2021.8.5.

【チェストベリー】 チェストベリーハーブとその活用法

七草薬局グループ pharmacy MINAMI

上田聖子

はじめに

・[学名]:Vitex agnus-castus 
・[別名]:チェストツリー 
・[和名]:セイヨウニンジンボク、イタリアニンジンボク 
・[科名]:クマツヅラ科ハマゴウ属 

チェストベリーはチェストツリーの果実で地中海地方原産のハーブです。高さ2~6mほどまでに生長する丈夫な落葉低木で、日当たりがよければ土質を選ばずに育ちます。日本でも栽培が可能で、暑さや寒さにも強く、比較的育てやすいハーブです。7~9月にかけて青紫色の小さい花を穂状に咲かせ、灰色のビロードのフードのようなものに一部が覆われていて、大きさや形がコショウに似ている黒い果実が実ります。枝葉や果実からは爽やかな香りがし、香辛料としても使用されてきました。和名のセイヨウニンジンボクやイタリアニンジンボクは、原産が西洋で葉の形が朝鮮人参に似ていることに由来しています。日本には明治中期に渡来しました。

成分には、精油、フラボノイド、イリドイド配糖体(アウクピン、アグヌシド)、アルカロイド、苦味質などが含まれています。古くから「女性のためのハーブ」 として婦人科系の疾患に用いられてきました。チェストベリーは女性ホルモンのバランスを整え、月経痛や月経不順、月経過多、子宮筋腫、子宮内膜症、更年期障害などを改善、月経前症候群(PMS)の症状を緩和してくれます。また、経口避妊薬の使用を中止した際に服用すると、気持ちを落ち着かせ、排卵を自然に回復させてくれます。その他にも、母乳の分泌を促すホルモンであるプロラクチンの分泌を増やし、母乳の出をよくする目的でも用いられます。活性成分や作用機序の詳細については、現在も研究が進められており、まだ未解明な部分もありますが、ドーパミンやβエンドルフィンなどの神経伝達物質の関与が示唆されていて身体と心の両方に関わる月経前症候群の症状緩和に効果が期待できます。

海外では月経前症候群による「社会的損失」が研究されており、全労働賃金の3%、スウェーデンでは5%、米国では8%の損失が発生していると報告されています。日本産科婦人科学会によると、PMSは「月経開始の3~10日ほど前から始まる精神的、身体的症状で、月経開始とともに減退ないし消失するもの」と定義され、症状は乳房や下腹部のはりや痛み、肌荒れやにきび、眠気、倦怠感といった身体的症状、イライラ、情緒不安定、怒りっぽい、落ち着かないなどの精神的症状など多岐にわたっています。また、生殖年齢の女性の約70~80%が、月経前に何らかの症状を伴うとされ、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの急激な変動が関わっているとされています。

チェストベリー含有の医薬品

昨年、月経前症候群治療薬してチェストベリーを含有した医薬品「プレフェミン」をゼリア新薬工業株式会社が販売しました。今回業務を通じて販売元に少しお話を聞くことができました。チェストベリーは、医療用医薬品として日本で使用されたことがない、いわゆる「ダイレクトOTC」(新有効成分含有医薬品)です。日本では医療用医薬品としての使用経験はありませんが、チェストベリーは欧州薬局方などの公定書に収載され、品質・安全性および有効性が評価されています。1日量1錠中にチェストベリー乾燥エキス 40mg(チェストベリー180mgに相当する量)を含有しています。効能効果は、月経前症候群の緩和、乳房のはり、頭痛、イライラ、怒りっぽい、気分変調などがあげられています。欧州において婦人科疾患の治療に使用されているハーブ、チェストツリーの果実の乾燥エキスでスイスのMaxZeller社によって開発され、世界15ヵ国で一般用医薬品として承認を取得。基原植物、抽出方法等が医薬品として管理され、一定の品質を保証しています。プレフェミンの臨床試験データは、服用期間が1周期から改善度64%の効果を発揮しますが、3周期間の服用では改善度91%と大幅に向上するといわれ、1ヵ月程度の服用が望ましいようです。

チェストベリーの安全性

妊娠中の人や子どもは使用を避けてください。ホルモン補充療法などの治療中の女性も使用は控えたほうがよいでしょう。経口避妊薬の作用を低下させることがあります。また、まれに皮膚刺激やかゆみが生じる場合があります。

チェストベリーの活用方法

チェストベリーはカプセル剤やチンキ剤、ハーブティーなどの摂取が一般的です。効果的飲用は単品ともいわれていますが、ハーブティーは単品ですと少し苦味があり、ほかのハーブと組み合わせて飲みやすくするのもよいでしょう。チェストベリーは女性ホルモンに働きかけます。下垂体の働きは朝のほうが活発で作用がより顕著にあらわれるため、通常朝に摂取するのがよいとされています。今回はチェストベリーを日常的にご家庭で楽しむためのレシピをいくつかご紹介したいと思います(Recipe1~4)。

Preparation Kitchen Spice Basil Aroma Natural

Recipe 1

月経前症候群を和らげるハーブティー


[材料]


レモンバーム3/チェストベリー1/セージ1


[ブレンド&飲み方]


上記の割合でブレンドし、朝飲みます。爽やかな香りのレモンバームとセージの清涼感がチェストベリーの苦みを抑えます。チェストベリーがホルモンバランスをと整え、鎮静作用があるレモンバームが月経前の不快症状を和らげます。あらかじめそれぞれのハーブでチンキを作っておき、チンキブレンドとして摂取してもよいと思います。

Recipe 2

女性にやさしいバランスハーブティー


[材料]


ラズベリーリーフ2/ローズヒップ2/チェストベリー1


[ブレンド&飲み方]


上記の割合でブレンドし、朝に飲みます。ラズベリーリーフは、子宮の働きを助け、女性特有の体調の変化を整え、ビタミンCが豊富なローズヒップは女性ホルモンを活性化させ美肌効果があります。ラズベリーリーフやローズヒップは飲みやすく、作用・味、ともにチェストベリーとの相乗効果が期待できます。

Recipe 3

チェストベリーのゴートミルクバス


[材料]


ゴートミルクパウダー20g/チェストベリー(粉末)5g/重層5g(1回分:お好みで天然塩を入れても)


[作り方]


容器に上記をはかりに入れ、よく混ぜてでき上がりです。ゴートミルクはぬるま湯にも溶けやすいヤギのミルクです。肌を柔らかくし、鎮静と保湿によく、栄養価が高く牛乳よりもビタミンやミネラル、ガゼインなどが豊富に含まれています。
ガゼインは、肌の中に吸収し乾燥した皮膚に水分をもたらし、古い角質を穏やかに取り除きます。

Recipe 4

チェストベリーのふわふわクリーム


[材料]


ホホバオイル5ml/乳化ワックス1g/精製水10ml/チェストベリーエキス(煎剤)5ml/精油(ラベンダーやゼラニウムなど)3滴


[作り方]


1.2つのビーカーを用意し、ホホバオイル+乳化ワックスと精製水をそれぞれビーカーに入れて温めます。
2.ホホバオイルに乳化ワックスが溶けたら、チェストベリーエキスを入れます。
3.温めた精製水を半分加えてクリーマーで混ぜ、固さを見ながら残りの量を加えながら混ぜていきます。クリーム状になってきたら精油を加え全体に混ぜたらでき上がりです。

女性の「健康と美」をつくる女性ホルモン

ホルモンバランスの乱れは、身体にさまざまな悪影響を与えます。改善にはハーブやアロマだけではなく、日々の食事や運動、ストレスケアも大切です。身体のリズムと上手に付き合っていきましょう。

(参考資料)
1)林真一郎編,メディカルハーブの事典(主要 100 種の基本データ),東京堂出版
2)コンシューマーヘルスケア(プレフェミン販売資料),ゼリア新薬工業株式会社
3)ピーター・コンウェイ,飯嶋慶子訳,TREE MEDICINE くすりになる木,BAB ジャパン

七草薬局グループ pharmacy MINAMI
上田聖子 うえだせいこ
JAMHA 認定ハーバルプラクティショナー。NARD JAPAN 認定アロマインストラクター、JAA 認定アロマインストラクター、チャイルドケアインストラクター、フラワーエッセンスセラ ピスト、スパイス&ハーブ検定 1 級、日本成人病予防協会認定健康 管理士一般指導員/登録販売者。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第31号:2015年3月