2021.12.1.

エゾウコギの抗ストレス作用と免疫機能のアップについて

北海道医療大学名誉教授/名古屋学院大学スポーツ健康学部准教授

西部三省/齊藤久美子

はじめに 

エゾウコギは中国では約2,000年前から刺五加として薬用に利用されていた。1960年に旧ソ連アカデミーのブレフマン博士によって「薬効が薬用人参よりも優れている薬木である」と折り紙がつけられてから、世界的に一躍脚光をあびるようになった。

ヨーロッパ・ドイツのコミッションEというハーブを評価した書物にもエゾウコギは効果のある薬用植物として認められている。また日本では2006年4月改正の第15改正日本薬局方から根茎が「局方生薬」として収載された。

今までエゾウコギの効果について、いくつかの書物が出版されていたが、ほとんどが中国や旧ソ連における研究からの引用で、エゾウコギ抽出物での動物実験や臨床的経験に基づくものが大半であった。どのような成分がどのようなメカニズムによって効果を発揮しているのかはほとんど明らかになっていなかった。

現在では、健康食品においても、どの成分がどのようなメカニズムで効果を発揮しているのか科学的ならびに客観的なエビデンス(証拠)を明らかにすることがもとめられている。

本稿では主にエゾウコギ茎の含有成分と抗ストレス作用と免疫機能のアップの科学的なエビデンスについて述べる。

エゾウコギとは 

エゾウコギは蝦夷に生育するウコギ(五加)という意味の名で、学名はAcanthopanax senticosus Harms(= Eleutherococcus senticosus Maxim.)である。

生育地はシベリアのアムール川中流地域と樺太、中国の黒龍江省、吉林省、遼寧省、日本では北海道の北見、帯広など東部に分布している。形態は日本各地に見られるウコギに似ており、成長すると4~5メートルの高さにまでなるウコギ科のウコギ属に分類される落葉潅木である。

エゾウコギという名は日本名で、ロシアではエレウテロコックス、中国名は刺五加、刺のある五加という意味である。確かにエゾウコギの茎や枝には刺がたくさんある。それも斜め下に向かって生えた鋭い刺なので、鳥やヘビなどもこの木には近づかず、「鳥トマラズ」とか「蛇ノボラズ」という異名さえ持つほどである。

何に効くのか 

エゾウコギの根皮は中国では約2,000年前から刺五加として薬用に利用されていた。中国最古の薬典である『神農本草経』にも「気を順にし、痰を切り、血行をよくし、精を養い、肝腎を補い、筋骨を堅くし、目を明にし、風寒をしりぞけ、古血を遂い、疝気腹痛を治し、陰萎るを治す」と記載されており、また16世紀明代の薬典『本草綱目』の序文には「ひとつかみの刺五加は車いっぱいの金銀財宝に勝る」と書かれている。

1960年頃、旧ソ連において、エレウテロコックスという薬用植物が人の耐久力、抵抗力を増強し、作業能率の向上や疲労回復にも役立つことが見出され、1968年旧ソ連科学アカデミーから「極東地区の新しい薬用植物、エレウテロコックス」として発表された。当時、シベリア、アムール川流域に自生するこの薬用植物の学名は Eleutherococcus senticosusと発表された。

他方、中国では黒龍江(アムール川)流域に自生する刺五加と北海道の東部に自生するエゾウコギ Acanthopanax senticosus と旧ソ連が発表した新しい薬用植物エレウテロコックス Eleutherococcus senticosus とは同一植物であることがわかった。1970年頃から黒龍江省の科学技術院が中心となって本格的研究が始まり、我が国においても研究が行われるようになった。

その後、旧ソ連の宇宙飛行士が宇宙飛行船内でエゾウコギを飲んでいて、宇宙飛行船内の医薬品リストに載っているとか、宇宙船ドッキングの際には双方の飛行士がエゾウコギ酒で乾杯したとか、また1980年のモスクワオリンピックで旧ソ連の選手がすばらしい成績を出し、活躍の陰にエゾウコギありと大きな話題となった。

1980年にイギリスの老人医学の権威、ステファン・フルダー博士が、科学雑誌『ニューサイエンティスト』にエゾウコギの解説を発表し、西側諸国の関心が一気に高まった。

エゾウコギは日本国内では北海道に自生しているので、エゾウコギの情報の発信源になった。

含有成分 

エゾウコギ根と茎に含まれる主要成分はフェノール性化合物のイソフラキシジン、エレウテロサイドB(シリンギン)、エレウテロサイドB1(イソフラキシジン・モノグルコサイド)、エレウテロサイドE(シリンガレジノール・ジグルコサイド)、ピノレジノール・ジグルコサイド、クロロゲン酸などである。

成分の特徴としてはエレウテロサイドE(根96.4㎎/100g、茎53.2㎎/100g)とクロロゲン酸(根274.6㎎/100g、茎96.7㎎/100g)が高含量で入っている。

抗ストレス作用 

研究を始めた当時エゾウコギは日本国内ではよく知られていなく、その含有成分も詳細に研究されていなかった。まずはその成分研究を始めることにした1)。

研究を始めた頃の大学の理事長の堂垣内尚弘氏はかって北海道知事を務められた方で、知事時代に冬のオリンピックで日本選手団の団長をされていた。

たまたま理事長からオリンピックで優勝するために、かっては「気合だ、気合だ」と選手を叱咤激励していたが、それでは強くなれない。外国ではスポーツ医学を取り入れたトレーニングを行っている。ところでエゾウコギはほんとうにスポーツ選手の能力を上げることができるのかという話になった。

そこで生薬学教室と体育学教室とが共同でエゾウコギの運動に対する効果を調べる動物実験を行うことになった。以下、エゾウコギエキスは北海道東部に自生するエゾウコギ地上部を自然乾燥させ、細切し、熱水浸出し、乾燥エキスとしたものを用いた。

抗ストレス作用の実験はラットを用いた強制遊泳法で行った。これはラットの尾に体重の3%の鉛の重りをつけ、水槽の中で泳がせる方法である。ラットは一生懸命泳いでいないと水中に沈んでしまい、呼吸が出来なくなる。水中に沈んでもはや浮き上がれなくなり、かつラットが水死する直前に引き上げて(ラットの赤い目が一瞬に白く変わる直前)、ラットの泳ぎ続けた時間を計る方法である。これを1日おきに、毎日エゾウコギエキス(500㎎/kg/day)を飲ませたラット群と飲ませないラット群について遊泳時間を調べた。現在、この実験は動物に苦痛を与えているということから、国内外ともに禁止になっている。

エゾウコギエキスを飲ませたラットの群の遊泳時間は4回目より両群に差が見られるようになり、6回目ではエゾウコギエキスを飲ませた群のほうが有意に優れた持久力が認められた 1})。

この効果ははじめは運動疲労を減らし、運動能率を上げているのではないかと考えたが、その後の研究で、そうではなく、ラットが水の中に入れられたストレスにより泳げなくなることがわかってきた。

エゾウコギには抗ストレス作用があり、この作用はエゾウコギに含まれるリグナン成分のエレウテロサイドEによることもわかってきた。エレウテロサイドE(50㎎/kg/day)は強制遊泳法による動物実験で顕著な効果を示した。メカニズムはエレウテロサイドEが脳の下垂体から脳内モルヒネといわれるβ-エンドルフィンを分泌させ、肉体的、精神的な苦痛やストレスを抑えることによるものであることを明らかにすることができた。一方、クロロゲン酸には効果が認められなかった。

動物実験の結果を基にエゾウコギをスポーツ選手に勧めることになった。そこで陸上自衛隊のクロスカントリー選手を対象としたヒトに対する効果の検討を行った。エゾウコギエキスを服用したヒトにおいても、血中のβ-エンドルフィン量が上がり、抗ストレス作用や忍耐力の増大、運動による苦痛を和らげる効果のあることが確認できた2)。

研究当時のトップアスリートのスキー複合の河野孝典選手や阿部雅司選手、スケートの橋本聖子選手、女子トライアスロンの第一人者、村上純子選手らにも評価していただいた。

現在では、エゾウコギは抗ストレス作用をもつ健康食品として、エレウテロサイドEは抗ストレス作用を示す成分として、日本のみならずアメリカやドイツをはじめとする諸外国にも認められるようになってきた。

免疫機能のアップ 

病気をひきおこす外敵から私達を守る働きをするのが免疫機能である。この免疫機能がおとろえると普段なら感染しないような細菌やウイルスに感染して発症する。この免疫機能が私達の自然治癒力をつかさどっている。この中で重要な役割を果たしているのが免疫細胞のT細胞やB細胞であり、さらにがん細胞を殺す働きのあるNK細胞といわれるものである。これらの免疫細胞を増殖したり、活性化するのが、β-エンドルフィンである。免疫機能をつかさどるB細胞やT細胞にはβ-エンドルフィンに対するレセプター(受容体)があり、このレセプターにβ-エンドルフィンが結合することにより、これらの細胞が活性化される。免疫細胞の司令塔であるB細胞やT細胞が活性化されるとNK細胞が増殖し、働きも活発になる。このβ-エンドルフィンは私達の体内でつくられ、その量も心身の状態によって変化し、気持ちが落ち着いているときに多く分泌される。その結果、免疫機能も高まっている。ところが身体的あるいは精神的ストレスが加わるとこのβ-エンドルフィンの分泌は抑えられ、免疫力が低下し、病気にかかりやすくなってくる。このようにβ-エンドルフィンは私達の免疫機能に大切な働きをしている。

エゾウコギエキスをラットに500㎎/kg/day経口投与し、非ストレス下と冷水水浸ストレス下におけるラット血漿中のβ-エンドルフィンの量を測定してみると、いずれにおいてもエキス投与群は対照群(エゾウコギエキスを投与していない群)に比べてβ-エンドルフィンの量が増加した3)。ヒトにおいてもエゾウコギエキスを飲むと血漿中のβ-エンドルフィン量が増加することが認められている。このことはエゾウコギエキスがどのような環境下においてもβ-エンドルフィン量を増し、免疫機能を高める可能性のあることを示したものとみることができる。

 対照群エキス投与群
非ストレス16.83±1.3030.17±4.70*
冷水水浸ストレス
10.60±1.79
20.60±3.48**
表1 非ストレス下と冷水水浸ストレス下におけるラット血漿中の β—エンドルフィン量
(投与群:500㎎/kg/day経口投与) 平均値±標準偏差(ラット6匹) *p<0.05 vs 対照群 **p<0.01 vs 対照群

実際にドイツでエゾウコギを飲んだ人たちの血中のT細胞が偽薬(プラセボ)を飲んだ人たちに比べて有意に活性化されたという二重盲検法による臨床報告が出されている。

エゾウコギエキス中の有効成分の1つはエレウテロサイドE(シリンガレジノール・ジグルコサイド)であることもわかってきた。エレウテロサイドEはα,α-diphenyl-β-picrylhydrazyl(DPPH)を用いた抗酸化試験においてα-トコフェロールより強い抗酸化作用を示し、活性酸素をとりのぞく効果も高いことが認められた。

エゾウコギエキスおよびエレウテロサイドEについて、ラットを用いた拘束水浸ストレス下における胃潰瘍発生の抑制効果をみてみるといずれも高い抑制効果を示した。この効果にはエゾウコギエキスのβ-エンドルフィンや活性酸素に対する作用が関与しているものと見られる4)。

 潰瘍計数(㎜)抑制率(%)
対照群
エキス投与群
45.2±3.9
(500㎎/kg/day経口投与)21.8±5.2*51.8
対照群
エレウテロサイドE投与群
41.1±2.0
(500㎎/kg/day経口投与)20.0±3.6*51.3
表2 エゾウコギエキスおよびエレウテロサイドEの拘束水浸ストレス下におけるラットの潰瘍抑制効果

平均値±標準偏差(ラット6〜10匹) *p<0.01 vs 対照群

エレウテロサイドEはアマドリ転化化合物からの活性酸素の生成にも抑制効果のあることが認められ、エゾウコギエキスの糖尿病合併症への予防効果も期待される。

さらにストレスにより副腎皮質から分泌されるストレスホルモン(コルチゾール)は免疫力を下げてしまうだけでなく、記憶力をつかさどる脳の海馬の容積を小さくして記憶力を低下させてしまう。この場合もβ-エンドルフィンが体内に多く存在するとコルチゾールの海馬を委縮させる働きを抑えることができ、ストレスによる物忘れを予防することも期待できる5)。

このようにエゾウコギは免疫機能や生活習慣病の発症にかかわる体の中のβ-エンドルフィンや活性酸素をコントロールし、私達の体の自然治癒力を高める働きをもち、したがってエゾウコギを服用することで種々のストレスにも抵抗でき(エゾウコギのアダプトーゲン作用といわれるもの)、病気を予防し、さらにがん、糖尿病、動脈硬化症などの多くの病気への治癒効果もあらわれると考えることができる。ここに古来から中国でエゾウコギが貴重な漢薬とされ、「一握りの刺五加(エゾウコギ)さえあれば、満車の財宝もいらない」といわれてきた所以があるものと思われる。

北海道のドラッグストアには地場製品の免疫力を上げるエゾウコギドリンク剤が市販されている。

最近、不安高感受性ラットを用いてエゾウコギエキスおよび含有成分についての研究で精神的ストレスにも有効であることが報告された6)。

エレウテロサイドEは主に自律神経活動の安定化や海馬BDNF(脳由来神経栄養因子)シグナルを活性化すること、クロロゲン酸が抗不安様行動を誘導すること、エレウテロサイドEとクロロゲン酸の組み合わせによりエゾウコギエキスと同様の自律神経活動の安定化や抗不安様行動、海馬BDNFシグナルの活性化を誘導すること、エレウテロサイドBが抗不安様行動やストレスによる副交感神経の低下抑制を示すことが証明された。

その他、更年期障害と乳がんの予防 

日本では、更年期障害や乳がんの予防効果をもつ大豆イソフラボンのゲニステインが知られている。一方、ヨーロッパではエンテロラクトンという成分が同様に女性ホルモン活性を有するものとして注目されている。エンテロラクトンはライ麦をはじめとする穀類に含まれるリグナンがヒトの腸内細菌によって代謝され、つくられるものである7)。

図4 リグナン成分の腸内細菌による代謝経路

エゾウコギはエンテロラクトン前駆物質のピノレジノール配糖体リグナン(ピノレジノール・ジグルコサイド)を含有し(エキス顆粒78.2㎎/100g、精製エキス286.5㎎/100g)、エキスをラットに経口投与すると尿中のエンテロラクトンの排泄量が増加することが認められている。ヒトでもピノレジノール配糖体リグナンを摂取していると尿中のエンテロラクトンの排泄量が増加するのが認められ、そのような人たちは、乳がんに罹る危険性が減少し、さらに更年期の種々の症状が和らぐことがフィンランドでの疫学調査から明らかになっている。これらの結果からエゾウコギにも更年期障害や乳がんの予防効果が期待できる。

おわりに

エゾウコギの抗ストレス作用をはじめとする今回述べた効果はスポーツでのアスリートのみならず、通常生活において一般の人たちの生活上の質(QOL)を高めることにも繋がるものである。

本稿では述べてないが、エゾウコギは高血圧、がん、糖尿病、肥満、アレルギー、リウマチなどをはじめストレスや活性酸素がその発症の要因とされる種々の病気の予防にも効果が期待できる。

エゾウコギは現代のストレス社会にうってつけの健康食品の素材の1つといえるのではないだろうか。

[参考文献]

  1. Nishibe S., Kinoshita H., Takeda H., Okano G. Phenolic compounds from stem bark of Acanthopanax senticosus and their pharmacological effect in chronic swimming stressed rats. Chem. Pharm. Bull., 1990, 38(6), 1763-1765.
  2. 武田秀勝、大本美彌子、今井常彦、橋本伸也、乗安整而、佐々木敏、森田勲、秋月一城、佐藤隆司. エゾウコギ茎皮水エキスがヒト最大運動負荷時血漿中β―エンドロフィンレベルに及ぼす影響. 北海道体育学研究、1995, 30, 7-13.
  3. 武田秀勝、エゾウコギ茎皮水エキス投与がストレス負荷ラットの血漿中β―Endorphinレベルに及ぼす影響. 東邦医会誌, 1990, 37(3), 334-343.
  4. Fujikawa T., Yamaguchi A., Morita I., Takeda H., Nishibe S. Protective effects of Acanthopanax senticosus Harms from Hokkaido and its components on gastric ulcer in restrained cold water stressed rats. Biol. Pharm. Bull., 1996, 19(9), 1227-1230.
  5. Deyama T., Nishibe S., Nakazawa Y. Constituents and pharmacological effects of Eucommia and siberian ginseng. Acta Pharmacol. Sini., 2001, 22(12), 1057-1070.
  6. Miyazaki S., Fujita Y., Oikawa H., Takekoshi H., Soya H., Ogata M., Fujikawa T.
      Combination of syringaresinol-di-O-β-D-glucoside and chlorogenic acid shows behavioral pharmacological anxiolytic activity and activation of hippocampal BDNF-TrkB signaling. Scientific Reports., 2020, 10: 18177.
  7. Heinonen S., Nurmi T., Liukkonen K., Poutanen K., Wahala K., Deyama T., Nishibe S., Adlercreutz H., In vitro metabolism of plant lignans: New precursors of mammalian lignans enterolactone and enterodiol, J. Agric. Food Chem., 2001, 49, 3178-3186.
北海道医療大学名誉教授/名古屋学院大学スポーツ健康学部准教授
西部三省/齊藤久美子 にしべさんせい/さいとうくみこ
にしべ・さんせい 1959年名古屋市立大学薬学部卒、北海道医療大学名誉教授、日本薬学会永年会員、日本生薬学会永年会員、薬学博士。専門:生薬、植物化学。著書に『エゾウコギの超力』(毎日新聞社・共著)、『機能性食品ガイド』(講談社・共著)ほか。

さいとう・くみこ 2007年東京薬科大学大学院薬学研究科博士後期課程修了、博士(薬学)。名古屋学院大学スポーツ健康学部准教授、日本薬学会会員、日本生理学会会員、専門:生物学、薬学(薬理学、天然物化学)。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第58号 2021年12月