2021.7.8

スパイスのある暮らしを楽しもう
芳香性健胃 カルダモン

大平美弥

これから、このページでお話しをさせていただくことになりました大平美弥と申します。多くの方にスパイスのある素敵な生活を送っていただきたいと願っています。楽しみにしていただけましたら幸いです。

さて、初めてのお話は「カルダモン」。私が最初に勉強したスパイスです。皆さんは「カルダモン」をご存じですか? インドカレーを食べた時、ルゥの中から出てきた経験のある方もいるのでは? そう、緑色のアレです。間違って食べてしまった方、びっくりしたかもしれませんね。

カルダモンは「ショウガ科」の多年生草本。皆さんがご存じのしょうがの仲間となります。そして、スパイスの中でも高級品でもあります。

苗木が結実するまでに4年かかり、その後10年程度は収穫ができますが、それを終えると今度は場所を変えないと実がならず、手間、暇かかるため高級になるのです。収穫は果実が緑色で硬い実が4分の3ほど熟したところで行います。果実は水洗いをしてごみを除き、3~4日間天日乾燥するか、乾燥室で18~20時間乾燥します。カルダモンの果実は緑色で卵型をしており、この外側の皮にはほとんど香りがありません。内側の種子の熟度によって、香味が変わります。意外とびっくりされるのが、この緑色の外皮には全く香りがないということ。インドカレー屋さんに行っても緑の果実のままカレーに入っていることが多いので、外皮に香りが含まれているものと誤解されがちです。

医薬としては、芳香性健胃、駆風剤(ガスの排出をよくする)、消化促進、口腔清涼剤などに用いられます。日本ではあまりなじみのないスパイスですが、その効果をとても重要視している国もあります。

私が初めてこの香りを確かめた時に感じたのは、ロンドンの空気。昔、ロンドンに旅行へ行き、街を散策した時の空気感を連想させました。インドや中近東でよく使われているスパイスではありますが、その香りは香水の分野でも世界各国にて使用され、欧米の人々にもなじみがあるものだそうです。この話をしているとついついロンドンへ行きたくなってしまいます♪

カレーなどのお食事だけでなく、コーヒーといった嗜好品に用いられているのもカルダモンの特徴。中近東ではカルダモンコーヒーと言って、よりおいしく高貴な香りを楽しんでいる人々もいます。皆さんご存じのインドのチャイもカルダモンが入っていて、とても上品な香りを出してくれます。

カルダモンパウダーは、食材との相性がよく、とても使いやすいです。購入する時は敷居が高いイメージがありますが、使い出すとその幅の広さには驚きます。

私は簡単に楽しみたい時、飲み物に入れることが多いのですが、バナナスムージーが一番のお気に入り。ミキサーにバナナ、牛乳、ヨーグルトを少々入れたら混ぜます。コップに注いで上から指ひとつまみ分のカルダモンパウダーをふりかければでき上がり。バナナスムージーは意外と途中で飽きてしまうことがありますが、これで飽きることもなくなります。ちょっと贅沢なバナナスムージー。ぜひお試しください。

最初はパウダーの購入をオススメしておりますが、カレーをスパイスから使って作るお料理上級者さんにはホール(粒)での購入をオススメします。調理の際に使う油にカルダモンを入れ、炒めて香りを移します。香りが移った油はとっても上品。よりおいしくカレーを召し上がることができます。

フランス料理にこんなレシピがありました。鴨肉のソテーにオレンジカルダモンソースがかかっていたのです。シェフに伺うと、オレンジの果汁にカルダモンを入れて煮詰め、バターや塩コショウで味を調整。これはいただくととっても美味でした。

カルダモン、色んな展開ができるのですね!ぜひ、皆さんもカルダモンですてきなレシピを試してみてくださいね。

大平美弥 おおひらみや
1976年東京都生まれ。スパイスライフアドバイザー、スパイスビューティー協会代表、Miya Spice Salon 主宰、スパイスコーディネーターマスター。講演、テレビ、ラジオ出演、レシピ作成、スパイス&ハーブティーの監修、レストランシェフとのコラボ企画などを通して、スパイスの楽しさを紹介している。東京・二子玉川の自宅にて少人数制の教室を開催。 http://www.miya-ohira.com/

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『HERB & LIFE』 VOL.13:2016年6月