2017.3.1.

【日本メディカルハーブ協会委託研究】メディカルハーブと医薬品との相互作用および新たな機能性の検討

城西大学薬学部医療栄養学科 薬物療法学講座准教授

須永克佳

1. 研究の背景と目的

近年の国民の健康志向の高まりに加え、医療費の抑制のためにセルフメディケーションが注目されている。セルフメディケーションの実施には、OTC医薬品はもとより健康食品やサプリメント、あるいはより薬物に近づいた食品である特定保健用食品などの保健機能食品の利用が重要である。

さらに一昨年からは機能性表示食品制度が開始されている。この制度では、安全性および機能性の根拠に関する情報、健康被害の情報収集体制など必要な事項を、商品の販売前に、事業者より消費者庁長官に届け出る必要がある。そのため事業者は機能性表示食品の届出に際し、研究報告を中心に情報を集めてシステマティックレビューする必要がある。

このような背景から我々の研究室では、メディカルハーブをセルフメディケーションに役立てるために役立つ安全性・有効性および機能性の情報を蓄積する目的で研究を進めている。

すなわち、これまでも様々な用途で使用されてきたメディカルハーブについて、(1)医薬品との相互作用の可能性を検討し、安全な薬物療法に寄与する目的の研究である。食品と薬物の相互作用は、ひとたび起これば治療効果の減弱・消失あるいは副作用の発生、さらにコンプライアンスの低下による治療の失敗等、患者にとっても医療者にとっても望まざる状況を招きかねない。これらを回避して安全で有効な薬物療法を実現するために、医薬品とハーブあるいは健康食品との相互作用を理解して適切に対処していくことが求められている。もう一つは、(2)メディカルハーブの機能性の検証と未知の機能性の探索である。ハーブの多くは、機能性が伝承、あるいは科学的に解明され、伝統的な使用法に従う限り使用経験が豊富なため、安全性が比較的高いものが多いと考えられる。

このようなハーブの中には、未知の機能性を有するものもあると考えられ、これを明らかにできればメディカルハーブの利用促進に寄与するものと思われる。

本研究では、メディカルハーブ検定15種およびその他の主要なハーブを含めて合計50種類のハーブについて相互作用や機能性についてスクリーニング試験を実施し、実用性の可能性のある情報について、研究を深めていくスタイルを取っている。そのため現時点で多くは未発表の内容である。今回はこれまでの研究成果の概要を報告する。

2. 研究内容

研究対象としたハーブは、日本メディカルハーブ協会のメディカルハーブ検定15種(ウスベニアオイ、エキナセア、エルダーフラワー、ジャーマンカモミール、セントジョンズワート、ダンディライオン、ネトル、ハイビスカス、パッションフラワー、ペパーミント、マテ、マルベリー、ラズベリーリーフ、リンデン、ローズヒップ)を中心に、その他主要なメディカルハーブを含め約50種類である。

試験内容は主要薬物代謝酵素への阻害活性および発現誘導能の検討、薬物体内動態に対する影響の検討、α-グルコシダーゼ阻害作用、DPP-4阻害作用、キサンチンオキシダーゼ阻害作用、抗酸化作用、抗腫瘍作用、神経細胞保護作用、肝保護作用、脂肪細胞機能に対する機能などメディカルハーブの新たな機能性に関する研究を進めている。

3. 研究の進捗状況と成果

(1)薬物代謝酵素阻害作用および薬物動態に及ぼす影響について

ハーブと医薬品の相互作用で最も発生が懸念されるのは薬物代謝酵素の阻害、誘導作用に基づくものである。特にチトクロームP450であるCYP3A4はグレープフルーツにより阻害されることがわかった1990年代に注目を浴びた1)。それまでも薬物代謝酵素を介する医薬品間相互作用には注意が払われていたが、食品によって医薬品の代謝が影響を受け、薬効が変化することが明らかとなり、センセーショナルに扱われた。その後、食品による薬物代謝酵素阻害・誘導作用について精力的に研究が進められている状況である。

我々のグループもトマトジュースがグレープフルーツジュースと同様のmechanism-based inhibitionという不可逆的な強い阻害作用を示すことを明らかとしている2)。さらに、トマトジュースがCYP3A4基質薬物であるニフェジピン(NFP)またはミダゾラム(MDZ)の体内動態に影響を与えることを見出している3)。

1. 薬物代謝酵素(チトクロームP450)活性に影響を与えるハーブの探索(表1)

今回検討した中から酢酸エチルまたは熱水抽出した26種類のハーブについて、主要な薬物代謝酵素であるCYP3A4、CYP2C9、CYP2D6に対する阻害作用の検討を行った結果を表1に示した。これまでに検討したハーブの中にはCYP2C9とCYP2D6に対して、相互作用のリスクが高いと思われるハーブはなかった。一方CYP3A4活性については、熱水抽出したソウパルメットとラズベリーリーフが非常に強いCYP3A4阻害作用を示した。

また、他にジンジャー、セントジョンズワート、タイム、マテおよびミルクシスルなどが比較的強い阻害作用を示した。しかしながら試験管実験で薬物代謝酵素阻害作用を示したハーブであっても、生体に投与したときに予想された薬物相互作用を示すかどうかは、責任成分の吸収率や他の成分による消化管内での物理化学的作用によって変化するため、動物実験にて相互作用が発現するかを検討する必要がある。

 

2. CYP3A4基質薬物の体内動態の検討(表1)

CYP3A4に対して強い阻害作用を示したハーブの熱水抽出物を中心に、CYP3A4基質薬物であるNFPまたはMDZの十二指腸内投与後の体内動態への影響を検討した。その結果、熱水抽出物でCYP3A4阻害作用が認められたタイムとミルクシスルでNFPのバイオアベイラビリティ(BA)を増加させる傾向が観察された。一方、ラズベリーリーフのようにCYP3A4阻害作用が認められたにもかかわらず、基質薬物の体内動態に影響しなかったハーブもあった。また、非常に強いCYP3A4阻害作用が認められたソウパルメットでは、予測に反してNFPのBAを低下させる傾向を示した。これに関しては、薬物をMDZに変更し、またソウパルメットと薬物の投与タイミングも変更して検討を行ったが、いずれも薬物の吸収を抑制する傾向を示した。

同様にマテも薬物の吸収を減少させる傾向を示した。このようにグレープフルーツ並みに強いCYP3A4阻害作用が認められたにもかかわらず、CYP3A4基質薬物の吸収を減少させるメカニズムは今のところ明らかではないが、消化管内での物理化学的な反応も関与しているものと考えられることから、今後検討が必要である。さらに、エキナセアは酢酸エチル抽出物にCYP3A4阻害作用が認められたが、熱水抽出物になかった。しかしながらこの熱水抽出物にニフェジピンの吸収増加傾向が認められた。エキナセアにはCYP3A4、CYP1A2、CYP2D6などを阻害する報告や誘導するという報告4,5)もあり抽出方法や実験条件によって結果が異なっているため、今後さらに検討する必要がある。

(2)機能性の検討

使用経験豊富なメディカルハーブの新たな機能性の発掘のため、表2に示した50種類のハーブについて、抗酸化作用、α-グルコシダーゼ阻害作用、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)阻害作用、キサンチンオキシダーゼ(XOD)阻害作用、抗酸化作用、神経保護作用、脂肪細胞機能への作用、抗腫瘍作用などについて検討を継続して行っているところである。その一部について紹介する。

1.α-グルコシダーゼ阻害作用

α-グルコシダーゼは二糖類分解酵素の総称で、その阻害薬であるα-グルコシダーゼ阻害薬は食後高血糖改善作用を期待して経口糖尿病薬として用いられる。本研究では麦芽糖分解酵素であるマルターゼとショ糖分解酵素であるスクラーゼに分けて50種類のハーブをスクリーニングした。その結果、マルターゼに対して強い(50%以上)阻害作用を示したハーブと阻害作用の強度は、マルベリー>セージ>フィーバーヒュー>マテ>ウイッチヘーゼルであった。

また、スクラーゼに対しては、セージ>マルベリー>マテであった。既にα-グルコシダーゼ阻害作用がよく知られているマルベリーとセージが両酵素に対して強い阻害作用を示すことが確認された。また、このスクリーニングにおいてセージと同じシソ科ハーブであるローズマリー、ペパーミント、タイム、レモンバームにも弱いながら(50%以下の阻害)有意な阻害作用が認められた。シソ科植物に含まれるロズマリン酸がα-グルコシダーゼ阻害作用を示す可能性があることが報告されている6)。

2.キサンチンオキシダーゼ阻害

キサンチンオキシダーゼはキサンチンやヒポキサンチンに働いて尿酸を生成する酵素で、その阻害薬は高尿酸血症治療薬として用いられる。現在のところメディカルハーブ検定15種について、酢酸エチル抽出物、エタノール抽出物および熱水抽出物についてスクリーニングを終えたところであるが、特にペパーミントとローズヒップに強いキサンチンオキシダーゼ阻害作用が確認されている。このうち、ローズヒップについては、高尿酸血症モデル動物にて尿酸低下作用を検討した結果を現在投稿準備中である7)。さらに阻害成分の同定に向けて実験準備中である。

3.抗酸化作用

50種のハーブについて、熱水抽出物およびエタノール抽出物の抗酸化作用(DPPHラジカル消去活性)のスクリーニングを行った。ビタミンEの誘導体で水溶性の抗酸化物質であるTroloxと比較して同等の抗酸化作用を示したハーブと抗酸化能の強度は、ベルベーヌ>ローズ>Trolox>ウイッチヘーゼル>ジャーマンカモミール>ローズマリー>マテであった。

酸化ストレスはアルツハイマー病やパーキンソン病(PD)のような神経変性疾患、アテローム性動脈硬化症、狭心症や心筋梗塞のような心疾患やがんなど様々な疾患の原因であることが知られている。抗酸化作用のあるハーブはそれらの疾患の予防効果が期待できる。

4.神経保護作用

PDなど神経変性疾患においては酸化ストレスにより神経細胞障害が生じることが原因の一つとされている。そこで、初代培養小脳顆粒細胞に対して神経毒性を表すロテノンまたはMPP+を用いて神経細胞死を誘導する実験系にて50種のハーブの熱水抽出物の神経保護作用について検討中である。ロテノンは農薬であるが、マウスに投与するとPD様のモデル作製が可能な物質である。MPP+(1-メチル-4-フェニルピリジニウム)はMPTP(1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)の活性代謝物であり、ドパミン神経に対する神経毒である。MPTPは、合成ヘロインの不純物として含まれ、それを使用したヘロイン常習者がPD様症状を呈したことがきっかけで発見された歴史がある。現在のところ、ロテノンに対しては、チェストベリー、デビルズクロウ、リンデンが強い神経保護作用が認められている。また、MPP+に対しては、フェンネル、ベルベーヌ、ウコン、リンデン、ソウパルメット、ジンジャー、デビルズクロウ、ブラックコホシュが強い神経保護作用を示した。これらについては現在さらに詳細な検討を行っている。また現在、マウスを用いてロテノン誘発性PDモデル動物の作製に取り組んでおり、完成後は培養細胞において神経保護作用を示したハーブについてPDの発症予防および症状改善効果について動物にて検討する予定である。

4.城西大学「食品─医薬品相互作用データベース」の紹介

城西大学薬学部で作成してインターネット上で公開している「食品─医薬品相互作用データベース」8)について紹介する。現在、900件を超える相互作用レポートを収載している。データ内容は、「食品・食品成分名」、「医薬品一般名」、「医薬品商品名」、「相互作用レポート」、「添付文書情報」および「文献」の項目から構成されている。本データベースは,情報の信頼性を維持するため,情報源を査読された一次文献に限定し,文献内容を忠実に要約し掲載することを基本方針としている。管理栄養士・薬剤師・医師・看護師など、医療従事者に活用されることを意図している。本データベースは近いうちにリニューアルすることを予定している。今後ともデータを増やして充実したデータベースを目指す予定である。ご活用していただければ幸いである。

5.おわりに

最後に、我々の研究室は薬学部の中にある管理栄養士を養成する医療栄養学科に所属する薬物療法学講座であり、これまで医薬品と食品の相互作用について教育・研究を進めてきた。今回、日本メディカルハーブ協会から委託研究費をいただいたことを契機に、セルフメディケーションの観点からメディカルハーブの安全性、有効性を中心とした研究を推進する方向性を得ることができた。今回ご報告した結果は、まだ研究途中のものが多いが、既に学会等で発表をしたものもある9-17)。今後の研究によってさらに多くの成果を学会や学術誌、また本協会誌『MEDICALHERB』等においてご報告できるように今後も邁進する所存である。ここに改めて、日本メディカルハーブ協会に対して感謝を申し上げる。

(参考文献)

  1. Bailey DG,Spence JD,Edgar B, Bayliff CD, Arnold JM. Ethanol enhances the hemodynamic effects of felodipine. Clin Invest Med,12,357-362(1989).
  2. Sunaga K, Ohkawa K, Nakamura K, Ohkubo A, Harada S, Tsuda T. Mechanism-Based Inhibition of Recombinant Human Cytochrome P4503A4 by Tomato Juice Extract. Biol Pharm Bull,35,329-334(2012).
  3. Katsuyoshi SUNAGAAO, Tomoni CHIDA,Hidetomo KIKUCHI, Tadashi TSUDA. Effects of tomato Juice on Pharmacokinetics of CYP3A4 substratedrugs(.投稿中).
  4. Mrozikiewicz PM,Bogacz A,Karasiewicz M, Mikolajczak PL,Ozarowski M, Seremak-Mrozikiewicz A,Czerny B, Bobkiewicz-Kozlowska T, Grzeskowiak E. The effect of standardized Echinace apurpure a extract onratcytochrome P450 expression level. Phytomedicine,17,830-833(2010).
  5. Penzak SR, Robertson SM, Hunt JD, Chairez C, Malati CY, Alfaro RM, Stevenson JM, Kovacs JA. Echinacea purpure a significantly induces cytochrome P4503 A activity but does not alterlopinavir-ritonavir exposure in healthy subjects. Pharmacotherapy,30,797-805(2010).
  6. Zhu F, Asada T,Sato A, Koi Y,Nishiwaki H,Tamura H.Rosmarinicacid extract forantioxidant, antiallergic, andalpha-glucosidase inhibitory activities, isolated by supra molecular technique and solvent extraction from Perillaleaves. J Agric Food Chem,62,885-892(2014).
  7. Hidetomo Kikuchi, Satomi Kogure, Rie Arai, Kouki Saino, Atsuko Ohkubo, Tadashi Tsuda, and Katsuyoshi Sunaga. Rosehipinhibitsx anthineoxidase activity and reduces serumuratelevels inhyperuricemiamodelmice.(投稿中).
  8. 城西大学薬学部「食品-医薬品相互作用データベース」.食品─医薬品相互作用データベース. http://www.josai.ac.jp/education/pharmacy/fdin_db/index.html.
  9. 森田ゆりか、須永克佳、大久保温子、津田整.Caco-2細胞におけるRhodamine123の輸送に影響する食品・飲料に関する研究.第86回日本薬理学会年会、2013年3月、福岡.
  10. 須永克佳、大久保温子、森田ゆりか、津田整.ハーブ類の薬物代謝酵素およびP-糖たんぱく質活性への影響の検討.日本薬学会134年会、2014年3月、熊本.
  11. 菊地秀与、須永克佳、中里見真紀、古屋牧子、井口毅裕、津田整.メディカルハーブによるCYP3A4への影響と抗腫瘍性機能の探索.日本薬学会135年会、2015年3月、神戸.
  12. 増田善樹、菊地秀与、須永克佳.メディカルハーブの新たな機能性の検討─抗腫瘍作用・脂肪細胞への分化及び脂肪蓄積への影響─.第132回日本薬理学会関東部会、2015年7月4日、浦安.
  13. 新井理絵、菊地秀与、須永克佳.メディカルハーブのCYP3A4阻害作用及びその基質薬物の体内動態に及ぼす影響についての検討(1).第132回日本薬理学会関東部会、2015年7月4日、浦安.
  14. 江澤怜子、菊地秀与、須永克佳.メディカルハーブのCYP3A4阻害作用及びその基質薬物の体内動態に及ぼす影響についての検討(2).第132回日本薬理学会関東部会、2015年7月4日、浦安.
  15. 菊地秀与、木暮里美、新井理絵、齋野幸樹、大久保温子、津田整、須永克佳.ローズヒップ抽出物のキサンチンオキシダーゼ(XOD)活性およびCYP3A4活性に及ぼす影響.日本薬学会137年会、2017年3月、仙台.
  16. 江澤怜子、新井理絵、菊地秀与、津田整、須永克佳.メディカルハーブによるα-グルコシダーゼ阻害作用の検討.日本薬学会137年会、2017年3月、仙台.
  17. 新井理絵、江澤怜子、菊地秀与、津田整、須永克佳.ロテノン及び1-methyl-4-phenylpyridinium誘発性神経細胞死に対するメディカルハーブの保護効果.日本薬学会137年会、2017年3月、仙台.
城西大学薬学部医療栄養学科 薬物療法学講座准教授
須永克佳 すながか・つよし
1988年城西大学薬学部薬学科卒業、1989年修士課程中退後城西大学薬学部薬学科助手(薬理学講座)、1996年博士(薬学)(千葉大学大学院)取得、2001年医療栄養学科開設に伴い講師(薬物療法学講座)、2005年准教授(同)、現在に至る。専門:薬理学、薬物食品作用学。
主な著書:『医薬品-食品相互作用ハンドブック』(丸善)、『生活習慣病治療薬・基礎と活用』(カザン)、『やさしくわかりやすい食品と薬の相互作用基礎と活用』(カザン)、『病気予防百科』(日本医療企画)など。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第39号 2017年3月