2017.6.1.

セントジョンズワートとシソ

ハーブ&アロマ コンサルタント

長島司

セントジョンズワート

Hypericum perforatum オトギリソウ科

和名でセイヨウオトリギソウと呼ばれる黄色の花を咲かせる多年草植物で、不安感や気分の落ち込みなどの症状に対するメンタル効果の高いハーブとして知られています。

精油成分と香り

全草を水蒸気蒸留して得られた精油はα-ピネン(1)、β-ピネンを主体としたモノテルペン炭化水素成分と、β-カリオフィレン、γ-ムーロレン、β-セリネンなどのセスキテルペン炭化水素成分を主成分とし、スパチュレノール(2)、カリオフィレンオキシドなどのセスキテルペン含酸素成分が少量含まれ、やや重量感のあるハーバル・ウッディーの香りが特徴です。

セントジョンズワート精油の機能性

Kyan HTら1)は、セントジョンズワート精油に血管新生を抑制する効果があるかどうかについて、一般に使用されている抗血管新生薬を対照に、鶏卵尿漿膜を用いた試験(CAMアッセイ)によって検証しました。その結果、精油濃度50μg/ペレットで血管新生抑制効果を示し、この濃度においては精油による刺激や膜毒性は見られなかったことから、セントジョンズワート精油は傷の治療効果や抗炎症効果をもつ、安全性の高い薬剤として利用できる可能性があるとしています。その他、セレウス菌、リステリア菌、サルモネラ菌など有害菌に対する抗菌効果もあり、食品保存分野での応用も期待できます。

精油成分の機能性

α-ピネン(1)は樹木(特に針葉樹)に多く含まれる、フィトンチッドの主要成分で、森林浴をしているときにほのかに感じる森の香りでもあります。この香りには免疫賦活効果、疲労回復効果、鎮静効果など、さまざまな心理的・身体的作用に関するエビデンスが多く、森林浴効果をもたらす成分として極めて重要です。

ゲルマクレンD(3)はセスキテルペン炭化水素化合物で、多くの精油に含まれ、それぞれの精油が有している生理活性効果の一部を担っています。この化合物は植物間同士の交信手段としても使われていて、菌根菌がアメリカシナノキに寄生して菌糸を伸ばし、トリュフに成長する過程を媒介する成分でもあります。

セントジョンズワートの利用

セントジョンズワートは、うつ症状などの気分の落ち込みを改善する効果があり、自律神経系の不調から起こるイライラなどを軽減し、精神安定に導きます。この効果はヒペリシンと呼ばれるアントラキノン系の赤色色素成分によるものとされ、水にほぼ溶解しないため、チンキ剤やインフュージョンオイルなどにして利用するのが効果的です。その他、ケルセチンやルチンなどの水に溶けやすいポリフェノール類も多く含まれており、ハーブティーにして飲むことで、これらの成分を体内に取り入れることも有効です。


シソ Perilla frutescens イネ科

料理の彩りや魚類特有の臭味を抑える薬味として使われるシソは日本でなじみの深いハーブで、赤シソ、青シソ、ちりめんシソ、青ちりめんシソなどの種類があります。

精油成分と香り

主成分は40%以上含まれるl-ペリラアルデヒド(4)で、その他l-リモネン、リナロール、β-カリオフィレン、特有成分であるシソオール(5)、ペリラアルデヒドの還元体であるペリラアルコールなどで、グリーンノートとスパイシーノートを併せもった、シソ特有の香りです。

シソ精油の機能性

JiWWら2)は、あらかじめストレスを起こさせたマウスに対して、フロキセチンを対照にして、シソ精油3-9μg/kgを投与したときの抗うつ効果の比較試験を実施し、オープンフィールド試験やスイミング試験などの行動試験と海馬中の5-HTとその代謝物および5-HITT、血中IL-1・IL-6およびTNF-αの濃度を調べました。長期ストレス(CUMS)がかかることで、海馬中の5-HTと5-HITTが減少し、血中IL-6・IL-1βおよびTNF-αが増加し、さらに運動機能が低下しました。シソ精油を投与することで、これら長期ストレスによって引き起こされる応答が改善することから、シソ精油には強い抗うつ効果があることが確認され、この効果はセロトニン作動性応答の改善と抗炎症効果によるものであるとしています。

シソ精油成分の機能性

主成分のl-ペリラアルデヒドを、リポポリサッカライド処理で引き起こした炎症に対する抗炎症効果を検証した結果、60&120mg/kgを投与することで、前頭前皮質の5-HTとノルエピネフフリン含量が増加し、血中IL-6とTNF-αが減少しました。この結果から、シソ精油がもつ抗炎症効果は、主成分であるl-ペリラアルデヒドに起因するものであることを示唆しています。シソ精油の特有成分であるイソゴマケトン(6)も同様に抗炎症効果をもった成分で、一酸化窒素合成酵素の生成を抑制することによるとされています。

シソの利用

シソには、精油のほかにシソ科植物に多く含まれるジテルペン・トリテルペン類およびロズマリン酸などのシソ科タンニン類が多く含まれており、これらも含めて体に取り入れたいということで、葉をそのまま食する料理に使っていくのがよいでしょう。

(参考文献)

  1. Kiyan HT et al,The in vivo evaluation of anti-angiogenic effects of Hypericum essential oils using the chorioallantoic membrane assay.,Pharm Biol.2014Jan;52(1):44-50.
  2. Ji WW et al,I Antidepressant-like effect of essential oil of Perilla frutescens in a chronic,unpredictable,mild stress-induced depression model mice.,Chin J Nat Med.,2014,12(10):753-9.1.
  3. 長島司,ビジュアルガイド精油の化学,2012年,フレグランスジャーナル社
  4. 長島司,ハーブティーその癒しのサイエンス,2010年,フレグランスジャーナル社
ハーブ&アロマ コンサルタント
長島司 ながしま・つかさ
農学修士。明治大学大学院農学研究科農産製造学専攻。高砂香料工業(株)にて分析化学、精油化学、精油製造、天然物化学、合成香料の研究開発を行う。退職後、ハーブ&アロマの講演や執筆活動を行う。『ハーブティーその癒しのサイエンス』『ビジュアルガイド精油の化学』(いずれもフレグランスジャーナル社)ほか、執筆多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第40号 2017年6月