2020.9.1

理事長退任にあたって/宇田川 僚一

2011年4月、初代NPO法人日本メディカルハーブ協会理事長池田豊氏の後を受け、理事長を拝命し9年が経過しました。私事ですが昨年古希を迎えたこともあり、全ての現役を退きたく、このたびお役御免を願い出ました。

雁行(がんこう)という言葉がございます。雁など渡り鳥がきれいにV字飛行する隊形をいうのですが、これには理にかなう訳があります。斜め前を飛ぶ鳥から翼端渦(よくたんうず)という気流ができ、その渦、気流に乗るためにあの隊形をとるのだそうです。そうしますと、どうしても先頭に立つ鳥に大きな負担がかかります。従って先頭は時折交代するのだそうです。9年間、どれだけ翼端渦を出せたか、それは皆さんのご判断にお任せしますが、理事長在任中は一貫して心掛けたことがあります。

1つは、協会の存在を高めること。

1つは、会員の満足を高めること。

そして、その為には何がいいかを常に判断基準として参りました。

幸い、 前身のMICを 立ち上げた林真一郎氏が後を継いでくれることに決まりました。ガサツな私とは違い、メディカルハーブの第一人者といってよ い若くて知的な理事長です。ぜひ先頭で多くの翼端渦を出していただきたいとお願いするところです。

サントリーの名コピーに「時は流れない、それ は積み重なる」というのがあります。何かやったこ とは 無 駄 で はないという意 味もあるようで す。 た だ停滞はいけません。陳腐化の始まりです。今やっ たことは足元から腐ってくるのです。次、次、と 手を打たねばなりません。 文楽の世界に生涯現役の竹本住太夫という方が おられました。この方が人間国宝の知らせを受け た時、お友達の薬師寺管主、高田好胤さんに電話をしたのだそうです。「わて人間国宝やて…」そう しますと好胤さんは「ああさよか…」と電話を切っ てしまったそうです。「なんで喜んでくれないのかな …」と思っていましたら、追っかけで葉書が来まし た 。 そこにはこう書いてあったそうです 。

「 奥 深 き 、 語りの技を 只々に 磨き来たりて 今日の勲し」。

これだけでもすごいのですが、平仮名でもう7文字有ったそうです。「なほになほなほ」と。さすがに名僧でございます。人間国宝にまで昇りつめたものに、「なおになおなお」だと諌いさめているのです。私は現役を退きますが、協会は「なおになおなお」努めて頂き、益々の発展・充実を遂げて頂けますことを祈念致しまして、私の退任挨拶とさせて頂きます。これまでのご厚情に感謝申し上げます。皆様本当に有難うございました。