2012.12.5.

クルクミンで糖尿病を予防する

コメント:金田俊介 翻訳:佐藤史歩

この論文は、2型糖尿病の予防にクルクミンが効果的であるという報告です。このような「予防」に関する情報が出ると、一体どのタイミングから対策を始めたら予防になるのだろうと思われる方もいらっしゃるでしょう。完全に健康な状態から疾患を意識した生活を送ることが予防としてはベストなのでしょうが、実際は健康な時に病気のことを考えるのは難しいものです。今回の2型糖尿病に関しては、糖尿病前症という、糖尿病になる一歩手前の状態からのクルクミンの予防効果について検討しています。糖尿病前症は、アメリカで提案されている「血糖値が通常よりも高いが糖尿病ほど高くない状態」で、そこから将来的に70%もの人が糖尿病へと移行することが知られています。(日本で「境界型」と呼ばれるものがこれにあたるでしょう。)一方、糖尿病前症の段階で適切な処置を行なうことで糖尿病への進行を食い止めることができることも示されており、糖尿病患者を減らすのに大いに役立つ考えだと期待されています。
今回の論文で効果が検証されたクルクミンは、ショウガ科ウコン属の植物であるウコン(別名ターメリック)に含まれていることでよく知られている成分であり、ポリフェノールの一種です。本研究は古くからウコンを食用、および薬用としてきたタイの研究グループを中心に行なわれ、アメリカ糖尿病協会の発行するDiabetes Careという糖尿病領域では世界的に名高い学術誌上で発表されました。クルクミンには抗炎症作用をはじめ、様々な作用が知られていますが、糖尿病前症において膵臓のβ細胞(血糖値を制御する細胞)の損傷を修復することで2型糖尿病への移行を防ぎ、予防効果を示したと考えられます。本文中に出てくるHOMA-βやC-ペプチド(=CPR)はβ細胞のインスリン分泌機能の目安、HOMA-IR(=HOMA-R)やアディポネクチンはインスリン抵抗性の目安となり、これらの値からクルクミン投与によってβ細胞機能やインスリン抵抗性が改善されたことが示唆されています。何より、試験開始から9ヶ月経ってもクルクミン投与群では糖尿病に移行してしまった人がゼロだったことはとても興味深い結果でしょう。

これからの医療の一つとして予防医療に対する期待は大きく、メディカルハーブの持つ予防効果にも期待されていますが、漠然と予防と言ってもタイミングが難しい点もあり、なかなか予防効果を検証するのは困難な部分もありました。今回の論文では、予防を開始すべき状態がはっきりと提案されることで、メディカルハーブ由来成分が2型糖尿病の発症を予防できることが示されました。今後は糖尿病以外の疾患においても、メディカルハーブの持つ予防効果が分かりやすい形で示されるかもしれません。
(コメント:金田俊介)

クルクミンエキスが2型糖尿病を予防
原題:Curcumin Extract for Prevention of Type 2 Diabetes
掲載:Diabetes Care. 2012 Nov;35(11):2121-7.

目的:糖尿病前症患者を対象に、2型糖尿病(T2DM)症を遅延させるクルクミンの効果について検討した。

試験デザインと方法:ランダム化二重盲検プラセボ対照試験で、糖尿病前症患者(240名)を対象とした。全被験者は無作為に割り付けされ、クルクミンカプセルあるいはプラセボカプセルのいずれかを9ヶ月間服用した。クルクミン治療後の2型糖尿病進行度を評価し、2型糖尿病を発症した被験者数を確認した。治療期間中、ベースライン時、3ヶ月後来院時、6ヶ月後来院時、9ヶ月後来院時に、β細胞機能(ホメオスタシスモデルアセスメント[HOMA]-β、C-ペプチド、プロインスリン/インスリン比)、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、抗炎症性サイトカイン(アディポネクチン)とその他の項目を測定した。

結果:9ヶ月間の治療後、プラセボ投与群では、被験者の16.4%が2型糖尿病と診断された。一方、クルクミン投与群では誰も診断されなかった。クルクミン投与群はプラセボ群と比較して、HOMA-β値は有意に高く(61.58 vs. 48.72、P<0.001)、C-ペプチド値は有意に低く(1.7 vs. 2.17、P<0.05)、β細胞機能全体が改善した。さらに、クルクミン投与群はプラセボ投与群と比較して、HOMA-IR値は有意に低く(3.22 vs. 4.04、P<0.001)、アディポネクチン値は有意に高かった(22.46 vs. 18.45、P<0.05)。

結論:糖尿病前症患者を対象に、9ヶ月間クルクミン治療を実施したところ、最終的に2型糖尿病を発症する患者数を有意に抑制した。さらに、クルクミン治療は、β細胞機能全体を改善し、副作用は極めて軽微であった。以上の結果から、糖尿病前症患者へのクルクミン治療は有効である。

(翻訳:佐藤史歩)