2016.12.1.

ユーカリの植物学と栽培、 人との関わり

博士(農学)

木村正典

分類・名称

ユーカリはフトモモ科(Myrtaceae)で、最狭義にはユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus Labill.)、狭義にはユーカリ属(Eucalyptus)の総称、広義にはユーカリ属のほかにコリンビア属(Corymbia)とアンゴフォラ属(Angophora)を含め、最広義はさらにエウカリプトプシス属(Eucalyptopsis)とアルロシンカルピア属(Allosyncarpia)、アリルラストゥルム属(Arillastrum)、ストックウェルリア属(Stockwellia)を含めます。『The Plant List』には、ユーカリ属に822種、コリンビア属に95種、アンゴフォラ属に16種、エウカリプトプシス属に2種、ストックウェルリア属とアルロシンカルピア属、アリルラストゥルム属に各1種が登録されています。

属名のEucalyptus(エウカリプトゥス)は、ギリシャ語の「ευ(eu)(よく)」と「καλΠτω(kalýpto)(覆う)」を語源とし、がく花冠かかんが合着し蓋状に蕾を覆っていること、または乾燥地でもよく大地を覆っていることに由来します。英名のeucalyptus(ユーカリプタス)やeucalypt、gum treeはユーカリ類の総称で、それぞれのしゅの英名には種の特徴によって名前の最後にapple, ash, blackbutt, bloodwood, box, coolibah, gum, ironbark, jarrah, mahogany, mallee, mallet, marlock, messmate, peppermint, stringybark, wandoo, woollybutt, yate, yellow jacketなどがつくため、ユーカリとはわかりづらい名称になっています。

形態

常緑樹ですが、乾季に葉を落とすものもあります。多くが高木で、世界最大級の巨木樹林を形成します。

樹皮は、剥離する剥皮型(stringybark)と剥離しない堅皮型(ironbark)に分けられ、剥皮型は樹皮の形によって、モザイク型(tessellated)、ボックス型(box)リボン型(ribbon)などがあります。

幼木と成木で茎葉の形態の異なる種が多く見られます。幼木では茎が四角く、葉は無柄で対生し有毛で幅広なのに対し、成木では茎が丸く、葉は有柄で互生し鎌形などに細長く、光沢をもった硬質性青灰色~灰白色を示し、表裏が類似し、下垂する傾向があります。

花は散形花序で、蕾は萼と花冠が合着して蓋状になっており、この蓋がとれて開花します。花色は密生する雄蕊おしべの色により、白のほか黄、桃、赤などがあります。果実は蒴果さくかで小さい種子を多数含有します。

堅皮型の樹皮から赤褐色の樹脂を出すのも特徴で、gum treeや、コリンビア属をbloodwoodと呼ぶ由縁になっています。精油は葉肉中の油室に存在し、葉を太陽に透かして見ると、無数の粒として油室を観察できます。レモンユーカリなど、幼木で有毛の葉では、表皮の腺毛にも精油が存在します。油室の精油は葉をちぎらないと香りませんが、腺毛は擦るだけで香り、幼木で防御機能の高いことがうかがえます。

栽培

ほとんどがオーストラリア原産で、オーストラリアでは沿岸にユーカリ、内陸にアカシアの自生林が典型です。雨量や気温によって、1湿潤森林型(forest trees: 分枝の少ない高木の密林)、2草原樹林型(woodland trees: 分枝のある中高木の林)、3マリー型(Mallees: 株元から分枝の見られる10m以下の灌木木かんぼくりん)の3タイプのハビタットに分けられます。

種子は2~3日で発芽します。生育が早く、知らぬ間に高木になっているほか、アレロパシーが強くてほかの植物の生育を阻害するので、育てる場所には注意が必要です。タスマニア原産のものなどを除いて寒さに弱く、氷点下で越冬できないものが多くあります。

人との関わりの歴史

オーストラリア先住民(アボリジナル)は、木材を薪や生活用品、楽器、カヌーなどで利用するほか、葉や樹脂、樹液などを薬用にしてきました。

1770年にJ.クックやJ.バンクスらがオーストラリアでユーカリを発見後、世界中に導入、植栽されました。生育の早い早生樹として緑化に用いられるほか、種によっては、硬くて腐りにくいことからパルプ原料や建築、造船、橋、電柱、枕木、家具、工芸品など世界的に重要な木材資源として、ユーカリ油(精油)をユーカリプトールとも呼ばれるシネオールを中心とした香料、医薬品などの原料として、ユーカリガムやキノなどの樹脂や、樹液、蜜液といったさまざまな分泌物質を医薬品、化粧品、食品、染料、タンニン原料などとして、ユニークな形態から観賞樹や花材などとして、さらには蜜源植物として利用されています。一方で、ユーカリはテルペン類の精油を多く含有するため、積もった枯葉に引火するなど山火事の要因になっています。また、山火事によって他種が死滅したりユーカリの種子発芽が促進されたりするのに加え、アレロパシーの強いことから独占的に進化してきましたが、このことは導入先の生態系に大きな影響を与えることとなり、問題となっています。

Eucalyptus alba Reinw.ex Blume エウカリプトゥス・アルバ
[英]poplar gum , white gum
[原産]豪州北部、ニューギニア南部、チモール
[形態]樹高18m
[利用]樹皮:タンニン原料。果実(インドネシア語Ceplik):矯味矯臭剤.花:蜜源.葉:精油(β-ピネン25%)

Eucalyptus amygdalina Labill. エウカリプトゥス・アミグダリナ
[和]ナガバユーカリ
[英]willowleaf eucalyptus , peppermint tree , black peppermint , red gum
[原産]タスマニア
[形態]樹高30m
[利用]葉:精油(1,8-シネオール、ヒペリトン)

Eucalyptus aromaphloia Pryor&J.h.Willis エウカリプトゥス・アロマフロイア
[英]Creswick apple-box , sceted bark , scent-bark
[原産]豪州南東部
[形態]樹高18m
[利用]葉:精油(1,8-シネオール)

Eucalyptus astringens (Maiden) Maiden エウカリプトゥス・アストゥリンゲンス
[英]brown mallet
[原産]豪州南西部
[形態]樹高25m
[利用]樹皮:タンニン原料。葉:精油(1,8-シネオール40%)

Eucalyptus camaldulensis Dehnh. エウカリプトゥス・カマルドゥレンシス
[英]longbeak eucalyptus , Australian kino , red gum , river red gum
[原産]豪州
[形態]樹高20ー50m
[利用]コアラの食料、樹脂(キノkino):喉疾患、葉:精油(シネオールタイプ:1,8シネオール45-85%、ピネンタイプ:a-ピネン23%、p-シメン22%、a-フェランドレン20%)
<先>樹液:消毒、下痢止め、甘味料

Eucalyptus cinerea F.Muell.ex Benth. エウカリプトゥス・キネレア
[和]ギンマルバユーカリ
[英]argyle apple , mealy stringy bark , silver-leaf stringybark , silver-dollar tree , spiral eucalyptus
[原産]豪州南東部
[形態]樹高6ー15m、幼木葉:対生、無柄、円形~心臓形、銀白色.成木になっても葉の変化が少なくまれた披針形.花:白色
[利用]葉:精油(1,8-シネオール60-70%)

Eucalyptus cordite Labill. エウカリプトゥス・コルダータ
[英]heart-leafed silver gum
[原産]タスマニア
[性状]-15℃まで耐寒性あり
[形態]樹高20m.葉:ハート形で先尖、粉白色。花:白色
[利用]葉:精油(1,8-シネオール)

Eucalyptus deglupta Blume エウカリプトゥス・デグルプタ
[和]レインボーユーカリ
[英]rainbow eucalyptus , Mindango gum , rainbow gum , rainbow bark
[原産]パプアニューギニア、インドネシア、フィリピン(唯一北半球)
[形態]樹高60m、古い樹皮の脱落後、新しい樹皮がしだいに七色に変化して美しい
[利用]葉:精油(ネロリドールタイプ(ナイジェリア産):ネロリドール35%)、シオネールタイプ(コンゴ産):1,8-シネオール35%、クリプトン25%)

Eucalyptus dives Blume エウカリプトゥス・ディウェス
[和]ペパーミントユーカリ
[英]broad-leaved peppermint
[原産]豪州南東部
[形態]樹高25m
[利用]葉:精油(ピペリトンタイプ40-60%)、シネオールタイプ:1.8-シネオール70-80%)
<先>関節・筋肉痛、燻蒸で解熱

Eucalyptus exserta F.Muell エウカリプトゥス・エクセルタ
[英]peppermint ,messmate
[中]窿縁桉(リュウエンアン)(小葉桉、風吹柳とも)
[原産]豪州南東部
[利用]<中>葉(窿縁桉葉):煎液をリウマチや皮膚病の薬、殺虫剤

Eucalyptus globules Labill エウカリプトゥス・グロブルス
[和]ユーカリ・グロブルス(単にユーカリとも)
[英]southern blue gum , Tasmanian blue gum , blue gum , fever tree , blue tree
[中]藍桉(ランアン)(灰楊柳、玉樹、小球按樹、藍油木、楊草果樹、灰葉桉
[亜種]3亜種(ssp. bicostata , sep. maiden , ssp.pseudoglobulus)
[原産]豪州南東端部、タスマニア
[形態]樹高60m。樹皮:紐状に剥離、青灰色。幼木葉:対生、無柄、卵形~広披針形、粉白色、成木葉:互生、有柄、鎌状に曲がった披針形、光沢のある暗緑色、葉長10-25cm、葉幅3-4cm、花:白色
[利用]葉:精油(1,8-シネオール30-70%)。
<中>桉(桉葉樹、藍桉葉):感冒、腸炎、関節炎、膀胱炎、やけど、疥癬、湿疹、解熱、皮膚炎、結膜炎、耳下腺炎。
<先>リュウマチ、腰痛、頭痛、かぜ

Eucalyptus gunnii Hook.f エウカリプトゥス・グンニイ
[和]ユーカリ・グニー
[英]ceider gum , gunnii
[原産]豪州南東部、タスマニア
[性状]-20℃まで耐寒性あり
[形態]樹高30m
[利用]樹液:シロップ、発酵飲料。葉:精油(1.8-シネオール25-40%)。

Eucalyptus leucoxylon F.Muell. エウカリプトゥス・レウコキシロン
[和]ヤナギユーカリ
[英]white ironbark , white gum , yellow gum
[原産]豪州南東部~南部
[形態]樹高15m
[利用]葉:精油(1,8-シネオール15-60%)。花:蜜源

Eucalyptus macarthurii H.Deane & Maiden エウカリプトゥス・マカルトゥリイ
[英]spotted gum
[原産]豪州東部~南東部
[利用]葉:精油(シネオールタイプ:1,8-シネオール30%、ゲラニルアセテートタイプ:ゲラニルアセテート45-70%)

Eucalyptus microtheca F.Muell エウカリプトゥス・ミクロテカ
[英]coolish , coolabah
[原産]豪州北部
[形態]樹高10m
[利用]<先>ヘビに噛まれたとき、頭痛。種子:食用

Eucalyptus obliqua L’Hér エウカリプトゥス・オブリクア
[英]Australian oak , brown top , brown top atringbark , messmate , messmate strigybark , stringy bark , Tasmanian oak
[原産]豪州南東部
[形態]樹高90m
[利用]葉:精油(ビシクロゲルマクレン20%)

Eucalyptus odorata Behr エウカリプトゥス・オドラータ
[英]peppermint box , box gum , black mallee
[原産]豪州南部
[形態]樹高15m
[利用]葉:精油(ビシクロゲルマクレン20%)

Eucalyptus piperita Sm. エウカリプトゥス・ピペリタ
[英]Sydney peppermint , urn-fruited peppermint
[原産]豪州南東部
[形態]樹高20m
[利用]樹脂(キノkino):下痢止め、染料、葉:精油(ピペリトン40-50%)<先>応急処置

Eucalyptus polybractea F.Muell.ex R.T.Baker エウカリプトゥス・ポリブラクテア
[英]blue mallee , blue-leaved mallee , blue-leaved oil mallee
[原産]豪州南東部
[利用]葉:精油(シネオールタイプ:1,8-シネオール85-90%、クリプトンタイプ:クリプトン30-40%、シメン・クリプトンタイプ:p-シメン18%)

Eucalyptus radiata A.Cunn.ex DC. エウカリプトゥス・ラディアータ
[英]narrow-leaved peppermint ,f orth river peppermint
[原産]豪州南東部
[形態]樹高30-50m。花:淡黄色
[利用]葉:精油(1,8-シネオール60-70%)

Eucalyptus robuata Sm. エウカリプトゥス・ロブスタ
[英]swamp mahogany , swamp messmate
[中]大葉桉(ダイヨウアン)
[原産]豪州東部
[形態]樹高30m
[利用]コアラの食料。葉:<中>(大葉桉):感冒マラリア、創傷、湿疹、やけど、喘息、
精油(ピネンタイプ:a-ピネン40-45%、シメンタイプ:p-シメン25-30%)

Eucalyptus sideroxylon A.Cunn ex Woolls エウカリプトゥス・シデロキシロン
[英]mugga , red ironbark , mugga ironbark
[原産]豪州南東部
[利用]葉:精油(1,8-シネオール70%)

Eucalyptus smithii F.Muell. ex R.T.Baker エウカリプトゥス・スミティイ
[英]gully gum , gully peppermint , blackbutt peppermint
[原産]豪州南東部
[形態]樹高40m
[利用]葉:精油(1,8-シネオール70-85%)

Eucalyptus staigeriana F.Muell. ex F.M.Bailey エウカリプトゥス・スタイゲリアーナ
[英]lemon ironbark , lemon-scented ironbark , Cape York lronbark
[原産]豪州北東部
[利用]葉:精油(リモネン30-80%)

Eucalyptus tereticornis Sm. エウカリプトゥス・テレティコルニス
[中]細葉桉(サイヨウアン)(褐桉樹)
[利用]コアラの食料、葉:<中葉>(細葉桉葉)感冒、気脹腹痛、下痢、打撲傷、潰瘍、精油(シネオールタイプ:1,8-シネオール30-40%、シメンタイプ:p-シメン30%)

Eucalyptus tetrodonta F.Muell  エウカリプトゥス・テトゥロドンタ
[原産]豪州北部
[形態]樹高18m。花:乳白色
[利用]<先>新葉:かぜ、傷、咳、下痢、産後、痛み、消毒

Eucalyptus viminalis Labill. エウカリプトゥス・ウィミナリス
[和]マンナゴムノキ
[英]manna gum , ribbon gum , white gum , viminalis
[原産]豪州南東部、タスマニア
[形態]樹高40m
[性状]-15℃まで耐寒性あり
[利用]コアラの食料。樹脂(red gum , manna):甘味料。葉:精油(シネオール45-65%)

Corymbia aparrerinja K.D.Hill & L.A.S.Johnson コリンビア・アパルレリンヤ
[英]ghost gum
[原産]豪州中央部
[形態]樹高20m
[利用]<先>樹脂:傷、痛み、殺菌剤

Corymbia citriodora (Hook.) K.D.Hill & L.A.S.Johnson コリンビア・キトゥリオドーラ
[和]レモンユーカリ
[英]lemon scented gum
[中]檸檬桉(ドウモウアン)(油桉樹、檸檬香桉樹、留香久)
[原産]豪州北東部
[形態]樹高20~40m.。樹皮:鱗状に剥離、白~淡青色、幼木葉:長楕円披針形、有毛。成木葉:披針形、無毛、光沢あり。花:白色
[利用]葉:<先>蚊対策、<中>(檸檬桉葉)下痢腹痛、皮膚病、リウマチ性骨痛、精油(シトロネラール40-90%)

Corymbia dichromophloia (F.Muell) K.D.Hill & L.A.S.Johnson コリンビア・ディクロモフロイア
[英]small-fruited bloodwood , gum-topped bloodwood
[原産]豪州北部
[形態]樹高15m 、花:乳白色
[利用]<先>蜜:かぜ、咳。樹脂:肺疾患、麻酔、歯痛

Corymbia gummiferea (Gaertn.) K.D.Hill & L.A.S.Johnson コリンビア・ダムミフェラ
[英]blood wood , red bloodwood
[原産]豪州東部~北東部
[形態]樹高30m
[利用]<先>樹脂(キノ kino):外傷、下痢

Corymbia polycarpa (F.Muell) K.D.Hill & L.A.S.Johnson コリンビア・ポリカルパ
[英]long-fruited bloodwood
[原産]豪州北部
[形態]樹高18m。花:白色
[利用]<先>外傷、火傷、潰瘍

Corymbia terminalis (F.Muell) K.D.Hill & L.A.S.Johnson コリンビア・テルミナリス
[英]tjuta , joolta , bloodwood , desert bloodwood , plains bloodwood , northern bloodwood , western bloodwood , inland bloodwood
[原産]豪州北部~中部
[形態]樹高18m
[利用]<先>樹脂(キノ kino):消化不良、下痢、胸痛

博士(農学)
木村正典 きむら・ まさのり
ジャパンハーブソサエティー専務理事。 ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わるとともに、園芸の役 割について研究。著書に『二十四節気の暮らしを味わう日本の伝統野 菜』(GB)、『カルペパー ハーブ事典』(監修)(パンローリング)、『ハ ーブの教科書』(草土出版)、『有機栽培もOK! プランター菜園のすべ て』(NHK 出版)など。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第38号:2016年12月