2022.5.30

植物園めぐり 伊吹山(滋賀県米原市)

厳しい寒さも徐々にやわらいで暖かな陽気の中、様々な植物が芽吹く季節です。やわらかな春風を感じながら、心癒やされる景色を楽しみに出かけてみませんか。

ここでしか見られない植物も。固有種の宝庫・伊吹山

滋賀県で最高峰の山であり、日本のほぼ中央に位置する伊吹山(標高1,377.4m)。

南下してきた北方系の植物や、日本海側に分布の本拠をもつ植物が存在し、典型的な石灰岩地帯ということや冬の寒冷な季節風の影響を受け、好石灰植物や美しい広葉草原(お花畑)を見ることができます。また特産種(固有種)も存在し、昔から草本植物や薬草の宝庫として知られています。

伊吹山全体では、シダ植物以上の高等植物が約1,350種分布していますが、そのうちお花畑など山頂一帯には約350種が見られます。

伊吹山の山頂は「天然のお花畑」。
春から秋にかけていろいろな花が咲き、全国各地から多くの観光客が訪れます。

伊吹山ドライブウェイ

全長17㎞の伊吹山ドライブウェイ。山頂付近には、高山植物または亜高山性植物と通称されるものが多くあります。例えば、イブキトラノオ、グンナイフウロ、メタカラコウ、ニッコウキスゲ。

北方からの分布の西南限としてエゾフウロ、キンバイソウなど。また、日本海要素の植物(日本海側斜面に発生、または分布の本拠をもつ多雪地帯の植物のこと)であるイブキトリカブトなどを見ることができます。

伊吹薬草の里文化センター いぶき薬草園

伊吹山は、古来より薬草の宝庫として知られ、平安時代には宮中へ献上されていました。採薬師が再三来山したと記されています。 

このように薬草の古い歴史をもつ米原市では、伊吹薬草の里文化センターが竣工されると同時に、前庭に「薬草園」を開園。この「薬草園」は伊吹山の貴重な薬草を含む植物を植栽し、種の保存・育成を行っています。

初夏から夏に見頃を迎える花の一例※

ニリンソウ

ニリンソウ [キンポウゲ科]
山野に生える多年草で、高さ20~30㎝の花茎を出し、その先の総苞葉の中心から2輪の花を咲かせるので、この名がある。伊吹山頂では低木の下やドリーネの内側に群生する。

コバノミミナグサ

コバノミミナグサ [ナデシコ科]
伊吹山頂付近の高さ900~1,370m間の石灰岩地にのみ見られる多年草で、伊吹山の特産種とされている。普通のミミナグサとは花が大きいことと、葉が細くて、小さいことで区別される。

キンバイソウ

キンバイソウ [キンポウゲ科]
伊吹山では山頂一帯のお花畑のあちこちに、夏季黄金色に輝き、梅花を思わせる形の、とても美しい花を咲かせる。本州のみに分布し、伊吹山が西南限になっている。

イブキシモツケ

イブキシモツケ [バラ科]
日当たりのよい石灰岩地に主として生える落葉性の小低木である。葉の質は硬く、葉脈は上面でくぼみ、裏面で隆起し、葉褐色の毛を密生する。果実は無毛で5つに分かれる。近畿地方以西に分布する。

クサタチバナ

クサタチバナ [ガガイモ科]
山地の草原や林中にも生える多年草である。茎は直立して高さ30~60㎝で、葉は対生し、形がカキの葉に似ている。6~7月頃、茎頂の分岐した花柄に純白のミカン(タチバナ)に似た花を多数開いて美しい。

グンナイフウロ

グンナイフウロ [フウロソウ科]
5月下旬から6月に、山頂一帯のお花畑を薄紅色の花で美しく彩る。花は科で一番大きい。北方から分布し、伊吹山が南限である。牧野図鑑に「郡内風露」と書き、山梨県の南北両都留郡内で最初に発見されたことからだろうと記されている。

ミヤマコアザミ

ミヤマコアザミ [キク科]
春の野山にふつうに咲くアザミはノアザミであるが、伊吹山頂にこのアザミの変種ミヤマコアザミが多く、寒冷な日本海気候下の石灰岩地で分化したと考えられる。伊吹山以外では今のところ知られていない。ノアザミに比べ、背が低く、刺、毛が多い。

ニッコウキスゲ

ニッコウキスゲ [ユリ科]
亜高山のやや湿性の草原に主として生える亜高山性の多年草。花にはがくと花弁の区別のしがたいオレンジ色の花被片を6枚つける。最初の本名はセツテイカだったが、日光の尾瀬ヶ原に多いことから、そう呼ばれるようになった。

※伊吹山ドライブウェイ 高山植物の紹介より 

http://www.ibukiyama-driveway.jp/enjoy/alpine_plant/

Information

伊吹山ドライブウェイ

  • 住所 : 〒503-1501 岐阜県不破郡関ヶ町寺谷1586
  • TEL : 0584-43-1155(代表)
  • 期間(春季) :4月第3土曜日~7月第3土曜の前日
  • 道路営業時間 :8:00~20:00
  • 利用料金(往復通行料・駐車料込み): 3,140円(軽乗用車・普通車)
    • 最終入場は、終業時間の2時間前です。
    • 営業予定期間4月第3土曜日~11月最終日曜日(予定)その期間以外は冬季休業期間となります。
    • 営業時間は気象状況等により変動する場合があります。

伊吹薬草の里文化センター いぶき薬草園

  • 住所 : 〒521-0314 滋賀県米原市春照37番地(薬草の里文化センター内)
  • TEL : 0749-58-0105
  • 休館日 : 毎週月曜日(祝日は開館)、休日の翌日(土・日・休日は開館)、12/28~1/4
  • 利用時間 :8:30~17:00
  • 利用料金 : 自由見学は無料 ※説明付き見学:2,000円/1団体
  • (20名まで) ※ガイドブック代:100円×人数分
    • 駐 車 場 : あり(180台)
    • ※詳細はホームページをご確認ください 
    • https://joyibuki.info/

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第59号 2022年3月