2013.10.25

ホップで更年期の不快感が軽減?

コメント:三浦利加子、翻訳:荒瀬千秋

ホップ(Humulus lupulus L.)の毬花はビールの原料となることが知られており、イソフムロンがビールの苦味成分となる。ビール以外の目的では、生薬として健胃・鎮静作用に用いられてきた。

またヨーロッパではメディカルハーブとして不眠や女性疾患に使われてきた歴史がある。ホップにはフィトエストロゲンが含有され、昔からホップ摘みの女性の胸が大きいと言われるのも、このフィトエストロゲンの作用と推測できる。

今回ホップに含まれるフィトエストロゲン、8-プレニルナリンゲニン(8-PN)を高濃度に含むホップエキスによる更年期不快感の軽減の有効性に関する研究が、ベルギー・ヘント大学生薬学研究所の研究者たちによって行われ、興味深い結果を示している。

更年期障害の症状は様々で200種類あると言われているが、特に血管運動神経におこるホットフラッシュは有名である。急におこるほてりやめまいに悩まされる女性は多く、8-プレニルナリグナン標準化ホップエキスを毎日摂取することで、血管運動性症状(ホットフラッシュ)やその他の更年期の不快感が(改善される)軽減されるのは喜ばしい。

ただビールに換算すると、8-プレニルナリンゲニンを含むプレニル化フラボノイドの全濃度はビール1L中最大で4mlなので、この論文中で行われた実験結果を期待するには、毎日ビールを最低25L以上消費することになり、これは非現実的である。ビールと枝豆で更年期障害対策とは容易にはいかないものだ。

今後は8-プレニルナリンゲニン標準化ホップエキスのサプリメントの摂取で更年期障害の改善が出来ると期待したい。
(コメント:三浦利加子)
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標準化されたホップエクストラクトによる更年期不快感軽減についての、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験(アブストラクト)
“A first prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled study on the use of a standardized hop extract to alleviate menopausal discomforts”
Heyerick, Arne et al. Maturitas, Vol 54, Issue 2, Page 164-175, 20 May 2006

ホップ(Humulus lupulus L.)に含まれるフィトエストロゲン、8-プレニルナリンゲニン(8-PN)を高濃度に含むホップエキスによる、更年期不快感の軽減の有効性に関する研究が、ベルギー・ヘント大学生薬学研究所の研究者たちによって行われた。

前向きランダム化二重盲検プラセボ対照試験が、更年期障害を持つ67人の女性に対し12週間に渡って行われた。クッパーマン指数(KI)と質問表を用いて反応を分類した。

※1※2

プラセボを含むすべてのグループで、6週後、12週後共にKIの有意な軽減が確認された。100マイクログラムの 8-プレニルナリンゲニンを含むホップエキスを用いたグループは、プラセボ対照群と比較して、6週後には有意に優っていた(P=0.023)が、12週後には有意ではなかった(P=0.086)。

6週後、12週後の両方において、高摂取量(250マイクログラム)の方が低摂取量より効果が弱く、摂取量と反応の関係は立証できなかった。

プラセボ群と比較すると、摂取群にはKIの素早い軽減が確認された。特に(KIから分離された)ホットフラッシュ・スコアの減少は、6週後の摂取群どちらもプラセボ群に対して有意だった。被験者の質問表への解答も、KIのスコアと矛盾するところがなく、最も明確な効果は100マイクログラム摂取群に見られた。

結論として、8-プレニルナリンゲニン標準化ホップエキスを毎日摂取することは、血管運動性症状(ホットフラッシュなど)やその他の更年期の不快感に対して好ましい効果を持つと言えるだろう。ホップ由来のプレニル化フラボノイドは、ホットフラッシュなどの軽減のオプショナルチョイスとなるかもしれない。
(翻訳:荒瀬千秋)

※1前向き研究(prospective study)過去と現在のデータを扱うのが後ろ向き研究(retrospective study)で、これから生じる現象を観察するのが前向き研究。後ろ向き研究ではすでに判明している事項を扱うので研究者によるバイアスが入りやすいのに対して、前向き研究では結果がわかっていないためにバイアスがかかりにくく、より信頼のおける結果が得られるとされている。(バイオテクノロジージャーナル2007年vol.7, No.3)

※2クッパーマン指数(Kupperman Index)更年期症状の評価に世界中で用いられている調査票。血管運動御呼び神経障害症状、知覚障害様症状、不眠、神経質、憂鬱、めまい、全身倦怠、関節通および筋肉痛、頭痛、心悸亢進、蟻走感の11症状それぞれに4段階で回答、点数化し、総合計で症状の重さを量る。なお日本では、日本人特有の症状を加えて17症状について問う安部変法という改訂版が多く利用されている。