2014.12.1

日本ハーブ療法研究会第2回学術集会 報告

日本メディカルハーブ協会理事

三上幸江

2014年10月19日(日)、京都山科にある京都薬科大学において第2回学術集会が開催されました。開会の挨拶は今西二郎氏(明治国際医療大学付属統合医療センター)。

会長講演
松田 久司(京都薬科大学生薬学分野)
「伝承薬物から生体機能性成分の探索」

世界各地の伝承薬物から生体機能性成分の探索を行ってきたが、この中からタイ伝承薬の有効成分に関する研究例を紹介した。タイ伝承薬物の中でも香辛料としても用いられているジャワナガコショウ、ブラックジンジャー、プライなどの生薬から有効成分を単離、構造決定をし、それらの成分に生体機能性があることを見出した。

特別講演I
寺尾 純二(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
「フラボノイドの生体利用性と機能発現に関する最近の研究動向」

薬理作用の観点からフラボノイドの生理活性に関する研究が実施されている。1生体吸収後の代謝変換と標的部位への移行蓄積を解明する必要性を示唆。2抗酸化作用とは異なる機能(標的タンパクへの結合による酵素活性調節や細胞内シグナル伝達系制御)の生理的意義の重要性を指摘。3中枢神経系におけるセロトニン代謝酵素活性阻害を介したフラボノイドの抗うつ様作用、および筋タンパク質分解シグナル調節を介した抗筋委縮作用の機構解明の研究成果の紹介があった。

特別講演II
上馬塲 和夫(帝京平成大学ヒューマンケア学部)
「伝統医学から学ぶハーブの多様な投与方法と吸収経路」

インドの伝統医学では、体内浄化を目的として、体内の種々の孔から薬用オイルなどを注入する治療法がなされている。アーユルヴェーダでは、経直腸投与(バスティ:浣腸)や経鼻投与法(ナスヤ)が最も頻用されており、経直腸投与では、成分が門脈系ではなく下大静脈に流れるため、肝臓での薬物代謝を受けずに全身を循環し作用する。経鼻投与では、顔面静脈から内頚静脈→上大静脈という経路で成分が吸収され全身的に薬理作用を発揮する。その他にも直腸や経鼻投与で薬物が吸収される体循環以外の静脈経路の具体的な紹介もされ、作用機序の研究が現代医学の進歩に貢献することが期待される。

*どの講演においても熱のこもった質疑応答がなされ、有意義な学術集会となった。また、お昼の休憩時間には、約200種の薬草が植わっている京都薬科大学付属薬用植物園補助園を見学することができた。クチナシ、クコ、サンシュユなどの実が赤く色づき、秋ならではの薬草園を堪能した。次回の開催は東京で行われる。

一般演題

  1. 「当センターにおけるアロマセラピーの取り組み」岸田聡子氏(明治国際医療大学付属統合医療センター)
  2. 「茶花(Camelliasinensis,花部)の食欲抑制作用成分」太田智絵、中村誠宏、濱尾誠、松本崇宏、吉川雅之、松田久司(京都薬大)
  3. 「タイ伝承薬物を素材としたメラニン生成抑制活性成分の探索」松本崇宏1、中村誠宏1、中嶋聡一1,2、太田智絵1、吉川雅之1、松田久司1(1京都薬大、2エヌ・ティー・エイチ研)
  4. 「インド・中国伝統ハーブ‘指甲花(ヘンナ)’の花部に関する機能性研究」中嶋聡一、尾田好美(エヌ・ティー・エイチ研)
  5. 「サラシア属植物含有α-グルコシダーゼ阻害活性成分の消化管における安定性および吸収性評価」森川敏生、赤木淳二、二宮清文、吉川雅之、村岡修(近畿大・薬総研)

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第30号:2014年12月