2020.12.27.

疲れ目は放置すると様々な不調の原因に

いりたに内科クリニック院長

入谷栄一

スッキリさわやかな目で快適な毎日を  Eyes Health

私たちは外から受ける情報の80パーセント以上を視覚、つまり目から得ているといわれます。一方で、「目は口ほどにものを言う」といわれるように、その人の感情や意思が現れ、人の印象を左右するのも目。そんな大切な目を、あなたはいたわっていますか? 目は体の中では小さな器官ですが、ひとたび不調が起これば、日常生活への影響は想像以上に大きいものです。 現代人に起こりやすい目のトラブルやその原因を理解し、もっともっと目の健康を気遣う習慣を始めましょう。

疲れ目、かすみ目を見過ごさない

目の健康を見直そう!

最近は、疲れ目やかすみ目、乾き目など目の不快症状に悩む人が増えています。中には自覚がないまま、目に大きな負担をかけているケースもあるので要注意。いつまでも快適な毎日を送っていくためにも、目の健康を見直してみましょう。

目はとってもデリケート やさしくいたわる生活を

物が見える仕組みは、カメラに似ています。 目の中に光が入ってきて、網膜で像を結び、その光信号が視神経を介して最終的に脳に伝えられることで、私たちは物の形や色を判別することができるのです(「目の仕 組み」参照)。

生物が生きていく上では、周辺環境の情報をいかに早く的確にキャッチするかが大きな意味をもちます。そのために視覚、嗅覚、聴覚、触覚、味覚の5つの感覚が備わる中で、視覚から得ている情報の割合は圧倒的に大きく、目は私たちにとって非常に大切な感覚器といえます。

近年はパソコン、スマホなど目を介したコミュニケーション手段が多用されるようになり、視覚の重要性がますます高まっています。しかしそれと同時に目への負担が増し、目の疲れや乾きなどの不快症状に悩まされる人が増えているのが現状です。また、目の不調や病気は加齢によって現れるものもたいへん多く、50歳以上の人のほとんどが何らかの目のトラブルを抱えているという報告もあるほどです。

目はデリケートで不調が起こりやすい器官であり、少しでもトラブルがあれば、QOL(生活の質)に大きく影響します。さらに、目の健康は全身の健康や心の健康にも密接にかかわっているため、日頃から目の健康を気遣っていくことは、心身の健康を保つための重要なポイントの1つともいえます。

疲れ目は放置すると様々な不調の原因に

「目が疲れる」「目が重い」「しょぼしょぼする」といった訴えは、誰でも日常よく経験する疲れ目の症状です。これは主に目の筋肉の緊張によって引き起こされます。

目の仕組み

目の仕組みは、カメラに例えられます。外から入ってきた光は角膜を通ってカメラのレンズにあたる水晶体で屈折し、フィルムにあたる網膜上で像を結びます。その像は視神経を通して脳に運ばれ、映像として残ります。水晶体は遠くを見る時には薄くなり、近くを見る時には厚くなってピントを合わせますが、これは水晶体の周囲の毛様体という筋肉の伸縮により調整されています。

私たちが物を見る時は、距離に応じて 水晶体の厚さを変えてピントを調節していますが、この調節は毛様体という筋肉が縮んだり緩んだりすることで行われています。長時間のパソコン作業など近くの物をじっと見ていると、毛様体がずっと緊張し続けることになり、筋肉疲労を起こしてしまいます。また、この状態で視点を違う場所に移した時にピントが合いにくくなり、目がかすんだり、ぼやけたりすることもあります。

目の酷使による疲れ目は、通常はしばらく休息すれば解消しますが、休んでも疲れがとれず、症状が続く場合を「眼精疲労」と呼んでいます。眼精疲労では疲れ目の症状が重くなり、目の痛みや充血などが起こることもあります。目の症状だけでなく、肩こり、頭痛、胃腸の不調、疲労感、集中力の低下など全身の症状を伴うケースが多いのも特徴です。

目の疲れは、度数の合わないメガネやコンタクトレンズの使用や老眼なども原因となる他、最近では「ドライアイ」によるケースが非常に多くなっています。また、ストレスや過労、睡眠不足などがあると症状が強く出やすく、実際はこうした要因が複数絡み合って起こると考えられます。目の疲れは心身の疲れのバロメーターととらえ、軽視しないことが大切です。

パソコンやスマホの普及で急速に増えているドライアイ

ドライアイは涙の量が不足して目の表面が乾燥する病気で、パソコンやスマホの普及と共に急速に患者数が増えています。ドライアイでは目の乾きやゴロゴロ感よりも「目の疲れ」を訴える人が多く、現代人の疲れ目の大きな原因となっています。乾燥した目は表面に傷がつきやすく、視力の低下や角膜の障害を招くこともあるため注意が必要です。

パソコンやスマホを用いたVDT(visual display terminal)作業がドライアイを引き起こす理由は、画面の凝視にあります。集中して見つめている時は無意識のうちにまばたきの回数が減り、涙の蒸発量が増えて目が乾燥してしまいます。また、作業に集中している時は緊張して交感神経が優位になり、涙の分泌量自体が抑えられてしまうことも目の乾燥につながります。

涙の量は加齢による影響も大きく、40代以降は分泌量の低下が顕著になって、目の乾きや疲れに悩む人が徐々に増えていきます。この他にエアコンによる乾燥やコンタクトレンズの使用、薬の副作用、ストレスなど様々なことがドライアイの原因となります。中には 糖尿病やシェーングレン症候群など全身の病気が隠れているケースもあるので、症状が続く場合は放置せず、受診してしっかり原因を確かめるようにしましょう。

目も年齢と共に老化する40代以降に注意したい目の病気

肌や血管が老化するのと同じように、目も年齢と共に老化していきます。誰もが避けられない老眼ですが、そのサインが現れ始めるのは一般に40歳前後からです。老眼は水晶体の弾力性の低下と水晶体の周りの毛様体の動きの低下により、ピント調節がうまくできなくなって起こるもので、近くが見えにくいという症状が現れます。

また、40代以降に一気に増える目の病気に、白内障や加齢黄斑変性、緑内障、糖尿病性網膜症などがあります。これらの病気は最悪の場合失明につながることもあるので、「物が見えにくい」「視野が欠ける」「ゆがんで見える」など、見え方に違和感があれば早めに眼科を受診しましょう。糖尿病性網膜症は自覚症状がないまま進行することも多いので、糖尿病と診断されたら定期的な眼科検診を欠かず受けるようにしてください。

ドライアイの原因

ドライアイはVDT作業、空気の乾燥、加齢、全身性の病気など様々な原因で起こります。

目の健康を保つために

ライフスタイルを見直して目の負担を減らすことが大事

目の酷使は、様々な目のトラブルの原因となります。目を閉じたり遠くを眺めたりしてこまめに目を休ませることを心がけると共に、目に負担をかけない環境を整えましょう。

パソコンやスマホは適切に使用する

長時間にわたるVDT作業を避け、1時間につき10 ~ 15分程度の休息をとりましょう。ディスプレイは視線 のやや下方に設置することで、目の疲れや乾きが生じにくくなります。画面から発せられるブルーライトも目の疲れを引き起こしやすいので、ブルーライトカットのメガネやフィルムを利用するのもよいでしょう。

室内の環境を整える

部屋の照明は明るめにし、読書や細かい作業の際に明るさが足りない場合は手元を照らすライトなどを利用しましょう。エアコンの風は目に直接風が当たらないようにし、乾燥している時は加湿器などで湿度を保ちましょう。

自分に合ったメガネやコンタクトレンズを利用する

眼科医の処方のもとに購入し、使用方法や装着時間を 守ることが大事です。老眼が始まったと感じたら老眼鏡を早めに利用し、目を疲れさせないようにしましょう。

目の体操

VDT作業中は意識的にまばたきを多くしてドライアイの予防を。目をギュッとつむって、カッと開く体操も、目の血行促進・涙の分泌促進に有効です。

血流をよくする

まぶたの皮膚は薄いため、冷えやすく、血流が悪くなりがち。目の疲れを感じたら、約40°Cに温めた蒸しタオルやアイマスクで目全体を覆って温めてみましょう。

抗酸化を意識したケアが 目の老化予防にも有効

目の健康は体の健康と切り離すことができないため、過労・ストレス・睡眠不足を避け、栄養バランスのよい食事と適度な運動で心身を健康に保つことが、そのまま目の健康維持につながります。加齢に伴う不調が増える中高年の人は、特に抗酸化を意識したケアを実践しましょう。

紫外線対策は万全に

紫外線は活性酸素を増やし、老眼や白内障の進行を早めることが知られています。日差しの強い季節には帽子や日傘を用いたり、UVカット効果のあるメガネやサングラスを着用したりする習慣をつけましょう。

食事で抗酸化物質を摂る

抗酸化物質は細胞を傷つける活性酸素を減少させ、血流をよくして全身に酸素と栄養を供給します。ビタミンA、C、Eやポリフェノールなど抗酸化物質を含む食品を、毎日の食事に積極的にとり入れましょう。

抗酸化作用のある栄養素

ポリフェノールの多くは、野菜や果物に存在する色素や苦みの成分。目の健康によいといわれるアントシアニンやルテインもこの仲間。

いりたに内科クリニック院長
入谷栄一 いりたにえいいち
総合内科専門医、呼吸器専門医、アレルギー専門医。日本メディカルハーブ協会理事。東京女子医科大学呼吸器内科非常勤講師。在宅診療や地域医療に力を入れる他、補完代替医療やハーブ、アロマに造詣が深く、全国各地で 積極的に講演活動も行う。著書に『病気が消える習慣』(経済界)、『キレイをつくるハーブ習慣』(経済界)など。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第51号 2020年3月