2020.12.25

ティートリーの植物学と栽培

当協会理事

木村正典

今回は、ティートリーの特徴や栽培方法などを、植物学の視点で解説します。

分類・名称

分類

ティートリー(tea tree)はオーストラリア原産のフトモモ科(ラテ名:Myrtaceae、英名:myrtle family)メラレウカ属(Melaleuca)植物で、学名は Melaleuca alternifolia(Maiden & Betche)Cheel です。カナ表記にはティーツリーやティートゥリーなどの揺れがあります。

広義のティートリーは、厄介なことにメラレウカ属の総称というよりも、むしろレプトスペルムム属(Leptospermum)の総称として用いられことが多いほか、クンゼア属(Kunzea)などにもティートリーの名のつく植物があり、これらの総称となっています。

フトモモ科のなかま

The Plant List にはフトモモ科に145属 5,970種が、亜種、変種、品種まで加えると 6,141の学名がアクセプトされています。フトモモ科はオセアニア〜東南アジア、南米を中心に熱帯〜亜熱帯に分布します。一部、マートルなど3種からなるミルトゥス属のように地中海沿岸や北アフリカ原産のものがあるほか、日本にも亜熱帯地域にシジギウム属のアデクが自生するほか、小笠原諸島にはシジギウム属のヒメフトモモとメトゥロシデロス属のムニンフトモモの2種が固有種として自生しています。

トモモ科に属する主要な植物を表1に示しました。フトモモ科には、メラレウカ属のティートリーやニアウリ、カユプテをはじめ、レプトスペルムム属のレモンティートリーやマヌカ(檉柳梅ギョリュウバイ)クンゼ ア属のカヌカのほか、ユーカリ類(Eucalyptusを中心に Corymbia、Angophora など数属の総称)、マートル(銀梅花ギンバイカ)、レモンマートル、シナモンマートル、アニスマートル、クローブ(丁子チョウジ)、 オールスパイス(百味胡椒ヒャクミコショウ)などの香りの強いハーブ・スパイスや、フェイジョアやグアバ(蕃石榴バンジロウ)、ジャボチカバ、ピタンガ、カムカムなどの中南米の 果物、フトモモやレンブ、ミズレンブなど東南アジアの果物、ブラシノキやアマゾンオリーブなどの観賞用樹木などがあります。

メラレウカ属には、265種が知られており、そのほとんどがオーストラリア固有種です。メラレウカ属の中でハーブとして 利用されるものとティートリーの名で呼ばれるもの、さらに、87種を有するレプトスペルムム属と43種を有するクンゼア属のうち、ティートリーの名のつくものを表2、3に示しました。

名称

学名のうち、属名のMelaleucaは、古代ギリシャ語で「黒」を意味するμέλας(mélas)と「白」を意味する λευκός(leukós)から成っています。この由来については、白い樹皮が山火事によって真っ黒くなる、あるいは山火事で真っ黒くなった幹から白い樹皮の枝が出ているとか、黒い幹に白い枝の出る種がある、白い樹皮の種と黒い樹皮の種があるなど諸説あります。また、種小名のalternifoliaは「互生葉の」を意味します。

英名は tea tree で、ほかのティートリーと区別するために Australian tea tree や narrow-leaved paperbarkとも呼ばれます。また、チャノキ(Camellia sinensis(L.)Kuntze)との区別から ti treeと表記することがありますが、ti tree がキジカクシ科のニオイシュロラン(Cordyline australis(G.Forst.)Endl.)を指す可能性もあるため注意が必要 です。

広義に総称として用いる時には tea trees と複数形になります。メラレウカ属の総称としては tea trees よりもむしろ、 樹皮が紙のような特徴から paperbarks と、また花の蜜の多いフトモモ科(myrtle family)であることから honey-myrtles と称されるのが一般的です。特に大型のものをペイパーバーク、小型のものをハニーマートルと称する傾向にあります。一方で、tea trees をレプトスペルムム属の総称とするのが一般的であり、レプトスペルムム属を Australian native tea trees とも呼んでいるために混乱を生じています。

tea tree と呼ばれるようになったのは、1770年の英国探検家ジェームズ・クック によるオーストラリア上陸の時にさかのぼります。その際、オーストラリア東海岸の先住民が薬用茶として利用していたことから、エンデバー号の乗組員がそれを真似てお茶として飲んだことに由来するとされています。その時に飲んだ植物にはティートリーやレプトスペルムム属植物など複数あったとされ、それらが tea tree と呼ばれたことから、その後にその仲間の多くの植物に tea tree の名がつくようになったと考えられます。

日本では、精油名はティートリーですが、園芸業界ではティートリーおよびメラレウカ属植物の総称に対してメラレウカと呼んでいるので注意が必要です。

人とのかかわりの歴史

オーストラリア先住民との関わり

ティートリーは、オーストラリア東海岸のニューサウスウェールズ州北部を中心に狭い範囲に自生しています。この地域に暮らすオーストラリア先住民のバンジャラン族は、ティートリーの軟らかい樹皮を、揺りかごや食料運搬などに使うクーラモンと呼ばれる伝統的な木の器や、寝具、カヌーの修理、屋根、雨具、食品のラッピング、包帯などに用いたほか、古くから、咳や風邪の治療に熱した葉の蒸気を吸い込んだり、葉を噛んで頭痛を緩和したり、傷や皮膚感染症治療に葉を湿布して用いたり、葉を粉砕して泥と混ぜて防腐、抗菌に利用したりしていました。

近年の利用

ティートリーオイル(ティートリー油)とかメラレウカオイルとも呼ばれる精油を商業的に生産するようになったのは1926年からで、当初は自生している植物から年間2〜20トンを生産していました。1970年代以降に大規模栽培され、4,000ha以上に年間500トンもの精油が生産されています。近年になって精油の効果が注目されるようになったのは、1920年代に A.R.ペンフォールドによって精油のもつ高い防腐効果などが発表されてからです。第二次世界大戦中は軍の救急箱に不可欠となり、その後抗生物質などの普及で一線を退いたものの1960年以降のハーブブームで再び脚光を浴びるようになりました。

現在では精油による、炎症性サイトカイン産生抑制などの免疫システム正常化作用や、口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルスやインフルエンザウイルスなどに対する抗ウイルス作用、抗炎症作用、抗微生物作用、殺菌作用、原虫類に対する作用、殺ダニ作用、貯穀害虫のヒラタコクヌストモドキ(平擬穀盗)などに対する殺虫作用などのほか、メラノーマやカンジダ症、皮膚感染症、菌類による皮下組織感染症、ふけ症などの治療効果についても研究・報告されています。

一方で、吸入によって鎮咳、去痰、喉の感染症源や痛みの除去、鼻づまり緩和、鎮静などに用いられるほか、ニキビや水虫、虫さされ、かぶれ、火傷、創傷などの皮膚疾患、関節痛や捻挫などの鎮痛、抗炎症、マウスウォッシュで口内炎、口臭、歯周病対策などに外用されています。さらにはコンパニオンアニマルの皮膚疾患にも用いられています。そのほか、化粧品や石けん、シャンプー、洗剤、香水などの香料原料として商業利用さているほか、家庭においても除菌、消毒、消臭、防虫、植物の病害虫管理など、安心安全な天然物質として幅広く用いられています。

精油は内服すると有毒であり、外用でアレルギーを示す人もいます。妊婦や乳幼児はもちろんのこと、子供への使用にも十分注意が必要です。

中薬利用

中薬ではティートリーは利用しませんが、広義のティートリーの中では、中国で白千層ハクセンソウと呼ぶMelaleuca leucadendra(L.)L.の樹皮を白千層と呼び、神経を鎮静させる効能があるとして神経衰弱や不眠の治療に煎じて内服するほか、葉を白千層葉ハクセンソウヨウと呼び、風を去り止痛する効能があるとしてリウマチによる骨痛や神経痛、腸炎腹瀉の治療に煎じて内服、または過敏性皮膚炎や湿疹の治療に煎液で洗って外用します。また、枝葉を蒸して得た精油に鎮痛、駆虫、防腐作用があるとし、耳痛や歯痛、リウマチ痛、神経痛を治すのに用います。

形態・成分

フトモモ科共通の特徴として、常緑木本で、葉は全縁(鋸歯のないこと)、花は両性花で虫媒花、離弁で、油室に精油を含有していることが挙げられます。葉は主として互生で対生のものもあります。

メラレウカ属植物共通の特徴としては、樹皮がペイパーバーク(paperbark)とも呼ばれるように紙のように薄く剥離しやすい形状であること、花は枝の先端付近に穂状すいじょう花序を着生し、小さく目立たない4〜5枚の萼片と花弁、短い雌蕊、長く伸びてよく目立つ雄蕊からなること、果実は節に着生する木質の朔果でとても硬く、山火事などで壊れる性質のあることが挙げられます。

樹高7mに達します。昨年の春から秋にかけて伸びた枝(茎)は、冬期に成長を停止して成長期の境となり、そこから多出集散分枝のように、3〜5本程度の新梢を出します(写真 1)。昨年の枝の先端には頂芽が枯死、脱落した脱落痕を形成する場合が多いですが、頂芽がそのまま伸長して主軸を形成することもあります。

写真 1.ティートリーの茎葉。昨年の春から秋に伸長した枝(茎)の先端からの3〜5本の新梢を分枝。葉は細長く茎を取り巻くように螺旋状に着生。

葉は長さ1〜3.5cm、幅1〜3mmの軟らかい針状で互生を基本とし、茎を取り巻くように螺旋状に着生します。

花は白〜乳白色で、ふわふわした羽毛のような感じは、合着した花糸からなる長い5本の雄蕊に、短い花糸を無数に着生することによります。この花が各節の葉腋に着生し、8〜24個集まって1つの穂状花序を形成しています(写真 2)。

写真 2.ティートリーの花。葉腋に小さい花がたくさん着き穂状花序を形成。羽毛のように見えているのは雄蕊で、一つの花に5本の長い花糸があり、そこから短い花糸が無数に枝分かれして着生している。日本では6月頃に開花。

花芽分化は冬期の最低気温5°C以下で促進されます。開花は初夏の比較的短い期間で、1つの花で6日間程度、1つの花序で2〜3週間、開花します。オーストラリアでは主として11月に、日本では主として6月に開花します。開花後16〜18ヶ月かけて種子が成熟します。果実はカップ型の直径1cm以下の朔果で、1果に26〜57粒の非常に細かい種子を含有します。

精油は各器官に存在する油室中に存在します。ルーペなどで葉を透かして見ると油室を確認することができます(写真 3)。油室は葉肉組織の至る所にランダムに存在します(写真 4)。植物が傷つくと油室が壊れて精油が揮発します。虫などの動物に噛まれた時に敵を撃退したり、傷口から菌類やウイルスなどの微生物の侵入を防いだりする役割があるものと考えられます。

写真 3.ティートリーの葉を光を透過させて向軸側 (表側)から見た顕微鏡写真。丸く見えるのが油室 。黄色味の強い油室は向軸面表皮に近い油室で、緑色味の濃いあるいは輪郭のぼやけている油室ほど背軸面(裏面)に近い所に存在。

写真 4.ティートリーの葉の横断面の顕微鏡写真。上側が向軸面(表面)で下側が背軸面(裏面)。緑色に見えるのは葉緑体。油室(OC1〜3)は葉の様々な場所にランダムに存在する。OC1、OC2の油室には球形の油室の空洞部分に精油が見られる。OC3の油室内部の精油は切片作成時に外部に流出していて見られない。VB1〜4は維管束で、VB2は中央脈(主脈、中肋)の維管束。

商業的に重要な精油成分はテルピネン -4- オールで、ISO4730(2017)規格では、ティートリーオイルには35〜48%含有することになっています。そのほかテルピノレン、γ-テルピネン、p-シメン、β- ピネン、α – ピネンなどを含有します。精油成分としてテルピネン -4- オールを主成分とするもの以外に、1、8- シネオールやテルピノレンをそれぞれ主成分とするケモタイプや1、8-シネオールを主成分としてそのほかの成分組成の異なるケモタイプなどが明らかになっていますが、これらのケモタイプは商業的には品質が劣るとされています。

性状と栽培

ティートリーの自生地は、陽のよく当たる比較的温暖な地域で、沼の周辺や湿地など湿潤な酸性土壌という特徴があります。商業生産のための栽培地も川の氾濫原が多く、しばしば洪水で冠水しますが、長期の冠水にも耐えることができます。

栽培にあたっては、氷点下7°C以下にならないようにすることと、土壌が乾燥しないように気をつければ、土質や日当たりなどは比較的問いません。土壌の乾燥を防ぐには、下草に雑草を生やしたりほかの植物を植栽したりして土を露出させないことです。冬期には腐葉土やバーク堆肥などの植物性堆肥を積んで乾燥を防ぎます。プランター栽培の場合には特に乾きやすいので、鉢受けに若干水が溜まるくらいに管理するとよいでしょう。

繁殖は挿し木も可能ですが、商業生産では一般に種子で行われます。発芽率が低いため、種子を曝気した水に数日浸して、種皮を軟らかくしてから播種します。発芽適温は20~25°Cで、発芽まで1〜3週間を要しますので、その間、乾かさないようにすることが大切です。そのためにはセルトレーなどを用いて室内で播種し、鉢受けに水を薄く張って底面吸水させるとよいでしょう。発芽したら直射日光の最も長く当たる場所で育苗します。育苗中に直射日光に十分当たらないとモヤシのように徒長してしまいますので注意が必要です。

精油生産のための商業栽培では、発芽後半年の苗木を1m間隔で植栽し、定植1年後に樹高2m程度になったら収穫します。強剪定に耐えることから、地面近くで地上部全てを切り取って収穫します。収穫後は1年〜1年半ごとに収穫を繰り返します。

フトモモ科には生育が早く、大木になりやすい樹種の多い特徴があります。ティートリーも放っておくとどんどんと背が高くなり、7mに達するようになります。従って、こまめに収穫して利用するほか、年に1回は剪定して樹高を下げるとよいでしょう。その際、古い枝を下のほうで切って世代交代するようにします。特にプランター栽培の場合は、地上部だけでなく地下部も根がいっぱいになって根詰まりしてきますので、数年に一度は一回り大きなプランターに鉢替えをするか、根を切って、新しい土を足して同じプランターに植え直すなどします。

フトモモ科にはアレロパシー(※1)の強いものが多いのも特徴です。メラレウカ属では米国フロリダに導入されたニアウリがその後帰化してほかの植物の繁殖を抑制し、現在では危険外来植物になっています。ティートリーのアレロパシーがどの程度かは不明ですが、堆肥原料には向かないほか、混植する際にはアレロパシーを意識するようにしましょう。

精油は光合成産物ですから、精油含量を増加させるには日当たりのよい場所で十分に光合成させるようにします。

病害虫にも強く、育てやすいハーブですので、ぜひ1本育てて、収穫した茎葉でチンキを作って常備し、いつでも手軽に自家製の安心安全な除菌スプレーや虫除けスプレー、植物のための防虫抗菌剤などを作ってみてはいかがでしょうか。

(※1)アレロパシー : 植物間相互作用。植物から出る化学物質によってほかの植物、もしくは自分自身の発芽や生育などに何らかの影響を与える作用のこと。

表 1.フトモモ科(Myrtaceae)の主要な植物

主な属・属名 / 特徴

Melaleucaメラレウカ / 265種。英名は tea trees、paperbarks、 honey-myrtles。日本ではメラレウカの名で流通。豪州固有種が主。木材資源や精油原料として利用されるものが多い

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Melaleuca alternifolia (Maiden & Betche) Cheel / ティートリー、 オーストラリアンティートリー、 narrow-leaved paperbark、 メラレウカ / 豪州東部固有種。葉を薬用、精油原料に。テルピ ネン-4-オール35〜48%。ほかにも1、8-シネオールタイプなどのケモタイプがある
Melaleuca cajuputi Powell / カユプテ(cajuput) / 豪州〜東南アジア原産。木材利用のほか、葉を食品の香りづけ、化粧品、薬用、精油原料に。抗菌性がある。1、8-シネオール60%
Melaleuca quinquenervia (Cav.) S.T.Blake / ニアウリ(niaouli)、paper bark tea tree・豪州~ニューギニア原産。薬用、精油原料に。抗菌作用がある。シネオール、ネロリドール、リナロールをそれぞれ主成分とするケモタイプがある

主な属・属名 / 特徴

Leptospermum レプトスペルムム属・87 種。英名は tea trees。広義のティートリー

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Leptospermum scoparium J.R.Forst. & G.Forst. / マヌカ(manuka)、 ニュージーランドティートリー、ギョリュウバイ(檉柳梅) / ニュージーランド原産。蜂蜜がマヌカハニーと呼 ばれピロリ菌駆除効果あり。メチルシンナメイト 13%、β – セリネン 12%、α – セリネン 10%
Leptospermum petersonii F.M.Bailey / レモンティートリー、lemon-scented teatree・豪州東部固有種。精油に抗菌性が報告されている。シトラール45-60%

主な属 / 属名 ・ 特徴

Kunzea クンゼア属43種。オセアニア固有。数種が広義のティートリー

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Kunzea ericoides (A.Rich.) Joy Thomps.・カヌカ(kanuka)、ホワイトティートリー(white tea- tree)、 burgan・ニュージーランド固有種。マヌカと混同されがち。マヌカの葉はとがるがカヌカの葉は軟らかい。α-ピネン38-68%、p-シメン14%

主な属・属名 / 特徴

Eucalyptus エウカリプトゥス属(ユーカリ属)/ 822 種。英 名 は eucalyptus、eucalypt、gum tree。豪州原産種が主で沿 岸部を中心に自生。テルペン類を多く含有して山火事の要因に。アレロパシーが強い。木材資源、樹脂、観賞、精油原料などに利用。重要成分は1、8-シネオール(別名ユーカリプトール)

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Eucalyptus dives Schauer / ペパーミントユーカリ、 broad-leaved peppermint / 豪州南東部原産。樹高 25m に。精油生産や薬用に。 ピペリトンタイプ:ピペリトン 40 ~ 60%、シネ オールタイプ:1、8- シネオール 70-80%
Eucalyptus globulus Labill. / ユーカリ・グロブルス、 blue gum、southern blue gum、Tasmanian bluegum、fever tree、blue tree / 豪州南東端部、タスマニア島原産。最狭義のユーカリ。3亜種がある。樹高60mもの高木になる。幼木葉は対生、無柄、卵形で成木葉は互生、有柄、鎌状披針形。精油生産や薬用に。1、8-シネオール30~70%
Eucalyptus gunnii Hook.f. / ユーカリ・グニー、 ceider gum、gunnii / 豪州南東部、タスマニア原産。樹高 30m に。氷 点下 20°Cまで耐寒性あり。樹液をシロップや飲料に。1、8-シネオール25〜40%
Eucalyptus polybractea F.Muell. ex R.T.Baker / ユーカリ・ブルーマリー、blue mallee、 blue-leaved mallee、blue- leaved oil mallee / 豪州南東部原産。シネオールタイプ:1、8-シネオール85-90%、クリプトンタイプ:クリプトン30-40%、シメン・クリプトンタイプ:p-シメン18%
Eucalyptus radiata A.Cunn. ex DC. / ユーカリ・ラディアータ、narrow- leaved peppermint、 forth river peppermint / 豪州南東部原産。樹高50mもの高木になる。1、8-シネオール60-70%

主な属・属名 / 特徴

Corymbia コリンビア属 / 95種。広義のユーカリに含まれる。英名は Bloodwood

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Corymbia citriodora(Hook.) K.D.Hill & L.A.S.Johnson / レモンユーカリ、 lemon scented gum / 豪州北東部原産。樹高40mもの高木になる。幼木葉は有毛で成木葉は無毛。虫除けや薬用に。観賞樹でも普及。シトロネラ-ル 40-90%

主な属・属名 / 特徴

Myrtusミルトゥス属(ギンバイカ属) / 3種。欧州~アフリカ原産。フトモモ科 基準属。常緑低木。 観賞、薬用、精油原料

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Myrtus communis L. / マートル、 コモンマートル、 true myrtle、ギンバイガ(銀梅花)、 ギンコウバイ(銀香 梅)、ミュルテ、 ミルトゥス / 南欧地中海沿岸原産。古代文明から儀式などに利用。葉や果実を食用や薬用、リキュールなどに。 葉から精油を得る。日本には明治末期に渡来し、造園樹木として定着している。α-ピネン30~40%

主な属・属名 / 特徴

Backhousia バッコウシア属 / 9種。属名は英国 の植物学者 James Backhouse にちなむ。豪州固有。樹高25mに達するものもある。葉長3-12cm、葉幅1-6cm。 香りをもつ樹種が多い

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Backhousia citriodora F.Muell. / レモンマートル、 lemon scented myrtle、lemon scented ironwood / 葉は大きく12cmになる。料理やデザート、飲料、 化粧品、石けん、薬用に。観賞樹としても人気。 主成分はシトラール
Backhousia myrtifolia Hook. & Harv. / シナモンマートル、 grey myrtle、 carrol、carrol ironwood、 neverbreak、 ironwood、 Australian lancewood / シナモンマートルの名は当初、ブッシュフードとして人気だったシナモン臭のする数種から作られたスパイス名だったが現在では本種を指す。主として料理で薬用にも。抗菌作用が明らかに。主成分はエレミシン

主な属・属名 / 特徴

Syzygiumシジギウム属(フトモモ属)/ 1、139 種。東南ア ジア、豪州北東部、 太平洋、アフリカに分布。現在は世界 各地に植栽されてい る。 かつてエウゲニア属 に分類されていた旧 世界原産種の多くが 現在は本属に分類。 エウゲニア属には新 世界原産種が残る。 観賞樹のほか果樹も 多く含まれ、本属の 果実は総称としてローズアップルと呼ば れる。 豪州原産種は lillipillies、brush cherries、 satinash と呼ばれる

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Syzygium aromaticum (L.) Merr. & L.M.Perry / クローブ、 チョウジ(丁子、丁字) / モルッカ諸島原産。乾燥花蕾をスパイスや薬用、香料に。古代から重要なスパイス。オイゲノール 75 ~ 95%
Syzygium anisatum (Vickery) Craven & Biffin / アニシードマートル、 アニスマートル、 ringwood / 当初は高アネトール含量のケモタイプ名だったが、現在では本種を指す。アニス臭が特徴。抗菌作用が明らかに。主成分はトランス-アネトール
Syzygium polyanthum (Wight) Walp. / サラムリーフ(salam leaf)、Indonesian bay leaf / 東南アジア原産。伝統的にナシゴレンなどのインドネシア料理に使われる。殺セレウス菌作用がある
Syzygium aqueum (Burm.f.) Alston / ミズレンブ(水蓮霧)、 watery rose apple / 東南アジア島嶼部〜豪州に自生。果樹、観賞樹のほか、木材、 樹皮を薬用、葉を食用や食品包装に用いられる。果実はレン ブと混同されがち
Syzygium jambos (L.) Alston / フトモモ(蒲桃)、 rose apple、Malabar plum、 / 東南アジア原産。南西諸島で帰化。世界中で果樹や観賞樹として栽培される。多くの別名があり、ほかの植物との混乱も見られる
Syzygium malaccense (L.) Merr. & L.M.Perry / Malay rose apple、 Malay apple、 mountain apple、 Otaheite apple、 pommerac / 東南アジア島嶼部〜豪州原産。カリブ海など世界中の熱帯地域に導入。花も果実も木も美しく、観賞性が高い。果実は生食のほかジャムなどに加工
Syzygium samarangense (Blume) Merr. & L.M.Perry / レンブ(蓮霧)、ジャワフト モモ、wax apple、Java apple、Semarang rose- apple、wax jambu / インドネシア、マレー半島原産。ベル型の赤い果実は生食さ れるほか料理やピクルスに。色の濃い品種よりも薄い品種の方が甘い。東南アジア各地のほか沖縄でも栽培される。水レンブと混同されがち
Syzygium australe (J.C.Wendl. ex Link) B.Hyland / brush cherry、scrub cherry、creek lilly- pilly、creek satinash、 watergum / ーストラリア東部熱帯雨林原産。果実は生食のほか調理やジャムなどに加工。小型の品種も多く、観賞樹として人気
Syzygium cumini (L.) Skeels / アマゾンオリーブ、Malabar plum、Java plum、black plum、jambolan / 南アジア〜東南アジア原産。30mにもなり、木材利用されるほか、果実は生食のほかジャムやジュースなどに加工。薬用にも。アマゾンともオリーブとも縁がないのに日本ではなぜか アマゾンオリーブと呼ばれ、近年観葉植物として人気
Syzygium buxifolium Hook. & Arn. / アデク / 九州南部~琉球諸島、台湾、中国南部、ベトナムに分布。 観賞樹とされる
Syzygium cleyerifolium (Yatabe) Makino / ヒメフトモモ(姫蒲桃) / 小笠原固有種。樹高50cmの低木。黒熟する果実は食用になる

主な属・属名 / 特徴

Acca アッカ属 / 3種。南米原産。3種とも中低木で果実が食用に /

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Acca sellowiana(O.Berg) Burret / フェイジョア / ブラジル〜アルゼンチン原産。観賞樹、果樹として人気。果 実を生食、ジャムや果実酒などに加工。花弁も甘く食べられる。 自家不和合性品種が多い

主な属・属名 / 特徴

Psidium プシディウム属 / 112種。中南米原産

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Psidium guajava L. / グアバ、バンジロウ(蕃石榴) / 果実を生食するほかジュースやジャム、ゼリーなど様々に加工さ れる。葉をグアバ茶として健康茶に。沖縄では観賞樹とされる
Psidium cattleianum Afzel. ex Sabine / テリハバンジロウ(照葉蕃石榴)、キバンジロウ(黄蕃石榴)、Cattley guava、strawberry guava、cherry guava / ブラジル原産。小笠原や沖縄でも栽培される。広義のグアバ に含まれ、グアバ同様に果樹として熱帯各地で広く栽培。グアバより美味しい。日本でも観葉植物として普及。葉をティーに。侵略性が問題視されている

主な属・属名 / 特徴

Plinia プリニア属 / 69種。西インド諸島を含む中南米原産

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Plinia cauliflora (Mart.) Kausel / ジャボチカバ(jaboticaba) Brazilian grapetree / 南米原産の果樹。幹に直接開花、結実。ブドウに似た粒の果実が幹にびっしりとつく。観賞樹としても人気

主な属・属名 / 特徴

Metrosideros メトゥロシデロス属 / 55種。太平洋地域に分布。観賞樹が多い

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Metrosideros boninensis (Hayata ex Koidz.)Tuyama / ムニンフトモモ(無人蒲桃)、オガサワラフトモモ(小笠原蒲桃) / 小笠原固有種。花には赤い雄蕊がよく目立つ

主な属・属名 / 特徴

Callistemon カッリステモン属 / 37種。豪州原産。 広義には属全体がブラシノキ

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Callistemon speciosus (Sims) Sweet / ブラシノキ、カリステモン、ハナマキ(花槙)、 キンポウジュ(金宝樹) / 花糸がブラシ状に着生する観賞樹。山火事で果実が割れて種子を放出

主な属・属名 / 特徴

Rhodomyrtus ロドミルトゥス属 / 21種。東南アジア〜豪州、メラネシアに自生

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Rhodomyrtus tomentosa (Aiton) Hassk. / テンニンカ(天人花)、 rose myrtle / 東南アジア原産。芳香のある桃色の花をつける観賞樹。果実も食用

主な属・属名 / 特徴

Eugenia エウゲニア属 / 1058種。中南米を中心に分布

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Eugenia uniflora L. / ピタンガ(pitanga)、 Brazilian cherry、 Suriname cherry、 Cayenne cherry / ブラジル原産。沖縄でも栽培される。果実がカボチャを小さく した形で和名はカボチャアデクとも。果実を生食するほかジャ ムやジュースなどに加工。葉に含まれるピタンギーナはキニーネの代用

主な属・属名 / 特徴

Myrciaria ミルキアリア属 / 26種。中南米原産

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Myrciaria dubia (Kunth) McVaugh / カムカム(camu camu) / ペルー原産。果実に2800mg/100gものビタミンCがあり、ジュースや菓子、健康食品等に加工。ペルーでコカの代替作物として奨励

主な属・属名 / 特徴

Pimenta ピメンタ属 / 16種。中南米原産。属名は胡椒を意味するポルトガル語の pimenta から

主な種 ・ 学名 / 主な一般名 / 特徴

Pimenta dioica (L.) Merr. / オールスパイス、ヒャクミ コショウ(百味胡椒)、サンコウシ(三香子)、ジャマ イカペパー、マートルペパ ー、ピメンタ(pimenta)、 ピメント(pimento) / 中米原産。クローブ、シナモン、ナツメグの 3 種の香りをもつ とされ、果実がスパイスとしてこれらと併用される。カリブ海 や中米、中東などの伝統料理やソーセージ、ケーキなどに用いる。ラム酒リキュールのピメントドラムの原料。主成分はオイゲノール
Pimenta racemosa (Mill.) J.W.Moore / West Indian bay tree、 bay rum tree、ciliment / カリブ諸島原産。葉を料理に用いる。葉や果実をラム酒に漬け、 濾過または蒸留して作るベイラムと呼ばれる化粧品の原料となる

表 2.メラレウカ属(Melaleuca)の主要なハーブおよびティートゥリーと名のつく植物

学名 / 種名のラテン語読み / <種名の意味> / 一般名 / 樹高 (m) / 葉長 (mm) / 葉幅 (mm)/ 特徴

Melaleuca alternifolia (Maiden & Betche) Cheel  / アルテルニフォリア / 〈互生葉の〉 / ティートゥリー(tea tree)、 オーストラリアンティートゥリー(Australian tea tree)、 narrow-leaved paperbark、 メラレウカ / 7 / 10-35 / 1-2 / 豪州東部固有種。クイーンズランドのメアリーバラからニューサウスウェールズのシドニー付近までの海岸に近い湿地や沼地に自生し、特に、ニューサウスウェールズ北東海岸のリズモア~グラフトン間に集中している。狭義のティートゥリーで、日本の園芸業界ではメラレウカと称している。ティートゥ リーの名の精油は本種で、ティートゥリーオイルやメラレウカオイルとも呼ばれる。葉は針状、花は 白~乳白色で、枝先に8〜 24 花からなる穂状花序を着生。オーストラリア先住民は樹皮を生活利 用するほか葉を薬用とする。精油成分はテルピネン – 4 – オール、1、8-シネオール、γ-テルピネン、p-シメンなどで、皮膚疾患や鎮痛、消炎、免疫賦活、抗菌など、様々に利用されるpage26image21635136page26image21637056

Melaleuca bracteata F.Muell.  / ブラクテアータ / 〈苞葉の〉 / black tea-tree、river tea- tree、mock olive / 3-8 / 10-30 / 1-3 / 豪州東部~北西部にかけて比較的広く分布。樹冠径3〜6m。花は乳白色〜白色で長さ3〜 9cm の粗い穂状花序。果実径3mm。小形、多花で、観賞に向き‘、Revolution Gold’や‘Revolution Green’、矮性の‘Golden Gem’などの品種がある。エレミシンやオイゲノールなどの4つのケモタイプが知られている。葉のメチルオイゲノールは殺虫剤や香水、石けんなどに用いられる。メラレウカの名で‘レッドジェム’、‘レボリューショングリーン’などの園芸品種が出回っている

Melaleuca cajuputi Powell /  カユプティ / 〈この植物のインドネ シア名 kayu putih から〉 / カユプテ(cajuput)、 white samet / 35- 46 / 40- 140 / 8-60 /豪州北部からニューギニア、インドネシア、マレーシア、ベトナムにかけて分布。樹高はメラレウカ 属の中で最も高く、しばしば 35m となり、中には 46m に達するものも存在する。花は白から乳白色、薄黄緑色を呈し、枝の先端に密な花序を着生し、しばしば花後に花序の先から再び葉を生じる。東南アジアでは木材を燃料や建材に、樹皮を船の材料に用いる。オーストラリア先住民は葉を鎮痛や、潰して香りを嗅いで呼吸器感染症対策などに用いる。タイでは薬用茶とする。アジアの多くでは、カユプテ油を塗り薬や吸入剤とする。カユプテ油は 1、8- シネオールを60%含有し、抗菌性があり、駆虫剤、鎮静剤、感染症治療剤などに薬用とされるほか、食品の香りづけや石けん、 化粧品などに用いられる

Melaleuca dealbata S.T.Blake  / デアルバータ / 〈白い粉で覆われた〉/ paperbark、 silver-lieafed paperbark、 karnbor、blue paperbark、 blue-leaved paperbark、honey tree、 swamp tea tree、soapy tea tree、cloudy tea tree / 25 / 50- 130 / 10-30 / 豪州北部、ニューギニア、インドネシアに分布。花は乳白色で、7〜 28 花で 12cm 程の粗い穂状花序を形成する。観賞性も高く、防風林等に利用。蜜源植物。木材は適度に硬く強く、柱などに向く。 精油も得られるが収油量は少ない

Melaleuca dissitiflora F.Muell.  / ディッシティフローラ / 〈まばらな花の〉/ creek tea tree / 2-5 / 13-50 / 1-5.5 /豪州原産。花は白~乳白色で、枝先に10〜30花からなる穂状花序を着生し、花序の先は花後も伸長して葉を着ける。成長が早く、耐霜性があり、降雨量の少ないところで栽培されている。葉の精油は1、8-シネオールが主成分で、収油量も多い。また、ティートゥリーよりもテルピネン-4- オールとp-シメン含量が高いとする報告もあるpage26image21732480page26image21713024page26image21712448page26image21712640page26image21711872page26image21713600page26image21712832page26image21715328page26image21696832

Melaleuca ericifolia Sm. / エリキフォリア / 〈エリカに属に似た葉の〉/ lavender tea tree、swamp paperbark、 精油名:ロザリ ーナ(Rosalina) / 9 / 5-18  / 0.5- 1.7 / 豪州南東部固有種。海岸に近い湿地そばに自生。花は乳白色で、枝先に10〜40 花からなる穂状花序を着生し、花後に花序の先から茎が伸長して葉を出す。豪州先住民は樹皮を絵画の支持体、毛布、屋根等に、葉の精油を薬に、花の蜜を甘い飲み物に用いる。強靭でコンパクトに剪定して観賞に。ロザリーナの名の精油は本種で、葉を水蒸気蒸留して得、アロマセラピーや香水原料のほか、歯科や医療用の調合剤や石けんなどに用いられる。精油成分の違いで、リナロール 60%、 1、8-シネオール16%とするもの、1、8-シネオール35%、リナロール3%とするもの、1、8-シネ オール80%とするものなどのケモタイプがあるほか、収油率も 0.6〜4.5%まで様々page26image21668096page26image21661568

Melaleuca howeana Cheel /  ホウェアーナ / 〈ロード・ハウ島の〉 / Lord Howe Island tea tree、 tea tree / 3-4 / 3-9 / 1-1.6 / 豪州ロード・ハウ島固有種。花は白く、枝先に6〜18花からなる穂状花序を着生し、花後も花序から茎葉を伸長させる

Melaleuca lanceolata Otto  / ランケオラータ / 〈皮針形の〉 / black paperbark、moonah、 Rottnest Island tea tree、 western black tea tree /10 / 3-13 / 0.7-2 / 豪州原産で西南海岸~南海岸の砂丘や、南東部~東部の内陸部の川の近くに分布。花は白か乳 白色で、3〜12花からなる穂状花序を枝先に着生し、花後も茎葉を伸長させることが多い。多花で、観賞樹や街路樹、造園樹木のほか、防風林や垣根に利用される。蜜源植物

Melaleuca leucadendra (L.) L. / レウカデンドゥラ / 〈白い木の〉/
swamp tea tree、weeping paperbark、long-leaved paperbark、 white paperbark、 白千層(ハクセンソウ)/ 20 / 80-270 / 8-40 /
豪州北部、ニューギニア、インドネシアの川沿いを中心に分布。大型で、白~乳白色、薄桃色の樹皮で枝が下垂して枝垂れるのが特徴。花は白~乳白色、緑がかった白色で、枝先に7〜22花からなる3個の穂状花序を着生し花後にその先に茎葉が伸長することも多い。オーストラリア先住民は樹皮を屋根や kap mari とよばれる地面のかまど料理の際の食品ラッピング、死体の包装、カヌー等に用いるほか、砕いた葉をは呼吸器感染症治療に、花を甘い飲み物に用いる。現在は街路樹などの造園樹木とされるほか、木材を建材等に用いられる。精油成分の違いにより、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノールをそれぞれ主成分とするケモタイプが知られている。中薬では樹皮を白千層と呼び鎮静に、葉を白千層葉と呼び止痛に用いる

Melaleuca linariifolia Sm. / リナリイフォリア / 〈リナリアのような葉をもった〉 / snow-in-summer、narrow- leaved paperbark、flax- leaved paperbark / 6-10 / 17-45 / 1-4 /豪州東部固有種で、湿地や水辺の近くに自生。花は白〜乳白色で、枝先に4〜20花からなる穂状花序を着生し時々花後にその先に茎葉が伸長する。防風林や遮蔽林、街路樹、造園などの観賞樹木などに用いられる。火災の危険もある。精油の主成分はテルピネン-4-オールであり、ティートゥリーよりも環境耐性に優れるため代用としてポテンシャルがある。スノーインサマーの名で観賞用に流通している

Melaleuca minutifolia F.Muell. / ミヌティフォリア / 〈小さい葉の〉 / tea tree / 7-10 / 1-5 / 0.6-1.1 / 豪州北部固有種で砂地や岩場に自生する。花は白〜乳白色で、枝先に10花以下からなる短い穂状花序を着生し花後もその先に茎葉が伸長するか枝の途中に着花する。変わった魅力的なフォルムで、熱帯においては遮蔽植物としても使われる。葉の精油も利用される

Melaleuca pauperiflora F.Muell. / パウペリフローラ / 〈花の乏しい〉 / boree / 6 / 3-13 / 0.8-1.7 / 豪州南部~南西部原産。花は白〜淡黄色で、枝先に10〜18花からなる半球状の花序を着生し、 ほとんどが花後もその先に茎葉が伸長する。乾燥地で遮蔽植物として利用される。1、8-シネオールを主成分とする精油が得られる

Melaleuca quinquenervia (Cav.) S.T.Blake / クインクエネルウィア / 〈5脈の〉/ 8-15 / 60-120 / 10-30 /
ニアウリ(niaouli)、paper bark tea tree、broad-leaved paperbark、punk tree / 豪州シドニー以北の東海岸、ニューカレドニア、パプアニューギニア原産。米国ではフロリダのエ バーグレーズに20世紀初頭に導入されて帰化し危険外来植物となっている。氾濫原や湿地に自生し、強酸性土壌でも生育可能。ニアウリはニューカレドニアでの呼び名。樹高も高くなるほうで樹 冠径も5〜10m と大きくなる。花は白色~乳白色、薄黄緑色で、枝先に5〜18花からなる穂状花序を分枝して3個着生し、花後に花序の先端からさらに伸長して葉を展開することもある。造園樹木や盆栽などで観賞される。精油成分の違いにより、シネオール、ネロリドール、リナロール をそれぞれ主成分とするケモタイプが知られており、葉を水蒸気蒸留して化粧品などに利用されるほか、精油の防腐効果や抗菌効果、膀胱炎などの感染症や呼吸器疾患に対する効果などが研究されている。オーストラリア先住民は若葉をちぎって煎じて風邪や頭痛などの治療に用いるほか、シ ネオールタイプから得られた精油を咳や風邪、神経痛、リウマチなどに外用に、そのほかのケモタイプの精油を香水などに利用。また、紙のような樹皮は伝統的にクーラモンと呼ばれる容器や建材、 かまど料理の食品の包装等に利用され、蜂蜜も利用される

Melaleuca stenostachya S.T.Blake / ステノスタキア /〈細い穂状花序の〉/ fibre-barked tea tree、 straight tea tree / 15 / 25-120 / 2-16 / 豪州北部、パプアニューギニア南部原産。花は乳白色で、枝先に6〜12花からなる穂状花序を着生し、時々花後もその先に茎葉が伸長する

Melaleuca teretifolia Endl. / テレティフォリア / 〈円柱形の葉の〉/ banbar、 精油名:ハニーマートル(honey myrtle) / 5 / 30-90 / 0.6-1.2 / 豪州西南部固有種で沼地や低湿地に自生。葉は針状。花は白色で乳白色や桃色系もあり、枝先付近に4〜15花からなる穂状花序を着生。赤花品種の‘Georgina Molloy’は観賞用に挿し木繁殖される。ハニーマートルの名の精油は本種を指し、香水やアロマセラピー等に用いられる。1、8-シネオールを84%含有するケモタイプでは収油率0.2%なのに対し、シトラールを70%含有するケモタイプでは収油率1.5%と高いとする報告がある

表 3.レプトスペルムム属(Leptospermum)およびクンゼア属(Kunzea)でティートゥリーの名のつく植物。

学名 / 種小名のラテン語読み / <種小名の意味> / 一般名 / 特徴・分布

Leptospermum arachnoides Gaertn. / アラクノイデス / <蜘蛛の巣状の>/ spidery tea tree / 樹高1-2m。葉長10–20 mm。葉幅1-3mm。豪州東南部

Leptospermum argenteum Joy Thomps. / アルゲンテウム/ <銀白色の>/ Mt. Royal tea tree / 樹高7m。葉長5-15mm。葉幅2-8mm。豪州東南部

Leptospermum brevipes F.Muell / ブレウィペス / <短い柄の>/ slender tea tree / 樹高4m。葉長6-25 mm。葉幅2-5 mm。豪州東南部

Leptospermum continentale Joy Thomps. / コンティネンターレ / <大陸の> / prickly tea tree / 樹高1-2m。葉長5-13mm。葉幅1-4mm。豪州南東部、タスマニア島

Leptospermum coriaceum (F.Muell. ex Miq.) Cheel / コリアケウム / <革質の> / green tea tree、mallee tea tree / 樹高2m。葉長8-20 mm。葉幅3-5mm。豪州南部

Leptospermum deanei Joy Thomps. / デアネイ / <本種を1883年に収集した鉄道技師 Henry Deane への献名> / Deane’s tea tree / 樹高1-5m。葉長10-15mm。葉幅1-2mm。 豪州東南部

LeptospermumemarginatumH.L.Wendl.exLink / エマルギナトゥム / <先端に浅い割れ目の> / twin-flowerteatree、twinflowerteatree / 樹高1-4m。葉長20-30mm。葉幅2-7mm。豪州東南部

Leptospermum erubescens Schauer / エルベスケンス / <紅色を呈する> roadside tea tree / 樹高2-3m。葉長3-6mm。葉幅2-4mm。豪州南西部

Leptospermum glabrescens N.A.Wakef. / グラブレスケンス / <やや無毛の> / smooth tea tree 樹高1-6m。葉長5-13 mm。葉幅1-3mm。豪州南東部

Leptospermum glaucescens Schauer / グラウケスケンス / <白い粉を被ったような> / glaucous tea tree、blue-green tea tree、smoky tea tree / 樹高3m。葉長10mm。葉幅3-6mm。豪州タスマニア島固有種。沿岸部に自生。花色は白

Leptospermum grandiflorum Lodd. / グランディフロルム / <大きい花の> / eastern tea tree、autumn tea tree / 樹高3m。葉長10-15mm。葉幅4-8mm。豪州東南部、タスマニア島固有種。花色はほかの種よりも大きく白

Leptospermum grandifolium Sm. / グランディフォリウム / <大きい葉の> / mountain tea tree、woolly tea tree / 樹高 1-10 m。葉長 10-35mm。葉幅3-7mm。豪州南東部

Leptospermum jingera Lyne & Crisp / インゲラ / <豪州先住民語で遠くの山岳地で茂みに覆われた国> / stringybark tea tree / 樹高 0.5-2m。葉長6-10 mm。葉幅2-4mm。豪州 南東部

Leptospermum juniperinum Sm. / ユニペリヌム / <ビャクシン属のような> / prickly tea tree / 樹高2-3m。葉長5-15 mm。葉幅1-2mm。豪州東南沿岸部

Leptospermum laevigatum (Gaertn.) F.Muell. / ラエウィガトゥム / <無毛の、平滑な> / coast tea tree / 樹高1-6m。葉長 15-30mm。葉幅5-10 mm。豪州東南部、南西部、タスマニア島

Leptospermum lanigerum (Aiton) Sm. / ラニゲルム / <軟毛を有する> / woolly tea tree / 樹高3-18 m。葉長4-20 mm。豪州南西部、タスマニア島に分布。葉や朔果は有毛。葉は緑灰色。1773 年に持ち帰った種子で欧州で最初に栽培されたレプトスペルムム属。エンデバー号で飲まれたティートゥリーの一つ。豪州先住民はカンガルー用の槍や薬用に

Leptospermum liversidgei R.T.Baker & H.G.Sm. / リウェルシドゥゲイ / <豪州の化学者 Archibald Liversidge への献名> / olive tea-tree / 樹高4m。葉長5-7mm。葉幅1-2mm。 豪州東部沿岸湿地に分布。氷点下で枯死。精油の主成分はシトロネラールで、レモンの香りがあり、虫除けなどに利用される

Leptospermum minutifolium (Benth.) C.T.White / ミヌティフォリウム / <とても小さい葉の> / small-leaved tea tree / 樹高1-2m。葉長2-4mm。葉幅2mm。豪州東部

Leptospermum multicaule A.Cunn. / ムルティカウレ / <茎の多数の> / silver tea tree / 樹高 1.5m。葉長2-20 mm。葉幅 1-3 mm。豪州東南部

Leptospermum myrsinoides Schltdl. / ミルシノイデス / <ミルシネ属のような> / heath tea tree、silky tea tree / 樹高1-3m。葉長5-10 mm。葉幅1-3mm。豪州東南部

Leptospermum myrtifolium Sieber ex DC. / ミルティフォリウム / <ミルトゥス属の様な葉の> / myrtle tea tree、grey tea tree / 樹高1-3m。葉長5-10 mm。葉幅2-5mm。豪州南東部

Leptospermum nitidum Hook.f. / ニティドゥム / <光沢のある> / shiny tea tree / 樹高2m。葉長8-20mm。葉幅3-6 mm。豪州タスマニア島西部湿地林に分布

Leptospermum obovatum Sweet / オボワトゥム / <倒卵形の> / river tea tree / 樹高2m。葉長5-20 mm。葉幅2-8mm。豪州東南部固有種

Leptospermum oreophilum Joy Thomps. / オレオフィルム / <山を愛する> / rock tea tree / 樹高 1-3 m。葉長 10-15 mm。葉幅2-4mm。豪州東部グラスハウスマウンテンズ固有種。 蕾は赤く、花弁は白色

Leptospermum parvifolium Sm. / パルウィフォリウム / <小形の葉の> / lemon-scented tea tree / 樹高1-2m。葉長3-8mm。葉幅1-3mm。豪州東部固有種。花色は白

Leptospermum petersonii F.M.Bailey / ペテルソニイ / <最初に標本を採取した W.J.Peterson への献名> / レモンティートゥリー / lemon-scented tea tree / 樹高5m。葉長20-40mm。葉幅2-5mm。豪州東部固有種。花色は白。ガーデニングに用いられる。レモンの香りの精油の主成分はシトラール55%、シトロネロール18%、シトロネラール12%で、カンジダ・アルビカンスやアスペルギルス・フミガートゥスに対する抗カビ効果を示す

Leptospermum polygalifolium Salisb. / ポリガリフォリウム / <ヒメハギ属のような葉の> / tantoon、jellybush、yellow tea tree / 樹高0.5-7m。葉長10-20mm。葉幅2-3mm。豪州 東部固有種。花色は白、淡緑、淡黄、淡桃

Leptospermum riparium D.I.Morris / リパリウム / <河岸に生じる> / river tea tree、riverine tea tree / 樹高3m。葉長10-25mm。葉幅2-4mm。豪州タスマニア島固有種。多雨林に自生

Leptospermum rotundifolium (Maiden & Betche) F.A.Rodway / ロトゥンディフォリウム / <円形葉の> / round-leaved tea tree / 樹高3m。葉長4-7mm。葉幅4-7mm。豪州東南部固有種。花色は桃

Leptospermum rupestre Hook.f. / ルペストゥレ / <岩上に生ずる> / mountain tea tree、creeping tea tree、alpine tea tree、 prostrate tea tree /樹高1-4m。葉長2-9mm。豪州タスマニア島固有種。山間部に自生。日の当たる山間部に自生。花色は白

Leptospermum scoparium J.R.Forst. & G.Forst. / スコパリウム / <箒状の> / マヌカ(mānuka、manuka)、manuka myrtle、ニュージーランドティートゥリー(New Zealand teatree) broom tea tree、tea tree、common tea tree、ギョリュウバイ(檉柳梅)/ 樹高2-15m。葉長7-20mm。葉幅2-6mm。ニュージーランド原産。豪州南東部やタスマニア島にも自生。マヌカはマオリ語。ギョリュウバイは葉がギョリュウに、花が梅に似ることによる。コンパクトに剪定されて観賞に供される。花色は白、しばしば濃桃。蜂蜜はマヌカハニーと呼ばれ、ピロリ菌駆除効果が知られる。精油の主成分はメチルシンナメイト13%、β-セリネン12%、α-セリネン10%

Leptospermum sericeum Labill. / セリケウム / <絹糸状の> / silver tea tree / 樹高1-3m。葉長10-20mm。葉幅5-10mm。豪州南西部固有種。花色は桃

Leptospermum spinescens Endl. / スピネスケンス / <いくぶんトゲのある> / spiny tea tree / 樹高 0.3-1.5 m。葉長5-15mm。葉幅2-5mm。豪州西部固有種。花弁は白色で中心部が緑色

Leptospermum squarrosum Gaertn. / スクアルロスム / <開出突起等で表面平坦でない> / peach blossom tea tree / 樹高1-4m。葉長5-15mm。葉幅2-5mm。豪州東南部固有種。 海岸などの砂地に自生。花色は白、桃。耐塩性があり、観賞に供される
Leptospermum thompsonii Joy Thomps. / トムプソニイ / <命名者の夫 M.M.H.Thompson への献名> / monga tea tree / 樹高1-6m。葉長10-15mm。葉幅4-6mm。豪州東南部 固有種。国立公園の森林に自生。花色は白

Leptospermum trinervium (Sm.) Joy Thomps. / トゥリネルウィウム / <3脈の葉の> / flaky-barked tea tree、slender tea tree、paperbark tree / 樹高2-6m。葉長9-22mm。葉幅1-6mm。豪州東南部固有種。花色は白。霜に強く、種子または挿し木で繁殖

Leptospermum wooroonooran F.M.Bailey / ウォオロオノオラン / <Wooroonooran(国立公園)の> / wurunuru、mountain tea tree / 樹高1-6m。葉長15-20mm。葉幅3-7mm。 豪州東北部固有種。蕾は濃桃色、花弁は白色

Kunzea ericoides (A.Rich.) Joy Thomps. / エリコイデス / <エリカ属に似た> / white tea tree、burgan、kānuka、kanuka / 樹高18m。葉長6-25mm。葉幅1-5mm。ニュージーランド固有種。花色は白、淡桃。命名当初の1832年から1983年まではレプトスペルムム属とされていた

当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培 や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。 著書に『有機栽培も OK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第53号 2020年9月