現在では「大麻(ヘンプ)=マリファナ=危険な麻薬」といった認識が一般的ですが、1948 年に GHQ の占領下 で大麻取締法が制定されるまでは、わが国では各地でヘンプの栽培が行われていました。その理由はヘンプが 食品として、また衣類や紙の原料としてなど生活全般に利用できる極めて有用な植物だからです。本論文では、 食品としてのヘンプに含まれる多様な成分とその機能性について報告しています。
ヘンプの種子に含まれる油脂はリノール酸(オメガ 6 系脂肪酸)とα-リノレン酸(オメガ 3 系脂肪酸)が 3 対 1 という理想の比率で構成されており、オメガ 3 系脂肪酸の供給源として有用です。また、ヘンプの種子の胚芽部分には必須アミノ酸がすべて含まれているため、良質のタンパク源にもなっています。さらに、植物ステロールやトコフェロール(ビタミン E)といった脂溶性成分も豊富に含まれています。そして、ヘンプの 特有成分としてのカンナビノイドは鎮痛作用や消炎作用があり、本論文には詳しい記述はありませんが、がん や多発性硬化症などへの臨床応用が試みられています。
ヘンプはヘルスケアの領域のみならず、エコロジーの領域でも大きな注目を集めています。片寄った情報だけで判断せず、この可能性に満ちたハーブに対して、今後の展開を注目していきたいと思います。