2021.7.15

菜園レッスン 栽培と成分のはなしⅢ
~収穫方法や部位で辛味の強さはどう違う?~

当協会理事

木村正典

ハーブの辛味成分の種類と、それらを含有する部位がどこなのかを明らかにすることで、
辛味成分の役割を探ります。

ハーブの辛味成分

辛味成分の含量は、若い器官や繁殖器官(種子や貯蔵器官)などに高いという特徴があり、大切なところを外敵から守っていると考えられます。これらのことから、辛味成分には抗菌や害虫・害獣除けなどの役割をもつことが推察されます。

アブラナ科のハーブ

(ワサビ、ホースラディッシュ、カラシ、ダイコン、ルッコラ、クレソンなど)

ルッコラ

辛味成分はイソチオシアネート類。植物体中ではグルコシノレート類として、糖と結合した辛くない化合物で存在する。組織が壊れると、ミロシナーゼ(酵素)と接触して加水分解され、辛味成分イソチオシアネートが揮発して出現する。

辛味成分(イソチオシアネート類)は、植物によって多く含まれる部位が違う。

ワサビ
根茎の若い部位(葉柄のついている部分)に多い。すりおろす時はこちら側から。

ダイコン
双葉の段階(カイワレ)で多い。根の先端(しっぽの方)は首の部分の約6倍。また辛味ダイコンなど、辛味成分含量の高い品種もある。

カラシ
種子に多い。マスタードの原料の黒ガラシや白ガラシよりも、和ガラシの原料である黄ガラシの方が辛味が強い。

ダイコンは、先端部が首の部分の6倍も辛いので、利用部位を変えることで辛味を調整できます。

ネギ属のハーブ

(ニンニク、タマネギ、ラッキョウ、ニラ、ネギ、チャイブ、アサツキなど)

辛味成分はスルフィド類。植物体中ではシステインスルホキシド類として、辛くない化合物で存在する。組織が壊れると、アリイナーゼ(酵素)と接触して加水分解され、その後さらに化学変化をして辛味物質や催涙物質が生成される。

トウガラシ
辛味成分はカプサイシン。不揮発性で、脂溶性。辛味は種子にはなく、胎座(種子が付着している白くてふかふかした部分)に多く、果肉には少ない。果実が熟すと、胎座が乾燥して壊れ、カプサイシンが果実内に飛び散るために果実全体が辛くなる。

ショウガ
辛味成分はジンゲロールショウガオール。不揮発性。全草に辛味があるが、貯蔵器官である根茎に特に強い辛味がある。ジンゲロールが主成分で、乾燥や加熱によってジンゲロールが脱水されるとショウガオールに変化する。

コショウ
辛味成分はピペリン(酸アミド類)。不揮発性。全草に辛味があるが、特に果実の辛味成分含量が高く、強い辛味がある。

サンショウ
辛味成分はサンショオール。不揮発性。全草に辛味があるが、特に果実の辛味成分含量が高く、強い辛味があるため、「粉山椒」で利用する。葉部は「木の芽」。

自分で育てて辛味をコントロールするには……

①育てる時の光の強さを変える
辛味成分は光合成の二次代謝産物ですので、光合成をすればするほど辛くなります。ルッコラやカラシナなどは日当たりの悪い場所で育てたり、遮光すると辛味が抑えられ、食べやすくなります。「木の芽」も枝先に袋をかけるなどして光を遮って芽吹かせると、軟らかくなります。

②品種を変える
例えばダイコンは品種分化が進んでいるため、辛味成分含量の品種間差も大きく、強い辛味を求める場合は辛味ダイコン、弱い辛味を求める場合はハツカダイコンや青首ダイコンなどを用います。これは、自分でカイワレダイコンを作る際も同様です。

③利用部位を変える
ダイコンは、先端部が首の部分の6倍も辛いので、利用部位を変えることで辛味を調整できます。トウガラシは種子の付着している胎座に辛味が集中し、熟して乾燥すると胎座がバラバラになって果実全体に辛味が飛び散ります。強い辛味を求める場合は赤く熟すまで待ち、胎座付近を使います。弱い辛味を求める場合は青いうちに収穫して胎座以外を利用します。普段、利用しないルッコラやカラシナのカイワレ、トウガラシの葉、ショウガの葉鞘(茎を包む部分)なども利用してみましょう。

当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『HERB & LIFE』 VOL.14:2016年9月