2017.6.1.

【海外ハーブツアー報告】国際香水博物館、そしてエルボリステリへ

日本メディカルハーブ協会理事

三浦利加子

7月29日(金)、パリ~プロヴァンスの旅もついに最終日。

今日はグラースへ移動し、国際香水博物館とこのツアーの目的でもあるファーマシー・デ・カトルシャマンへの訪問です。

グラースで国際香水博物館を見学

グラースはニースから電車で1時間ほどの香水の都として知られている街です。

地中海性温暖気候に恵まれ、古くからローズ、ラベンダー、ジャスミンなどの花が栽培され、現在フランスの天然香水・香料の2/3がグラースで作られています。

グラースで香水産業が発達した背景には、グラースで生産された質のよい革製品があります。

特に上流階級の婦人に人気があった革手袋の欠点は臭い。

ある、なめし職人が作った香水つきの革手袋が大ヒットし「香りつき革手袋のグラース」として栄えますが、後に革なめし産業は衰退し、18世紀末から香水産業だけが残ることとなったわけです。

グラースには人気の老舗パフューマリー(香水メーカー)があり、特にフラゴナールFragonard、ガリマールGalimard、モリナールMolinardが有名です。

また、パリで活躍している調香師のほとんどはグラースの香水学校出身でもあるとのことです。

国際香水博物館は、そんな香水産業の歴史をたどることができる博物館です。

5万点にも及ぶ展示物や原料の植物を見たり、実際に香りを嗅いだりすることができ、1日いても飽きないほどです。

特にマリー・アントワネットのために作られた旅行用の化粧箱は、世界でここにしか現存しない貴重な品で圧巻。

またエジプト時代の香料入れ、アンティークの香水ビン、ランビキや昔の香水を作る道具、CHANEL No.5やゲラン、ケルン水「4711」など有名な香水も並んでいました。

博物館ガイドのローランさんの話を、この街在住15年の前田久仁子さんに通訳していただきました。

豊富な知識と非常に丁寧な説明で、とてもわかりやすかったとのお声を参加者の方々からいただきました。

特に印象に残っているのは、香水の由来。

乳香は古代エジプトで最初に使われた香料のひとつで、乳香を焚いて(いぶして)出た煙は香りとともに天へ立ち昇る、天つまり神とつながる梯子と考えられていた。

香りを通じて意識を変えて神とつながる、香水「Parfum」はつまりラテン語の「Per Fumum」(燻す煙)からきている、とのお話でした。

ミイラを巻く包帯に香りづけしたのも、死してなお神とつながる媒体として考えてのこと。未来につなげて保つために行ったわけですね。

また、CHANEL No.5にはグラース産のローズが使われていることや、昔のグリーンノートのレシピ(ベルガモット・レモン・オレンジ)が今でも使われているなど、興味深い話がいろいろ聞けました。

この後旧市街にある有名レストラン「Rendez-vous」でランチ。

メインは子羊のプロヴァンス風野菜添え、デザートはアーモンド入りのアイスケーキ。

ラム肉があまり得意ではない私も柔らかくクセのないお料理を、おいしくいただきました。

デザートのアイスケーキも暑さを鎮めてくれました。

出発まで可愛らしい街を散策したり、フラゴナールでお買い物をしたりと楽しみました。

エジプトの香料入れ
マリー・アントワネットの化粧箱(国際香水博物館)

「ファーマシー・デ・カトルシャマン」入り口。上はとチンキ剤のための説明をするフランシスさん

エルボリステリを訪問

ランチの後は今回参加者が一番楽しみにしていたエルボリステリ「ファーマシー・デ・カトルシャマン」へ。

エルボリステリとは日本でいう薬局ですが、1985年設立のこちらの薬局は調剤のほか、ハーブ、アロマセラピー、ホメオパシー、化粧品などを取り扱っており、特にホメオパシーにいたっては製造工場までもっているとのこと。

現在リディアさんとフランシスさん2人の薬剤師が共同経営され、地元の人に愛されている薬局です。

見学中も患者さんが途切れることなく訪れていました。

今回参加者の皆さんの症状に合わせたチンキ剤をフランシスさんに調合していただきました。

ここでの話はフィトセラピーを学ぶ者としては一番知りたいところです。

数班に分かれ薬局を見学させていただきました。

たまたまホメオパシーの処方が入り、レメディを作る工程を見ることができました。

日本ではまだ一般的ではないホメオパシーですが、フランスでは医師が処方したり、エルボリステリで相談したりして日常的に使われています。

またチンキ剤やハーブティーのブレンドなど、非常に参考になりました。

お忙しい中、ご説明いただいたフランシスさんには感謝申し上げます。

この日はニースに宿泊。

ホテルに着く前に、先日の花火会場におけるトラックの事件への追悼の意味で、参加者で献花を行いました。

メリディアンホテル横の公園には花、ろうそくや手紙のほか、犠牲者に子どもが多かったためぬいぐるみやお菓子も多く供えられていて、涙を誘いました。

ニースの街はバカンスシーズンでもあり、フランス人の「テロには屈しない!」という強い意志のもと、テロなどなかったかのように青い海とともに賑わいを見せていました。

最後の夜はホテルでフェアウェルディナーパーティーです。

前菜は大理石模様のフォアグラとズッキーニ、ビーツのクーリと新鮮なメスクラン。

メインが茹でたマトウダイ、バーベナ、ムースのジャガイモをウニコーラのソースで。

デザートはツアー中にお誕生日を迎えた参加者の方をお祝いするためバースデーケーキが登場すると、さらに盛り上がりを見せました。

海が見えるレストランからの眺めは最高で、旅の思い出を熱く語り合う夜となりました。

テロ犠牲者のためのたくさんのお供えが涙を誘う
ニースのホテルでのフェアウェルディナーパーティー

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第40号 2017年6月