2021.7.10.

菜園レッスン 香りを強くするポイント 栽培と成分のはなしⅡ ~収穫部位で精油含量はどう違う?~

当協会理事

木村正典

シソ科ハーブの部位と精油含量

シソ科のハーブの精油含量は、古い葉よりも新しい葉の方が高いことが分かっています。それはなぜなのか、精油の存在形態や存在場所から考えてみると精油の役割が見えてきます。

シソ科のハーブ(一例)

ローズマリー
イム
ラベンダー
ペパーミント

部位と腺毛(精油分泌組織)

シソ科のハーブの精油は、腺毛の中に蓄えられています。腺毛は新葉ほど密度が高く、花の周りの萼やホウ葉などにも密生しています。

ローズマリーの未展開葉(新葉)にびっしりついた腺毛。
シソの腺毛
p:楯状腺毛
c:頭状腺毛
n: 毛 

ミントの精油成分割合

ミントの精油成分は種類によって異なります。ペパーミントはメントールとメントンが主成分ですが、新葉と古い葉ではその成分割合が大きく異なり、新葉にはメントンが多いのが特徴です。植物全体でみると、メントンは生育にともない減少します。メントンには新芽を守るなど、何らかの特別な役割があることが推察されます。

精油の役割

精油はキューティクルで囲まれた袋状の腺毛の中に存在しますので、そのままでは香りません。葉をこすったり、踏まれたり、かじられたりして傷ついた時に腺毛が壊れて香りが出るようになっています。
これは、外敵から身を守るための防御システムと考えられます。すなわち、腺毛は毒ガス地雷のような装置で、精油は敵を撃退する毒ガスかもしれません。若い葉や生殖器官(花)の周りなどに腺毛が密生してみられるのは、大切なところを外敵から守っていると考えられるのです。
これらのことから、シソ科の精油には抗菌性や虫除けなどの役割があることが推察されます。

香りと栽培 香りを強くするポイント

①光合成能力を高める
精油成分は光合成の二次代謝産物ですので、光合成をすればするほど精油含量が高くなり、香りが強くなります。スペアミントなどは、夏には甘いよい香りがしますが、光合成能力の低下する冬にはほとんど香りません。温度が高く、直射日光によく当たることで香りが高くなります。窒素肥料が欠乏すると、葉が黄ばんで生育が悪くなり、香りも弱くなります。

②茎の先端を摘み取る
育てる時に、茎の先端の新芽付近を摘み取ると、直下の節から新たな側枝が2本出ます。つまり、新芽を摘めば新芽が2倍になります。新芽の数を増やすことで、香りの強い部分が増えます。新芽をどんどん摘んで利用しましょう。

利用について

新しい葉ほど香りが強くなります。また、乾燥させることで香りは弱くなります。料理に使う場合は、必ずしも香りの強い方がよいとは限りません。香りが強くなると、ハーブによっては青臭みが増したりします。ハーブの種類によって、あるいは料理によって、弱い香りを利用するために、古い葉や乾燥させた葉の方がよい場合もあります。使い比べてみましょう。

当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『HERB & LIFE』 VOL.13:2016年6月