2021.9.27

ハーブティーを製造・販売する場合、営業届が必要になります

日本メディカルハーブ協会副理事長 千葉 一敏
(国立健康・栄養研究所 協力研究員/アドバイザリースタッフ研究会代表世話人)

令和3年6月1日より施行された改正食品衛生法(平成30年6月改正)により、食品関係事業者の営業許可、営業届の制度が大きく変更されました。

今回は、新しく創設された食品関係営業届出の制度について解説いたします。

ハーブティー用のハーブ(フレッシュ・ドライ)を製造、販売する場合も営業届が必要 

従来は、自宅でオリジナルのハーブティー用のブレンドハーブを製造して販売しても、特に食品衛生法の営業許可は不要でした。昨年6月から原則として全ての食品営業者にHACCPに沿った衛生管理が求められることになり、これに伴い営業許可の対象となる営業以外であっても、保健所がその所在を把握し必要な指導を行っていくため、営業届出の制度が創設され、今年の6月1日より施行されました。
 
「許可業種」と「許可や届出が不要な業種」以外は、全て届け出対象となり、管轄の保健所に令和3年11月30日までに届出する必要があります。
 
「届出が不要な業種」は限られていますが、その一つに、「常温で保存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品衛生上の危害の発生の恐れがない包装食品又は添加物の販売業(カップ麺や包装されたスナック菓子等)」という業態があります。

ハーブティーに当てはめてみると、既に包装されているハーブティー用のドライハーブ(賞味期限が設定されているもの)を仕入れて、そのままの形態で販売するような場合が想定され、そのような場合は、営業届不要となります。
 
その他の場合、例えばドライハーブの大入り品を購入して小分けし袋詰めして販売するとか、オリジナルブレンドのハーブティー用ドライハーブミックスを販売する場合には、製造届又は販売届が必要になります。
 
想定されるケースについて、まとめてみましたので、参考にしてください。なお、製造して販売する場合であっても、一つの届出をすればよく、製造届と販売届の両方を届出する必要はありません。

どちらの届出を提出するか、届出が必要か不必要か、どの営業形態(製茶業、野菜果物販売業、その他の食品製造・加工業等)に当たるのか等は、所轄の保健所に相談して営業届を届出することをおすすめいたします(注:各保健所で対応が異なる場合があります)。
 
表にあるように、自家生産をしてハーブティー用のフレッシュハーブを販売する場合には営業届の届出は要しません。

ただし、外からフレッシュハーブを購入してきたものを販売する場合には、そのままの状態で販売しても販売業の届出が必要となります。
 
なお、料理教室等でハーブを利用する場合、会場に集合して、調理実習を行い食事をする(一部持ち帰り)場合は、従来どおり営業許可や営業届は不要ですが、オンラインを活用して行う場合で、ハーブ等の食材を各受講者に事前送付するような場合は、食品(ハーブ)の販売に当たり、営業届が必要になる場合がありますので注意してください。

営業届を提出するのに必要な要件 

表2

 
届出は、表2の様式に必要事項を記載して提出することになります。併せて「食品衛生責任者の資格を証明するもの」の提出が求められます。
 
食品衛生責任者の資格要件は、下記(*責任者の資格要件を満たす者)のとおりです。これを満たさない者であっても、食品衛生等に関する6時間程度の食品衛生責任者養成講習を受講することで、食品衛生責任者になることができます。
 
食品衛生責任者養成講習は、各都道府県で行われています。ただし、現在受講者が多く、受講が困難な状態になっています(都道府県によっては、届出の期限である11月末までの講習会が満員となっていて受講できないところもあるようです)。
 
食品衛生責任者養成講習が受けられず、食品衛生責任者を設定できない場合は、所轄の保健所に相談すると誓約書等(後日、食品衛生責任者養成講習受講後に、修了証書を提出)を提出することで営業届出を受理していただけるようです。各保健所により、取り扱いが違う場合もありますので、必ず所轄の保健所にご相談してください。
 
なお、営業届は、厚生労働省の食品衛生申請システムからもオンラインで届出することが可能です(https://ifas.mhlw.go.jp/faspte/page/login.jsp)。
 
今回の届出にあっては、少しでも不明点等がある場合は、事前に所轄の保健所に相談して、保健所に届出を提出することがよいかと思います。オンラインで届出を行った場合も、営業内容について、所轄の保健所から連絡が入ることがあります。

* 食品衛生責任者の資格要件を満たす者
●調理師
●製菓衛生士
●栄養士
●船舶料理士
●と畜場法に規定する衛生管理責任者
●と畜場法に規定する作業衛生責任者
●食鳥処理衛生管理者
●食品衛生管理者又は食品衛生監視員の資格要件を満たす者(医師、歯科医師、薬剤師、獣医師など他にも該当するものがあります)

営業届出を提出後は 

営業届出を届出後は、営業許可と違い、更新の手続きの必要はありません。ただし、届出事項に変更があった場合は変更の届出、営業を廃止した場合は廃業の届出が必要となります。
 
一番大事なことは、営業するにあたっては衛生管理の基準を順守しなければならないとことです。小規模事業者であれば「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が求められます。
 
どのような管理が必要かという詳しい説明はスペースの関係から割愛しますが、「衛生管理計画」を作成し、その計画に基づいて衛生管理を実施し、「衛生管理記録」をとり、その記録は賞味期限内(賞味期限が1年未満の場合は、最低1年間)程度保管する必要があります。
 
ハーブの製造・販売業における「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の手引書は作成されていませんが、いろいろな業界団体からその業種に合わせた手引書が出ていますので、それらを参考に各資料を作成し、日々の衛生管理を行うとよいと考えます。これらの取り扱いについても、所轄の保健所に相談されるとよいと思います。

※注意してください※
ハーブを製造販売する場合に、「密封保存が必要なため、パウチ包装をしています」と説明すると、「密封包装食品製造業」となる場合があります。
その場合は、営業許可が必要となり、その許可を取るための施設設備の要件は非常に厳しいもので、一般の家庭生活を行う空間での製造業の許可は取得できません。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第57号 2021年9月