2019.3.15

自然物の社会経済的影響の調査:バラ

翻訳:國分 裕子

工業用に栽培している主要なバラは、ロサ・ダマスケナ(Rosa Domascena Miller)、ロサ・ケンティフォリア(Rosa Centifolia)、小さい白色のロサ・アルバ(Rosso Alba)、ロサ•ルゴサ(Rose Rugosa)です。

これらのバラは今日、イラン、アフガニスタン、中国、ブルガリア、トルコ、モロッコ、インドで生産しています。モロッコでは、ケンティフォリアが主に栽培され、中国ではルゴサ種が栽培されていますが、ダマスケナオイルとは品質に違いがあります。

ロサ・ダマスケナの主要生産地域は、トルコの南西部のウスパルタ県と、ブルガリアのバラの谷のあるスタラ・ザゴラとプロブディフです。両地域は、1878年のブルガリアの独立まで、オスマン帝国領で、バラの栽培・生産をしていました。

トルコ

バラとローズオイルの生産は、アナトリア文化で何世紀にも渡り行われてきましたが、商業的な蒸留工場が委託されたのは1934/35年でした。オイルの生産は、家族農業で行われ、かなりの重労働で高収入は期待できません。しかし、伝統的な地産物で、文化遺産の一部でもあり、一定の収入もあるめ、現在でも生産が続いています。

2010年当時では、1,400kgのローズオイルを生産するのに、約10,000世帯が関わり、1ha(へクタール)以下の複数の小さな宅地で蒸留されました。

過去8年のローズオイルの需要と値段の高騰で、生産量は増加しています。毎年、7,000-8,000t(トン)のバラが1,400kgのオイルになり、2013年には6,000kgのコンクリートと1,000kgのアブソリュートが生産されました。2017年の数字から、バラ産業の収益が概算できます。

ブルガリア

トルコと同様に、バラの育成は350年以上前のオスマン帝国の文化に遡ります。バラの栽培は、十字軍によってペルシャからヨーロッパへもたらされました。
1992年前後の共産主義体制の崩壊で、政府の管轄であったブルガルスカ・ローザの管理組織が分割し、個別に会社が設立されました。州の運営組織が、バラの育成を管理して、一貫した品質に努めていますが、近年のケンティフォリア種の導入は、この混乱した状況と品質への妥協を裏付けています。
有力な数社の蒸留業者による大規模バラ農園が主流ですが、山岳-半山岳地域では、少数民族の7,000世帯が精油工場で収入を得ています。しかし、収穫期には、移住者による労働力は、ますます不足します。概算では、年間で12,000人以上がバラ産業に携わっていますが、5月から6月半ばの収穫期では、天候にもよりますが、3,500-4,000haのバラ農園で、摘み取り作業者は40,000人にも膨れ上がります。
2007年にブルガリアがEUへ参入して以来、新しい賃金構造は生産コストにかなりのストレスを与えています。ロマ(ジプシー)の人々の低賃金労働の可能性は、将来の劇的な価格の上昇を軽減するといっても過言ではありません。
2017年の緩やかな近似値では、11,000/12,000tの花の収穫に基づく生産が推測されます。

他国での生産

歴史的に、イランはローズオイルの最初の生産国の1つですが、特産物はローズウォーターです。この貴重なローズウォーターは、この国では文化的にとても重要で、10世紀にペルシャ人の医師アビケンナが初めて生産しました。ダマスク・ローズは預言者モハメッドの花と呼ばれ、神聖で医学的な文脈に顕著にみられます。

約13,000-15,000haを約500人の農場主が営んでいると報告されていますが、その数は少なすぎ、実際の収穫と生産に携わっている人数は不明です。トルコとブルガリア同様に、これらの農場は小規模の保有地で、主な生産の中心はカーシャーン、ケルマーン、シーラーズ、ケルマンシャーです。オイルの生産は年間200㎏のみですが、ローズウォーターの生産は最大で±75/85Mℓ(メガリットル)です。

経済制裁による大幅なインフレは、すでに価格や生産に影響を及ぼしており、作物のほとんどは輸出ではなく内部で消費されています。

モロッコは主にケンティフォリア・ローズの主要な生産者です。花の年間生産量は約2,000tで、小規模農場主6,000人を雇用しています。2017年のバラの価格は、±$ 1.8/kgで、女性の摘み取り作業者には、1kg当たり$0.4が支払われていました。主な生産は、オイルではなくコンクリートです。

中国におけるバラの栽培は、13世紀に元王朝のモンゴル人と18世紀のフランス人宣教師によって行われました。今日は、主に雲南省の高地で生産しています。おそらく、過去12-15年の間に、生産の商業化が組織されました。化粧品産業のために、オイルとローズウォーターが生産されています。 2017年の生産量はケンティフォリアオイルが±700-800kgと推定されています。
過去5年で、ルゴサ種の栽培は増加していますが、そのオイルは、まだブルガリアやトルコのオイルと比較できません。生産者の人数や価格は分かっていません。

インドもまたバラ製品を生産しています。バラの生産は16世紀のムガール帝国の時代だと考えられています。今日、約2,500-3,000haでロサ・ダマスケナが栽培されており、±200kgのオイルと大量のローズウォーターが生産されています。このオイルは、組成上、ブルガリアのオイルに比肩します。

最も興味深いのは、アフガニスタンで、2010年頃からドイツのNGOや米国の援助プログラムが資金提供し、新しく生産が行われています。その狙いは、ポピー/ヘロインの似たような栽培技術を採用して、バラに置き換えることでした。おそらく3,000haで栽培されており、いくつかは、ブルガリアから物資が提供されています。トルコの生産者も2-3の蒸留施設で設備を提供しているようです。ヨーロッパへの途上で100-120㎏のオイルが発見されています。アフガニスタン東部の危険な地域では、400人以上の農場主の関与が示唆されています。

ローズオイル、コンクリート/アブソリュート、ローズウォーターは、様々な消費製品に広く使用されています。化粧品、香水、フードフレーバー、宗教祈祷、アロマセラピーで、この希少な「女王のオイル」が用いられ、数百万人がその栄華を楽しんでいます。その製造には数千人が携わり、生産地域と人口に経済的な重要性を与えています。

出典:“Rose. Socio-Economic Impact Study of the Naturals.”by the IFEAT Socio-Economic Sub-Committee, IFEAT WORLD, April 2018