イチョウ
一般名
イチョウ
学名
Ginkgo biloba
英名
Ginkgo, Maidenhair tree
別名
ギンコ
科名
イチョウ科
使用部位
葉
含有成分
フラボノイド配糖体,テルペンラクトン(ギンコライド,ビロバリド),バイフラボン(2重分子フラボン),ギンコ―ル酸
作用
PAF(血小板活性化因子)阻害,血管拡張,抗酸化,組織灌流促進,循環刺激,認知機能促進,神経保護
適応
脳循環不全および脳循環不全に関連する記憶・認知障害,めまい,耳鳴り,急性突発性難聴,頭痛,不安症,うつ,疲労,初期のアルツハイマー病,血管性認知症,末梢動脈閉塞疾患および末梢循環障害による間歇性跛行,レイノー症候群,血管性めまい,黄斑変性,網膜血流障害,治癒促進,健康な若年層における注意力向上,健康な個人における記憶力および認知機能の向上,高地または低酸素環境の影響,うっ血性月経困難症,冷え性
服用法
茶剤ではなくもっぱらエキス剤の形でもちいられる.ドイツのコミッションEモノグラフではフラボノイド配糖体22~27%,テルペンラクトン5~7%,およびギンコール酸5ppm(0.0005%)以下のエキス剤を1日120~240mg(2~3回に分けて)服用を規定している.一方(財)日本健康・栄養食品協会では「イチョウ葉エキス」を「フラボノイド配糖体を24%以上,テルペンラクトンを6%以上含有し,かつギンコール酸の含有量が5ppm以下のもの」と定義し,1日の摂取目安量は60~240mgとしている.
副作用
ごくまれに胃腸障害,頭痛,アレルギー性皮膚炎
安全性
メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版では,葉はクラス1…適切な使用において安全.
臨床研究
基礎研究(薬物動態)
P糖タンパク質基質であるタリノロールの経口薬物動態へのイチョウ葉エキスの影響
相互作用
対象成分:タリノロール(Talinolol)
研究方法:ヒト対象試験
健常男性10名による試験でイチョウ葉エキス(GBE)の単回経口投与(120mg)はタリノロール(100mg)の薬物動態に影響を与えなかったが,14日間の反復摂取(360mg/日)は,タリノロール(100mg)の最大血漿濃度(Cmax)を36%,AUCを22〜26%増加させたが,単回摂取では影響がなかった.この結果は,P糖タンパク質や薬物トランスポーターの活性変化によるものであり,GBEの長期使用が薬物動態に重要な影響を与える可能性を示唆している.
研究方法:治療介入
イチョウは自然出血や抗凝固剤との相互作用が報告され,腹腔鏡下胆嚢摘出術後の出血例も確認されている.
対象成分:ワルファリンカリウム(Warfarin Potassium)
研究方法:ヒト対象試験
健常な男性12名を対象に実施した試験では,乾燥イチョウ葉(4g相当)およびショウガ(根茎粉末1.2g相当)を1日3回,1週間摂取した後にワルファリン25mgを単回投与した.その後,さらに1週間,イチョウまたはショウガを1日3回摂取させた.その結果,ワルファリン投与前後で凝固状態や薬物動態,薬力学に臨床的に重要な影響を及ぼさないことが示された.
対象成分:ワルファリンカリウム(Warfarin Potassium)
研究方法:ヒト対象試験
イチョウ葉エキス(GBE)のワルファリンへの影響を評価するため,12名の健康な被験者(男女各6名)を対象にランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を実施した.GBEまたはプラセボを5週間投与し,29日目にワルファリン(5mg)を単回投与.結果,GBEはワルファリンの薬力学(プロトロンビン時間やAPTT)に有意な影響を及ぼさず,凝固プロセスには影響を与えなかった.一方で,ワルファリンの薬物動態ではCmax,AUC,t1/2を増加させ,クリアランス(CL)を減少させた.
対象薬物:CYP基質薬物
試験方法:in vitro および動物実験
In vitro および in vivo 阻害試験の結果,イチョウ葉エキスはin vitroでCYP2C9を阻害するが,in vivoではジクロフェナクの定常状態薬物動態やトルブタミドの尿中代謝比に影響がなく,臨床的に意味のある相互作用は確認されなかった.
対象薬物:CYP基質薬物
研究方法:ヒト対象試験
12名の健康なボランティアを対象にランダム化クロスオーバー試験を実施した.セントジョーンズワート,ニンニク油,高麗人参,イチョウを28日間投与し,各補給前後でプローブ薬物を用いたCYP1A2,CYP2D6,CYP2E1,CYP3A4の活性を測定した.結果,セントジョーンズワートはCYP2E1とCYP3A4を有意に誘導し,特に女性ではCYP3A4活性が顕著に増加した.ニンニク油はCYP2E1活性を39%低下させ,高麗人参とイチョウには有意な影響が認められなかった.
対象薬物:CYP基質薬物
研究方法:ヒト対象試験
高齢者(平均年齢67歳)12名を対象に,セントジョーンズワート,ニンニク油,高麗人参,イチョウを28日間摂取させ,CYP1A2,CYP2D6,CYP2E1,CYP3A4の活性を測定した.結果,セントジョーンズワートはCYP3A4活性を約140%,CYP2E1活性を約28%有意に誘導し,ニンニク油はCYP2E1活性を約22%抑制した.一方,高麗人参とイチョウはCYP1A2活性に影響を与えず,高麗人参はCYP2D6を有意に阻害(7%)阻害したが,臨床的意義が小さい.
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