2016.12.1

JAMHA委託研究・学術研究発表セミナー

日本メディカルハーブ協会

金田俊介

メディカルハーブは伝統的に使用されているものが多く、かつてはその長い使用経験に基づいて評価されていました。現在では、その有用性などが科学的手法によって明らかにされつつありますが、未知の部分が多いのも事実です。私たち日本メディカルハーブ協会は、ハーブの有用性に限らず、薬との飲み合わせなどで注意すべき相互作用についても科学的に明らかにしていく必要があると考え、2011年より委託研究をスタートしました。

これまで2つの研究機関に対して委託研究を行ってきており、その成果を会員に向けて報告する場として2016年7月10日に東京・品川で発表セミナーを開催いたしました。なお、すでに一部成果については会報誌上では報告しており、今後も会報誌上で報告いたします。

ちなみに委託研究とは、JAMHAが提案した研究テーマをもとに委託先が研究を実施し、成果を報告していただくものです。研究に要する費用はJAMHAが負担します。一方、いわゆる研究助成などでは研究実施者が研究テーマを提案・応募し、採択されたものに対して研究費が支給される点などが異なります。

最初の講演は国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所情報センター長の梅垣敬三先生による「有害事象とハーブの肝臓薬物代謝酵素に対する影響」というテーマでの発表でした。ハーブであろうと普段口にする食品であろうと、何らかの有害事象は起こりえます。どのような状況でどのようなハーブを摂取し、どのような有害事象が発生したのかを調査・把握することはとても大切です。このような有害事象の収集調査に関する取組みについてお話しくださいました。

さらにハーブは生体に対する作用が比較的強いものが多く、またメディカルハーブ利用者は医薬品をすでに摂っていることも十分に考えられるので医薬品との相互作用についても注意が必要です。人で発生した有害事象の収集から、さらに細かい調査をするために動物実験をする中でも薬物相互作用についての研究を進められており、その研究成果についてのお話もありました。

次の講演は城西大学薬学部医療栄養学科准教授の須永克佳先生による「ハーブの有効性・安全性に関する研究」というテーマでの発表でした。ハーブや食品を医薬品と併用することでその薬効が減弱されたり、あるいは副作用が増強されたりすることがあります。そのようなことを防ぐためにハーブと薬物代謝酵素との関連性を網羅的に調査された結果をご発表くださいました。

さらに、さまざまなハーブの新しい機能性もスクリーニングから研究をされており、その成果についてもお話しいただけました。ハーブは食品といえども、薬理学的作用を及ぼすことが知られており、有効性と安全性という両方の視点から研究が進んでいくことはとても意義深いことだと思います。

メディカルハーブの正しい使い方、あるいは新しい可能性を明らかにしていくためにも、今後も日本メディカルハーブ協会は外部の専門研究機関によるメディカルハーブ研究の支援を続けてまいります。研究成果は随時、会報誌上で報告する予定ですが、またこのようなセミナー形式での報告も開催する予定です。会員の皆さまには引き続きご支援とご理解を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第38号:2016年12月