2021.9.25

バタフライピー,関節の滑膜でのマトリックス-メタロプロテアーゼ-2の
活性抑制により関節炎の症状緩和

バタフライピー(マメ科 チョウマメ 蝶豆 Clitoria ternatea)は,花が蝶に似ていることからその名前がつけられた。
花弁に青色のデルフィニジン系のアントシアニンであるテルナシンを豊富に持ち,その美しさからの人気も高い。また,タイや台湾などで,抗酸化のためのハーブティーとして用いるなどされ,植物療法でも古くから活躍してきたメディカルハーブの一つである。

関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis: RA)は関節内に存在する滑膜という組織が異常増殖することによって関節内に慢性の炎症を生じる自己免疫疾患の一つで,全国で患者数は70万〜80万人に及ぶと推定されており,女性に多く,働き盛りの30〜50歳代が発症のピークと考えられている。

今回紹介する研究では,ヒト慢性リウマチのモデルとして用いられているコラーゲン誘発性関節炎発症マウスを対象に,バタフライピー花弁またはその成分であるケルセチン-3β-D-グルコシドについて,炎症性サイトカインの一つであるTNFαの受容体TNFR1に介される抗体を中立状態にすることで,コラーゲン誘発性関節炎の症状を改善に寄与するかどうか調べている。

2型コラーゲン(CII)免疫により関節炎を誘導して症状を発症させ,それに対するバタフライピー及びケルセチン-3β-D-グルコシドの作用について検討した。

検討は,炎症に関連があるとされる以下を指標として行われた。
・ミエロペルオキシダーゼ活性による滑膜多形核細胞の蓄積
・滑膜および全身へのサイトカインの放出
・ケモカインおよびC反応性タンパク質(CRP)の状態
・滑膜でのフリーラジカル生成および抗酸化作用
・滑膜でのTNFR1,トール様受容体2(TLR2)の状態
・シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)および誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の発現
・滑膜でのマトリックス-メタロプロテアーゼ-2(MMP-2)活性

関節炎の症状を把握するためのスコアおよび関節の腫脹状態,関節の滑膜の炎症および酸化ストレスパラメータの増加を見ると,誘発二日後より関節炎の症状発現がみられた。

誘発から24日後まで,長期的にバタフライピー(50mg / kg)およびケルセチン-3β-D-グルコシド(2.5mg / kg)抽出物をモデルマウスに投与した結果,抗TNFR1抗体でのTNFR1中和による関節炎の症状緩和が増強された。
また,TNFR1,TLR2,iNOS,COX-2の有意な減少(p <0.05),炎症性サイトカイン,ケモカイン,活性酸素種(ROS)/反応性窒素種(RNS)およびMMP-2発現の抑制がみられ,関節炎の症状緩和が示唆された。

この研究によって,バタフライピーおよびその成分であるケルセチン-3β-D-グルコシドは,関節における滑膜でのマトリックス-メタロプロテアーゼ-2(MMP-2)の活性抑制で示される抗関節炎活性を有することが示唆された。

この結果は,TNFR1阻害による治療に続き,バタフライピー抽出物またはケルセチン-3β-D-グルコシド投与を組み合わせることが,関節炎の症状緩和のアプローチの一つとなる可能性を示している。

バタフライピー花弁は古くから関節炎に使われてきたとのこと,今回の研究では,そのメカニズムの一端が解明されたと言えるだろう。今後の研究の発展に期待したい。

〔文献〕Adhikary R. et.al., Clitoria ternatea flower petals: Effect on TNFR1 neutralization via downregulation of synovial matrix metalloproteases. J Ethnopharmacol. 2017; 210: 209-222. PMID: 28826781 DOI: 10.1016/j.jep.2017.08.017


参考)マトリックス-メタロプロテアーゼ(MMPs)
生体内の色々な組織は,細胞と細胞外マトリックスから構成されている。細胞外マトリックスは組織の構造や機能を調節しているので,その分解は細胞機能の変化や破綻を引き起こす重要な現象であり,生理的な組織改築のほか種々の病的組織における組織破壊の際に認められる。

マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)という酵素群は細胞外マトリックスを分解し,慢性関節リウマチ,変形性関節症などにおける組織破壊やコラーゲン産生などに関与していることが知られている。

マトリックス-メタロプロテアーゼ-2(MMP-2)はそのうちの一つであり,別名をゼラチナーゼという。組織,細胞および血中に存在することが知られており,細胞外マトリックスの構成成分であるゼラチン,IV,V,VII,X,XI 型コラーゲンやフィブロネクチン,エラスチン,さらにはプロテオグリカン分解活性を有し,組織破壊や癌の浸潤,転移への関与が報告されている。

(9/25/2021 報告:村上志緒 学術委員)