2012.10.31.

ある種のC型肝炎に対するシリマリンの効果について

コメント:金田俊介、翻訳:佐藤史歩

肝硬変、肝細胞癌などを発症してしまう可能性のあるC型肝炎ウイルス感染者は、全世界で実に3%近くいると言われています。基本的にC型肝炎の治療には、インターフェロンを軸とした抗ウイルス療法が行われます。ところが、開発当初は特効薬として期待されたインターフェロンでも治らない患者さんが多くみられることが分かりました。実は、ひとくちにC型肝炎ウイルスと言ってもさまざまな種類があり、そのタイプや量によってインターフェロンが効かなくなることが分かってきたのです。

今回ご紹介する論文は、このようにインターフェロンを投与しても効果が見られなかったC型肝炎患者さんへのシリマリンの効果を調べたものです。シリマリンとは、キク科の植物マリアアザミ(ミルクシスル)に含まれる活性成分とされるフラボノリグナン類の混合物であり、アメリカ合衆国では肝臓疾患に広く用いられています。慢性C型肝炎や肝硬変の患者さんのうち3人に1人が治療目的での使用歴があるとも言われています。

この研究の結論としては、インターフェロン治療が奏効しなかった慢性C型肝炎患者にシリマリンを投与しても、同じように治療効果は認められませんでした。もしインターフェロンが効かないタイプのウイルスでもシリマリンが奏効すれば多くの患者さんにとって朗報だったのでしょうが、残念な結果に終わりました。確かにシリマリンは肝臓疾患に効果的だと言われていますが、インターフェロン治療を受けても改善しないタイプでは効果を発揮することができなかったのはさすがに仕方のないことかもしれません。この結果から、少なくとも現状ではインターフェロン治療が有効でなかった患者さんがシリマリンのみを服用することで安心してしまうのは危険だと言えるでしょう。ただ、統計的に有意ではなかったものの肝機能マーカーのひとつである血清ALT活性(主に肝細胞の破壊などで上昇する)はシリマリン投与によって低下傾向を示しているようにも見えました。ウイルスの排除ができなくとも、肝細胞の破壊を抑えて現状を維持することもこの疾患では重要です。今回の試験ではシリマリン単独の効果について検証されましたが、シリマリンを他の治療法と組み合わせることで相乗的に作用する可能性なども否定できず、今後のさらなる研究が期待されます。
(コメント:金田俊介)

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インターフェロン治療が奏効しなかったC型慢性肝炎患者を対象とした肝疾患に及ぼすシリマリン(ミルクシスル)の影響:ランダム化比較試験
原題:Effect of silymarin (milk thistle) on liver disease in patients with chronic hepatitis C unsuccessfully treated with interferon therapy: a randomized controlled trial
掲載:JAMA. July 18, 2012;308(3):274-282.

内容:ミルクシスル抽出物である植物性製品のシリマリンは、慢性肝疾患患者の治療に一般的によく使用されているが、その有効性を示す証拠は不十分で矛盾している。

目的:インターフェロンをベースにした治療が奏効しなかった慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染者を対象に、肝疾患の活動性に及ぼすシリマリンの影響を検討した。

治験のデザイン、セッティング、被験者:本試験は、多施設、二重盲検、プラセボ対照試験で、米国の4医療施設で実施された。今までにインターフェロン治療を受けたが奏効しなかった慢性C型肝炎ウイルス感染者で、血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)値が65 U/Lあるいはそれ以上の患者を対象にした。154名が治験に参加した。組み入れは2008年5月に始まり、2010年5月に完了した。最終経過観察来院は、2011年3月に終了した。

介入:被験者は、シリマリン420 mg投与群、シリマリン700 mg投与群、プラセボ群に割付けされ、1日3回24週間投与された。

主要評価項目:主要評価項目は、血清ALT値が45 U/Lあるいはそれ以下(正常値範囲内)、または、65 U/L以下とした。但しこれは、基準値から少なくとも50%の低下を条件とした。副次評価項目として、ALT値の変化量、HCV-RNAの変化量、QOL(生活の質)値を測定した。

結果:24週間の治療後、主要評価項目を満たした被験者は、各群2名(P>0.99)のみであった。その割合は、プラセボ群で3.8%(95%CI[信頼区間]:0.5%~13.2%)、シリマリン420 mg投与群で4.0%(95%CI:0.5~13.7%)、シリマリン700 mg投与群では3.8%(95%CI:0.5~13.2%)であった。

治療終了時の血清ALT活性平均低下量は、プラセボ群で-4.3 U/L(95%CI:-17.3~8.7)、シリマリン420 mg投与群で-14.4 U/L(95%CI:-41.6~12.7)、シリマリン700 mg投与群では-11.3 U/L(95%CI:-27.9~5.4)であった。3群間に有意差はみられなかった(P=0.75)。
HCV-RNA値の平均変化量は、プラセボ群で0.07 log10IU/mL(95%CI:-0.05~0.18)、シリマリン420 mg投与群で-0.03 log10IU/mL(95%CI:-0.18~-0.12)、シリマリン700 mg投与群では0.04 log10IU/mL(95%CI:-0.08~0.16)であった。3群間に有意差はみられなかった(P=0.54)。同様にQOL値においても、3群間に有意差はみられなかった。有害事象プロファイルは、プラセボ群とシリマリン投与群では同程度であった。

結論:インターフェロン治療が奏効しなかった慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染者に、高用量のシリマリンを投与したところ、プラセボと比較して、血清ALT値の有意な低下はみられなかった。
(翻訳:佐藤史歩)