2013.1.15.

代替医療への攻撃:有意義それとも魔女狩り?

コメント:荒瀬千秋、桂川直樹

FSM(Friends of Science in Medicine:医療における科学の信奉者)というグループによって、代替医療に関する大学の履修課程を閉鎖に追い込む組織的な運動がオーストラリアで広まってきています。大学で彼らが「疑似科学」と呼ぶものを止めさせようとしています。Friends of Science(FoS)というと、2002年にカナダで生まれた同じ名前のロビーグループがあります。このグループは気候変動枠組条約の京都議定書に懐疑的で、「地球温暖化の原因は大気中の二酸化炭素によるものではない」と主張して話題になりました。石油会社の利益になるように主張をしているのではなく、科学的ではないことに嫌悪感を感じて主張をしていたようです。

2007年には今回紹介する記事でも登場するイギリスのコフーン教授が有名な科学雑誌『ネイチャー』に代替医療を批判する記事を執筆して賛否両論活発な意見が交わされました。2008年(邦訳は2010年)に出版されたサイモン・シンらの『代替医療のトリック』でもハーブ療法以外のほとんどの代替医療に対して懐疑的な主張がなされ、西洋医学と代替医療との対立軸を鮮明なものにしました。

そして2011年、懐疑論者の資金的支援を受けてオーストラリアで発足したFSMは代替医療を攻撃の対象に絞り込み、ラディカルな主張をしています。FSMはこの代替医療を全くのデタラメと批判して大学の履修課程からすべての代替医療を外すように勧告しています。FSMの名称は明らかにFoSを意識しています。やはり特定の産業に肩入れをしているのではなく、純粋に「科学」を尊重すると代替医療はむしろよくないということになるのでしょう。当然ですが代替医療のグループからは多くの批判が寄せられて対立を深めています。FSMがターゲットとしているのは、鍼療法、ナチュロパシー(自然療法)、カイロプラクティック、エネルギー医学(手当て療法、気功など)、ホメオパシー、タッチ・ヒーリング(手を患部に接触させる療法)など多岐に渡ります。

確かにアメリカの国立補完代替医療センターの研究でもナチュロパシーについて総合的な有効性についての科学的エビデンスはほとんど得られていません。ホメオパシーでも同様です。しかし同時に、エビデンスがないのは代替医療だけではなく、西洋医学も同じです。BMJグループのエビデンス例を集めたウェブリソースでは、多くの外科・内科の治療について有効性を不明として分類しています。

カナダのFoSは原理主義的な考えにありがちで、攻撃的となりすぎたためか2011年11月にウェブサイトが撤去されました。イギリスのコフーン教授のウェブサイトも訴訟問題に発展し、不適切な文章を是正したようです。FSMの運動も攻撃的になりすぎるとむしろ健全な議論ができなくなってしまい、社会的な支持を得られなくなってしまうでしょう。いずれも「科学」を狭く解釈していることに問題がありそうです。代替医療を広めていくには効果があることを示す「科学的手法」を確立していくことが求められそうです。

今回紹介する記事は2012年2月にBritish Medical Journal(BMJ)に掲載されたものです。BMJは主流の西洋医学においてとても信頼性の高い医療雑誌ですが、一部の代替医療にはエビデンスがあることを認め、FSMの運動は攻撃的でありすぎ、将来の可能性を閉ざすものとして批判しています。
(コメント:荒瀬千秋、桂川直樹)

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紹介する記事

代替医療への攻撃:有意義それとも魔女狩り?
<補完代替医療コースを大学から一掃する運動がオーストラリアにも波及>
Assaulting alternative medicine: worthwhile or with hunt?
<Campaigns to cleanse complementary medicine courses from universities go global>
Ray Moynihan author and journalist, and conjoint lecture, University of Newcastle, Australia
BMJ 2012;344:e1075 doi: 10.1136/bmj.e1075 (Published 15 February 2012)