2021.12.1.

第3回学術フォーラム報告

JAMHA学術委員・ナチュロパス

河野加奈恵

2021年9月12日(日)、第3回学術フォーラムがオンラインにて開催されました。

第一部では、2019年度メディカルハーブ研究助成制度で研究いただいた成果報告で筑波大学生命環境系の南雲陽子先生による「ハーブ成分による上皮タイトジャンクション制御とその応用」、また、第二部では、東邦大学医療センター大橋病院外科で乳腺・甲状腺外科治療、がん治療の研究を専門とされる長田拓哉先生による学術講演「がんに対するアロマセラピーの有効性について」が行われました。

いずれの講演もハーブ成分とその作用の研究に関する専門的な内容でしたが、どちらの講演もとてもわかりやすくご説明いただき、今後の医療におけるハーブ成分の可能性が感じられ、また、ハーブ成分のシナジー効果を実感できる、非常に有意義な会となりました。

第一部

近年市場が拡大してきているバイオ医薬品は、中・高分子で親水性が高く膜透過性が低いため、注射・点滴などの侵襲的投与が主流である。

経口、経皮、経粘膜などの非侵襲的投与法開発のために、ハーブ成分を用いて上皮細胞のタイトジャンクション(TJ)を一時的に開口させることで薬剤の透過性を高めることができるか研究を行った。腸管上皮細胞のTJ透過性を可逆的に上昇させる報告がなされている唐辛子のカプサイシンを起点として、TJ開口の作用機構を解明しようとする試みの中、本研究で新たに以下のことが判明した。

(1) TJ開口の作用機構における;

 ・細胞へのカルシウム流入の引き金となるイオンチャネルTRPA1の関与
 ・アクチンに結合しアクチン繊維変動を引き起こすコフィリンの関与

(2)カプサイシン以外でTJ開口能を有するハーブ成分;

 ・共有結合でTRPA1活性化するシナモンのシンナムアルデヒド
 ・非共有結合でTRPA1活性化するメントールとオレガノなどのカルバクロール

今後は、ハーブ由来の安全性の高い透過促進剤実現のため、各成分の透過促進の強さ、作用時間、および可逆性の違いの解明と、三次元培養細胞モデル等での概念実証が求められる。

第二部

乳がんは日本人女性の10人に1人に発症し、年々増加傾向にあり、その治療においては心と体に優しくよく効く治療法が望まれている。

石川県能登の加賀木材株式会社と飛騨高山のYUICAとの共同研究により、和製アスナロ(ヒバ)精油が乳がん細胞の増殖を抑制すること、また、マウスの実験でアスナロ精油の蒸散成分の吸引による胃がん細胞の増殖抑制効果が認められた。

その他、これまでの実験からアスナロ精油の抗腫瘍効果について判明したことは以下の通りである。

(1)これまで多くの抗腫瘍効果が報告されているヒノキチオールだけではなく、抗腫瘍因子の一つとしてツヨプセンを同定した。

(2)ツヨプセンは乳がんのホルモン依存性など特徴的なメカニズムではなく、がんに共通な増殖メカニズムを抑制し、アポトーシスを誘導する可能性が示された。

(3)狭い範囲で腫瘍増殖を強力に抑制するツヨプセンと、蒸散により比較的広い範囲で腫瘍増殖抑制効果をもたらす分子量の小さいヒノキチオールとの相乗効果が示唆された。

(4)ツヨプセンがピルビン酸キナーゼM2(PKM2)と選択的に結合し嫌気性解糖経路をブロックすることで、がん細胞の生存エネルギーを枯渇させてアポトーシスを引き起こす可能性が示された。

今後もがんの治療を目的としたエッセンシャルオイルの開発や臨床応用に向けた取り組みを引き続き行われるとのことで、精油を用いた心と体に優しい製品の実用化が期待される。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第58号 2021年12月