2015.11.5.

カバノキ属(Genus Betula)の民間療法および薬理学的特性

Rastogi S, Pandey MM, Rawat AKS./翻訳:制作 加藤絹子

Traditional Uses and Pharmacological Properties of the Genus Betula.
Rastogi S, Pandey MM, Rawat AKS. Medicinal plants of the genus Betula – traditionaluses andaphytochemical-pharmacologicalreview.JEthnopharmacol. January 15, 2015;159:62-83.より翻訳

シラカバ(Betula spp.、Betulaceae)の樹皮および北半球の温帯、また冷帯に生息するシラカバ属の木、灌木の樹皮抽出物は、多くの地域の医療において使用され、特に関節炎などの炎症に使用される場合が多い。本論文の著者らは、広範囲にわたる電子文献の調査を実施し、シラカバに関する植物学、従来の使用法、植物化学、薬理学、毒物 学関連の文献を査読し、治療に生かせる可能性と研究の必要性を考察した。

シラカバが分布する各地域の民間療法には、樹皮、葉、樹脂、つぼみ、樹液、幹、地上部、花、根、コルク、植物全体から作られた煎薬、茶、風呂、軟膏、湿布、粉が含まれる。軽微な骨折、脱臼、リューマチ、関節炎、痛風など、骨に関連する症状に使用されることがほぼ一般的である。他には、泌尿器疾患、腎臓疾患、水腫、結石症、心臓疾 患、皮膚病、高コレステロール血症、外傷、火傷などに対する使用が報告されている。

シラカバはまた、脱毛症にも使用される。シラカバの樹皮は従来より食品保存剤として使用されており、パキスタン北部では熟成中にギーの味を良くするため使用されている。防水性があるため、建設中の建物を一時的に覆ったり、収穫された作物を保護したりするためにも利用されている。インドのヒマラヤ地方では、ヒマラヤシラカバ(B. utilis) が宗教儀式で使用されている。

多くの種、それらの原生地、分布、そして使用法を取り上げながら、著者らはオウシュウシラカバの分類が形態変異性また交雑を理由に議論されていることを指摘している。関連性の高い種を分類できないため、生物測定法と化学分類法の研究ならびに系統発生的関係の研究が進んだ。

系統分類法研究は主にシラカバの樹皮、葉、つぼみ、幹のフェノール樹脂(フラボノイドおよびテルぺノイド)を中心に取り扱ってきた。この論 文では、シラカバから抽出される137種類のトリテルペノイド(オコチロール、ダンマ ランタイプ I、II、III、IV、ならびにルペングループより)、ジアリールヘプタノイド (環状と非環状)、フェニルブタノイド、フェノール樹脂、フラボノイド、フラボン、 フラボノン、カテキン、リグナン、ステロイド、その他の化合物をこれらの抽出元となった種とともに掲載している。さらに重要なこととして、抽出物の化学組成は、植物の部位そして加工方法により大幅に異なる場合がある。

薬理学的研究により、シラカバの種、部分、抽出物、化合物の抗がん効果、抗炎症効果、抗関節炎効果、抗酸化効果、抗菌効果、抗ウイルス効果、抗皮膚病効果、免疫調節効果、肝臓保護効果、抗糖尿病効果、胃保護効果、その他の効果が報告されている。

例として、12のヒトおよびマウスのがん細胞株に対する複数種のシラカバやシラカバの抽出物の抗がん効果が報告されている。皮がんに対しては、シダレカンバ(B.pendula) の樹皮抽出物およびその主な2つの成分であるベツリンとベツリン酸に 70~80%のがん細胞増殖抑制効果が生体外試験において確認されたが、これは実際に重要と言える。

また、光線性角化症におけるシラカバ樹皮の軟膏の効果に関する試験的研究により、2か月間の使用の後効果が認められ、副作用が認められないことが報告された。がん細胞株4株を使用し、ベツリンを多く含む4つの抽出物を比較した MTT(3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニル テトラゾリウムブロミド)分析において、準備されたすべての樹皮抽出物がヒトのがん細胞株に対し顕著な増殖抑制効果を発揮した。ベツリンおよびベツリン酸の含有量の顕著な相違は増殖抑制活動には反映されなかった。

シラカバおよびシラカバ抽出物に関する大部分の研究が生体内または生体外で行われている一方、前述の皮膚がんの試験的研究以外の臨床試験は数件参照されている。

オウシュウシラカバ(B.pubescens syn.B.alba)の葉およびつぼみが子宮がん治療に使用されたことが報告されたが、詳細は報告されていない。また、慢性肝炎におけるオ ウシュウシラカバの抽出物の効果に関する研究により、自覚症状の軽減の客観的帰結が報告され、安全性、遵法性が監視された。

薬理学的研究により、変形性関節症などの骨に関する問題におけるシラカバ樹皮とシラカバ抽出物の従来の使用法が支持されており、骨と間接の健康に寄与するさまざまな効果が示されている。傷の治療、高コレステロール血症、胆汁異常における従来の使用法も支持されている。従来の使用法と新しい抗がん性化合物としてのシラカバ抽出物に対する今日の関心の間にいかなる民族薬理学的関連も存在しないように思える一方、多くの従来の使用法は細胞周期の変更を示唆しており、これらの化合物の薬理学的徴候は明確である。他の従来の使用法および主張の根拠が存在するか否かを判断するには、対照群を用いた臨床試験を実施する必要がある。

コメント

日本でも東海地以北、そして北海道ではあちこちで見られる白樺。青い空に向かって、伸びやかにまっすぐ立つ姿はたいへん美しい光景です。 白樺の森を始め自然界の偉大な叡智は、私たちの文明がより良い方向へと進んでいくような、深いインスピレーションを与えてくれています。

世界各地の民間療法で様々な用途に利用されている白樺。様々な効能を持つことから、インドやシベリアでは「魔法の木」と呼ばれています。ロシアや東ヨーロッパの諸国、インドより伝わるアーユルヴェーダでも、がんや胃潰瘍など様々な病気の民間療法として使用されていることが文献に残っており大変興味深いです。

白樺は、地面から水を吸い上げる力と、葉から水分を発散する能力に優れ、アイヌの人々にも古くから健康飲料として愛飲されてきました。それだけでなく、古来より利尿作用、高血圧、痛風、胃炎、腎臓病、ストレスや疲労を和らげる民間療法として活用されてきたそうです。また樹液には肌のきめを整えるビタミンCが豊富に含まれることから、表皮の保湿作用、そばかすの治療にも効果がありと化粧品に利用されています。

樹液からとれる糖アルコールの一種はキシリトールです。 口腔内の細菌はこのキシリトールを分解できないため、虫歯予防にとても有効です。そして、白樺の材を乾留し採取した樺油は抗菌成分や抗炎症作用が含まれ、外用薬として皮膚病や関節炎などの治療に使われています。

以前より白樺樹皮に含まれるベツリン酸によって、免疫細胞であるリンパ球やマクロファージが活性化されたことから、白樺樹皮には免疫力向上効果があると発表されてきました。本論文からも抗がん剤や抗ウイルス剤として開発研究が進んでいること、免疫療法の進化につながる成果も報告されています。ベツリン酸のマウスの実験や、作用のメカ ニズム解明を進めると共に、ベツリン酸の化学構造式を基に、より効果がある物質を合成できる可能性が近づいてきているようです。今後もがんの治療薬として期待されています。

そして、私たちも白樺樹液を堪能できるイベントがあります。毎年春に、北海道美深町仁宇布(ニウブ)にて、「白樺樹液まつり」が開催されています。来年は第21回とのこと。来年の春は美深町に足を運び、ほんのり甘い樹液を堪能してみてはいかがでしょうか。体に良いだけでなく、肌もツヤツヤになるそうですよ!