2015.12.1.

町の花から地域活性化─レンギョウ葉の活用─

北海道医療大学名誉教授

西部三省

1.はじめに

レンギョウ(連翹)Forsythia suspensa(Thunb.)Vahlはモクセイ科レンギョウ属の落葉性低木広葉樹である。

新潟県新発田市紫雲寺地区(旧北蒲原郡紫雲寺町)では1985年(昭和60年)に当時の町長鬼嶋正之氏がレンギョウを紫雲寺町の花として制定し、その後苗木を2回に分けて4,000本を全戸に無料配布するなど住民が一体となって大切に栽培し、現在では地区内に3万本以上が植えられている。特に紫雲寺地区の中心部を走る県道は「れんぎょう街道」と呼ばれ、花の満開時には住民の目を楽しませている。この地区にはまた「れんぎょうモニュメント」と呼ばれる記念碑が30ヵ所に設置されている(図1)。かって紫雲寺潟という大きな潟があり、水害に苦しめられたという干拓の歴史がある。

旧紫雲寺町の町の花にレンギョウが選ばれたのも、その花言葉「希望」にあり、干拓に希望を託した町の歴史を物語っていた。¥筆者は長年にわたり生薬・連翹(レンギョウの果実)の研究に携わり、20年ほど前からは地域活性化を目指し、レンギョウの葉の成分と生理活性の解明ならびに紫雲寺地区有志の方々とその活用に取り組んできた。

本稿では主要成分と生理活性について述べる。

図1 紫雲寺地区のれんぎょうモニュメント の1つの「待望」とレンギョウ

 

2.主要成分

レンギョウ葉に含まれる主要成分はポリフェール化合物であるリグナン配糖体のフィリリン(phillyrin)含量2~4%1)とフェニルエタノイド配糖体のホルシチアシド(forsythiaside)含量6~10%2)である。

3.生理活性

生薬・連翹は『神農本草経』に収載され、清熱解毒薬に分類される漢薬で、消炎、利尿、排膿、解毒、抗菌の効があるとされ、種々の化膿症や皮膚病の治療薬として、漢方方剤に古くから用いられている。

本稿ではレンギョウ葉を熱水抽出して製したエキスおよび主要成分フィリリンとホルシチアシドに見出された生理活性について述べる。

3-1 抗酸化作用

レンギョウ葉の抗酸化活性(DPPHならびにABTS法)とポリフェノール化合物含量の相関関係が調べられ、3月採集の葉に抗酸化活性およびポリフェノール化合物含量いずれも一番高い結果が報告されている3)。
フィリリンおよびホルシチアシドにDPPHラジカルスカベンジング法で抗酸化活性が認められ、特にホルシチアシドにビタミンCと同程度の高い活性が認められた4)。

図2 レンギョウ葉に含有される主要成分の化学構造式

3-2 フィトエストロゲン作用

フィトエストロゲンは女性ホルモンと同じような機能を有する外因性エストロゲンのことで、植物エストロゲンともいわれている。

二大フィトエストロゲンとして大豆イソフラボン、その腸内細菌による代謝産物のエコール(equol)、ならびに植物リグナンの腸内細菌による代謝産物のエンテロラクトン(enterolactone)が知られている。これらはエストロゲン活性が強く、乳がん、更年期障害、骨粗しょう症などの予防、男性の前立腺がんの予防などの機能性が期待されている。

フィリリンはリグナン化合物の1つで、ゴマからのセサミンに類似した構造式を有する。筆者はリグナンの腸内細菌による代謝産物についてフィンランド・ヘルシンキ大学のAdlercreutz教授らと共同研究を行った5)。

SD系雄性ラットにフィリリンを経口投与すると尿中にエンテロラクトンが排出されることを確認した(図3)。ヒトにおいてエンテロラクトンの尿中排出量が高いほど乳がん発症の危険率は低く(図4)、また更年期症状も抑えられることが示された(図5)。

フィリリンは腸内細菌の代謝を受けて、フィトエストロゲンのエンテロラクトンになることを明らかとした。腸内細菌による推定代謝経路を図6に示した。

3-3 抗肥満作用

レンギョウ葉エキスの抗肥満作用を高脂肪食を摂取させたラットで調べた6)。

高脂肪食(HFD)を与えたラットを対照群、2つのレンギョウ葉エキス(FLE)投与群(2.5%FLEと5.0%FLE)の3群に分けた。対照群に比べて、2つのレンギョウ葉エキス投与群は体重(図7)、腎臓周囲白色脂肪組織(図8)、精巣周囲白色脂肪組織、褐色脂肪組織、肝臓いずれの重量も有意に減少した。血清においては、中性脂肪および遊離脂肪酸いずれも2つのレンギョウ葉エキス投与群で有意に低値であった。

さらにレンギョウ葉エキスの抗肥満作用のメカニズムを明らかにするため、リアルタイムPCRによる肝臓および脂肪組織の遺伝子発現解析を行った。肝臓のβ-酸化に関わるFatp、Cptla、ACADVLは対照群に比べ、2つのレンギョウ葉エキス投与群で発現量が有意に増加していた。白色および褐色脂肪組織では脂肪代謝に関わるPPARγ、アディポネクチン、UCP-1が対照群に比べて発現量が有意に増加していた。

この結果は高脂肪食でのレンギョウ葉エキス摂取が食餌誘導肥満の予防に有効であることを示すものである。この抗肥満作用にはフィリリン、ホルシチアシドなどのポリフェノール化合物が関与していることが推測され、今後のさらなる研究が必要である。

図6 フィリリンからエンテロラクトンへの推定代謝経路
図7 高脂肪食投与ラット(4 週間)の体重増加への抑制効果
図8 高脂肪食投与ラット(4週間)の白色脂肪組織 重量への抑制効果

3-4 血圧降下作用

筆者は生薬・連翹に降圧作用があることを報告した7)。レンギョウ葉エキスについてもin vivoでのウレタン麻酔、高血圧自然発症ラット(SHR)での後肢静脈内投与における降圧作用を調べた。

レンギョウ葉エキスおよびフィリリンに降圧作用を認めた。さらにフィリリンおよびそのアグリコンのフィリゲニン(図6)をラットの摘出冠動脈に投与し、血管内皮由来弛緩因子である一酸化窒素(NO)による内皮依存性血管弛緩作用を調べた。その結果、フィリゲニンに血管弛緩作用を認めた(未発表)。

飯塚らはWistar系雄性ラットの摘出大動脈を用いたホルシチアシドの血管平滑筋弛緩作用を報告している8)。

ホルシチアシドによるノルエピネフィリン収縮の抑制は、その効果の一部に受容体作動性Ca2+チャネルの阻害が関与すると考えられるとしている。

3-5 認知症改善作用

老化促進モデルマウス(SAMP8)に45日間ホルシチアシドを経口投与し、モリス水迷路試験などを行い、認知機能改善効果が認められたと報告されている9)。

3-6 男性型脱毛症抑制作用

アンドロゲン性脱毛マウスを用いてジヒドロテストステロンにより惹起された毛髪退行期のホルシチアシドの脱毛抑制効果が調べられた。In vitroでヒト毛髪細胞(HHDPCsとHaCaTs)の細胞死を抑制し、in vivoでは35日間ホルチシアシドを経口投与することでマウスの毛密集度と太さがそれぞれ増加したと報告されている10)。

3-7 慢性閉塞性肺疾患抑制作用

タバコ煙は慢性閉塞性肺疾患の主要な原因とされている。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することで生じた肺の炎症性疾患である。

ホルシチアシドには抗炎症作用と抗酸化作用があることが報告されている4)。そこでマウスを用いてタバコ煙によって誘導される肺の炎症に対するホルシチアシドの抑制効果が調べられた。連続5日間、タバコ煙をマウスにさらす試験の2時間前にホルシチアシドが腹腔内に投与された。ホルシチアシドはNrf2シグナル経路を活性化し、NF-κBシグナル経路を抑制することで、タバコ煙誘導肺炎疾患を防ぐことが認められたと報告されている11)。

3-8 その他

紫雲寺地区の小学校で行ったレンギョウ葉の煎液を用いてのインフルエンザ流行期のうがいによる予防効果、入浴剤としてアトピー性皮膚炎の改善効果などに有効性が期待されている。

4.おわりに

レンギョウ葉は高い抗酸化性を有する新しい機能性ハーブとしての活用が期待できる。

レンギョウ葉にはフィトエストロゲン作用により、女性には乳がん、更年期障害、骨粗しょう症などの予防、男性には前立腺がんの予防などの効果が期待できる。

抗肥満作用や血圧降下作用は生活習慣病の予防にも有望と思われる。

現在、新発田市紫雲寺地区ではレンギョウ葉から健康茶の生産とそれを用いた地域活性化の模索が試みられている。

 

(参考論文)

  1. Nishibe S.,Adlercreutz H.,et al.,Nat Med,55,300-301(2001).
  2. Kawamura T.,Nishibe S.,et al.,Shoyakugaku Zasshi,46,254-256(1992).
  3. Tian S.,Wang Y.,Nakamura K.,Abstracts of Shinshu University International Symposium 2010 in Ina,79-84,2010.
  4. Li C.,Li F.,et al.,Int Immunopharmacol,28,494-499(2015).
  5. Heinonen S.,Nishibe S.,Adlercreutz H.,et al.,J Agric Food Chem,49,3178-3186(2001).6)
  6. Nishibe S.,Yamaguchi S.,et al.,J Tradit Med,29,149-155(2012).
  7. Nishibe S.,Kitagawa S.,et al.,J Pharmacobio-Dyn,10,s-48(1987).
  8. Iizuka T.,Nagai M.,Yakugaku Zasshi,125,219-224(2005).
  9. Wang HM.,Wang LW.,et al.,Pharmacol Biochem Behav,105,134-141(2013).
  10. Shin HS.,Park SY.,et al.,Phytother Res,29,870-876(2015).
  11. Yuan JF.,Liu XQ et al.,Eur Food Res Technol,238,527-533(2014).

 

北海道医療大学名誉教授
西部三省 にしべ・さんせい
1959年名古屋市立大学薬学部卒、北海道医療大学名誉教授、日本杜仲研究会会長、薬学博士。専門:生薬、植物化学。著書に『エゾウコギの超力』(毎日新聞社・共著)、『機能性食品ガイド』(講談社・共著)ほか。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第34号:2015年12月