2020.12.17

関西地区イベント報告:「日本の色の知恵と藍の生葉のたたき染め」に参加して

ハーバルセラピスト

谷口 景子

日程:2018年7月10日 会場:よみうり神戸文化センター

植物がつくり出す色は植物の力そのもの

2018年7月10日に神戸のよみうり神戸文化センター で開催された「藍のたたき染め」に参加しました。藍染 めには以前からとても興味があり、藍という植物をもっと知りたいと思ったからです。

前半は神戸薬科大学 薬用植物園の沖先生に、「植物がつくり出す色は植物の力そのもの」であるというお話をわかりやすくしていただきました。植物と人の歴史から始まり植物の色・香り・形・味には生き残るための工夫や理由があることを知りました。早春に黄色の花が多いのは、まだ蜂が活動をしていない時期なのでアブや虫が好むように黄色をしていることや、花粉がつきやすいように虫に合わせて形を変えていること、葉や茎の香りや味は虫や菌から身を守るためで鎮静効果があり、花や実の香りや色は鳥や虫を誘って子孫を残すた め気分を盛り上げる効果があります。最近注目されている植物の3大色素ではカロテノイドとフラボノイドとクロロフィルがありますが、鮭が赤いのはカロテノイドの一種のアスタキサンチンを含むヘマートコッカスという藻を食べて体に蓄えることで川を上って子孫を残せるのだということです。人間は植物を食することで「植物の力」の1つを利用させてもらっているのだと改めて強く思いました。

また昔から伝統的な染料は生薬でもあったというお 話はとても興味深く、昔の人の知恵には驚きました。例えば赤ちゃんの産着は女の子はベニバナで、男の子はウコンで染めたものを着せます。赤ちゃんは袖口をしゃぶるので、女の子には血行促進・冷え性予防の効果のベニバナを、そして男の子には強肝・強壮効果のあるウコン染めを与えるのだそうです。

藍の葉でたたき染め体験

後半はいよいよ生の藍の葉でたたき染めをしました。 木の板の上に紙の台紙を置き、その上に葉っぱを裏返して置いてから染めたいシルクのハンカチをのせます。 最後にずれないようにセロハンシートをのせて固定して、 あとはトントン、トントン木づちで丁寧にたたいていきます。 まるで鍛冶屋のように部屋中に音が響きますが、自分の思い通りの場所に何枚も藍の葉を叩いて染めていくのはとてもおもしろかったです。その後、ビー玉や割りばしを使って同じハンカチに絞り染めをしました。水と生の藍の葉をミキサーにかけるだけで染め液が作れるのです。私は薄い薄い水色になるように1回だけ染め液につけました。「甕のぞき」の色ってこんなかしら?と思いながら。生葉の植物性の色素はマイナスイオンなのでプラスイオンをもつシルクしか染まらないというのも初めて知りました。最後にみんなでつるして干すと、それぞれのデザインと色が美しくて圧巻でした。帰りに余った藍の枝を少しいただき、家で育てています。毎日ぐんぐん大きくなる藍の生命力にも驚かされます。もっと大きく育ったら今度は家族のハンカチも家で染めてみよう、と楽しみにしています。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第45号 2018年9月