2018.3.1.

日本ハーブ療法研究会第5回学術集会に参加して

日本メディカルハーブ協会理事

村上志緒

去る2017年12月10日、千葉県習志野市にある東邦大学にて日本ハーブ療法研究会の第5回学術集会が開催されました。薬学部生薬学教室小池一男教授をはじめ、学生を含めた同校スタッフの多大なご協力のもと、同校客員講師の林真一郎氏が大会長を務められました。当日は130名の方がご参加、会長講演、5つの特別講演と一般講演により学術的な講義が行われ、キャンパス全体が薬用植物園のようでもある同大学がメディカルハーブへの向学心をもつ皆さんの大きな学びの場となりました。

林真一郎氏による会長講演は「ハーブ療法における精油の位置づけと活用法」と題して行われ、植物療法(Phytotherapy)の中での精油の役割を成分や機能性といった特徴、日本薬局方に収載されている精油成分を活かした製剤についてのお話があり、そして産官学の連携を含め、統合医療におけるチーム医療の中で次世代型フィトテラピーを確立するには、領域を超えた人的交流が必要であるといった提起がなされました。

特別講演Iは木村正典氏による「顕微鏡で覗くハーブの精油分泌組織」、顕微鏡の世界をふんだんにお見せいただきながら、生物としての植物の営みからみた精油についての興味深い知見考察をお話いただき、植物療法が人間と植物の関係性から成り立っていることを改めて考える機会をいただきました。

特別講演IIは佐藤忠章氏による「精油の中枢薬理作用と作用機序」であり行動薬理学に基盤をおいたご自身のこれまでの多大な研究成果をもとに精油の主要成分、微量成分の役割や、吸入から体内への移行、効果の持続性について、精油成分による脳への直接的な移行性には差異があることやストレス関連遺伝子の発現への影響などを含めて興味深い新たな知見をお話いただきました。

特別講演IIIは佐藤玲子氏の「精油の病院内での薬局製剤と臨床応用」、病院で薬剤師の立場で植物療法に取り組まれているご経験から、具体的かつ現実的な臨床事例やお考えをお話いただき、医療現場で植物療法の確立のために必要なことを考える機会をいただきました。

特別講演IVは、鳥居伸一郎氏による「精油のモノアミン仮説による分類とハイブリッド証」であり、ご自身が提唱されている東洋医学と西洋医学を統合させた「ハイブリッド証」といった考えから人の身体をみて精油の作用機序を捉えながら精油やハーブを予防医学やメンタルケアのサポートとして活用する提案をいただきました。精神神経疾患に処方される薬剤と精油を対応させてのお話など、とても興味深いものでした。

特別講演Vは今西二郎氏による「東と西のハーブ療法~漢方と西洋ハーブ療法の比較と考察」でした。漢方の陰陽五行説からお話いただき複数の生薬を混合することによってでき上がっている漢方薬の特徴、生薬の分類やそれらの役割についてなど西洋ハーブの性質の考察に結びつく多くのことをお話いただきました。

今回の学術集会では一般演題として、藤田保健衛生大学七栗記念病院において薬剤師として植物療法に取り組まれていらっしゃる前川ゆか氏による「緩和ケアにおける精油の活用と薬剤師の関わり」といった講演がありました。緩和医療の現場で、心にも身体にも優しく働きかける医療の重要性をお話され、実際にお取り組みになっている精油を活用した事例と効果について具体的にお話いただきました。用いている薬についての整理や治環境の調整、そして食事の工夫といったことを柱に治療と生活の場である緩和ケアでの医療の実践についてのお話は、緩和医療でのハーブの可能性を考える機会を与えていただきました。

学術集会も第5回を迎え新しい研究成果についてのご講演やより実践的な活用についてのご講演が行われました。このような集会による知識の習得や意見交換が、ハーブ療法の確かな発展につながると思いました。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第43号 2018年3月