2021.6.29

はじめてのプランター栽培 第1回

当協会理事

木村正典

HERB & LIFE ハーブのある暮らしを楽しむ<夏>

Gardening design ガーデニングデザイン#13

庭やベランダなどの、ちょっとしたスペースでガーデニングを楽しみませんか。
今号からは当協会理事で有機栽培・農学の専門家でもある木村正典先生が、気軽に楽しむためのコツと共に皆さんから寄せられた「栽培のギモン」にお答えします。

question

プランター栽培で一度使った土をまた使うことはできますか?
以前栽培に使ったプランターの中には、枯れているものもあれば、花を咲かせているものもあります。
同じプランターに新しく種まきするには、全部抜きとる必要がありますか?
プランター栽培で気をつけることを教えてください。

使った土はリサイクルしよう!

リサイクル方法

プランターで一度使った土は何度でも使い続けることができます。

枯れた草などが残っている場合は、それらは重要な有機物になりますので、埋めてしまうか、別の空のプランターなどに入れてコンポスト(堆肥)にします。その際、必ず土をかけてください。まだ花が咲いているなど、枯れていない場合は枯れるまで育ててしっかり採種しましょう。

まだ植わっている場合、新たな種まきや植えつけは、植わっている植物の周りに行い、自然に世代交代させるようにしましょう。種まきする場合、日陰になるともやしのように徒長してしまいますので、混みすぎている場合は抜き取るなどして整理するようにします。抜き取ったものも大切な有機物ですので、埋めるかコンポストにしましょう。

前作で減った栄養分を補うだけでOK

有機物は、微生物によって完全に分解されると二酸化炭素と水と植物栄養分(窒素、リン酸、カリなど)になります。すなわち、有機栽培で投入した有機物は分解されて植物栄養になった分、かさが減るということになります。

ですから、一度使ったプランターではかさが減った分、栄養分も減っていますので、その分、有機物を足していきます。牛糞堆肥を入れると栄養バランスもよく肥効も長く続きます。 牛糞堆肥を事前に別なところで土と半々に混ぜて、1~2週間寝かせてからプランターの土に載せましょう。

また、油かすを入れると速効性があってすぐに効きますが、1~2カ月で切れてきますので、こまめに追肥していきます。

病気と害虫に注意!

病気

1つ心配することに、病害虫、すなわち、病気と害虫があります。

まずは病気ですが、前作でうどん粉病やさび病など、地上部の病気にかかっていたとしても、これらは普通に空気中に漂っている病原菌によるものですので、気にすることはありません。これらの病気は、お餅を常温に置いておくとカビが生えるようなもので、防ぎようがなく、プランターの土の再利用とは関係なく発生するものです。

ただし、土壌病害が発生していた場合には同じ植物を続けて育てると同じように感染してしまいますので注意しましょう。 土壌病害を引き起こす病原菌は5~6年は土壌中で生き続けますので、その間、他の植物を育てなければなりません。病原菌は感染する植物が限られているため、他の植物を育てれば感染せずに問題なく育てられます。それから、土壌病原菌は空気中に漂う菌ではありませんから、汚染土壌を持ち込まない限り感染することはまずありません。汚染土壌が持ち込まれるのは苗にすでに病原菌がいた場合です。イングリッシュ系ラベンダーでは苗の段階から潜在的にフザリウム菌のいる可能性があり、注意が必要です。その他の植物では土壌病害を心配することはまずないといってもよいでしょう。

害虫

次に害虫ですが、最も問題になるのはコガネムシの幼虫でしょう。 コガネムシの成虫が土中に産卵し、それが孵化して幼虫となって根を食害します。根をかじってしまいますので、生育が悪くなります。前作で生育が悪かった場合は土をひっくり返して、幼虫をこまめに取り除く必要があります。全部取れなくても、8割取れば被害は8割軽減されると思ってよいでしょう。

その他の害虫に線虫(ネマトーダ)があります。線虫は回虫の仲間で根に棲みついてこぶを作ったり、根に傷をつけたりします。根を引き抜いて瘤や肌荒れのような傷があった場合、マメ科植物でなければ、ネコブセンチュウと思ってよいでしょう。その場合、フレンチマリーゴールドを植えつけましょう。フレンチマリーゴールドは対抗植物と呼ばれ、線虫を駆除する成分をもっています。

マメ科植物の場合、根に瘤がたくさん見られます。これは根粒菌で土壌空気中の窒素を植物に供給してくれる大切な菌です。処分せずに、茎葉も根も土に埋めて窒素栄養源にします。

それから、カブやハクサイ、ナバナなどのアブラナ科植物の根が瘤だらけの場合、これは重篤な病害である根こぶ病です。根こぶ病は同じアブラナ科でもダイコンやキャベツでは発症しませんし、アブラナ科以外では発症しませんので、そのまま他の植物を育てましょう。

土壌消毒の方法と注意点

土壌消毒をしたい場合は、透明のビニール袋に土を入れて薄くのばし、コンクリートの上に1日置くと、土が60℃以上になって菌が死滅します。黒いビニール袋ではビニールだけが高温になり、中の土は光が遮られて温度が高くなりませんので、必ず透明のものにします。 ただし、土壌消毒をしてしまうと、悪玉菌のみならず、善玉菌も死滅し、土壌中に小動物や微生物などの生物がいなくなります。そうなると、有機物を分解する微生物がいなくなることになりますので、おすすめしません。

乾燥による枯死を防ごう!

混植で枯死を防ぐ

プランター栽培では、土の体積が限られているため、地面と違って乾きやすい特徴があります。素焼きの鉢はプラスチックの鉢よりも通気性がよいため、乾きがとても早いです。プランター栽培で枯れてしまう原因の多くは乾燥による枯死です。特に、ローズマリーやタイムなどは葉の萎れがわかりにくいため、気がついたらカリカリに枯死していたということがよくあります。これを防ぐには、レモンバームやバジルなどの広葉の植物と混植することです。 広葉の植物は水がないと萎れがわかりやすいですし、特にレモンバームは窒素栄養がなくなると真っ先に黄ばんできますので、土の水分や栄養分のバロメーターにもなります。

ハーブの混植

スペアミント、ペパーミント、レモンバーム、パイナップルミント

ルッコラ、マスタード、スイスチャード、リーフレタス、コマツナ、ミズナ

園芸培養土はできるだけ重いものを

それから、用いる土壌の種類によっては、とても乾きやすくて水をはじいてしまうものがあります。特にヤシガラの多く入っている軽い土はプランター栽培に向きません。プランターの底から水が出るまでたっぷり灌水しても、ヤシガラなどが水をはじくため、土の表面だけを濡らして脇から水が逃げてしまい、表土を指で掘ると、カラカラに乾いた状態のままであることがあります。園芸培養土を購入する時はできるだけ重いものを買うようにしましょう。 乾きやすい土の場合は、黒土を混ぜるとよいです。

中には、水の上げすぎで根腐れを起こして枯らしてしまう場合もあります。根腐れは、根が水で腐るのではなく、土壌中に酸素=空気がなくて、酸欠によって起こります。水の上げすぎによって、土壌中に空気の相の少なくなることが原因です。土壌表面に緑色の藻が生えている場合は、水のあげ過ぎのサインです。土壌表面が乾くまで灌水を控えるようにしましょう。

一度使ったプランターの土に牛糞堆肥を混ぜる

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当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第56号 2021年6月