Cranberry

クランベリー

クランベリーの原産地は北半球亜寒帯地域で、湿地帯に生える常緑小低木です。高さ約10〜20cmの蔓性の植物で、小さな実は熟すると鮮やかな赤色になります。この小さな実が鶴の好物だったことや、花の形が鶴のくちばしに似ていることから、鶴(crane)のベリー(berry)が名前の由来とされています。

クランベリーに含まれる主成分は、植物酸(キナ酸、クエン酸、リンゴ酸)、プロアントシアニジン、ビタミンCなどで、古くからジュースにして泌尿器系の感染症に用いられてきました。酸味が非常に強く生食向きではないので、メディカルハーブとしては粉末剤やカプセル剤が使用されます。

クランベリー Cranberry

Vaccinium macrocarpon

科名:ツツジ科 / 使用部位:果実

北米原産の果物であるクランベリーは、世界供給量のおよそ98%がカナダと米国北部の沼地で野生もしくは人工栽培されたものである。アメリカ先住民も入植者もクランベリーについては栄養的及び医療的に価値の高い農作物ととらえていた。米国農務省国立統計サービスの調査によると、クランベリーは米国のすべての換金作物のうち、売上40位となる高価値の農作物である。クランベリーのサプリメント(多くのものはカプセル剤)は、米国の食品、薬、マーケット、卸といった市場にあるハーブのうち10位にランキングされている。1999年の売上は前年比15%増であり、12百万ドル以上増加したものであった。なお、これらの売上には自然食品販売、通販、マルチ商法、プロフェッショナルによるといった販売チャンネルは含まれていない。また、多くの人が、クランベリーが尿道炎に良いことを知っているためクランベリー果汁がよく売れているが、これも前述の売上には含まれていない。

【適応】

尿路感染症(Urinary Tract Infection: UTI)の予防・治療・再発予防、腎臓結石

※クランベリー果汁は再発性の尿路感染症の治療に関する抗生剤の処方回数を減らすことができるので、外陰部膣炎カンジダなどの副作用が少なくなる。しかしこれには医師による適切な診断が必要であり、クランベリー果汁は抗生剤の代替にはなりえない。

【作用】

通常の摂取量で、膀胱及び尿道の内膜への細菌の付着を阻止する。また高用量で尿路の消毒剤となる。

【主な使用法】

内服

※下記の内容において特に但さない限り、果汁に関しては甘味を付して調製したものについて述べている。自然療法家のなかには、甘味は避けるかもしくは最小限にすべきであると述べているものもある。彼らは甘味のない果汁を嫌うのであればカプセル剤として摂ることを推奨している。

果汁:

尿路感染症の治療には1日0.4~0.9Lの果汁、もしくは甘味のない果汁を少なくとも一日0.9L服用する。尿路感染症の予防には1日0.1~0.9Lのジュースを服用する。

腎臓結石には約0.2Lの果汁を一日4回数日間服用し、その後予防のために0.2Lの果汁を1日2回服用する。

濃縮果汁エキス:

尿路感染症の予防と治療に300~400㎎を1日2回か3回服用する。

【禁忌】

腎不全、尿酸値が高い傾向がある場合、シュウ酸カルシウム結石の場合は医療従事者や専門家に相談すべきである。

  • ※妊娠及び授乳期間での禁忌はない。

【副作用】

推奨されている用量での副作用、有害作用は報告されていない。高用量で、下痢、軽度な胃部不快感がみられることがある。

【薬物相互作用】

相互作用は報告されていない。

【臨床的展望】

1,149名を対象とするクランベリーに関する19の臨床試験では、2試験を除いた17の試験で尿路の不調を改善する有効性が認められた。これらの19の試験のうち安全性については、1つの試験での13名の被験者で口の周辺の皮膚障害が報告されている。178名を対象にした3つの二重盲検・プラセボ比較試験では、クランベリーの治療と予防の効果について有意に有効性が認められる結果を得ている。17名の細菌尿症・膿尿症の女性高齢者患者を被験者とするランダム化比較・クロスオーバー試験の結果、これらの症状を改善することが示された。一方、過敏性膀胱である2~18歳の15名の小児を対象とした尿路感染症予防の試験では濃縮果汁の効果は認められなかった。そして21名の過敏性膀胱の小児を対象とした一重盲検・ランダム化比較・クロスオーバー試験では、果汁カクテルの服用による抗菌効果の有効性は認められなかった。コクラン共同計画では尿路感染症の予防に関するクランベリーの有効性評価のための試験は質が低いものも多く、カプセル剤などの製剤を使うなどして、更によくデザインされた臨床試験が必要であると見解を述べている。

2010年2月発行
編集:特定非営利活動法人 日本メディカルハーブ協会・学術調査委員会
提供:アメリカン・ボタニカル・カウンシル

このモノグラフはAmerican Botanical Councilにより2003年に発行されたThe ABC Clinical Guide to Herbs, Mark Blumenthal (senior editor), © を翻訳したものです.

Translated from The ABC Clinical Guide to Herbs, Mark Blumenthal (senior editor), © 2003 by the American Botanical Council (www.herbalgram.org). Courtesy of American Botanical Council.