2013.10.3

クルクミン(ウコンの主成分)はアルツハイマー治療には効果なし

翻訳、コメント:玉村聡子

カレーのスパイスであり、肝臓の働きを助け、二日酔い予防効果があるとして、ウコンは認知されている。そのウコンの主成分であるクルクミンにアルツハイマー病の予防効果があるとして注目され、多くの基礎研究や臨床試験が行われている。

アルツハイマー病の病因として、脳内でのアミロイドβタンパクの蓄積などが解明されている。

疫学調査で伝統的にウコンを使った料理を食べているインド人は、アメリカ人と比べてアルツハイマー病の発症率が極めて低いことが示され、また、非臨床研究で、クルクミン投与によって、これまでのアルツハイマー型認知症におけるベータアミロイドの有意な低下が示された。

残念ながらヒトに対しては経口投与で血液脳関門を通過することは確かめられていない。しかし、経口投与ではクルクミンは胃の酸性で分解してしまうため、吸収率が高くないことが、本研究でも示され、バイオアベイラビリティが悪く、効果が期待できないという結果である。また、高齢者に対する認容性データが乏しかったが、本試験で確認することを行ったことは今後の研究に意義があると思われる。

更なる製剤研究を期待したい。
(コメント:玉村聡子)

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Oral curcumin for Alzheimer’s disease: tolerability and efficacy in a 24-week randomized, double blind, placebo-controlled study.
アルツハイマー病に対するクルクミンの経口投与臨床試験: 24週間無作為二重盲検プラセボ比較認容性試験

要旨

緒言
クルクミンは、Curcuma Long Linに由来するポリフェノールの化合物であり、ベータアミロイド凝集の抑制と同様に抗酸化および抗炎症作用も持つことが立証されている。また、遺伝子組み換えモデルにおいてアルツハイマー病(AD)の病状を軽減するため、ヒトADの治療に対する有望な候補である。
当該研究の目的は、AD患者へのクルクミンの認容性、初期臨床バイオマーカーデータを確認することにある。

試験概要、試験方法
 試験名:A Phase II, Double-Blind, Placebo-Controlled Study of the Safety and Tolerability of Two Doses of Curcumin C3 Complex Versus Placebo in Patients With Mild to Moderate Alzheimer’s Disease
 治験依頼者:John Douglas French Foundation
 治験総括医師:John Ringman, MD University of California, Los Angeles
 2007年12月終了
 目的:中軽度アルツハイマー患者に対するクルクミンの安全性/有効性と耐容性を確認する目的で行われた。

クルクミンC3コンプレックス®を用いて24週間無作為二重盲検プラセボ比較認容性試験を実施した。中軽度のAD患者である36人を無作為化し、24週間プラセボ、2グラム/日あるいは4グラム/日の3群とし、クルクミンC3コンプレックス®を経口投与した。
延長の24〜48週間は、24週までクルクミンを投与した被験者は継続して同じ用量を投与し、一方で24週までプラセボ投与された被験者を、2グラム/日あるいは4グラム/日を1:1の比率で無作為化した。
主に有害事象の発生と、臨床検査値のアルツハイマー病評価基準(ADAS-Cog)での変化を測定し、また副次的に精神神経学的項目(NPI)、アルツハイマー病共同研究の日常生活動作(ADCS-ADL)、血漿中のAβ1-40 値とAβ1-42値、脳脊髄液中のAβ1-42値, t-tau値, p-tau181値およびF2-isoprostanes値を測定した。投与4時間後のクルクミン、およびその代謝物の血漿中濃度も測定した。

結果
投与完了者30人の平均年齢は73.5歳、また、ミニメンタルステート試験(MMSE)スコアの平均値は22.5だった。プラセボ群の一人の被験者は1人記憶力の低下のため脱落し、クルクミン群の24人中5人のクルクミン被験者は脱落、うち3人は胃腸症状の悪化のため。
クルクミンC3コンプレックス®は、ヘマトクリット値低下と血糖値増加に関係していたが、臨床的に有意ではなかった。また、被験者群間で臨床的効果とバイオマーカーの違いはなく、血漿中のクルクミンの値は低かった(7.32ナノグラム/mL)。

まとめ
クルクミン投与群のの3人の被験者は胃腸症状の事由で脱落したが、クルクミンは一般に耐容性が良好だった。しかし、クルクミンの生物学的利用能については多少示唆されたものの、当該試験でAD患者に対するクルクミンC3コンプレックス®の臨床的効能効果や生化学的知見を実証することはできなかった。
(翻訳:玉村聡子)