2020.12.20

セントジョンズワートの植物学と栽培

当協会理事

木村 正典

今回は、セントジョンズワートの特徴や栽培方法などを、植物学の視点で解説します。

種類・名称  セントジョンズワートの仲間

セントジョンズワートはオトギリソウ科(Hypericaceae)オトギリソウ属 (Hypericum)植物で、広義にはオトギリソウ属植物の総称で用いられ、狭義 にはセイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum L.)を指します。狭義の場合、英名では広義の意味と区別するために common St. John’s wort(コモンセント ジョンズワート)とも呼ばれます。ここではセントジョンズワートを狭義で用います。

オトギリソウ科には9属あり、オトギリソウ属以外で人とのかかわりの深いものはアフリカ原産薬用植物のハロンガ(Harungana madagascariensis Lam. ex Poir.)くらいです。かつて、フクギ科とテリハボク科はオトギリソウ科に分類されていましたが、現在では独立した科とされています。オトギリソウ属植物は英名では広義の意で St. John’s wort と呼ばれる他、日本では特に観賞用園芸品種を中心に属名からヒペリクム(ヒペリカム、ハイペリカムとも)とも呼ばれます。オトギリソウ属にはたくさんの種があり、The Plant List では458種が認められており、 観賞用のものは世界中で栽培されています 。表(1~ )には中薬利用されるものと日本固有種を中心に示しました。

属名のHypericum(ヒペリクム)の語源については、この植物の古代ギリシャ 名のhyperikonもしくはhupéreikosとされ、ギリシャ語で「下の」を意味するhypoと「ヒース(エリカ属植物)」を意味するereíkē の合成語、もしくは「上の」を意味するhupér と「像」を意味する eikonの合成語など諸説あります。種名の perforatum はラテン語で「孔のある」や「貫通した」を意味し、油室(明点)のあることに由来します。

英名、和名の由来については下記の* TOPICS をご覧ください。

人とのかかわりの歴史   

欧米におけるセントジョンズワートとそのなかま

オトギリソウ属(Hypericum) の最も古い名称とされるyperikonを最初に記したのはエウリフォン(B.C.5 世紀)と言われています。古代においては H. perforatum L.とは違うと考えられる種の記載が見られます。ヒポクラテス(B.C.460年頃 -370年頃)と大プリニウス(A.D.23年-79年)が述べたのは H. coris L.、テオフラストス(B.C.371年-287年)が外用に勧めたのはH.lanuginosum Lam.とされています。ディオスコリデス(A.D.40年頃-90年頃)はオトギリソウ属4種(H. triquetrifolium Turra や H. barbatum Jacq. などとされる)を紹介し、 蜂蜜水と共に飲むと座骨神経痛や胆汁排泄物の排出、外用で火傷、種子はマラリア熱によいと述べています。 聖ヨハネ(B.C.6 ~ 2年頃 -A.D.36年)の死後、セントジョンズワートを最初に用いたのは、軍医プロスクリデス(A.D.1世紀)とも聖コルンバ(521年-597年)ともいわれています。N. カルペパー(1616 年 -1654年)はセントジョン ズワートを最も優れた傷薬とし、止血や腎臓浄化、月経促進、てんかん・まひ・痙攣・ 関節痛を抑えるとしています。最初のロンド ン薬局方(1618 年)には、花をオイルに浸けて2~3週間、太陽に当てた抽出液を傷薬として用いることが書かれています。北米のネイティブインディアンは、堕胎や下痢止め、解熱、止血、蛇の咬傷、皮膚疾患などに、固有種や導入種を用いてきました。

一方で、セントジョンズワートは「悪魔が逃げる」を意味するラテンのFuga daemonumとも呼ばれ、紀元前から近代に至るまで、延命長寿や結婚の占い、悪魔・火災・精神疾患などから守る儀式や慣習などに用いられてきました。

1980 年代以降、セントジョンズワートの抗鬱作用の研究が急激に進歩し、現在では多くのオトギリソウ属植物で、抗鬱や抗酸化、抗癌、抗障害受容、抗炎症、抗菌、殺虫などに関する報告が見られます。

中薬としてのセントジョンズワートとそのなかま

中薬ではセントジョンズワートの全草を「貫葉連翹(カンヨウレンギョウ)」などと呼び、静熱、解毒、収れん、止血、利湿などの効能の他、抗菌、利胆、駆虫などの作用があるとされ、喀血、吐血、腸風下血、外傷出血、リウマチ痛、 口や鼻の瘡、腫毒、火傷、耳下腺炎、咽喉熱などを治すのに用います。内服には煎剤を服用し、外用の場合には新鮮なものをつき潰して塗布したり、乾燥させて粉末にして塗布するか、新鮮な葉を揉んで柔らかくして鼻に詰めたりします。

この他にも、十数種のオトギリソウ属植物を中薬で用います(表:中薬利用されるなかま 参照)。

日本のオトギリソウ属植物

日本には在来種が30以上あり、ほとんどが日本固有種です。そのうち、各地に分 布するオトギリソウを中心に古くから薬用としてきました。寺島良安(てらじまりょうあん)の『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』(1712年)にはオトギリソウの名前の由来や形態的特徴、折傷、腫物に効くことなど が記されています。民間療法には全草を乾燥させてチンキとし、リウマチや神経痛予防に用いる方法も伝えられています。日本各地に固有種があり、埋もれた資源として今後の活用が期待されます。

形態・分泌組織

形態

オトギリソウ属には低木、多年草、一年草があり、茎は稜と呼ばれる角張った隆起線を2本もしくは4本有するか、稜がなく円柱状となります。葉は対生で無毛を基本としますが、輪生のものや有毛のものもあります。花は集散花序で、径1~2cmの小 型のものが多く、観賞用の大きいものでは 6 ~ 10cm となります。一日花で、朝開花して夕方しぼみます。萼は5つに深裂し、離弁の花弁も5枚です。花冠は鮮やかな黄色でややオレンジがかるもの もあります。雄蕊は黄色で多数あり、花糸の基部で癒合して3もしくは5束となります。子房は3もしくは5心皮で3もしくは5室からなり、花柱も3も しくは5本です。果実は蒴さく果かでたくさんの種子を含有し、乾燥すると裂開します。セントジョンズワートは花柱が基部から3本に分離し、雄蕊は50本以上で3束となります。

肉眼でも見える分泌組織

オトギリソウ属植物では、ヒペリシンや精油の分泌組織が肉眼でも観察できま す。その分泌組織は見た目から、点状のものと線状のものに分けられ、それぞれに、無色透明、黒色、赤色のものがあります 。 これらを一般には明点(油点とも; translucent gland, pale gland)、黒点(暗点とも;black nodule, black gland,dark gland)、赤点(red nodule)、明線 (油線とも;secretory canal)、黒線(black canal, dark canal)、赤線(red canal) などと呼び、点のものをまとめて腺点、点と線をまとめて黒腺、明腺、全てをまとめて腺体、油腺などと称します。なお、鋸歯の先端の点のものは有柄となること があり、腺球とも呼ばれます。これらの分泌組織は細胞と細胞のすき間(細胞間隙)が大きくなってできた空洞です。

分泌組織のうち、一般に球形の空洞に 精油を蓄えるものを油室(ゆしつ)と呼び、管状の空間に精油を蓄えるものを油管(ゆかん)(油道:ゆどうともいう)樹脂を蓄えるものを樹脂道、乳液を蓄えるものを乳菅と呼びます。このうちセリ科の油管や針葉樹の樹脂道は、道管や師管のように全草つながっています。

オトギリソウ属植物の場合、明点や明線には精油を含有するとされることから、明点は油室、明線は短い油管と考えられます。また、黒点や赤点、黒線、赤線には暗赤色色素であるヒペリシンやプソイドヒペリシンなどを含有するとされていますが、これらの分泌組織としての専門用語はありません。これらの分泌組織は茎、葉、萼 、花冠 、葯で見られ、特に萼と花冠に多く、しかも背軸面:はいじくめん(裏面)と縁に多く存在する特徴があり、大切なところを外敵から守る防衛手段と考えられます。これらは肉眼でも十分に観察できますが、ルーペがあるとよりはっきりと観察できます。

セントジョンズワートでは、茎の角張った2本の稜線に黒点が、葉にたくさんの明点とまばらの黒点が、萼片と花弁に黒線と特に縁に並ぶ黒点が、葯に黒点が見られます。黒点と黒線の多い萼と花冠はヒペリシン抽出に向いています。

セントジョンズワート分泌組織の顕微鏡写真。

葉には黒点の他、明点(油室)が見られる。黒点と黒線は下から光を透過させると赤味を帯びて見える。

花弁には黒点(特に縁に)と黒線(背軸(裏)側)がある。黒点と黒線は下から光を透過させると赤味を帯びて見える。

葯にも先端に黒点がある。

性状と栽培

巧妙な発芽システム

セントジョンズワートは多年生草本で冬期に落葉します。寒さには強く、日本全国で露地栽培が可能です。

繁殖方法は種子や株分け、挿し木です。 自然条件下では秋に自然に落ちた「こぼれ種」が翌春に発芽します。3 室からなる1つの蒴果に30~500個、1株当たりで15,000~30,000個の種子が形成されるといわれています。

種子には休眠があり、採種後すぐに播種する「取(と)り播(ま)き」で問題になります。休眠打破に低温は必要なく、乾燥条件下に3 ~ 4ヶ月置く「後熟(こうじゅく)」が必要です。

種子は1mmほどで種皮がベタベタしてお り 、 動物などに付着して遠くまで運ばれるようになっていると同時に、種皮に発芽抑制物質をもっています。したがって、発芽率向上には発芽抑制物質の除去を目的とした種子洗浄が有効です。

また、100°Cの高温処理で発芽率の向上することが知られています。これは、原産地の乾燥草原の火事の後に優先的に繁殖するための戦略かもしれません。

この他、発芽に光を必要とする顕著な「好光性(こうこうせい)」を示します。特に長日の影響を受け、15時間日長で 45%の発芽率が、17時間日長では 96%にまで上昇するという報告があります。したがって、播種後、覆土(ふくど)をしないか薄くして乾かないよう管理し、発芽するまでは、夜間にも光のあたる室内に置くとよいでしょう。

種子の寿命は50年ともいわれるほど長く、5~6年では発芽率の低下は見られず、16年で50%という報告もあります。

地表付近に張った根から新芽を出して子株を芽吹いたり、地面に接して匍匐した茎から不定根が出て根づいたりしますので、 これらは株分け可能です。挿し木をする場合はその年伸びた茎が充実し始める梅雨時が最適です。

セントジョンズワートは長日植物(ちょうじつしょくぶつ)で、日長13時間では開花せず、15時間で開花、17時間以上で安定的に開花するという報告があります。日本では夏至の日長が14 ~ 15 時間前後ですので、南ほど開花期の 短い傾向にあります。日長に反応する光は 50 lux 程度の明るさとされていますので、 開花を早めたり開花期を長くする場合には、街灯付近(直下で 50 ~ 100 lux)や窓辺(室内で 100 lux 程度)など夜も明るい場所で育ててみてください。

オトギリソウ属植物には、ヒペリシンに光増感作用があるため、これを食べて陽に当った動物の皮膚障害が報告されており、牧草地に帰化した外来種で問題になっています。 育てているものがエスケープしないように注意しましょう。

表に示すように、日本各地にオトギリソウ属植物の固有種があり、セントジョンズワートと同様の利用法が期待されます。各地域での固有種の有効利用はそれらを絶滅から救う手段にもなりますので、今後の資源評価と活用を期待したいです。

*TOPICS 和名「西洋オトギリソウ」の由来

セントジョンズワートの和名は「西洋(セイヨウ)オトギリソウ」といいます。オトギリソウは漢字で書くと「弟切草」です。“弟を切る草”とは何やら不穏な名前ですが、これはこの 草にまつわる伝説からきています。あるところに鷹匠の兄弟がおり、秘伝の薬草で鷹の傷の治療をしていました。ところがある日、弟が薬草の秘密をうっかり他人に漏らしてしま いました。それを知った兄は怒りのあまり弟を斬り殺してしまったというのです。以来、この薬草は弟切草と呼ばれるようにな り、花言葉の「恨み」「秘密」もこの伝説が元になっているといわれます。なお、日本で広く見られるオトギリソウは、東アジア原産種です。

一方、英名の「セントジョンズワート」は「聖ヨハネの草」という意味で、由来については諸説ありますが、その一つが聖ヨハネの誕生日である夏至の時期に花を咲かせるためという説です。また、葉にある黒い斑点は聖ヨハネを斬首した時の血という言い伝えもあり、ヨーロッパでの花言葉は「迷信」「不信」「敵意」などが知られています。和名、英名、いずれも似たような 恐ろしい由来をもつのは興味深いですね。

主要なセントジョンズワートのなかま(Hypericum 属植物) 学名は The Plant List に従った

中薬利用されるなかま(セントジョンズワート以外、以下、学名のアルファベット順 )

学名・ラテン語読み・(種名の意味)・一般名  Hypericum perforatum L. ヒペリクム・ペルフォラトゥム(孔のある、 貫通した)セントジョンズワート、セントジョーンズ ワート、セイヨウオトギリ(西洋弟切)、セイヨウオトギリソウ(西洋弟切草)、Saint John’s wort, St. Johns wort, common St. Johns wort, Perforate St Johns’- wort, Klamath weed, goat weed、貫葉連翹(カンヨウレンギョウ)
分布 欧州、西アジア、北アフリカ。新大陸、オセアニアに帰化。日本にもハーブとして普及
性状 多年草
草丈(cm) 30〜60
葉長(cm) 1.5〜3
花径(cm) 1.5〜3
その他の特徴 次の3亜種がある。コゴメバオトギリ(小米葉弟切、中国金絲桃;subsp. chinense N.Robson)は中国原産で日本にも帰化して自生しており、葉に明点が散在するが花弁にはなく、茎、葉と花弁の縁、雄しべの先端に黒点がある。
subsp. songaricum(Ledeb. ex Rchb.)N.Robsonは中央アジアに分布し、花弁に淡い色の腺がある。
subsp.veronense(Schrank)H.Lindb. は南アジアから 中央アジアに分布し、葉身に明点がるほか葉身と萼片、花弁の縁に数個の黒点がある。
中薬利用 貫葉連翹(カンヨウレンギョウ)の他、小汗淋草(ショウカンリンソウ)、小過路黄(ショウカロオウ)、小種黄(ショウシュオウ)、赶山鞭(カンサンベン)、千層楼(センソウロウ)、上天梯(ジョウテンテイ)、小対月草(ショウタイゲツソウ)、小対葉草(ショウタイヨウソウ)、小種癀薬(ショウシュコウヤク)とも呼ばれる。効能や用法は本文参照。

学名・ラテン語読み・(種名の意味)・一般名 Hypericum ascyron L. ヒペリクム・アスキロン(オトギリソウ属植物のギリシャ古名)トモエソウ(巴草)、レンギョウ(連翹)、クサビヨウ(草未央、草美容)、ビヨウオトギリ(未央弟切、美容弟切)、great St. Johns’wort, giant St. John’s wort、黄海棠(オウカイドウ)、湖南連翹(コナンレンギョウ) 
分布 日本在来。北海道〜 九州。東アジア、ベトナム、北米東部
性状 多年草
草丈(cm) 50〜150
葉長(cm) 5〜12
花径(cm) 5
その他の特徴 雄蕊は多数で5束、花柱は5裂。花弁がスクリューのようにねじれて巴形を呈する。葉には明点がたくさんあるが黒点はない。萼片の縁に黒点がある。亜種のヒメトモエソ(subsp.gebleri(Ledeb.)N.Robson)は北海道から周辺アジアに分布し、草丈60cm、葉長3〜6cm。亜種のgreat St. John’s wort(subsp. pyramidatum(Aiton) N.Robson)は北米自生種。
中薬利用 全草を紅旱蓮(コウカンレン)と呼び、平肝、止血、敗毒、消腫の効能があり、頭痛、吐血、打撲傷、瘡癤を治すのに、果実を含む地上部を乾燥させ、煎じるかチンキにして内服する。

学名・ラテン語読み・(種名の意味)・一般名 Hypericum attenuatum Fisch. ex Choisy ヒペリクム・アッテヌアトゥム(次第に尖った)シナオトギリ(支那弟切)、赶山鞭(カンサン ベン)、小金糸桃(ショウキンシトウ)、小連翹(ショウレンギョウ)
分布 中国、朝鮮、 モンゴル、 シベリア
性状 多年草
草丈(cm) 60
葉長(cm) 2〜3
花径(cm) 2
その他の特徴 雄蕊は90本ほどで3束となり、花弁よりも短く1cmほど。茎、葉、萼片、花弁とそれらの縁および葯に黒点を有する。葉と萼片には明点もある。
中薬利用 全草を赶山鞭(カンサンベン)と呼び、止血、鎮痛、通乳の効能があり、喀血、吐血、子宮出血、リウマチ性関節痛、神経痛、打撲傷、乳汁欠乏、乳腺炎、創傷出欠、疔瘡腫毒を治すのに、全草を煎じて内服するか、つき潰してあるは粉末にして外用する。

学名・ラテン語読み・(種名の意味)・一般名 Hypericum bellum H.L.Li ヒペリクム・ベルルム(美しい)土連翹(ドレンギョウ)、美麗金糸桃
分布 中国、ヒマラヤ
性状 常緑低木
草丈(cm) 100〜150
葉長(cm) 2〜6
花径(cm) 3
その他の特徴 茎は赤褐色でよく分枝する。花柱は5裂。葉に明点が、萼片には明線がある。亜種に subsp. latisepalum N.Robson がある。
中薬利用 果実を土連翹(ドレンギョウ)と呼び、静熱、解毒、 去風、除湿、涼血、止血、殺虫、止痒の効能があり、肝炎、感冒、痢疾、口腔炎、回虫病、皮膚炎を治すのに、果実を乾燥させて煎じて内服する。

学名・ラテン語読み・(種名の意味)・一般名 Hypericum elodeoides Choisy ヒペリクム・エロデオイデス(湿地型の) Himalayan St. John’s wort、遍地金(ヘンチキン)
分布 ヒマラヤ、中国、ネパール、ミャンマー、インド北部
性状 一年草
草丈(cm) 30〜50
葉長(cm) 1〜5
花径(cm) 1
その他の特徴 雄蕊は60本ほどで3束となり、花弁より短く1cm ほど。花柱は3裂。蒴果は長さ0.5 ~ 0.8cm。葉身と萼片、花弁には明点、明線のほか縁に黒点を有する。
中薬利用 全草を遍地金(ヘンチキン)と呼び、収渋、収れん、止寫、解毒の効能があり、慢性下痢、毒蛇による咬傷を治すのに、全株を煎じて内服するか、つき潰して外用する。

学名・ラテン語読み・(種名の意味)・一般名 Hypericum erectum Thunb. ヒペリクム・エレクトゥム(直立した) オトギリソウ(弟切草)、アオグスリ(青薬)、 タカノキズクスリ(鷹の傷薬)、ヤクシソウ
(薬師草)、ボンバナ(盆花)、小連翹(ショウレンギョウ)
分布 日本在来。日本各地。樺太南部、南千島、朝鮮
性状  多年草
草丈(cm) 60
葉長(cm) 2〜5
花径(cm) 2
その他の特徴 雄蕊は多数で3束、雌蕊は3裂。葉や萼片、花弁、雄蕊の頂端に黒点を有し、特に葉と萼片の縁に密に点在する他、萼片と花弁では黒線が目立つ。
富士周辺から秩父に分布するフジオトギリ( var. caespitosum Makino)、 ホソバオトギリ(f. angustifolium(Y.Kimura)Y.Kimura)、コエダウチオトギリ(f. debile R.Keller)、オキナワオトギリ(f.lutchuense(Koidz.)Y.Kimura)、ヒロハオトギリ(f.papillosum(Y.Kimura)Y. Kimura)、ヨサオトギリ(f.takeutianum(Koidz.)Y.Kimura)、トガリバオトギリ(f. vaniotii(H.Lév.)Y.Kimura)の1変種6品種がある。
中薬利用 全草を小連翹(ショウレンギョウ)と呼び、活血、止血、調経、通乳、消腫、止痛の効能があり、吐血、鼻出血、子宮出血、月経不順、乳汁不 通、癤腫、打撲傷、創傷出血を治すのに、全草を煎じて内服するか、つき潰して外用する。

学名・ラテン語読み・(種名の意味)・一般名 Hypericum japonicum Thunb. ヒペリクム・ヤポニクム(日本の)ヒメオトギリ(姫弟切)、matted St. John’s wort, Japanese St. John’s wort、地耳草(チジソウ)
分布 日本在来。南関東〜九州。東アジア〜南アジア〜オセアニア
性状 一年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 0.5〜0.8
花径(cm) 0.5〜0.8
その他の特徴 明点はあるが黒点はない。花は一日花。雄蕊は10〜20 本。雌蕊は3裂。本種と同一種のコケオトギリ(苔弟切)は雄蕊が5〜10 本と少ない点でヒメオトギキと区別され、東アジアに分布し、日本各地に自生する。
中薬利用 全草を地耳草(チジソウ)と呼び、静熱、利湿、消腫、解毒の効能があり、伝染性肝炎、瀉痢、小児驚風、疳積、扁桃炎、腸癰、癤腫、蛇による咬傷を治すのに、全草を乾燥させて煎じてあるいは新鮮なものをつき汁にして内服するか、煎剤あるいはつき潰して外用する。

学名・ラテン語読み・(種名の意味)・一般名 Hypericum monogynum L. ヒペリクム・モノギヌム(一つの雌蕊の)ビヨウヤナギ(未央柳、美容柳)、Chinese hyperikum、金糸桃(キンシトウ)、金糸海棠(キンシカイトウ)、土連翹(ドレンギョウ)
分布 台湾、中国。日本には江戸時代に渡来し各地で栽培。世界中で栽培
性状 半常緑低木
草丈(cm) 70
葉長(cm) 4〜9
花径(cm) 3〜9
その他の特徴 和名は楊貴妃の暮らした未央宮から。葉はやや厚く十字対生。雄蕊は25〜40 本で、5束となり、花弁よりやや長く2〜3cmあって華やか。花柱は子房の3〜5倍の長さで先端が5裂。蒴果は長さ1cm。葉には多数の明点があるが黒点はない。萼片には明線と明点がある。葯には明点がある。日本各地で観賞用に広く普及。
中薬利用 根を含む全株を金糸桃(キンシトウ)と呼び、清熱、解毒、風湿除去、消腫の効能があり、リウマチ性腰痛、癤腫、蜂刺傷、蛇による咬傷を治すのに、新鮮もしくは乾燥させた全草を煎じて内服するか、新鮮な根をつき潰して外用する。また、果実を金糸桃果実(キンシトウカジツ)と呼び、肺病と百日咳を治すのに煎じて内服する。

学名・ラテン語読み・(種名の意味)・一般名 Hypericum patulum Thunb. ヒペリクム・パトゥルム(僅かに開いた)キンシバイ(金糸梅)、goldencup St. John’s wort, yellow mosqueta、金糸梅(キンシバイ)、雲南連翹(ウンナンレンギョウ)
分布 中国。 日本には江戸時代に渡来し北海道以外で栽培、関東以西で一部が帰化。
性状 常緑〜半常緑低木
草丈(cm) 100
葉長(cm) 2〜6
花径(cm) 3.5〜5
その他の特徴 葉はやや厚い。雄蕊は花弁よりも短く50 ~ 70本で、5束となり、長さ1cm。花柱は子房よりやや短く基部から5本に分離。蒴果は長さ1cm。葉には明点が密にあるが黒点はない。萼片には明線と縁に有柄の明点がある。花弁には多数の明線がある。葯には明点がある。寒さに弱く北海道以外で観賞用に広く普及。
中薬利用 全草を芒種花(ボウシュカ)と呼び、静熱、解毒、利尿、瘀を行らす効能があり、肝炎、風邪、痢疾、淋病、疝気、筋骨疼痛、扁桃炎、歯痛、鼻出血、黄水瘡、打撲傷を治すのに茎葉や果実を煎じて内服や外用するか、つき潰したり、粉末にして外用する。

学名・ラテン語読み・(種名の意味)・一般名 Hypericum przewalskii Maxim. ヒペリクム・プルゼワルスキイ(探検家ニコライ・プルジェヴァリスキーへの献名) Przewalski’s St. John’s wort、突脈金糸桃(トツミャクキンシトウ)
分布 中国
性状 多年草
草丈(cm) 40
葉長(cm) 3〜9
花径(cm) 2〜4
その他の特徴 雄蕊は15〜30本で5束。花柱は5裂。葉には明点が密にあり、縁にも密に並ぶ。萼片にも明点があり、縁に多い。花弁には明線があり、縁には腺はない。
中薬利用 全草を大対経草(ダイタイケイソウ)と呼び、活血、調経、止血、止痛、消腫、風湿除去の効能があり、出血、月経不順、打撲傷、骨折、小便 不利、蛇による咬傷を治すのに、全草を乾燥させて煎じて内服するか、粉末にして外用する。

学名・ラテン語読み・(種名の意味)・一般名 Hypericum sampsonii Hance ヒペリクム・サンプソニイ(植物学者サン プソンへの献名)ツキヌキオトギリ(突抜弟切)、Sampson St. John’s wort、元宝草(ゲンホウソウ)、対月草(タイゲツソウ)
分布 日本在来。高知、九州、喜界島、奄美大島、中国、ベトナム、ミャンマー、インド
性状 多年草
草丈(cm) 100
葉長(cm) 3〜6
花径(cm) 1
その他の特徴 葉は薄く基部で広く融合して茎が突き抜けるように見える。花は小さく、萼片と花弁は同じ長さ。雄蕊は多数で3束。花柱は2本。葉には明点があるか黒点があり、縁に黒点が並ぶ。萼片には黒点が入ることがある。花弁には明点はあるが黒点はない。葯には黒点がある。蒴果に黒点を有する。
中薬利用 全草を元宝草(ゲンホウソウ)と呼び、活血、止血、解毒の効能があり、吐血、鼻出血、月経不順、打撲捻挫、癰腫瘡毒、蛇による咬傷を治すのに、全草を乾燥させて煎じて内服するか、新鮮な全草をつき潰して外用する。

海外のオトギリソウ属植物(以下、学名のアルファベット順)

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum androsaemum L. ヒペリクム・アンドゥロサエムム(ディオスコリデスによるオトギリソウ属植物の古名)
一般名 コボウズオトギリ(小坊主弟切)、Tutsan, shrubby St. John’s wort , sweet-amber
分布 欧州〜西アジア。オセアニアに帰化。日本でも観賞用に普及
性状 半落葉低木
草丈(cm) 90
葉長(cm) 8〜12
花径(cm) 2
その他の特徴 雄蕊は20〜25 本で花弁とほぼ同じ長さで華やか。雌蕊は大きく膨らみ花柱は3裂。果実は光沢のある長さ1cm前後の楕円形の蒴果で、熟すと赤、紫、黒と変化し観賞される。葉にまれに黒点が見られる。ヒペリシンを含有。ヒペリカムの名で観賞用として普及しているオトギリソウ属植物の一種。オセアニ アでは牧草地の外来雑草として駆除に苦慮している。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum barbatum Jacq. ヒペリク ム・バルバトゥム(長軟毛のある)
一般名 bearded St. John’s wort
分布 ギリシアを中心とした南欧
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 3
花径(cm) 2
その他の特徴 葉には明点とまれに黒点があり、縁には黒点がる。萼片には黒点や黒線があり、縁にはない。花弁には黒点があり、縁にもみられる。精油成分としてピネン類、リモネン、カリオフィレンなどが報告される。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum calycinum L.ヒペリクム・カリキヌム(萼の)
一般名 セイヨウキンシバイ(西洋金糸梅)、ヒメキンシバイ(姫金糸梅)、Rose-of-Sharon, Aaron’s beard, grear St. John’s wort, creeping St. John’s wort, Jerusalem star, goldflower
分布 ブルガリア〜トルコ。オセアニアに帰化。世界各地で普及。日本でも 観賞用に普及
性状 常緑低木
草丈(cm) 60
葉長(cm) 5〜10
花径(cm) 5〜10
その他の特徴 キンシバイよりもビヨウヤナギに似る。地下茎で広がり、グランドカバーとして世界中で利用。葉には僅かに香りがある。雄蕊は多数で葯が赤みを帯びる。花柱は基部から5本に分離。オセアニアでは環境雑草。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum coris L. ヒペリクム・コリス(瞳)
一般名 heath-leaved St. John’s wort, yellow coris
分布 欧州アルプス西部
性状 常緑低木
草丈(cm) 30
葉長(cm) 2
花径(cm) 2
その他の特徴 精油の主成分をα-クルクメンとする報告がある。精油の抗菌性が研究されている。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum humifusum L.
ヒペリクム・フミフスム(地面に広がった)
一般名 trailing St. John’s wor
分布 西欧州。オセアニアや米国NY州に帰化
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 1.4
花径(cm) 1〜2
その他の特徴 葉と萼片、花弁の背軸面に縁に黒点がある。精油の主成分をα – ピネンとする報告がる。エタノール抽出物の抗酸化・抗菌作用が報告されている。欧州では薬用やハーブティーで利用される。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum lanuginosum Lam. ヒペリクム・ラヌギノスム(軟らかいうぶ毛で覆われた)
一般名 downy St. John’s wort
分布 地中海東部沿岸
性状 多年草
草丈(cm) 10〜80
葉長(cm) 2〜6
花径(cm) 2
その他の特徴 岩場に生える。萼片の縁に有柄の黒点が並ぶ。花弁には黒点と黒線が見られる。精油成分をスパツレノールやカリオフィレンオキシド、α-ピネンなどとする報告がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum tetrapterum Fr. ヒペリクム・テトラプテルム(4翼の)
一般名 St. Peter’s wort, Peterwort, square stemmed St. John’s wort, square stalked St. John’s wort.
分布 欧州、北西アフリカ、西アジア。オセアニアに帰化
性状 常緑低木
草丈(cm) 120
葉長(cm) 4
花径(cm) 1.5
その他の特徴 葉には明点と黒点がある。萼片と花弁、葯に黒点がある。精油成分をコパエンやα-ロンギピネンなどとする報告がある。精油や抽出物の抗菌・抗酸化作用や、土壌細菌の形質転換などが研究されている。オセアニアでは環境雑草。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum tomentosum L. ヒペリクム・トメントスム(貫通した)
一般名 ビロードオトギリ
分布 地中海沿岸。日本では帰化植物
性状 葡匐性多年草
草丈(cm) 10
葉長(cm) 2
花径(cm) 1
その他の特徴 茎葉に灰白色の細毛が密生している。精油の主成分をメントンとする報告がある。土壌細菌の形質転換などが研究されている。欧州では薬用とされる。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum triquetrifolium Turra ヒペリクム・トゥリクエトゥリフォリウム(三角形の)
一般名 wavy-leaved St. John’s wort, curled-leaved St. John’s wort, tangled Hypericum
分布 地中海沿岸
性状 一年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 1
花径(cm) 1
その他の特徴 精油としてゲルマクレンD、β-カリオフィレンやヘキサナール、α-フムレンなどを主成分とするケモタイプが見られる。マウスでの抗侵害受容作用、ラットでの抗炎症作用、地上部のメタノール抽出物による抗酸化作用、ブラインシュリンプと結腸癌、肝臓癌細胞に対する抗酸化作用と細胞毒性、精油の抗菌作用、抽出 物の殺虫性などが研究されている。

日本固有種(以下、学名のアルファベット順) これ以外にもフルセオトギリ(H. furusei N.Robson)やヌポロオトギリ(H. nuporoense N.Robson)などがある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum asahinae Makino ヒペリクム・アサヒナエ(薬学者朝比奈泰彦への献名)
一般名 ダイセンオトギリ(大山弟切)、シロウマオトギリ(白馬弟切)
分布 北アルプスから鳥取県大山に至る日本海側山地を中心に
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 2〜3
花径(cm) 2
その他の特徴 葉には黒点と明点があり、黒点は縁にも並ぶ。萼片と花弁には黒点および黒線がある。葯にも黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum gracillimum Koidz. ヒペリクム・グラキルリムム(大変細長い)
一般名 オクヤマオトギリ(奥山弟切)、イワテオトギリ(岩手弟切)、ニッコウヤマオトギリ(日光山弟切)、シナノヤマオトギリ(信濃山弟切)、マルバオトギリ(丸葉弟切)
分布 東北から中部地方
性状 多年草
草丈(cm) 40
葉長(cm) 3
花径(cm) 2
その他の特徴 葉には黒点があり縁にも見られる。萼片と花弁の背軸面には黒点と黒線が目立ち、縁には黒点が並ぶ。葯にも黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum hachijyoense
Nakai ヒペリクム・ハキヨエンセ(八丈島産の)
一般名 ハチジョウオトギリ(八丈弟切)、ハチジョウクロオトギリ(八丈黒弟切)
分布 伊豆七島を中心に
性状 多年草
草丈(cm) 20
葉長(cm) 2
花径(cm) 1.5
その他の特徴 葉には明点と少数の黒点があり、縁にも黒点が見られる。萼片には黒点とまれに明点があり縁にも黒点がある。花には縁を中心に黒点が見られる。葯にも黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum hakonense Franch. & Sav.ヒペリクム・ハコネンセ(箱根産の)
一般名 ハコネオトギリ(箱根弟切)、コオトギリ(小弟切)、コオトギリソウ(小弟切草)
分布 箱根を中心に 準絶滅危惧種
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 1〜3
花径(cm) 1.5
その他の特徴 葉にはわずかに明点と赤点がある他、黒点もあり、特に縁に黒点が密に並ぶ。萼片と花弁の背軸面には黒点と黒線が目立ち、萼片の黒点は特に縁に多く並んでいる。葯にも黒点が見られる。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum × hyugamontanum Kimura ヒペリクム・ヒウガモンタヌム(日向山地の)
一般名 クモイオトギリ(雲居弟切)
分布 九州の山地
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 1〜2
花径(cm) 2
その他の特徴 葉に明点が密に存在。葉縁には黒点がある。萼片と花弁に明線がある他、縁に黒点がある。サワオトギリとナガサキオトギリの雑種とされるが、タカネオトギリに似た独立種とする見解もある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum iwate-littorale H.Koidz.ヒペリクム・イワテリットラレ(岩手の海浜生の)
一般名 シオカゼオトギリ(潮風弟切)
分布 岩手県の海岸
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 1.3
花径(cm) 1
その他の特徴 茎は2稜で稜線に沿って黒点がある。葉には明点が密にあり、縁には黒点と赤点がある。萼片と花弁には明点があり、縁には少数の黒点がある。葯にも黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum kamtschaticum
Ledeb.ヒペリクム・カムトゥスカティクム(カムチャッカの)
一般名 ハイオトギリ(這弟切)、チシマオトギリ(千島弟切)
分布 北海道とロシアオホーツク海沿岸地域
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 3〜4
花径(cm) 2〜3
その他の特徴 葉には黒点が多く、縁には密に並んでいる。萼片と花弁の背軸面には黒点と黒線が目立ち、萼片の黒点は縁にも並んでいる。葯にも黒点が見られる。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum kawaranum
N.Robson ヒペリクム・カワラヌム(豊平川河原から)
一般名 カワラオトギリ(河原弟切)
分布 北海道石狩地方豊平川の河原が種名、和名の語源
性状 多年草
草丈(cm) 50
葉長(cm) 4
花径(cm) 2
その他の特徴 葉には明点と黒点がある。萼片には縁に黒点が密に並ぶ。花弁には縁に黒点がある。葯にも黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum kimurae N.Robson ヒペリクム・キムラエ(植物学 者木村陽二郎への献名)
一般名 ミネオトギリ(峰弟切)
分布 北海道南西部と留萌地方
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 2
花径(cm) 2
その他の特徴 葉には明点と黒点があり縁に黒点がある。萼片と花弁の背軸面に黒線と黒点が見られる。萼片の縁には黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum kinashianum Koidz. ヒペリクム・キナシアヌム(採集家 木梨延太郎への献名)
一般名 ミヤコオトギリ(都弟切)
分布 日本固有種で東北南部から九州にかけて
性状 多年草
草丈(cm) 50
葉長(cm) 1〜6
花径(cm) 1
その他の特徴 葉には明点が多く見られるほか黒点もあり縁にも黒点が見られる。萼片には黒点があり縁にも見られる。花弁には黒点や黒線が見られ縁には黒点がある。葯にも黒点が見られる。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum kinashianum Koidz. ヒペリクム・キナシアヌム(採集家木梨延太郎への献名)
一般名 ミヤコオトギリ (都弟切)
分布 日本固有種で東北南部から九州にかけて
性状 多年草
草丈(cm) 50
葉長(cm) 1〜6
花径(cm) 1
その他の特徴 葉には明点が多く見られる他黒点もあり縁にも黒点が見られる。萼片には黒点があり縁にも見られる。花弁には黒点や黒線が見られ縁には黒点がある。葯にも黒点が見られる。

学名・ラテン語読み・(種名の意味 Hypericum kitamense (Y.Kimura) N.Robson ヒペリクム・キタメンセ(北見産の)
一般名 キタミオトギリ (北見弟切)
分布 日本固有種で宗谷地方北見山地のポロヌプリ山周辺
性状 多年草
草丈(cm) 50
葉長(cm) 3〜4
花径(cm) 1.5
その他の特徴 葉には黒点があり、縁にも並ぶ。萼片には明点がある。萼片と花弁には、黒点と黒線があり、縁には黒点が並ぶ。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum kiusianum Koidz. ヒペリクム・キウシアヌム(九州の)
一般名 ナガサキオトギリ (長崎弟切)、コバノサワオトギ リ(小葉の沢弟切)
分布 箱根周辺以西、四国、九州
性状 多年草
草丈(cm) 40
葉長(cm) 1〜6
花径(cm) 1
その他の特徴 葉と萼片、花弁に黒点があり縁にも見られる。変種のヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切、ヤクシマオトギリ屋久島弟切 var. yakusimense(Koidz.) T.Kato)は屋久島に自生し、草丈15cmの多年草で、葉長0.5cm、花径0.8cm、萼片と花弁にまれに黒点と黒線がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum kurodakeanum N.Robson ヒペリクム・クロダケアヌム(大雪山系黒岳の)
一般名 エゾヤマオトギリ(蝦夷山弟切)
分布 北海道大雪山
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 2〜7
花径(cm) 2
その他の特徴 オクヤマオトギリやハイオトギリと似る。株にならず1本立ちする。花柱が子房より短い。葉の背軸面に明点と黒線が見られ、縁には黒点が密に並んで見られる。萼片と花弁の背軸面にも黒線があり、縁には黒点が並ぶ。葯にも黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum momoseanum Makino ヒペリクム・モモセアヌム(植物学者百瀬静男への献名)
一般名 セイタカオトギリ (背高弟切)、アツミオトギリ (渥美弟切)
分布 新潟県、長野県鉢伏山、浅間山、愛知県渥美半島
性状 多年草
草丈(cm) 60
葉長(cm) 2〜3
花径(cm) 2
その他の特徴 葉は明点と黒点があり、縁に黒点が並ぶ。萼片と花弁には明点がある他希に黒線と黒点があり縁に黒点が粗にある。渥美半島に自生するものをアツミオトギリといい、トサオトギリと同種とする見解もある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum nakaii H.Koidz. ヒペリクム・ナカイイ(植物学者中井猛之進への献名)
一般名 サマニオトギリ(様似弟切)、ヒダカオトギリ(日高弟切)、ホロイズミオトギ リ(幌泉弟切)
分布 北海道日高山脈南部アポイ岳周辺
性状 多年草
草丈(cm) 40
葉長(cm) 3〜4
花径(cm) 2
その他の特徴 葉に黒点があり縁には密に並ぶ。萼片には黒点があり縁にも見られる。花弁の背軸面には黒点と黒線が見られる。亜種のトウゲオトギリ(峠弟切;subsp. miyabei (Kimura)N.Robson)は北海道釧路の固有種で道東に分布し、花柱が子房の 2 倍の長さになり、萼片と花弁に黒線が特徴。亜種のシラトリオトギ(白鳥弟切;subsp. tatewakii(S.Watan.)N.Robson)は発見された北海道石狩白鳥山に由来。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum nikkoense Makino ヒペリクム・ニッコエンセ(日光産の)
一般名 ニッコウオトギリ (日光弟切)、アカテンオトギリ(赤点弟切)
分布 日光周辺と長野
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 2〜3
花径(cm) 1.5
その他の特徴 葉には明点と黒点があり、黒点は特に背軸面の葉縁に密に並んでいる。萼片と花弁にも明点がある他、背軸面には黒線が目立ち、縁には黒点が粗く並んでいる。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum oliganthum Franch. et Sav. ヒペリクム・オリガントゥム(花数の少ない)
一般名 アゼオトギリ(畔畦弟切)
分布 関東以西から九州に かけて絶滅危惧1B類
性状 多年草
草丈(cm) 40
葉長(cm) 2
花径(cm) 2
その他の特徴 葉には明点が多数ある他、黒点もあり、特に葉縁に密に並んでいる。萼片と花弁にも明点がある。萼片の黒点は特に縁に密に並んでいる。花弁の背軸面には黒線が目立つ他縁に黒点が散在する。葯にも黒点が見られる。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum ovalifolium Koidz. ヒペリクム・オワリフォリウム(広楕円形葉の)
一般名 オオシナノオトギリ(大信濃弟切)
分布 白馬岳
性状 多年草
草丈(cm) 40
葉長(cm) 2〜3
花径(cm) 2
その他の特徴 葉には黒点があり縁にも見られる。萼片と花弁には黒点と黒線があり縁には黒点がある。葯にも黒点がある。亜種のトガクシオトギリ(subsp. hisauchii (Y.Kimura)N.Robson)は戸隠山に自生する草丈30cmの多年草。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum pibairense (Miyabe & Y.Kimura) N.Robson ヒペリクム・ピバイレンセ(山の名前で本来ピパイロ岳産の)
一般名 オオバオトギリ (大葉弟切)
分布 北海道日高山脈ピパイロ岳など
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 3〜5
花径(cm) 2〜3
その他の特徴 葉には黒点があり縁に密に並ぶ。萼片には黒点と黒線があり、縁にも黒点がある。花弁には黒点と黒線があり、縁にはない。葯に黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum pseudoerectum N.Robson ヒペリクム・プセウドエレクトゥム(オトギリソウに似た)
一般名 タニマノオトギリ(谷間の弟切)
分布 北海道定山渓など石狩、上川地方
性状 多年草
草丈(cm) 40
葉長(cm) 3
花径(cm) 1.5
その他の特徴 葉には明点と赤点があり、縁には黒点がある。萼片と花弁の縁に黒点がある。葯にも黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum pseudopetiolatum R.Keller ヒペリクム・プセウドペティオラトゥム(ティオラトゥム種に似た)
一般名 ペサワオトギリ(沢弟切)
分布 北海道南西部、富士箱根、九州北部の湿地
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 2〜4
花径(cm) 1
その他の特徴 葉と萼片、花弁に明点がある他、それぞれの縁には黒点がある。萼片と花弁には希に葯にも黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum senanense Maxim. ヒペリクム・セナセンセ(信濃産の)
一般名 シナノオトギリ(信濃弟切)、ミヤマオトギリ(深山弟切)
分布 東北南部から中部地方にかけて
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 3
花径(cm) 2.5
その他の特徴 葉に少数の明点がある他、縁に多数の黒点がある。萼片と花弁の背軸面には黒点や黒線がよく目立つ他、縁には少数の黒点がある。葯にも黒点がある。亜種のイワオトギリ(subsp. mutiloides(R.Keller)N.Robson)は東北から中部日本海側にかけて自生し、草丈30cmの多年草で、花径 2cm、葉に少数の明点があり、葉の縁および全面に多数の黒点が良く 目立つ他、シナノオトギリ同様、萼片と花弁には点状~長い線状の黒い腺がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum senkakuinsulare Hatus. ヒペリクム・センカクインスラレ(尖閣諸島産の)
一般名 センカクオトギリ(尖閣弟切)
分布 沖縄県尖閣諸島魚釣島
性状 多年草
草丈(cm) 60
葉長(cm) 3
花径(cm) 3〜4
その他の特徴 茎と葉、萼片、葯に明点がある。黒点は見られない。

学名・ラテン語読み・(種名の意味)Hypericum sikokumontanum Makino ヒペリクム・シコクモンタヌム(四国山地産の)
一般名 タカネオトギリ(高嶺弟切)
分布 四国の山地に自生
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 1〜2
花径(cm) 2
その他の特徴 葉には希に明点と黒点が見られる。花弁の縁には少数の黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum tosaense Makino ヒペリクム・トサエンセ(土佐の)
一般名 トサオトギリ(土佐弟切)、セトウミオトギリ(瀬戸海弟切)
分布 四国や近畿西部に自生
性状 多年草
草丈(cm) 70
葉長(cm) 2
花径(cm) 2
その他の特徴 茎に黒点が粗に並ぶ。葉に明点が密にあり、縁には黒点が並ぶ。萼片の縁に黒点が粗に並ぶ。花弁の縁に黒点が密に並ぶ。葯にも黒点が見られる。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum vulcanicum Koidz. ヒペリクム・ウルカニクム(火山の)
一般名 オシマオトギリ (渡島弟切)、
カザンオトギリ (火山弟切)
分布 北海道南部~東北北部に自生
性状 多年草
草丈(cm) 70
葉長(cm) 3〜6
花径(cm) 2
その他の特徴 種名や和名は中心産地の渡島半島が火山地帯であることから。葉には少数の明点の他、背軸面には黒点が多く散在し、縁にも並ぶ。萼片と花弁の 背軸面には黒線が目立つ。萼片の縁に黒点はなく、花弁の縁には黒点がある。葯にも黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum watanabei N.Robson ヒペリクム・ワタナベイ(植物学者 渡辺清彦への献名)
一般名 クロテンシラトリオトギリ(黒点白鳥弟切)
分布 北海道胆振、空知、上川、宗谷地方の超アルカリ地帯
性状 多年草
草丈(cm) 40
葉長(cm) 3〜4
花径(cm) 2
その他の特徴 葉には少数の明点の他、黒点があり、縁にも黒点が並ぶ。萼片の基部に黒線と黒点が縁に黒点がある。花弁の縁には黒点がある。葯にも黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum yamamotoanum H.Koidz. ヒペリクム・ヤマモトアヌム(山本岩亀への献名)
一般名 センゲンオトギリ(千軒弟切)、イワヒサオトギリ(岩亀弟切)
分布 北海道渡島大千軒岳など後志、渡島地方
性状 多年草
草丈(cm) 40
葉長(cm) 3〜4
花径(cm) 2
その他の特徴 葉には黒点があり縁にも見られる。萼片には黒点があり縁には黒点と明点がある。花弁には黒線と黒点があり縁に黒点がある。葯に黒点がある。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum yamamotoi Miyabe & Kimura ヒペリクム・ヤマモトイ(山本岩亀への献名)
一般名 マシケオトギリ (増毛弟切)
分布 北海道留萌地方
性状 多年草
草丈(cm) 50
葉長(cm) 4〜5
花径(cm) 2
その他の特徴 葉には黒点があり縁にも見られる。萼片と花弁に黒線はない。葯には黒点がある。オシマオトギリよりも花柱が長く葯が大きい。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum yezoense Maxim. ヒペリクム・イェゾエンセ(北海道の)
一般名 エゾオトギリ(蝦夷弟切)
分布 北海道と東北北部、 南千島、樺太南部。 絶滅危惧2類。
性状 多年草
草丈(cm) 30
葉長(cm) 3〜5
花径(cm) 2〜3
その他の特徴 茎は2稜で稜に黒点が散在。葉には明点が密にある他、葉縁に黒点が密に並んでいる。萼片と花弁の背軸面には主として縁に黒点が散在する。葯にも黒点が見られる。

学名・ラテン語読み・(種名の意味) Hypericum yojiroanum Tatew. & Koji Itoヒペリクム・ヨジロアヌム(木村陽二郎への献名)
一般名 ダイセツヒナオトギリ(大雪雛弟切)、タイセツヒナオトギリ
分布 北海道大雪山の湿地
性状 多年草
草丈(cm) 10
葉長(cm) 1
花径(cm) 1
その他の特徴 葉に明点と黒点があり、縁にも黒点がある。萼片と花弁にも黒点があり縁にも見られる。葯に黒点がある。

当協会理事
木村 正典 きむらまさのり
株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK!プランター菜園のすべて』(NHK出版) 他 。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第49号 2019年9月