2021.10.11

認知症の予防にマインド(MIND)ダイエット

病気の予防に様々な食事法が存在しているが、その中でも地中海式ダイエット(Mediterranean diet)とダッシュ(DASH)ダイエット(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、それぞれ心臓病予防と高血圧予防のために欧米で広く用いられている。この2つの食事法を組み合わせたマインド(MIND)ダイエット(Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay)は、米国ラッシュ大学メディカルセンターの研究者により考案された認知症予防に特化した食事法である。1) アルツハイマー病は、遺伝子、環境、生活習慣などさまざまな因子が関与しているが、高齢になって発症するアルツハイマー病では遺伝子の影響は小さく、食生活が大きく影響しているとされる。

ラッシュ大学で1997年から行われている米国シカゴ地域の退職者を対象としたラッシュメモリーアンドエイジングプロジェクト(MAP)のデータから抽出して行われたコホート研究で、認知症と診断されていない960人(平均年齢81.4歳、女性75%)を対象に食事の傾向と認知機能の変化を調査したところ、MINDダイエットスコアが高い人はアルツハイマー病のリスクが53%低下し、MINDダイエットを行わなかった人に比べて認知機能、特にエピソード記憶、意味記憶、および知覚速度に関して、7.5年若い傾向を示した。2) また、MINDダイエットを厳密ではなく適度に行った人でもアルツハイマー病のリスクの35%低下していたが、地中海式ダイエットまたはDASHダイエットを個別に適度に行なった場合では同様の効果は見られなかった。さらに、MINDダイエットを長期間続けると、より良くアルツハイマー病を予防できる可能性があることが示唆された。

また、MAPプロジェクトでは参加者は死亡時の脳の提供に同意をしている。MAPプロジェクトで新たに行われた研究で、569人の食事、認知機能、及び死後の脳の検体データを調査したところ、対象者のうちアルツハイマー病の診断を受けていたのは約3分の1であったが、剖検で対象者の3分の2の脳にアルツハイマー病の病理学的兆候が認められた。また、その脳病変の有無またはその程度とは無関係に、MINDダイエットスコアが高い人はより良い認知機能と関連していた。これにより、アルツハイマー病の病状や加齢に伴う脳病変が発生していたとしても、MINDダイエットが実際の認知機能を向上させる可能性があることがわかり、また、MINDダイエットの認知機能の保護効果は脳病変を改善することによるものではないことがわかった。

MINDダイエットは、食材を15のカテゴリーに分け、植物性食材の摂取を推奨し、動物および高飽和脂肪食品の摂取を制限する食事法だ。

10の推奨食品

  1. 緑の葉物野菜(週6サービング以上)
  2. その他の野菜(1日1サービング以上)
  3. ベリー(週2サービング以上)
  4. ナッツ(週5サービング以上)
  5. オリーブオイル(調理用やサラダ用として利用)
  6. 全粒穀物(1日3サービング以上)
  7. 魚(週1食以上)
  8. 豆(週4食以上)
  9. 鶏肉(週2食以上)
  10. ワイン(1日125mL))

5つの避ける食品

  1. 赤身肉(週4食未満)
  2. バターやマーガリン(1日1テーブルスプーン未満)
  3. チーズ(週1サービング未満)
  4. パン菓子やお菓子(週5サービング未満)
  5. 揚げ物やファストフード(週1回未満)

MINDダイエットは、抗炎症作用や抗酸化作用のある食材に加え、β-アミロイド沈着の予防、神経毒性死の予防、及び神経保護作用など、認知促進作用のある栄養素(葉酸、ビタミンE、ルテイン、ゼアキサンチン、フラボノイドなど)に重点をおくものだ。

〔文献〕
1) Morris MC, Tangney CC, Wang Y, et al. MIND diet slows cognitive decline with aging. Alzheimers Dement. 2015;11(9):1015-1022. doi:10.1016/j.jalz.2015.04.011
2) Dhana K, James BD, Agarwal P, et al. MIND Diet, Common Brain Pathologies, and Cognition in Community-Dwelling Older Adults. J Alzheimers Dis. 2021;83(2):683-692. doi:10.3233/JAD-210107

(11/10/2021 報告:河野加奈恵 学術委員)