2023.1.19

ガーデニングデザイン: 連作障害を明らかにする

当協会理事

木村正典

よく、「この植物には連作障害がありますか」とか「連作障害があるので植える場所を変えなきゃ」などの会話を耳にします。
その連作障害って何によるどんな障害?今回は、連作障害について、その原因と対処法を紹介します。

Question

  • 連作障害と忌地いやちって同じですか?
  • そもそも連作障害って何ですか?
  • 連作障害を起こすと実際にはどうなりますか?
  • 連作障害を予防することはできますか?

土壌病害で枝枯れしたローゼル

連作障害とは?

同じ場所に同じ作物を連続して栽培することを連作といいます。連作によって生育や収量の悪くなる現象を連作障害といい、忌地いやちとも呼ばれます。

一・二年生植物の場合は同じ場所に続けて種まきや植えつけをすることで、多年生の場合は植えっぱなしで、次第に生育の悪くなる現象で、場合によっては同一種でなくても同じ科の植物でも起こりますし、品種が異なると起こらないものもあります。

連作障害には、土壌環境に起因する外的要因と、植物自身に由来する内的要因とがあり、内的要因を狭義の連作障害ともいいます(表1)。

外的要因のうち、特に、土壌の化学性と物理性、土壌生物の減少が要因のものについては同じ種類の植物でなくても起こることから、連作障害に含めないとする人もいます。

連作障害の原因と対策は?

1.土壌環境による外的要因

①土壌の物理性の変化

物理性の変化とは、土壌の三相構造(気相・固相・液相)の変化をいいます。耕されてふかふかになった土は雨降って地固まるのごとく、次第に気相が崩壊して硬くなり、根が張りにくくなってそのまま連作すると後作の生育が悪くなります。

そのため、毎作、耕さなければなりません。土壌生物が豊富にいれば土が団粒構造になって三相構造が維持されますので耕す必要がありません(図1)。ミミズなどの土壌生物たちはいずれも土を耕す役割をしています(図2)。

人為的に耕したり、植物を引き抜いたりすると土壌生物が棲みにくくなります。従って、耕さず、不要な植物は引き抜かずに倒したり地際で切ったりして根を土中に残したままにし、土壌生物の棲みやすい環境を維持します。

図1 土壌の団粒構造。単粒が土壌生物による粘着物質で団粒に変わることで、土壌の三相構造は維持され、ふかふかの土になる。

図2 土壌生物による物理性の維持。ミミズは土を上下に1mも行ったり来たりして土を耕す役割をしている。

②土壌の化学性の変化

土壌の化学性の変化とは、植物栄養の減少や土壌pHの変化です。

植物栄養が切れると生育が悪くなります。肥料切れの場合、堆肥などの肥効の長い有機物を施すことで解決できます。中世の三圃式農業では、連作せず、放牧期間を設けてその間に畜糞を供給します。

土壌pHは化学肥料を投入すると酸性に変化し、次第に根の張りが悪くなって植物の生育が悪くなります。これを解決するために、化学肥料栽培ではアルカリである石灰(カルシウム)を投入して中和します。

有機栽培では、化学物質を施しませんし、土壌生物が豊富にいることから、pHは変化しません。生物は弱酸性でできていますので、土壌中に生物がたくさんいるほど土は弱酸性に保たれます。

化学肥料などで土壌が酸性になったりアルカリ物質を入れられたりすると土壌生物は棲みにくくなります。

③土壌の生物性の変化

生物性の変化という点では、土壌生物の減少と土壌病害虫の発生の2つの問題があります。

土壌生物の減少は化学肥料の投入や地面の露出する裸地状態で起こります。土壌生物の数や種類が減少すると、先の記した土壌の物理性、化学性が低下して生育が悪くなります。そこで、土壌生物の餌である有機物を施すと共に、土を露出させて沙漠化することを防いで土壌生物の多様性を維持します。

病害虫が発生すると、そのあと、同じ科の植物が次々と感染や食害を受けて、大きな生育被害を引き起こします。外的要因なので狭義の連作障害ではありませんが、実は、連作障害と一般に呼ばれているもののほとんどがこの土壌病害虫によるものです。

ナス科の青枯れ病(ラルストニア菌)、ウリ科のつる割れ病(フザリウム菌)、アブラナ科の根こぶ病(プラスモディオフォーラ菌)、多くの植物の白絹病(スクレロティウム菌)、ラベンダーやバジル、ローゼル、パッションフルーツなどでのフザリウムによると思われる立ち枯れなどがあり、いずれも枯死する場合がほとんどで被害は深刻です。

積極的な物理的対策として、蒸気や太陽熱などによる熱消毒、水田のように水を張る湛水処理、土を入れ替える客土などがあります。

一方、消極的な生物的対策として、抵抗性品種の導入や、抵抗性台木への接ぎ木(あるいは接ぎ木苗の利用)、感染しても発症しない〝おとり植物〟の植栽、抗菌性の強い植物の栽培とそのすき込み、拮抗菌の効果を狙った微生物資材もしくは多様な微生物を有する有機物の施与などがあります。

ネギ属の根には病原菌の生育を抑制するシュードモナス菌と親和性があるため、ネギやニラにこの菌を接種して混植する方法もあります。

家庭菜園ではイングリッシュ系ラベンダーを除いて、汚染土壌を持ち込まない限り土壌病害は滅多に発生しません。有機物をたっぷり施して混植をしていれば特に気にしなくてよいでしょう。

イングリッシュ系ラベンダーの場合、古株になると株元が裂け、その傷口から土壌病原菌が侵入して次第に枯死していくことがあり(図3)、同じ場所に新たな株を植えつけても病原菌が潜伏していて育てられなくなります。

この場合、予防として株元に無菌の赤玉土などを敷き詰めたり(図4)、罹病しないフレンチラベンダーなどに切り替えたりするなどの対策を講じます。

図3 土壌病害によって、一枝ずつ枯死するラワンドゥラ・インテルメディア(ラバンディン)。5~6年経った株では株元から自重で裂けることが多く、その傷口からフザリウムと思われる病原菌が侵入して道管をふさぎ、ふさがれた先の枝に水が行かなくなって一枝ずつ枯れ、最終的には株が枯死する。

図4 イングリッシュ系ラベンダーの植えつけ方法。鉢底を大きく開け、鹿沼土などの無菌の土を充填した素焼き鉢に、ラベンダーを植え替える。その鉢を土壌表面よりもやや高い位置に植えつける。ラベンダーは鉢底から根を伸ばして栄養を吸収する。株元は無菌なので土壌病害を免れる。

土壌害虫には、ネコブセンチュウのようなセンチュウ(線虫)類やコガネムシの幼虫などがいます。センチュウ対策としては、センチュウ類を駆除する対抗植物を混植する方法があります。対抗植物の代表はマリーゴールド(タゲテス属(Tagates))で、特に、フレンチやアフリカン、メキシカンです(図5)。

図5 キャベツとフレンチマリーゴールドとの混植。フレンチマリーゴールドはα-terthienylなどの殺線虫成分を有し、サツマイモネコブセンチュウやキタネグサレセンチュウなどに効果を発揮。輪作で用いる場合にはマリーゴールドを畑にそのまま鋤き込んでから植えつける。

ポットマリーゴールドと呼ばれるカレンデュラには駆除効果はありませんので注意しましょう。マリーゴールド以外には、クロタラリアやギニアグラスなどが知られています。

コガネムシの幼虫が疑われる場合、土を掘り出して別な場所に薄く広げて直射日光に数日当てるだけで逃げ出していなくなります。

2.植物自身に由来する内的要因

真の連作障害ともいえる狭義の連作障害である内的要因にはアレロパシーがあります。アレロパシーとは植物間相互作用と訳され、植物の出す化学物質によって植物の生育に影響を及ぼす作用のことです。

この作用は他の植物に及ぼすことがほとんどですが、中には自分自身の生育を抑制するものがあります。宿根バーベナは数年するともともと植わっていた中心部分が枯れ込み、周囲に伸びた茎から根を出してどんどんとドーナツ状に広がっていきます。

セイタカアワダチソウはアレロパシーで他の植物を駆逐していきますが、最後は自分自身の生育も抑制してしまいます(図6)。ニホンハッカにも数年で自滅するものが見られます。

このような自滅型アレロパシーは、動けない植物が同じところにとどまらずに移動する手段と考えられます。この場合は、新しい土に植え替える以外に対処のしようがありません。

図6 セイタカアワダチソウの群落。強いアレロパシーで他の植物を駆逐して占領してきたが、やがてはアレロパシーによって自滅し、最終的にはススキに取って代わられる。セイタカアワダチソウは北米からの帰化植物だが、北米ではススキが帰化してセイタカアワダチソウの絶滅が危惧されている。

以上のように、連作障害は土壌環境の外的要因と植物自身の内的要因に分けられ、外的要因の場合には原因を突き止めて対策を講じれば連作障害を食い止めることができます。

特に広義の連作障害については、土壌生物を殖やして多様性を維持することで予防も可能
です。

一方で、内的要因の場合はその要因を取り除くことはできず、定期的な植え替えなどが必要になります。

お悩み・質問募集中! ご応募はこちらから▶ https://qr.paps.jp/SrUUH

当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第62号 2022年12月