンダーCoriandrum sativum L.
独特の強い香りは食欲増進作用をもち、消化器系の諸症状にも効果的。果実は香辛料になる。タイでは「パクチー」、中国では「香菜(シャンツァイ)」と呼ばれる。
ティー
料理
湿布
入浴剤
蒸気吸入
チンキ剤

Illustration:Noriko Okamoto

当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『HERB & LIFE』 VOL.15:2016年12月