2021.10.25

ジンジャーのうがい薬で糖尿病のドライマウスを改善

学術委員

河野加奈恵

糖尿病の患者数は世界的に急増しているが、疾患が疑われる人を含めると、日本でも現在約5人に1人が糖尿病を罹患しているとされる。糖尿病はその進行とともに、心血管疾患、網膜症、腎症、神経障害など様々な合併症を引き起こしQOLを下げるが、その合併症の一つにドライマウス(口腔乾燥症)がある。ドライマウスの状態が続くと口腔内の細菌感染を引き起こしやすくなり、口内炎、歯周病、および口腔カンジダ症など局所的な合併症だけでなく、敗血症、関節炎、および心内膜炎などの全身の合併症をも引き起こす要因となる。

現在、薬理学的介入において長期的かつ効率的な口腔乾燥症の管理方法が存在しないため、代替療法を用いた管理が期待されている。このような背景から、今回の三重盲検ランダム化比較試験では、口腔乾燥症を持つ105名の2型糖尿病患者を対象に、ジンジャー(Zingiber officinale)25%含有のうがい薬、アロエベラ(Aloe vera)50%含有のうがい薬、および生理食塩水のうがい薬の3つのグループに分けて、14日間の間、食後1日3回、20 mLを1分間口の中で含ませうがいをするよう指示し、その口腔乾燥症における有効性を調査した。

結果は、ジンジャーおよびアロエベラのうがい薬のグループでは、食事中の口腔内乾燥、嚥下困難、喉の渇きによる中途覚醒、味覚障害、口腔内の灼熱感などを含む全ての口腔乾燥症の症状の緩和が見られたが、その中でも特に、乾燥した食品を飲み込むために水を飲む必要、唾液分泌の低下感、起床時の口腔内の乾燥、移動中の口腔内の乾燥などの症状において、生理食塩水のうがい薬に比較して顕著な軽減が認められた。

また、特に、食事中の口腔内乾燥、喉の渇きによる中途覚醒、唾液分泌の低下感、移動中の口腔内の乾燥においては、アロエベラのうがい薬よりもジンジャーのうがい薬の効果が顕著だった。

優れた抗炎症効果と抗酸化作用を持つジンジャーは、吐き気と嘔吐を軽減し、生活習慣病と体重減少をサポートする以外にも、唾液分泌を増加させ、唾液腺を刺激をする作用を持つ。糖尿病患者のQOL向上に、安価で手に入りやすく、合併症も少なく安心できる素材のジンジャーの活用が今後も期待される。

​〔文献〕

Badooei F, et al. Comparison of the effect of ginger and aloe vera mouthwashes on xerostomia in patients with type 2 diabetes: A clinical trial, triple-blind. Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2021;26(4):e408-e413. doi:10.4317/medoral.23998

(10/7/2021 報告:河野加奈恵 学術委員)