2017.5.2.

バコパが小児の認知及び行動に与える影響の試験報告

翻訳・作成:国際情報委員 加藤絹子

Kean JD, Downey LA, Stough C.

バコパが小児の認知及び行動に与える影響の試験報告日本では観賞用の水草として知られていますが、伝統医学アーユルヴェーダでは古くから不安障害、精神疲労、脳の若返り、記憶力・集中力を高めるハーブとして食されてきました。

バコパの健脳効果は近年、科学的な側面から立証されるようになり、なかでも特に注目されているのは「不安を和らげる作用」と「記憶・学習能力を高める」作用です。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は“注意力の欠如”“落ち着きの無さ”“衝動的”という3つの症状・・・バコパが小児の認知及び行動に与える影響の試験報告

(Review of the Effects of Bacopa on Cognition and Behavior in Pediatric Populations. Kean JD, Downey LA, Stough C. A systematic review of the Ayurvedic medicinal herb Bacopa monnieri in child and adolescent populations. Complement Ther Med. 2016;29:56-62.HC# 011751-562より翻訳)

要約

実施されたランダム化比較試験 (RCT) では、バコパ (ゴマノハグサ科 学名バコパ・モニエラ) の地上部が成人の認知機能を向上させる根拠が示されている。しかし、バコパが小児にもたらし得る効用はまだ評価されていない。この報告では、青少年の認知及び行動にもたらすバコパの効能の臨床的根拠を 評価するものである。

実施された5つの小規模な試験は選択基準を満たすものであった。3つの RCT 及び 1つのOL(オー プンラベル試験) は、認知能力の尺度を含むものであった。

これら4つの試験全てにおいて記憶範囲を評価し、その中の3つの試験で有意な改善が観察された。3つの試験において言語行動の尺度を評価し、その3つ全てにおいて有意な改善が見られた。情報処理の早さ及び視覚記憶を評価した試験は 3つあり、 その内の 2 つで有意な向上が報告された。

ADHD

傾向を持つ小児に対して実施した2つのRCTでは、自由再生記憶、連想記憶、意味を持つ想起の3つの領域の間で相反する結果が報告された。健康な小児の視覚認知を評価した調査 (RCT) は 1つだけであり、同調査で有意な改善が観察された。これらの調査の内、2つにおいて、被験者の行動結果を評価した。

両方の調査において、過活動及び注意欠陥領域における有意な改善が見られたが、心の抑制/ 衝動性における改善は OL 試験でのみ観察された。OL 試験でのみ評価された行動結果では、学習行動における有意な改善は見られたが、友人関係における有意な改善は見られなかった。ADHD傾向を持つ小児を被験者とした2つのRCTでは、複数の時点を用いた時点評価が実施された。

これらの試験データの分析では、被験者の認知及び行動の両面において、有意な早発的改善が示された。言語行動、記憶小領 域、行動結果における改善は、4 週間の時点を経た後も持続した。

要約すれば、この報告に含まれる5つの調査では、バコパが言語行動、認知領域、そして記憶小領域 の一部に有意な改善をもたらすことの根拠が示されている。さらにADHD傾向を持つ小児の行動結果を評価した2つの調査では、過活動性及び注意欠陥領域における著しい向上があることがわかった。

この5つの調査によって得られた結果の外挿は多くの要因によって制限されるが、その要因としては、(1) 研究 対象集団が不均一であること、(2) 対象集団が小規模であること (被験者数は 28-40 人)、(3) 性別における不均衡 (被験者のほとんどは男性)、(4 ) 5つの研究で異なる結果指標が用いられたこと、(5) 被験者の親の回答のみが分析対象とされたこと、(6) 対照群の欠如によってOL試験の根拠が薄弱になること、(7) バコパの調合形態及び服用量のばらつきが大きいことが挙げられる。

著者はこれらの調査が、青少年の認知及び行動を改善するためにバコパを安全に利用できることの根拠を示すものであると結論づけた。これらの調査で得られた結果の正当性を立証するには、同様の研究デザインを用いた試験の反復的実施と、厳密な統計分析を実施していく必要がある。

訳者コメント

日本では観賞用の水草として知られていますが、伝統医学アーユルヴェーダでは古くから不安障害、精神疲労、脳の若返り、記憶力・集中力を高めるハーブとして食されてきました。バコパの健脳効果は近年、科学的な側面から立証されるようになり、なかでも特に注目されているのは「不安を和らげる作用」と「記憶・学習能力を高める」作用です。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は“注意力の欠如”“落ち着きの無さ”“衝動的”という3つの症状が、年齢にふさわしくないレベルで、長期に渡り組み合わさってみられる精神神経症候群の一つです。一般的には学校の授業中に教室の中を勝手に歩き回ったり、意味なく大きな声で叫んだり、忘れ物が多いといった特徴があげられます。大人でもストレスなどがきっかけで、脳内のノルアドレナリンの分泌が過剰になると、冷静な判断が失われて、発作的な衝動を抑えられなくなります。ADHDの症状を持つ人 もノルアドレナリン系の機能不全が見られることが、いくつかの研究から報告されています。この試験 レポートでは詳しく記されていませんが、バコパはノルアドレナリンの分泌調整調整に役立つといわれております。天然の植物には主成分(バコサイドA、バコサイドB)の他に多数の微量成分が含まれております。それらが相互に作用し心身に優しい効果をもたらすと考えられます。今後も研究が進み、バコパを摂取することで、記憶の中枢である海馬や新皮質を保護したり、活性化できれば子供の学力向上、 また中高年の脳の老化予防へと大いに役立つのでしょう。