2012.4.2.

海外薬用植物園見学会 訪問場所紹介② de Hortus(ホルタス)

紹介文:荒瀬千秋

de Hortus(ホルタス);Hortus Botanicus Amsterdam
(ラテン語で、「Hortusは庭、Botanicusは植物の、Hortus Botanicusで植物園という意味です」

ホルタスは世界最古の植物園のひとつです。16〜17世紀はオランダの黄金時代と呼ばれ、オランダが当時のヨーロッパで最も裕福であり、貿易、学問、芸術のどの分野でも最先端でした。そのオランダを代表する存在がオランダ東インド会社(Verenigde Oost-Indische Companie; VOC)という世界初の株式会社でした。VOCは南アフリカ喜望峰経由で東南アジアや日本まで航路を伸ばし、それらの国々で珍しいものを故国オランダへと運びました。それらの中には植物も多く、特に薬用になる植物は貴重な研究材料でした。後にプラントハンターとも呼ばれる博物学者たちによって多くの植物が採取され、本国でその栽培や利用法が研究されましたが、このホルタスはそのような研究機関の一つとして発展しました。
アムステルダム市内にあるため敷地面積は1.2ヘクタールと広くはありませんが、収容植物数は本数で6,000本以上、4,000種以上になります。これは地球上に存在する全植物種数の2%に当たります。また、温室は7つあり、それぞれが異なる気候に合わせて調節されています。園全体では6つの異なる気候を見ることが出来ます。

《見どころ① ハーブガーデン(Snippendaal Garden)》
ホルタスは1638年にHortus Medicus、薬用植物園として創設されました。当時、医療に用いるためにハーブは非常に重要な存在で、このHortus Medicusで医者や薬剤師たちが薬用植物に関する研究を行いました。薬剤師試験もここで行われていました。
1646年、園長のスニッペンダール(Johannnes Snippendaal)がホルタスの全植物のカタログを初めて作り、このカタログで彼は796の植物(その大部分が薬用植物)について述べています。
2007年にこのスニッペンダールのカタログを元に、1646年当時のハーブガーデンを蘇らせました。庭のレイアウトの記述は残っていないので再現できませんでしたが、当時オランダで用いられていたハーブのコレクションを目にして、17世紀のオランダ医学・薬学を偲ぶことができるでしょう。

《見どころ② 南アフリカの植物コレクション》
VOCは南アフリカの喜望峰をまわって遥かインドや日本と商取引を行っていました。オランダに初めて南アフリカの植物を運んできたのもVOCです。それらの植物にはセンティッド・ゼラニウム(ペルゴニウム)、君子蘭、アガパンサス、ガーベラなど、今は日本のガーデニングでもすっかりお馴染みとなった植物があります。

《見どころ③ 半円庭園》
ツゲ(黄楊、柘植)の生け垣に囲まれた区画が美しい扇型を描いています。夏は花々が咲き乱れて花の波紋となり、冬には生け垣の緑が冴えます。この半円庭園が設計されたのは1863年で、17世紀に流行した整形式庭園(formal garden)の形式を採用しています。
2002年、この庭園は新しいコンセプトの下、生まれ変わりました。90年代に進んだDNA解析とそれに基づく分子系統学の発展を踏まえ、DNA配列の類似によって植物を配列・分類しています。物理的に近い距離には近縁の植物が、遠くなるほど分子系統学的に異なる植物が配置されています。これにより半円庭園はオランダで初の分子系統学による分類学的庭園となりました。

《見どころ④ オランジュリー》
オランジュリーという言葉はオレンジを栽培する畑、もしくは温室、という意味です。この建物のある場所に1715年、熱帯植物を育てるための温室が作られました。現在の建物は1875年に講堂として建てられたものです。この、アムステルダム市内でも指折りに美しいテラスをもつカフェでは、香り高いコーヒーやサンドイッチ、パティセリーHoltkampのペイストリーも美味です。使用するすべての原材料はオーガニックとのことです。

(紹介文:荒瀬千秋)

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