2018.6.1.

地球環境を考える NATURE OF FUTURE REPORT

映画監督

龍村仁

当協会ではメディカルハーブの恩恵を広く伝えていくという活動をしているわけですが、会報誌をリニューアルするにあたって、改めてメディカルハーブなどの植物を育んでいる地球環境に思いを馳せ、何を大切にしていくべきか、読者の方たちと共有したいと考えました。(聞き手:金田太朗・本協会理事)

地球のことをどなたにうかがったらよいかと考えた時、ドキュメンタリー映画『地球交響曲(ガイアシンフォニー)』をつくられた龍村監督に思い至ったわけです。まず、この映画がどのような視点でつくられたのかお聞きしたいと思います。

龍村 仁さん(以降、龍村) 私は地球を大きな1つの生命システムだと考えていて、我々がその一部分として、生かしていただいているという思いがありました。少なくとも宗教的には、キリスト教にしろ、仏教にしろ、根本的には皆、そう言っているわけです。
それを科学的な回路でどういうふうに捉え考えるかということが、ガイア理論のスタートで、人間が人間として生まれて生きているということ自体の仕組みそのものが、非常に宇宙的な、何か高度なシステムをもっているわけです。

私の映画に出てくる人たちは皆さん、特別な能力をもった人に見えるかもしれません。功成り名を遂げた人ばかりですから。しかし、じつは彼らが自分について語る時、皆同じことを言っています。「大きな宇宙のシステム、地球そのものが1つの大きな生命体であって、その中の一部分として、たまたま生かされているだけだ」と。

もちろん皆さん、自分に向いていることが何であるかを知り、努力を重ねてきたはずです。でも、自分の力で生きているのではなくて、生かしていただいているという、そういう思いがベースにある。専門的に自分の好きなことをやっていればいるほど、そういう傾向を深めていくすごさがあります。

そういったことを表現するために、『ガイアシンフォニー』をつくり続けているのですか。

龍村 私はそういう回路で物を考えていないんですよ(笑)。「ねばならない」という発想もありません。全て身体的な直感です。身体的な直感によって、映画をつくり続けてきたのです。

「直感って何?」という考えをつき詰めていくと、分かってくるかもしれません。たくさんの知識を得たことによって、ある考え方が生まれるのではなくて、身体そのものに直結して現れてくるもの。次のモチーフは何にするか、テーマは何かと頭で考えるというより、その時たまたま出会っていく何かについて、身体が感じるものです。

もちろん知識の集積もあるかもしれません。しかし、もっと身体的なものです。私の場合、知識をもとに考えて、その選択肢から一を選んでいるというのとは、全く違います。

身体的な直感というのは、本能ということでしょうか。

龍村 ううん、身体の仕組みそのものが、実は自分が思っている自分を超えた宇宙的なシステムで、そこから生まれる直感ですから、本能とは違うと思います。

身体の感性は、一般に知的なものではないと思われているかもしれませんが、宇宙的なスケールで自分が生きていると同時に生かされているという感覚こそ身体の感性ですから、じつに知的で哲学的です。ガイアシンフォニーは身体の感性、身体的な直感力によって生み出された映画なんですよ。

その身体的な直感力を磨くために何かされているのですか。

龍村 磨くというのではないけど、幼少期を振り返ると、思い当たることがあります。

子どもの頃、私は落ち着きのないいたずら坊主だったので、落ち着きを身につけるために能、仕舞をやらされました。能のすり足は能楽師にとって基本的な動きですが、そのゆっくりとしたスピードといい、ぶれない足運びといい、とても簡単にできるものではありません。普通にやろうとしたら、ひっくり返ってしまいます。
練習して練習して、何とかゆっくり歩けるようになって初めて、能の物の見方などが分かってくるのです。

落ち着きがないから能を習わせるというのも、すごい発想ですね。

龍村 小学校でも特異な経験をしましたよ。自分が行きたいとせがんだからか、私は1年早く小学校に入ったのです。戦後のどさくさの時代ですから、そんなことも許されたのでしょう。

夏休みには山の上にあった小学校の校舎で硬い床で眠り、毎朝山頂からご来光を拝むという生活でした。食事は玄米と一汁一菜。玄米をひと口ごとに「100回噛め!」と言われ続けました。

その上、ずっと裸足でした。山道も裸足で歩いた。そんな生活の中で、尖った岩の上に乗った瞬間に足の裏の1カ所に圧力がかからないように、ふっと力を抜いてバランスをとるといったことが、いつの間にか身についていました。身体回路がどんどん開かれて、感覚が磨かれていったのですね。今、考えるとそう思います。

いやだと思ったことはなかったのですか。

龍村 それはなかったですね。不思議とやめたいと思ったことはなかった。「玄米を100回噛め!」なんて、それこそスパルタ教育みたいに聞こえるけれど、それは1つの叡智でもあったわけです。米の1粒がもっている植物の生命力を、この私たちの命を活性化させるために可能な限り吸収するという姿勢は、人類の叡智であり、それこそが身体的直感なわけですよ。

我々がメディカルハーブから受けている恩恵もそういうことですね。

龍村 ハーブは生きていることの喜びみたいなものが、ふっと開いてくるような、そういうものだと思いますよ。

環境問題にしても、今、地球は様々な問題を抱えていますが、変わらずにこのままいくのか、それとも……。

龍村 変わっていくでしょう。変わり続けることによって、生き続けるということではないでしょうか。命というものは生き延びよう、生き続けようとする力をもっています。何によって活性化するかは、それぞれでしょう。ハーブの役目は何かと聞かれても説明できませんが、ハーブはその「何か」になり得るものなのではないかと思います。

とてもすてきなお話ですね。今日はどうもありがとうございました。

『地球交響曲(ガイアシンフォニー)』

イギリスの生物物理学者ジェームズ・ラブロック博士の唱えるガイア理論、「地球はそれ自体が1つの生命体である」という考え方に勇気づけられ、龍村仁監督によって制作されたオムニバスのドキュメンタリー映画シリーズ。美しい映像と音楽、珠玉の言葉を通じて、環境問題や人間の精神性に訴えかける内容は多くの共感を呼び、1992年公開の「地球交響曲第一番」から15年公開の最新作「第八番」まで自主上映を中心とした上映活動だけで、延240万人に上る観客を動員している。

映画監督
龍村仁 JIN TATSUMURA
1940年生まれ。京都大学文学部卒業後、63年NHKに入局。 74年に退社後、インディペンデント・ディレクターとしてドキュメンタリーやドラマなど、数々の作品を手がける。92年からドキュメンタリー映画『地球交響曲(ガイアシンフォニー)』シリーズを公開。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第44号 2018年6月