2013.4.11.

英国医薬品庁の「12 歳以下の子どもへのエキナセア使用不可」勧告に対する ABC の見解

翻訳:荒瀬千秋、監訳:桂川直樹

Lindsay Stafford Mader (2012) “UK and Irish Governments’ Echinacea Warning Criticized”, ABC

2012 年8 月、英国医薬品庁(the Medicines and Healthcare products Regulatory Agency, MHRA)が、12歳以下の子どもへのエキナセア経口ハーブ製剤を使用しないようにとの勧告を発表したことで世界中に波紋が起こっている。

これは、欧州医薬品庁(European Medicines Agency, EMA)のハーブ薬諮問委員会(the European Herbal Medicinal Products Committee, HMPC)のエキナセアに対する見解に沿うもの、と英国医薬品庁は説明している。

ハーブ薬諮問委員会は、欧州医薬品庁がハーブ薬に対する見解をまとめるために、ハーブ薬を専門とする科学者たちを集めて2004 年9 月に立ち上げられた委員会で、約200 種のハーブの、確立された使用や伝統的な使用についてのモノグラフ(Community Monographs)を公表するとしている。このうちEchinacea purpurea1ならびにEchinacea angustifolia2のモノグラフがそれぞれ2008 年に、angustifoa に関する安全性についての見解が2012 年5 月29 日付で報告された。

このモノグラフを基に英国医薬品庁が2012 年8 月20 日付で、エキナセア製剤を12 歳以下の子どもに投与しないようパンフレットに記載し、また今後販売するエキナセア製剤のパッケージにその旨を記載すること、現在店頭に並んでいるものについてはパッケージの上からシールで明示することを製薬会社に勧告すると発表した。同日のBBC のニュースでも、「12 歳以下の子どもへのエキナセア使用不可3」と報道された。

英国医薬品庁の説明では、EU のハーブ薬諮問委員会と英国ハーブ薬諮問委員会(UK herbal Medicines Advisory Committee, HMAC)の予防的勧告に従うもの、とのことで、両委員会が12 歳以下の子どもに関しては、エキナセアの効果の恩恵よりも、稀ではあるが激しいアレルギー反応のリスクの方が高いと結論づけている、という4。英国医薬品庁のリチャード・ウッドフィールドハーブ対策局局長(Head of Herbal Policy)は「これは深刻な問題ではないが、12 歳以下の子どもたちにエキナセア薬を摂取させるとまれに発疹などアレルギーを起こす可能性があることを保護者たちは知っておくべきだ」「過去に12 歳以下の子どもに飲ませたことがある、という場合に心配することではない」5と述べている。

今回の波紋のきっかけとなったEUハーブ薬諮問委員会のEchinacea purpurea ならびにEchinacea angustifolia のモノグラフには、使用中の発熱などの異常が起きた時の他、自己免疫疾患を持つ人、アトピー患者、アレルギー反応を起こしやすい人などはエキナセアを使用する前に医師などに相談するようにと記載されている。

よく売れているエキナセア薬であるエキナフォース(Echinaforce)シリーズを製造しているバイオフォース社(A. Vogel Bioforce AG)のエキナフォース開発者、ローランド・ショープ氏は、英国医薬品局が指摘したアレルギー反応は非常に稀であることを指摘し「毎年一千万以上もの(エキナセア製薬による)治療が行われていることを考慮すべきだ」と発言している「市販の抗炎症薬や充血除去薬によって、毎年何千人もの人が死亡していることと比べたら、エキナフォースの安全性は非常に有益だ。他の複数の論文では、エキナセアは基本的に安全だと結論づけている」6。

バイオフォース社のプレスリリースは、英国医薬品局が見解の基にしたとする2008 年のハーブ薬諮問委員会のモノグラフのセクション4.4 には「『1 歳以上の子どもに対する特定のリスクは記録されていない』と明記されている」と説明している。
EU 諸国ではすでに、キク科アレルギーを持っている人、もしくは遺伝的にキク科アレルギーを持つ可能性がある人へのアレルギー反応の可能性があることを、エキナセア製薬に明示することを勧告している。

このヨーロッパにおける「ハーブ製薬」としてのエキナセアに対する動きは、臨床試験数が不足しているため、今後アメリカなどに波及するかもしれない。
ハーバル・プラクティショナーであり、American Botanical Councel の顧問委員であるサイモン・ミルズ氏は、エキナセアについての英医薬品局の勧告は、現在一般に販売されているエキナセア製薬の圧倒的多数を占めるOTC エキナセア製薬を直撃するだろうが、アトピーやアレルギーの有無など個人的なコンサルテーションをした上でエキナセア製剤を用いる、経験を積んだハーブハーバリストにはあまり影響を与えないだろう7、とコメントしている。「これはあくまでも勧告であり、法的制約や禁止ではないのだから」「ハーバリストたちは、彼らの経験や診療尺度に基づいて、子どもに対するエキナセアの使用判断することができる。ほとんどのハーバリストは以前と同じように用いると私は考えている」

ABC の創設者であり、常任理事のマーク・ブルーメンソール氏は、英国医薬品局がエキナセアの根部と地上部の違いを認識していない、と指摘している。「報告されているアレルギー反応はたいてい地上部(葉部、花部または圧搾汁)を含むエキナセア製薬によるものであり、これらは花粉を含んでいる可能性があるため、非常に敏感な人にはアレルギー反応が起こる可能性がある。エキナセアの根部のみを使用したアルコール(エタノール)製薬ならば、花粉の混入が考えにくいため、そのようなアレルギー反応はまず起こらないだろう。さらにいえば、根部もしくは地上部のエキスに用いるアルコールは、花粉を不活性化させる可能性が非常に高い」
(翻訳 荒瀬千秋、監訳 桂川直樹)
—————————————————————————————————
1http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Herbal_-_Community_herbal_monograph/2009/12/WC500018293.pdf

2http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Herbal_-_Community_herbal_monograph/2012/05/WC500127890.pdf

3http://www.bbc.co.uk/news/health-19318309

4英国医薬品局プレスリリース2012 年8 月20 日”Echinacea herbal producrs should not be used in children under 12 years old” www.mhra.gov.uk/NewsCentre/Pressreleases/CON180627

5英国医薬品局プレスリリース2012 年8 月20 日”Echinacea herbal producrs should not be used in childrenunder 12 years old” www.mhra.gov.uk/NewsCentre/Pressreleases/CON180627

6ABC のLindsay Stafford Mader 氏への2012 年8 月24 日付E メール

7ABC のLindsay Stafford Mader 氏への2012 年月4 日付E メール