2021.7.20.

菜園レッスン
菜園での植物と人との関わり
~ 総括 ~

当協会理事

木村正典

いろいろな栽培方法

あなたは、どのような栽培を目指しますか。

様々な切り口からお話をしてきましたが、今回は、その総括として、家庭菜園における植物と人との関わりについてお話をしたいと思います。上の図に、化学物質の使用量と手間の量を基にした、いろいろな栽培方法を位置づけてみました。

これまでこの連載でご紹介してきた有機栽培は、図中の「楽しみとしての有機栽培」にあたります。図の右や上に向かう方向は、生産性や営利を大切にする方向で、下に向かう方向は生態系を大切にする方向といえます。皆さんがどのあたりで栽培を楽しもうとしているのかの参考にしていただければと思います。石灰を使うのか使わないのか、畑を耕すのか耕さないのか、虫や雑草を取るのか取らないか、取るとしたらどのような方法でどのくらい取るかなど、それぞれに目的と理由があってどれも間違いではありません。

大切なのは、どこの位置づけで栽培するのかではなく、どっちの方向を向いていくのかであって、向かっていく方向さえハッキリしていれば、どの方法を選択していくのかも見えてきます。いろいろな栽培手引き書に違うことが書いてあっても、どの位置づけで書いてあるのかを想像すると、なぜ違うのかも理解できると思います。

生き物と生き物のつながり、自然と人とのつながり、人と人とのつながり

有機栽培のおさらい

有機栽培は化学物質を使わない栽培です。化学物質を使わない理由は、「人の健康」と、生態系を大切にするために「生き物の健康」を守るためです。

植物が光合成でCO²とH²OからCHO(有機物)を作り、それを草食動物が食べ、肉食動物が食べ、動植物の死骸や糞が土壌中の小動物や微生物によって分解され、その分解産物を植物が栄養とするといった、食物連鎖や、自然のサイクル、香りや薬効成分などによる生き物同士のつながりなど、生態系の仕組みの中で栽培をするのが有機栽培です。そのために、生き物全体の健康を守る必要があります。

香りや薬効は何のために?

虫から身を守る
ハーブの香り

ハーブの香りは、花の香りのように昆虫などのほかの生物を誘引したり、葉の香りのように外敵から身を守ったり、はたまた、ほかの植物の繁殖を抑えたりするために存在しています。これまでもシソ科の腺毛やセリ科の油管、ミカン科の油室、ショウガ科の精油細胞など、それぞれのハーブに特有の精油分泌構造を見てきました。

虫を呼び寄せる
花の香り

香りに限らず、辛味や色素、薬効などの成分は、植物の作り出す光合成の二次代謝産物(フィトケミカル)であり、これらは、自分の身を守りながら子孫が繁栄していくために、植物が他の生物ととるコミュニケーションのツールです。

その自然生態系のつながりの恩恵を、私たちは癒やしや健康など、豊かな暮らしに取り入れ活用していることになります。

豊かな社会のために

育てる楽しみやハーブを利用する楽しみを一人ではなく、家族や学校、職場、地域など複数の人と共有することで、人と人とのつながり、豊かな社会をつくることができます。

まとめ

有機栽培や、植物の香りや薬効などの成分を通して、
生き物と生き物のつながり(生態系)を感じながら、自然とつながり、
人と人とがつながって豊かな社会がつくれたらと、願っています。

当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『HERB & LIFE』 VOL.16:2017年3月