2020.12.28

ガーデニングデザイン #2 「みどり」のデザイン・ガーデンで 「何をしたいか 」

樹木医

本位田有恒

「みどり」とは、植物だけのことではなく、生きもの、人、風景、あらゆるものが含まれます。ガーデンは私たちにとって一番身近な「みどり」。どのように「みどり」とおつき合いしていきたいのかを考え、ガーデンをデザインしてみましょう。

ガーデンで 「何をしたいか 」

眺める」、「くつろぐ」、「遊ぶ」、「生きものを呼ぶ」、「活用する」などいろいろなつき合い方が考えられます。

眺める

リビングや和室から、座って眺める景色を想像してみましょう。例えば秋にはモミジなど落葉樹の紅葉や旬の草花が季節を感じさせてくれます。また石と砂利を組み合わせれば、枯山水の和風ガーデンとして心を落ち着かせてくれます。どんな小さなスペースでも、縮景のガーデンとして、景色を眺めることができます。

くつろぐ

やわらかい陽射しを浴びて、ガーデンのベンチや木製の椅子に座って心地よい時間を過ごすことは、なんと贅沢な時間でしょう。また、芝生に寝転びくつろげるのは、自宅ならではの特権。テーブルにお気に入りのクロスをかけて、フレッシュハーブティーを飲む姿を想像してみましょう。

遊ぶ

砂場やブランコなど遊具があるガーデンは、 家族のぬくもりを感じることができます。小さな子どもがガーデンで遊ぶことは、みどりに触れられる大事な時間。子どもたちの目には何もかもが新鮮に映ります。

生きものを呼ぶ

植物が実を結び、種を残していくためには、チョウやハチなどの虫のお世話になることもあります。花の香りに誘われて飛んでくる虫たちも、自分たちが生きていくために一生懸命です。アゲハチョウやトンボ、また、その昆虫たちを狙ってくる鳥たち。ガーデンは住み家として、生きものを呼び込むことができるのです。

活用する

今日のハーブティーはレモンバームのやさしい香り。チキンのソテーにローズマリーを1つまみ。ミントをお風呂に入れて、リフレッシュ。様々な活用方法があるハーブ。いつでも新鮮なハーブや野菜が育つガーデンは、素敵なライフスタイルをつくり出してくれます。たまにお隣さんにおすそ分けすれば、きっと会話もはずむことでしょう。

実際にガーデンのイメージを考えてみましょう! 例をご紹介。

原風景を思い出させてくれる  里山ガーデン
カフェのようなおしゃれで  モダンなガーデン
和室から眺める落ち着いた  和風ガーデン
風にそよぎパステルな色合いの イングリッシュガーデン

里山ガーデン

里山は元々暮らしに密着した生活空間です。薪や炭の材料を切り出したり、季節の山野草を食べたり、日本人 の原風景です。クヌギやコナラなどの株立ちの木や、ヤマボウシ、クロモジなどは冬には明るい庭を演出して くれます。下草には多年草のギボウシやヤブラン、斑入りのツワブキも秋にはきれいな黄色の花を咲かせます。

おすすめのアイテム
切り株

おすすめの植物
ヤマボウシ、クロモジ、 サンショウ、クマザサ、ヤブラン、 ギボウシ、クサソテツ

モダンガーデン

アウトドアリビングのような空間を想像してみましょう。デッキテラスにおしゃれなテーブルとチェア。クッションのあるソファもくつろぎのスペース。こだわりのコンテナに植えたジューンベリーやオリーブを好きな場 所に配置してみましょう。清潔感も大事な要素です。

おすすめのアイテム
デッキテラス、テーブル、 チェア、ソファ、クッション、 コンテナ

おすすめの植物
オリーブ、ティーツリー、ミモザ、 ジューンベリー、ラベンダー

和風ガーデン

自然の風景を映し出している日本式庭園。山があり、谷から水が流れ川となり、流れ込む池は海でもあります。
石組みは魂が宿るといわれ、植栽は彩り。蹲や灯篭は景物として、人の営みを表します。また、水を使わず砂利で川や海を表現する「枯山水方式」もあります。形式にとらわれず心の赴くままに、石を庭に据えてみてください。

おすすめのアイテム
庭石、灯篭、蹲、砂利

おすすめの植物
イロハモミジ、ナツツバキ、 マツ、ウメ、クマザサ

イングリッシュガーデン

自然をつくりだすことが日本式庭園であれば、自然の一部を切り取って風景をつくりだすのがイングリッシュガーデンといえるでしょう。その中で、モザイク状に多品種の植物を植えて高さによるリズムを出すボーダーガーデンや、個性のある園芸品種も自然の中に育っているかのように植栽することで、違和感がなくなります。

おすすめのアイテム
シェッド(物置小屋)、道具、 木製ベンチ

おすすめの植物
バラ、クレマチス、セージ類、 デルフィニウム、ルピナス、 コモンマロウ、ラムズイヤー

まとめ

ここまでで具体的にイメージはできましたでしょうか。 ガーデンでしたいことと、でき上がったイメージを組み合わせることで、具体的なみどりの姿が見えてきます。形を整えてつくるフォーマルなガーデンも素敵です。ただし忘れてはいけないのは、植物は生きており、年々育っていくということです。

植えた時から始まるのが「みどり」のデザイン。次回は、その植物たちとのつき合い方をお伝えしたいと思います。

樹木医
本位田有恒 ほんいでんありつね
公園管理運営士。神戸布引ハーブ園支配人兼園長。大学で造園について学び、神戸市の都市公園・日本庭園「相楽園」の園長を務めるなど、数々の庭園や公園づくりに携わる。神戸市の緑花まちづくりにも取り組み、植物に対して深い造詣をもつ。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第45号 2018年9月